1. (500)日のサマー
若い男女の出会いとその後の交際経過をリアルに描き、恋した男の心情を巧みに織り込んだ青春映画。時系列をバラバラにしてランダムの進行だが、大きな起伏がないストーリーのため混乱なく日記を読むような感覚で観られた。 平凡な若者と少々尖った感じの女性、等身大の青春のやりとりが軽快な演出で好感が持てる。低俗なセリフもあるが主演2人の親しみやすさに救われ嫌味が残らない。 多くの映画や音楽等をオマージュしたシーンが散りばめられており、ちょっとしたお楽しみになっている。主演の男優が、わが「テキサス」の監督M・ゴードンの孫だったとは思わぬサプライズだった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-10-20 16:54:43) |
2. 國民の創生
革新的な映画技法の数々と対照的な白人優越主義のプロパガンダ、これらを総合してどう評価するか判断が悩ましい。しかしながら、今では当たり前の映像表現を確立したという点で、その実績に敬意を表してこの点数とする。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-21 13:16:15) |
3. 小早川家の秋
《ネタバレ》 造り酒屋当主の人生と重ねて“小早川家の晩秋”を描いた人間模様。“家”に焦点を当てているせいか主要キャストの人物像が散漫で、強いて言えば家父長的な万兵衛の生きざまが中心と言えるだろう。 店を繁盛させた老舗の主人が陰では愛人にせっせと通い続ける。「英雄色を好む」的で、典型的な人物像が古い。もっと娘たちに焦点を当ててもよかった。また、東宝作品にもかかわらず森繁と宝田にあまり存在感がないのは残念。 死の象徴たるカラスがその後の小早川家を暗示しており、作品全体に人生の儚さ・死生観が感じられた。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2024-03-17 20:40:12) |
4. 御法度
幕末の京都を舞台に、むくつけき男どもの世界に入り込んだひとりの若者をめぐる物語。その妖しい魅力に波紋が広がる。新選組における男色を題材にした着眼点がよい。 耽美的な映像は素晴らしいが、出演者の演技が画面に融合していない。各々バラバラに演じて調和を欠く印象。俳優陣は力演ながら浮いている場面も。芸人はテレビで見るまんま。何よりも作品の核となる松田龍平の演技に難がある。周囲を惑わす中性的な佇まいを見せるためにはセリフを極力減らし、目力を活かして神秘性を強調した方が効果的な演出と感じる。好例として「ベニスに死す」のB・アンドレセンの存在感が思い出される。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2022-08-21 16:00:44) |
5. ゴースト/ニューヨークの幻
《ネタバレ》 アイディア勝負の映画だ。死後の世界観は自分としても共感でき、感情移入できる。P・スウェイジの少々頼りなさそうな表情とD・ムーアの涙の組み合わせがいいね。 「同じく」の口癖やコインの使い方が見事な伏線。ゴーストは物に触れることが困難で、念力が必要というのは人との立場逆転で面白い。そんな状況に歯がゆさを感じながらの鑑賞も計算された脚本だ。 口座解約はカールのあわてぶりが痛快。彼の焦りの表情は、出勤シーンの一見好漢風との落差が活かされている。ポルター・ガイストのシーンも効果的な演出。ただし、W・ゴールドバーグはちょっと芝居し過ぎの印象(銀行でのライルとのやり取り等)。 “ブルー・アイド・ソウル“ライチャス・ブラザースの名曲「アンチェインド・メロディ」の絶妙な流れもロマンチック指数上昇で、映像と音楽の相乗効果は「スタンド・バイ・ミー」と同等の感動が得られる。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-28 11:22:36) |
6. ゴッドファーザー PART Ⅱ
