1. 攻撃
《ネタバレ》 製作されてから60年近く経っているのですが、このジャック・パランスの死にざまを超える映像は未だにスクリーンに登場していないんじゃないでしょうか、まさに顔芸の極致です。大映のスタッフは、このコスタ中尉の死顔を参考にしてあの大魔神の表情を造形したのかもしれません(笑)。 これ観るたびに私は感じるんですけど、どうも最後のウッドラフ中尉の行動が物語から浮いている様な気がするんです。リー・マーヴィンが上手く立ち回って丸く収まるという終わり方の方が皮肉が効いていて良いと思うんですけどね。それじゃああまりに反軍的だということで、天の声がかかったのかもしれません。この映画が撮られたのは朝鮮戦争が終わったばっかりでベトナム戦争なんてまだ影も形もなかった頃ですから、これだけ軍隊内の恥部をさらしただけでも意義は十分にあったことは確かです。 そして私が好きなのはエディ・アルバートの卑劣漢ぶり、アルドリッチの映画に出てくる彼はいつもこんなキャラですけどね。アルドリッチ映画の華は卑劣漢キャラです(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-08-04 00:54:13) |
2. ゴジラの逆襲
《ネタバレ》 『ゴジラ』の続編は早くも怪獣対決路線に突入。『ゴジラ』とはあまりに雰囲気が違うと戸惑う向きもあるでしょう、それもそのはずで本田猪四郎と伊福部昭が関わっていないんですね。大作『ゴジラ』の直後でさすがにお二人ともお疲れだったんでしょうか。 『ゴジラ』での志村喬のラストのセリフがあるので、死んだはずのゴジラを復活させるのはさほど悩まなかったでしょうね、『アウトレイジ』の続編撮るのとはわけが違います(笑)。ゴジラスーツはわずか1年で驚くほど改良されていて、東宝特撮スタッフの技術力は大したものです。前作では山根博士はジュラ紀をなぜか200万年前と間違って説明していましたが、本作では1億2000万年前と正しくなっています(えらい違いです)。アンギラスも造形としてはなかなかセンスが良いんですが、ゴジラともどもアップシーンになるとギニョールになっちゃうのは残念でした。 前作ではゴジラが戦災のメタファーになっていましたが、本作ではどちらかと言うと天災の様な捉え方に変化した脚本です。最初は高知県南部に上陸すると予測されていたゴジラが大阪に現れるところなんか、まるで台風の進路予想みたいですな。特徴的なのは『ゴジラ』で強烈な印象を与えた都市住民の被害描写がほぼ皆無ということで、これはこの後のシリーズに受け継がれてゆきます。小泉博は元海軍航空隊の戦闘機乗りで戦後は民間航空のパイロットという設定ですが、いくらなんでも空自の元戦友たちに頼んでジェット戦闘機でゴジラ攻撃に参加するってのはやり過ぎです。プロペラ機しか操縦したことないのに、ろくに転換訓練も受けないでジェット戦闘機が操縦出来るようになるわけがない。本田猪四郎が監督なら決してこんな雑な撮り方はしなかったでしょう。 ラストのゴジラ攻撃は、飛行侵入経路や雪山の頂上近くを爆撃するところなど、『633爆撃隊』のフィヨルド特攻爆撃のシーンとカット割までそっくりです。これ絶対に『633爆撃隊』が真似していると思いますけど、どう見てもこの円谷特撮の方がレベルが高いというのは笑っちゃいます。こうしてゴジラは『キングコング対ゴジラ』まで6年間の眠りにつくのでした。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2014-03-06 19:13:49)(笑:1票) |
3. ゴジラ(1954)
《ネタバレ》 日本特撮怪獣映画の原点にして頂点。おそらく本作を超える怪獣映画はどんなに頑張っても製作出来ないだろう。自分が生まれて初めて観た怪獣映画がNHKで放映された『ゴジラ』だったのは感慨深いものがあります(たしか日曜日の夕方だったことまで40年以上たっても記憶に残っています)。 円谷英二の特撮は単なる技術の成果ではなく、ゴジラの「見せ方」へのこだわりがリアルな恐怖を生んでいる。当時のハリウッド映画では主流ではなかったゴジラのスーツアクションも、技術的に未熟だったためにあまりに重くなり過ぎたことが却って“巨大な生物”としての生態を感じさせることに成功しています。 そして海外の人には決して理解されそうもないのが、日本人にとってゴジラは“戦争の災禍”と“核の恐怖”の表象として恐怖心理を刺激することでしょう。シリーズを重ねるごとにゴジラの恐怖が薄れてゆくのは、戦後の復興と経済成長が重ね合わされて興味深いところです。しかし21世紀の今日、日本人は再び“原発が吐き出す放射能の恐怖”に直面させられることになったわけで、『ゴジラ』が持つテーマ性はこれからも色あせることはないでしょう。 [地上波(邦画)] 10点(2011-04-07 00:16:48)(良:1票) |
4. 恋人たち(1958)
《ネタバレ》 まるでモーパッサンの短編小説のヒロインの様な奔放な衝動に駆られる女が主人公ですが、演じるのがジャンヌ・モローですからこれはありです。ジャンヌ・モローはルイ・マルが撮るともっとも美しくなると再確認いたしました。ジャン・クロード・ブリアリと肌を交わしてからの彼女の表情・仕草の妖艶なことと言ったら、ちょっと頭がくらくらするほどでした。彼女が生きる田舎のブルジョア生活も、ブルジョア階級出身のマルだからとってもリアルに描いています。同時期のヌーヴェル・バーグ作品とは明らかに違う質感の作品です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-03-26 23:32:44) |
5. 恋の手ほどき(1958)
MGMミュージカルの掉尾を飾り、伝説のオスカー・パーフェクト受賞を成し遂げた作品です。MGMミュージカルをそんなに沢山観ているわけではないですが、良く言われるようにダンスシーンがないことが本作の欠点です。 レスリー・キャロンの魅力だけで高評価だったのでしょうが、歴史に残るミュージカルということにはなりませんでした。キャロンの可憐さも本作が頂点だったみたいで、60年代にはびっくりさせられるほどおばさんになっちゃったのが悲しいです。 [DVD(字幕)] 5点(2010-07-25 19:28:36) |
6. 心のともしび
《ネタバレ》 そもそも本作はジェーン・ワイマンがやりたがった企画だそうで、1934年製作の『愛と光』という映画のリメイクになります。この原作をサークが読んだときの感想は「想像を絶する無茶苦茶なお話で、あまりに訳が判らず映画になった姿を想像することができなかった」、奥さんには「こんなの撮ったらあなたお終いよ」とまで言われたそうです。原作者は教会の説教師で、自分の説教を小説にした物語は一言で言えば「富める者は人知れず貧者に施しを与えて見返りを期待してはいけない」ということが言いたいらしい陳腐なストーリーでした。そしてプロデューサーからは「お願いだから、観客を泣かせてくれ!」とやいのやいの言われて、サークは苦労したそうです。しかしそこはダグラス・サーク、本作はなんとか観られる映画になっています。ジェーン・ワイマンはこの映画でオスカー主演女優賞候補になったくらいで、思わず笑ってしまうほど不幸に立て続けに襲われる女性を熱演しています。またロック・ハドソンが大根演技なのですが、たとえればシナモンがたっぷりかかったくどいスイーツの様なキャラで、改めてその甘いマスクに感嘆しました(当時はまだ完全なホモでは無かったそうです)。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-30 22:47:24)(良:1票) |