1. グロリア(1980)
《ネタバレ》 『レオン』のキャッチコピーが“凶暴な純愛”ならば、元ネタ的なこっちは“凶暴な母性愛”というコピーをつけるに相応しいジーナ・ローランズ姐御の暴れっぷりです。ウンガロのスーツをバシッと着こなしハイヒールを履きながらも重いスーツケース引きずって駆け回り、そして容赦なく拳銃をぶっ放すこのおばさん、いったい何者なんだ?マフィアのチンピラたちと対決するときも銃で脅すだけじゃなく完全に挑発してますからねえ。ボスのところに乗り込んでも、ぜんぜんビビらずに「これで私は帰る、撃つんならどうぞお好きに」と堂々とした態度、もうその肝っ玉の太さには痺れてしまいます。演じるのが夫カサヴェテスとは名コンビのジーナ・ローランズですから、子供嫌いがだんだんと母性愛に目覚めてくる人物像には説得力があります。カサヴェテスの即興演出映画はどちらかというと苦手なんですけど、本作ではその臭みはあまり感じさせません。まあアクション映画では即興演出はちょっと無理すぎなんでしょうね。 ラストの墓地のシークエンス、グロリアは「ピッツバーグの駅で会おう」と少年に言っていたけど、なんで墓地にいることが判ったんでしょうかね?そしてマフィア相手にあんだけムチャしまくったんだから、手帳を渡したと言っても彼らが見逃してくれるとは到底思えません。そう思うと、あのラストは果たしてハッピーエンドだったのかと重い気持ちになります。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-06-09 22:11:19) |
2. クリープショー
《ネタバレ》 オムニバス好きの自分だけど、これはほんとに面白くなかった。なんと言いますか、各話にオチもなければストーリーテリングにもキレがない。これなら『世にも奇妙な物語』の方がよっぽど愉しめます。まあこのグダグダな展開が「パルプ雑誌のくだらない漫画の映像化なんですよ」とロメロに反論されても、言い訳にもなっていません。各エピソードの登場人物に感情移入できるというかまともなキャラが一人もいないってところは、いかにもロメロ映画って感じでしたけどね。気が付いたところとしては第四話だけが他のエピソードに比べて妙に尺が長い。まあプロット自体は面白いんだけど、木箱に隠れていたモンスターの造形だけは文句をつけざるを得ません、あれじゃ単なるヒヒだろ!このエピソードの本当のモンスターは、あの不細工な鬼嫁だったのかもしれませんがね。まあロメロ信者には悪いけど、彼は自作のゾンビ映画以外になると腕の悪さがバレてしまうんですよ。 そしてやっぱり言及しておかないといけないのは、第五話です。あれだけ大量のゴキブリをどうやって集めたんですかね。『フェイズⅣ/戦慄!昆虫パニック』では蟻の調教師を使って撮影したそうですが、ハリウッドにはゴキブリの調教師なんてのも存在するのかも。まあゴキちゃんたちは演技してるようには見えなかったですがね(笑)。でも殺虫剤やら足で踏みつぶすやら、あの撮影で何匹のゴキブリを殺したんでしょうね、これは倫理にもとる昆虫虐待にほかなりません、香川照之に怒られるぞ(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2021-01-27 21:06:05) |
3. クリスティーン
《ネタバレ》 たしかにスティーブン・キングのファンに言わせると、原作はキング作品の中でも名作中の名作なんだそうですが、残念ながらわたくしはキングの小説は読んだことがないので何とも言えません。この作品ではカーペンターはプロデューサーでもないし脚本書いてもいないので、原作の改悪については責任なしとしか言えませんね。でも中盤まではカーペンターにしては珍しい青春映画のタッチで、この辺りは原作の香りが残っていたんでしょうか。クリスティーンに魅了されてからのアーニーの変貌ぶりはあまりにも唐突感が強いのですが、ここら辺からカーペンターお得意の雑な展開なのであまり気にしないように。でもカーペンター映画としては過剰な逸脱もなくてよくまとまった普通の作品だと感じました。 “火の車”に追いかけられて“火だるま”にされて死んでゆくなんて、一種のギャグなのかもしれないが、悲惨な人生の比喩として受け止めるとなかなか奥が深いところがあります(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-05-19 23:29:27) |
4. クライム・オブ・パッション
《ネタバレ》 80年代のケン・ラッセルのフィルモグラフィは奇作・珍作ぞろいなんですが、その中でも本作はかなり酷いというかしんどいというのが結論です。昼は有能な服飾デザイナー、夜は“チャイナ・ブルー”と名乗る安ホテルで営業に励む娼婦、これを演じるのがキャスリン・ターナーというのは、いかにもなキャスティングではあります。でも彼女は娼婦にしてはエロくもないし予想外な貧乳で、これにはがっかり。こういうプロットのお話しはまあ良くあるわけですけど、その客や彼女を取り巻く男たちが訳の分からない連中ばかりで、とくに完全に逝っちゃってるアンソニー・パーキンスが強烈です。『サイコ』以降のパーキンスが演じるのはたいていキチ〇イというのが定説ですが、期待にたがわない変態牧師でした。考えてみると、ケン・ラッセルとアンソニー・パーキンスの組み合わせはちょっとヤバかったです、まさに「混ぜるな、危険」という感じです。このお話しはケンちゃん版『アイズ・ワイド・シャット』だという解釈もできなくもないですが、このお下品さにはキューブリックも裸足で逃げ出すでしょう(笑)。ケン・ラッセル映画の題材は、D.H.ロレンスの小説や音楽家の伝記などつまり古典的な時代設定が多いんですが、彼独特のサイケなストリートテリングはリアルタイムな時代設定の物語では粗が目立ちすぎるんですよね。これは失敗作としか言いようがないですね。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2018-05-13 22:49:47) |
