1. コラテラル
《ネタバレ》 夢をもっている,ということをよりどころに今日を怠惰に生きる普通の人に対するアンチテーゼとしての殺し屋っていうアイデアを,ヴィンセントとマックスという対照的なキャラを配置することで効果的に見せている佳作.誰がヴィンセントの理屈に,本心から「それは違うぜ」と即座に反論できるのだろうか?みなマックスに肩入れしつつ,でもどこかでじれったい思い,近親憎悪に近い感情を持ち,徐々にヴィンセントに感情移入していくのではないかな.「人として何かが欠けている」が為に,普通の人に比して迫力をもち,何かを成し遂げているように見えるヴィンセント,彼はきっと大事な何かを捨てたからこそ殺し屋として有能になったのであろう.それとは対照的に,都会の片隅でリプレイス可能な仕事を生きるためにこなすマックス.このような2人を飲み込み,一人一人の事情や感情など関係なく時間が過ぎていく大都会の薄ら寒い現実.もう一人の主役は「ロスの夜景」と「野良犬」(コヨーテか?)でしょう. 「仕事」をする時には淡々と殺人をこなすヴィンセントが,マックスを追いかけ始めたとたんに殺気をみなぎらせるあたりは本当に怖い. ここまで緊張感のあるサスペンスは最近珍しい.演出も最高に渋い,ちょいと辛口の本格サスペンス.最近トム・クルーズの評判はとみに悪いが,もともと私は彼が大好きなのだ.マグノリアでの怪演も素晴らしかったし,MI-IIでも悪役顔が分かり易かったし.評判はあまり芳しくないようだけど,一人で過ごす夜に,ちょいと部屋を暗くしてみるのをお勧めする. [DVD(字幕)] 8点(2006-05-17 23:15:58)(良:3票) |