1. 或る夜の出来事
《ネタバレ》 “It Happened One Night”『それはある夜に起きた』とかでしょうか?ずっと『或る“ヨル”の出来事』だと思ってた。 一括りにすると昔のラブコメ映画ではありますが、1930年代のそれも前半の作品。トーキー映画が徐々に出てきて、でもまだチャップリンがサイレント映画やってた時代に、これだけスタイリッシュでスピーディでテンポの良い、それこそ『ローマの休日』と比較されるような作品が創られていたなんて、ただただ驚きです。まるでオーパーツのような映画です。 古い映画を観ていると『何でこの若い美女が、こんな初老のオッサンと?』なんて不思議に思うことがあります。まだこの当時、淑女は紳士の添え物と考えられていたんだろうな、と解釈してます。でも本作のピーターは、世間知らずのエリーをリードこそしますが、きちんと対等の関係を示します。ドーナツの浸し方も、男が女に教えてやってるという説教臭さは感じられません。 部屋を借りる際、毛布で『ジェリコの壁』を作るとこ。エリーの目の前で生着替え。シャツを脱いで、次はズボンと見せかけて靴に行くユーモアというか気遣い。エリーが壁に放ったストッキングをしまうように言うところも、凄く紳士的に思いました。 自信満々のヒッチハイクからの、エリーのあんよチラリでアッサリ勝ってしまうとこ。たぶん'80年代まで余裕でパクられてるネタですよね。2人が対等だから成り立つ勝負が、とても微笑ましく思えます。 結婚式からの大逆転。最後はジェリコの壁とラッパ。シンプルだけど幸せいっぱいなラストが良いですね。 もし、漠然と古い映画に興味を持った人に、何を観たら良いかアドバイスを求められたら、迷わずこの映画をオススメします。 ちなみにこれまで827本の映画レビューを書かせて頂いていますが、本作より古い映画のレビューは、たった6本だけでした。今から90年前だって、この映画。90年前のラブコメが今でも楽しく観られるなんて、凄いね。 [ビデオ(字幕)] 9点(2024-06-17 22:29:46)★《新規》★ |