1. 風立ちぬ(2013)
たしかになんか解りにくいまま、美しいまま進んでしまい、そして終わってしまう。あの戦争の悲惨な結末は分かってるのだからその虚しさを訴えたかったのか。もちろんそうではない。宮崎氏はそんなありふれたことはしない。また逆にこの映画をあの戦争の賛美につながっている、社会への見方が甘い、などといつも通りの人々がうるさく言うのもまったくピントがずれている。最近になって初めてこの作品を観たが、そういう見方の軽さは私にもわかった。ではいったい何がこの映画のテーマなのだろう。何が中心だと、一言でいえるものがあるのだろうか。あるとすればそれは何だろう。 宮崎氏はやはり自分から描く。人の想いから離れず、人々が生きる周りを丁寧に描く。飛行機への情熱と彼女への愛を細やかに描き、そこから離れない。そしてそこから見える限りでの時代を描く。ここに流れているテーマのようなものは、「死」とか「人間のはかなさ」のようなことだと思う。そしてそれはもしかして、自分の死を意識し、人々への弱々しい自分の愛に初めて気づいた宮崎の悲しみかもしれない。そんな気がした。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-02-26 21:30:18)(良:1票) |
2. 母なる復讐
これが韓国映画だ。というか韓国映画のある一面だ。いろんな意味で気持ち悪い。終わり方も分かってたけど公平のためになんとか最後まで観た。娘を強姦した3人の悪ガキは徹底的なワルで、単に自分たちの性欲を満たそうとしただけでなく、徹底的に女性を辱める、というより人間に対する冒涜、人間性への挑戦をやる。韓国の性犯罪率は先進国中でもずば抜けて高いことからすると、この映画もあながち大げさではないのかもしれない。そのくせ法律は欠陥だらけ、少年法が甘すぎるのも日本の法規を猿マネした名残りかもしれない。韓国の司法がいかにヘンかはナッツリターン事件や沈没事故の経緯を見ても分かる。とにかくこの映画、人への恨み、憎しみ……、半端ではない。さすがに恨(ハン)の国だ。従軍慰安婦問題でも、事実に基づいた告発なら歓迎するが、ありもしない残虐行為まででっち上げて国連クマラスワミ報告を出させてしまった。そういうこともこの映画を見て納得してしまった。それがいやだ。観なければよかった。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2015-06-15 22:56:50)(良:1票) |
3. チチを撮りに
この映画、感想をまとめようとしてもなんかうまく言えない。人の機微に触れるなにかいいものがあるのに、なんか頼りなく物足りなくのんびりし過ぎている。そこがまた妙にリアリティがあって文句なく面白い。ぴったりした言葉が思い浮かばないでいたら、前にコメントしてる花守湖さん。「ゆるい」っていうんですね。そうこれ、こんな言葉あるんですねえ。この映画のなにもかもの「ゆるさ」が妙におもしろいんです。強さにもやさしさにも通じる何かですね。すっきりしました。花守湖さんありがとね。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-06-05 10:14:35)(良:1票) |
4. お引越し
《ネタバレ》 あんなに戻ってほしいとアピールしてたのに、最後に父親がもう一度やり直したいと言ってもレン子は突き放してしまう。その思いが何なのか、そこがうまく描けていない。コンクリートの土手を行ったり来たりしながら、揺れ動きながら、父を振り切るのだが、あんなに愛情深く父に接してたのにその肝心な点がストーリーとしてうまく語られていなかった、と思う。いっそ父親がもっとダメな男だったりしたら、突き放しの意味もあるのに…残念なところだった。だから最後に、京都の庶民の人情ややさしい無関心、息子を亡くした老夫婦の悲しみ、荘厳な川祭りの中で感じた人間を超える何か、そういうものに接して自力で大人に成長していくレン子の姿が、説得的に見えてこなかった。残念だ~。悪く言えば腰砕け、最後の祭りの光景が長すぎると感じてしまった。まさか外国人向けに‘日本’を押し出し過ぎた、ということではないだろうが。 [ビデオ(邦画)] 6点(2014-04-29 22:08:21)(良:1票) |
5. 八日目の蝉
《ネタバレ》 これは幼いころの一時期、自分を誘拐した女に育てられた記憶を持つ主人公(井上真央)が、そのせいで屈折した関係しか築けなかった実の両親との、和解に至るまでの死と再生の物語だ。その和解は映画の最後になってやっと訪れる。自分を誘拐した女(永作博美)との幼い記憶を離島に訪ね、そこで女が別離の瞬間までいかに自分を愛してくれていたかを、はっきり確認できて初めて可能となる。過去を取り戻し、過去を肯定できて初めて、同時に、自分も両親(特に母親)を憎んではいなかったと言えるようになる。そして自分も彼女(永作)や島の人々が自分を愛してくれたように、やがて産まれてくる自分の子をも愛せるという自信を持つ。なぜ死と再生の物語かというと、こうしてはじめて主人公は死を選ばず、八日目の蝉になっても、一人で新しい世界を見ようという気になれたのだから。エンジェルというカルトやライターとの関係など、あまりすっきりとしない面もあったが、それらを差し引いてもすばらしいラストだった。永作の演技が光っている。すべてが明らかになり、最後に中島美嘉の歌が鳴り響くのもよい。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2014-07-21 16:12:42)(良:1票) |
6. フェイク
《ネタバレ》 おとり捜査官のドニーはうだつの上がらない兄貴分のために、足を洗うカネを家に隠し持っていた。めったに家に戻らない夫の愛情を信じられなくなっていた妻が、そのカネを見つけて夫を疑う。そのときのドニーの言葉が悲しい。「おれは仕事に殺されて息もできない。でも抜けられない。見殺しにできない。正義の味方気取りで今までやってきた。結果はどうだ、君の言う通り今ではおれもマフィアみたいだ」。若かったころわれわれの多くは正義の味方気取りで世間に出た。そしてその世間からみな抜けられなくなった。そのしがらみのなかで愛する者を見つけ執着する物にとりつかれた。ドニーは任務をやり遂げ、こちらの世界に戻る。戻ることで何を得たか、こちらの世界とはどういうものか。この作品はきっちりそれを問うている。二人の主役も周りのマフィアたちも、全員の演技が冴えわたっている。日本のたけしのヤクザ映画など恥ずかしくなってくる。 [DVD(字幕)] 8点(2014-11-03 15:45:14)(良:1票) |