1. 教皇選挙
《ネタバレ》 ■キリスト教を背景としたミステリーということで、『薔薇の名前』をイメージしたが、あちらは純然たるゴシックミステリーであるところ、こちらは極めて現代的な作品であった。 ■テロによる爆発で選挙会場のシスティーナ礼拝堂の高窓の一つが吹っ飛び、選挙の場に圧倒的な暴力がインパクトとしてもたらされた。あれはそこにいた枢機卿たちにとっては神の怒りのように感じられたに違いない。さほどに旧約聖書における神は荒々しい。その直後のシーンで、その高窓から差し込む日の光が礼拝堂の有名なフレスコ画を美しく照らすのだが、その神々しさが、あれは実に神の怒りであったことの証左となる。 ■最後の投票のとき、その破れた高窓からかすかに外界の喧騒が聞こえてくる。何百年と厳格に密室で行われてきたコンクラーベが、わずかにではあるがこのとき初めて外との接触の中で行われたのだ。その喧騒をBGMに、枢機卿たちは教会の歴史に新たな一歩を刻む一票を投じる。 ■この一連の流れによって、全体として神の意志によって教会の閉鎖性・保守性に風穴が開いたというつくりになっている。見事な脚本だ。いや、原作がそうなのかな? ■演技巧者ばかりの俳優たちの演技が、本当に素晴らしい。とりわけ主役のレイフ・ファインズ、新教皇にその位を引き受けるかどうかを聞く場面で、嫉妬を隠し切れない何とも言えない複雑な表情をする。お見事。 ■主役がいよいよ教皇の第一候補となり、「教皇名は考えてあるか?」と聞かれ、実に神妙に「ジョン…」と答える。後から考えれば、あれはコメディなんだね。ファインズの絶妙な顔芸が浮かんで、思い出し笑いしてしまった。 [映画館(字幕)] 7点(2025-04-01 17:04:16)(良:1票) ★《新規》★ |