1. 至福のとき
そのまえに『「あの子を探して」ができるまで』を見て、いよいよチャン・イーモウの評価が(私の中でも)高まってきていたのですが、それだけにその数日後に見た本作にはいささか拍子抜けしてしまいました。『あの子を探して』のクライマックス<ホエクーの泣き>の真実(!)はおかしくておかしくて笑いがとまりませんでしたが、ここでのイーモウは<笑い>のセンスにもうひとつ精彩を欠いていました。『メメント』について松ちゃんが語っていたように、障害者ネタというのは実はコメディーに打ってつけで、本作もあれだけ“コケ”にできたのだから、それを転じてもっと<笑い>にだってなったはずです。バスが撤去させられるシーンでのロウアングルや広大な工場の空間を背にしたラジカセのショットとかの幼稚な画面構成(構図)、対話シーンでの安易な切り返し(カット割り)なども気になりました。しかしながら、主人公の女の子はさすが5万人の中から選ばれただけあってなかなかのカワイコちゃんで、私の行きつけの某中古レコード店で半年ほど前まで働いていたKさんを髣髴とさせ、その容貌を妬んだ中年女主人にクビにされたところなんてのも本作の成り行きと妙に重なったりもして興味深かったのでした。 6点(2003-04-09 11:47:08) |