1. グリーンランド -地球最後の2日間-
《ネタバレ》 いわゆる「終末もの」はジャンルとして好きなのだが、これまで数多くの作品が作られてきたためか、テーマもアイデアも出尽くされた感がある。 本作も特に目新しいストーリーではないし、系統としては「ディープインパクト」や「2012」に近く、作品としての完成度もそれらの方が高いかもしれない。 強いて言えば、いつも強い男を演じるジェラルド・バトラーだが、本作では家庭に問題を抱えるごく普通の父親(建築士)を演じているところが見どころといえるだろう。 国の機関から、シェルターへの受け入れ対象者が人選される際、携帯やテレビに自動音声で突然通知が入ってくるところなどは、デジタル社会となった現代らしい設定だと思った。 本作では、この「選ばれし人々」と「そうでない人々」との葛藤を中心に、家族を守るために最後まで諦めない主人公家族をめぐり、一見善人に見えた人が豹変したり、その逆のケースに出会ったりと、非常時にはその人間性が(善くも悪くも)顕わになるところがテーマとして描かれている。 地球滅亡の危機に発生するであろうこうした差別や混乱は、現在のコロナ禍など比較にならないだろう。 本作に登場する人々は、すべて普通の人である。だからこそ「あなたならその時どうしますか?」と問いかけられているような気がした。 本筋以外では「ライト・スタッフ」などで馴染みのスコット・グレンが久しぶりにスクリーンに登場するところも見どころの一つ。 既に垢のついたジャンルであり、過去作の焼き直しかもしれないが、「終末もの」が好きな人は見て損はないといえる作品だった。 [映画館(字幕)] 6点(2021-06-23 14:44:41) |
2. 空母いぶき
《ネタバレ》 原作未読。 一言でいえば、現在の日本で他国による領土侵犯が行われ、これに即応する自衛隊が他国軍から攻撃を受けた場合、どんな事態が発生するか…… とのシュミレーションをとおし、現代の日本が抱える国防のあり方を観客に正面から問いかける硬派な作品となっている。 その分、ありがちな男女の恋愛描写が入るわけでもなく、主人公は格好よく敵をやっつけるヒーローでもない。 本作では相手国は「架空のならず者国家」となっているが、これは尖閣諸島における中国の台頭を明確に意識しており、リアルなシチュエーションを想定して描かれている。(本作を観ると海自が長年「軽空母」の導入を意図しているのもよくわかる) 特に現在の我が国での法制度のもとで、自衛隊が置かれている制約(相手の攻撃を受けてからでなければ反撃できない等)が、防衛の最前線でどれほど自衛隊員の命を危険に晒しているか、また相手国がいかにその制約を利用しうるのか、等も視覚化されている。 とりわけ自衛隊として初めてとなる「戦死者」と「防衛出動」を具体的に描くことにより、平和ボケしている国民の安全保障意識に一石を投じた意義は少なくない。 一方で、実際の作戦指揮においては、第五護衛艦隊だけではなく、海幕や統幕さらに米軍も当然絡んでいるはずだが、そこはあえて省略されていたり、ネット記者による動画が国際社会を動かし、最後は国連軍による仲裁による解決という、いささか現実離れした(理想ではあるが)展開が描かれてたりするが、そこは映画ということで了としたい。 時あたかもクリスマスの設定で、コンビニでの一コマを合間に挿入することで、自衛隊が「何を守ろうとしているのか」を暗に語っていたのではないだろうか。 そして、護衛艦や潜水艦、艦上戦闘機による戦闘描写もこれまでの邦画の域を超えていることも付記しておきたい。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-02-16 15:18:09) |
3. クリード 炎の宿敵
《ネタバレ》 30年以上も前に劇場で観た「ロッキーⅣ」だが、サントラの秀逸さもあり、シリーズでは「ロッキー」の次にお気に入りの作品。 本作はその続編ともいえるストーリーだけに、胸を躍らせながら鑑賞。 ストーリーはもう完全に予定調和なのだが、あのドラゴやその元奥さん?が出てくるだけで、前作のファンとしては嬉しい。 あの時ロッキーに負けてからのドラゴは大変な人生だったのね。 できればドラゴ息子は父をも上回る、現代の超ハイテクなトレーニング方法で鍛えて欲しかったかも。 とはいえリターンマッチでのクライマックスで「ロッキー」の音楽が流れると、やっぱり涙が出てしまう。 映画としてはワンパターンだし、ラップ音楽も肌には合わないが、スクリーンの向こうにロッキー・バルボアがいる限り、また観てしまうんだろうな。 [インターネット(字幕)] 6点(2019-06-07 14:18:57) |
4. クリード チャンプを継ぐ男
《ネタバレ》 本作の魅力のひとつは、もう見られないと思っていたロッキーの「その後」が見られることだ。地元でレストランを営み、街の人からも「チャンプ」と愛され、エイドリアンやポーリーの墓前で独りごちる姿は、想定の範囲内とはいえ映像で見られるとうれしい。そして、もう一度ロッキーが戦うストーリーを作りたいという制作陣の欲求と、老ロッキーが、あのミッキーのように若手を育てる姿を見たい、という観客の欲望が形になった作品といえるだろう。したがって、主役の位置づけである「クリード」すら食ってしまうロッキーの存在感は、いたしかたがないだろう。また、そのために「アポロに実は息子がいた」という設定を無理矢理つくっているので、あとのストーリーはどうしてもこじつけになってしまっているのは否定できない。とはいえ終盤にようやくあのビル・コンティの名スコアが流れてくれば、もう全て許せてしまう。ちなみに本作のもう一つの魅力であるファイトシーンはプロが参加していることもあり、撮影技術も相まってハイレベルに仕上がっている。周囲をぐるぐる回るカメラワークは今までにない臨場感があったし、控室からリングに上がるまでの長回しなども、リングに向かう緊張感がよく伝わってきた。若き監督が意欲的に挑んだロッキー続編として評価したい。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-05-07 11:36:34)(良:1票) |
5. グラン・トリノ
《ネタバレ》 本サイトでの高評価が気になり鑑賞。大まかな展開はあらかじめ知っていたが、最後まで引き込まれながら鑑賞できた。白人の頑固じじいとその子供たち家族、教会の若い神父と、隣に越してきたモン族一家、そしてモン族のヤンキー達という、狭い範囲での日常がドラマになっている。頑固じじいの家と隣家の俯瞰ショットを多様し、非常に落ち着いた画作りが印象的。その分、その穏やかな日常を破壊しようとするヤンキー達が観る者にもより「うっとうしく」感じるように描かれている。自分の死期を悟った頑固じじいの心情の変化を愛車グラン・トリノと二重写しにして丁寧に描いた点は評価できる。ただ、頑固じじいの「最後」については、そうすることが本当に良かったのか、という疑問が残る。この一件で頑固じじいは勇気をもって変わることができたが、隣家のモン族の若者にも、車や束の間の平穏を手に入れることだけでなく、最後にもっとその人間的成長が見られれば、かなりの傑作になったと惜しまれる。蛇足だが、この作品の背景には、アメリカの銃社会が庶民にまで浸透していることが良くわかる。日本ではありえない展開だろう。 [DVD(字幕)] 7点(2009-09-30 11:42:57)(良:1票) |