5. グレート・ウォリアーズ/欲望の剣
《ネタバレ》 ポール・ヴァーホーヴェンを語る上では、やっぱ本作は外せないでしょう。子供のころTV放映を見逃してからずいぶん長いこと観る機会がなかったんですど、カットされたところは当然あったでしょうがよくこんな映画をゴールデンタイムに地上波で放映したもんだと感心してしまいます。 見通して感嘆したのはルトガー・ハウアーのほれぼれするアンチ・ヒーローぶりです。この人はアンチ・ヒーローを演じるためだけにこの世に生を受けたんじゃないかと真剣に考えてしまいます。ハウアーは劇中で掘り出された聖マーチン像を皆が自分に投影するように仕向けたりするずる賢い面も持ち合わせていますが、そのマーチンを手玉に取るのがお姫様ジェニファー・ジェイソン・リーというわけです。この人、登場してからはそれこそ頻繁に脱ぎシーンが続きますけど、とうに二十歳を過ぎているとは思えない幼児体型はその手の趣味がある人にはもう堪らんでしょう。また彼女の表情がまた悪女丸出しなんですよ、もっともこの人はもとからこういう顔つきなんだからしょうがないんですけどね。宴会のシーンでこのお姫様がテーブルの陰でハウアーの股間を挑発するところは、もろ『トム・ジョーンズの華麗な冒険』の有名なシーンのまんまだったので笑ってしまいました。 原題が『肉プラス血(直訳)』というぐらいですから、ヴァーホーヴェン趣味が全開でそのグロさは『スターシップ・トゥルーパーズ』といい勝負してます。でもけっこうセットやらにはおカネがかかっているみたいだし、活躍するかどうかは別にしてわき役たちもキャラが上手くたっています。やっぱこれは傑作ですね。 [DVD(字幕)] 8点(2016-08-27 23:31:04) |
6. グローリー
《ネタバレ》 脱走に失敗して、鞭打ちの刑を受けるデンゼル・ワシントン。鞭を受けながらマシュー・ブロデリックを見つめる眼から一筋の涙が流れる。それを観て「なんと美しい顔なんだろう」と思わず唸ってしまった。まさしく、名優が誕生した瞬間だったのだと思います。この映画の黒人俳優たちはみな表情が素晴らしい。彼らがワグナー要塞攻撃の前夜、焚き火を囲んでゴスペルを歌うシーンは涙なくして観れない名シーンです。そしてマシュー・ブロデリック、弱々しいお坊ちゃんが指揮官に任ぜられて奮闘する姿が健気で、内面の成長はともかくとして最後まで初々しい姿のまま戦死してしまうのがまた涙を誘います。第二次世界大戦では日系人部隊でも同じ様なドラマが繰りかえされていることを決して忘れてはならないと思うし、ぜひハリウッドでこの物語も映像化して欲しいところです。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2011-01-19 23:41:29) |
7. 偶然の旅行者
《ネタバレ》 何回も観れば味が出てくる映画のようですが、私にはイマイチでした。確かにウィリアム・ハートは優柔不断ですが、キャスリーン・ターナーが演じる別居中の妻が自分勝手すぎるように思えます。そんな妻なのに、よりを戻そうと言われてウィリアム・ハートがぐらつくところが、彼の優柔不断さを際立たせる演出なのかもしれませんが。観てておかしかったのは、ウィリアム・ハートの兄弟たちの変人ぶりで、ジーナ・デイビスよりよっぽど変ってると思いましたよ。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-03 21:54:11)(笑:1票) |
8. 蜘蛛女のキス
《ネタバレ》 前半は刑務所内での舞台劇を観るような二人の囚人の対話が続きます。途中で明らかになりますが、刑務所長からモリーナは政治犯バレンティンをスパイする役目を負わされています。モリーナがバレンティンに語る空想の映画のストーリーは、バレンティンを裏切ることを命じられている自分の姿を投影しています。空想の中でしか生きられないホモの男と、現実を変革することに命をかける政治犯という全く対照的な二人が理解しあえるようになっていくのが素晴らしい。モリーナはバレンティンから獄外の同志への連絡を頼まれ苦悩の末引き受けますが、当局には密告せずおとりとして釈放されて前半とは打って変わって激動のラストへ突き進んでいきます。私はゲイの映画は苦手ですが、ウィリアム・ハートが演じる身を呈して真実の愛を貫こうとするモリーナの悲劇には圧倒されました。映画史上もっとも切ないオカマの演技です。 [ビデオ(字幕)] 9点(2009-02-17 23:19:29)(良:1票) |