1. 悪魔の手毬唄(1977)
うーん、意外とこの映画、高く評価されているんですね。岸恵子さんの最後の泣きは必要ないと思う。原作どおりに、犯人が大空ゆかりの殺害に失敗し、自殺した後金田一耕助によって淡々と犯行の動機が明かされる、というストーリーにした方がかえって犯人の哀れさを出せたと思いますよ。実際、原作を読んだときに、犯人が可哀想で涙が出そうになりました。しかし、映画を見るとこのシーンで興ざめしてしまいます。岸恵子さんは素晴らしい女優さんだし、若山富三郎さん、加藤武さんもいい味出しているだけに、残念です。 犯人の動機が弱すぎるという意見もありますが、この長い原作を2時間ちょっとで映画にするのはムリがあるかもしれないですね。この作品は原作を見てから映画を見たほうが絶対に面白いし、犯行動機も納得できると思いますよ。 横溝作品での犯行動機は、現代の価値観からするとクエスチョンがつくようなものが多いのですが、原作を読むと、古い価値観が壊れつつある時代の中で、古い価値観にがんじがらめにされた犯人の哀れさと、その時代でその理由だったら人を殺すのも仕方がないのかな、という動機のリアリティを強く感じます。僕が横溝作品の映画を評価する基準はそこにあるわけで、悪魔の手毬歌は、動機がわかりにくいというところで、もう少しかな、という気がします。(映画のファンのみなさん、ゴメンナサイ。原作を愛する者のグチです。) 最後の、金田一耕助と磯川警部のやりとりは、余韻があっていいですね。 6点(2003-06-23 01:09:02) |