21. 蜘蛛巣城
《ネタバレ》 オーソン・ウェルズの「マクベス」には及ばないが・・・あの怪奇幻想的な雰囲気が登場人物たちのドロドロした情念みたいで面白いんだけどさ、霧の中突っ走る場面は長いし、盛り上がりも少ない。 淡々と一つ一つ事を片付けていく感じだな。 一人の男が栄華を極め、そしてあっけなく滅んでいく。 こんなところに住みたい民はいねえだろうな。 だって城下町が無いんだもん。 夜逃げでもされた? ただラストシーンは壮絶! もうそこだけは何回も見たくなるね。 動くはずがない森が動き出し、絶望に暮れ始める鷲巣たち。 円谷英二の怪獣映画さながらの技法が、このおどろおどろしい映画を一気に盛り上げる! いままで散々上司や仲間を裏切ってきた男に、真の忠誠を示す部下は一人もいない。 一方で、苦楽を共にしてきた小田倉と義照には心で結ばれた部下を率いる。 いつも対照的な役柄を演じる三船敏郎と志村喬が魅せる光と影が如実に現される。 そして矢の雨が横から降り注ぐ凄まじい絵! マジで本物の矢をドカドカ撃ちまくる! 矢が首に刺さって苦悶の表情をする鷲巣。 まるで往年のサイレント映画さながらだ。 映画は鷲巣が崩れ落ち、強者どもの夢の跡を映す城跡が映り幕を下ろすが、撮影後に三船が本気でブチギレて散弾銃を武装して押しかけた話はあまりにも有名である。 いやあ、本気で監督を殺しにかかれる俳優、今の時代にいるかい?(何を言ってんだ俺は) [DVD(邦画)] 9点(2014-12-11 04:32:11) |
22. 群衆(1941)
《ネタバレ》 悪い映画じゃない。 キャプラらしいコミカルで心に響く映画だ。でもゲイリー・クーパーは「オペラ・ハット」の方がチャーミングな上にカッコイイ。 それにキング・ヴィダーの「群衆」を見た後だと、やっぱり普通の作品に見えてしまう。 [DVD(字幕)] 8点(2014-12-08 23:46:14) |
23. グロリア(1980)
《ネタバレ》 リュック・ベッソンの「レオン」の元ネタ程度に考えていたが・・・やはり傑作だった。 「ラブ・ストリームス」「オープニング・ナイト」「ビッグ・トラブル」など色々なアイデアで魅せてくれた男だが・・・ジョン・カサヴェテスはまた良い映画を撮ってくれた。 ファースト・シーンから引き込まれる。 買い物から帰る女性、彼女は何かワケありのようだ。家に帰り冷静でいられなくなる様子。迫る死の時間、託される思い・・・グロリアは友のためか、それとも自分の母性本能で動いたのか。 「母性?冗談じゃないわ」 グロリアという女もどうやらワケありらしい。 “預かり物”はワガママで状況を飲み込めていない。 「そうよ、友達の義理でやっているだけなのよ。こんな義理も知らない・・・」 “預かり物”は時折寂しそうな顔をする。 グロリアも正念場だ、腹を括って“殺りやがった”。 それがグロリアという女性の強さ。 グロリアは“預かり物”を守ろうと街を駆け抜ける。 「お姉ちゃんじゃ歳だわね。じゃあママは?ダメ?じゃあ“おばあちゃん”になってあげる」 ババア結婚してく(ry 僅かな時間だが、確かに二人は家族になった・・・。 グロリアの命懸けの行為が「僕が付いているよ」なんて言うようような子に成長させたのかも知れない。 最初生意気だった子供が、ちょっぴり成長するような様子は良いものだ。 訪れる別れの時・・・二人は約束の“墓場”で再会する。 クライマックスのスローモーション演出!これが正しい使い方です。 久しぶりに感動した映画だった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-14 03:21:03)(良:1票) |
24. グリード(1924)
《ネタバレ》 シュトロハイムが「愚なる妻」に続いて完成させた映画。 「愚なる妻」は実在の巨大カジノを再現してしまうなど美術・技術・予算をふんだんに使った贅沢な美術で魅了してくれたが、本作はデス・バレーで文字通り死者まで出した酷暑でのロケ。 冒頭は炭鉱夫の主人公マクティーグが仕事を辞める経緯を描く。「金は要らない。歯医者の弟子になればそれで食っていけるだろう」。 一見欲の無い男だが、何も知らない野暮な主人公は、一度欲望に心を蝕まれたらどうなるかも知らなかった。 トリーナこれといった美人じゃない。が、何処か肉欲を掻き立てるようなオーラがこの女にはある。 トリーナの心がマクティーグを狂わせていく。 マーカスもまたトリーナをそれほど愛していなかった。いや、友人とは言え簡単に自分の女を他人に譲っちまうような軽薄な男だ。 トリーナも金さえあれば良いという女。肉欲だけが目的の男、金だけが目的の女。 じっくり二人の男女の邂逅を描き、結婚式の場面まで実に幸せなムードで進行してさえいるのに。 金貨の輝きは女心も男心も狂わせる。金の弾ける音が聞こえてきそうだぜ。二人の間にはやがて亀裂がはしる・・・。 野暮なマクティーグの純粋さは、そのまま憎しみに変貌していく。 一方、今まで無責任に金も女も放り出したマーカス。 「女もやっちまって、せっかく当てた大金もあんな奴らにくれちまって。何で俺はこんな事してんだ?」てな具合に後悔は嫉妬、憎悪へと変わる。 この心理描写が実に怖い。 グリード(強欲)にとり憑かれた人間が如何に身を滅ぼしていくか。ラストシーンの荒野の情景は絶望的なまでに美しい。 気がついたら、もう自分には何も残っていない・・・あるのは土と汗と血にまみれた己のみ。 「どうしてこうなっちまったんだろう」。 人間の歴史は後悔の繰り返しでもある。いくら教訓を得たって、実践してくれる奴がいなけりゃ意味がない。 人間の歴史はその繰り返しだ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-06-23 13:25:41) |
25. 群衆(1928)
ニューヨークの人の群れと摩天楼をぐるりと移してくダイナミックなカメラワーク。 そこから一つのビルの窓にクローズアップし、ぎっしり並んだ会社の机の群れ。 そこで黙々と作業を続ける男たち。 「昼休み」の知らせと共に一斉に飛び出す人の群れ! 凄いシーンだ。 ストーリーは極ありふれた題材。 ひとりの男が家族を持ち、その家族と仕事の間で揺れながら暖かいドラマを展開していく。 実に地味な題材、それをダイナミックに描くヴィダーの手腕。 最後まで暖かい、無音の世界から音が聞こえてくる良いラストだった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-06-22 13:25:21) |
26. 熊座の淡き星影
ギリシャ神話を下敷きにしたヴィスコンティ流ミステリーの傑作。 古代ギリシャを思わせる美しさ、そして近親相姦を匂わせる。母親との関係をあえてはぐらかして事も怖い。クラウディア・カルディナーレは相変わらず美しい。白黒なのに、色彩があるかのような華やかさと艶を感じさせる。 カルディナーレ好きは見て損なし。 [DVD(字幕)] 9点(2014-06-13 20:50:46) |