マフィアの内幕を描きながら家族愛をテーマとした重厚な大河ドラマ。イタリア系移民街の実情を見事に再現しているが、観客の共感・感情移入を意識してかマフィアの暗黒面をかなりマイルド化した感は否めない。 ヴィトーとマイケルの対比が鮮やかで、一族の発展・組織の拡大と裏腹な家族の離反は皮肉な展開。アメリカ人好みのルーツ探しにも通じ、退任したばかりの某前大統領が好んだ映画というのも頷ける。 ヴィトーが犯罪に手を染めざるを得なくなる経緯は丁寧な描写だが、その後の成り上がりヒストリーが弱過ぎる。「これは家族の映画だからマフィアの怖さはあまり描かなくてよい」わけではないと思う。 R・デ・ニーロのしわがれ声は前作のM・ブランドの声に似せたつもりだろうが、よく聴くと声が一定していない。そんな細工をせず地声でもよかったのではないか。A・パチーノの終始無愛想な表情はドンとしての孤独と苦悩を滲ませるが、一面的過ぎて味わい不足。時に発する怒声も単調さを覆すに至らない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-01-22 14:32:54)(良:1票) |
7. ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘
返す返すも残念至極に尽きる、禁句を承知のタラレバ勢揃いでした。 1 島の娘役は何と言っても髙橋紀子に演じてもらいたかったな。久保明も出演し彼女との共演が実現していたら、ウルトラQ「南海の怒り」の延長戦を楽しめたのにね。病気で降板さえしなければ・・・。あっ、水野さんがダメっていうわけじゃないですヨ。特撮と水野さんは相性が良いと思うし、リリーフをきちんとこなしてくれました。関係ないけど某番組での馬場正平さんとの思い出話は興味津々でした。 2 ペア・バンビの小美人はミスキャストでしょう。ザ・ピーナッツの印象が強すぎて損な役回りだったかな。せめてもっと華のある人が演じてればよかったんだけど。 3 モスラは結局救出役だけってのがもったいない。もっと活躍してくれなきゃだめでしょ。顔見世程度じゃなく、もう少しゴジラと絡んでくれれば題名に相応しかったのに。 なんだかんだ言いながら、エビラの登場シーンはよかったですよ。造形もいいし、海の中からハサミを出して「これから出ます」という雰囲気はバッチリ。やっぱり怪獣は“いきもの感”がないとだめだね。その点でエビラは好きだし、ゴジラとの攻防も純粋に楽しめました。 [映画館(邦画)] 4点(2016-09-11 15:30:12) |
8. 荒野の決闘
静かな西部劇だ。邦題は「いとしのクレメンタイン」とした方が主人公の心情を表しており、作品の内容に相応しい。主題曲はアープの心境にピッタリ。 フォード西部劇にしては珍しく先住民敵視でないと思ったら、酒場で泥酔した先住民をアープが取り押さえるシーンが。そこまではいいのだが、ダメ押しで足蹴にしたな。白鳳並みだ。 モニュメント・バレーはアメリカ開拓史を語るには絶好の舞台で、いい画ではあるが、ラストシーンを含め絵ハガキのような画面作りは「征服者のアングル」と思えてならない。広大な土地を白人が先住民から奪ったんだなと皮肉な感想を持ってしまう。ストーリ-としては、バージルが殺されてから復讐に向かう展開があっさりして物足りない。 アープ役H・フォンダは細かな仕草(ロッキング・チェアでの寛ぎ、スイカズラの香、ダンス等)がなかなか良く、純情で片思いを秘めた静かな男を好演。対するD・ホリデイ役V・マチュアは偉丈夫で、結核に苦しむ医師の姿は似合わない。また、ひげ面とはいえ目が優しい善人顔W・ブレナンの悪役も合わない。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-05-15 23:00:07) |
9. 荒野の1ドル銀貨
《ネタバレ》 何といってもG・ジェンマの魅力に尽きる映画だが、アイディアもなかなかいい。銃弾が胸に当たって、たまたまポケットに入れていた硬貨に当たり命拾いした・・・。現実にも似たような話は結構あるようで、数年前にも「発砲されたが、胸の手帳に銃弾が当たり、生命が助かった」というニュースがあった。即座にこの映画を思い出したが、インターネットでは話題にならなかったような気がする。主人公ゲーリー・オハラ、いい名前ですねえ。 [地上波(吹替)] 8点(2012-12-30 22:54:46) |