1. ガタカ
《ネタバレ》 ストーリー、テーマは本当に素晴らしい。サスペンスを展開しながらもヴィンセントとジェロームがそれぞれ自分の在り方を見つけていく過程もきっちり描けている。近未来という設定を用いて現代社会への警鐘や人間の在り方について考えさせる、という点でSFのお手本とも言えるような仕上がり。CGを多様しない映像も無機的で美しさも感じさせる素晴らしいものだ。 しかしどうも引っかかってしまうのが世界観だ。物語の展開上、建物外でのショットは必要はないのだが、近未来とはいえ架空の世界である事には違いないのだから、一度でいいからもっと大きくこの世界を見せるショットが必要だったのではないか。『ブレードランナー』のように外の広いショットから建物内に迫っていくシーンがあればこの世界にもう少し入り込めたかもしれない。 それに加え、建物内での完璧なシステムというような設定も無理があると感じてしまう。完璧過ぎるとその世界での人々の生活感が失われ、ヴィンセントの潜入にも説得力がなくなってしまう。これが『リベリオン』のようなあからさまなB級感があれば何も違和感はないが、物語も演出も丁寧で美しいだけにこの粗が際立ってしまった。 ただラストのヴィンセントとジェローム、それぞれの旅立ちには泣けた。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-08 22:09:09) |