1. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 幸福を培養するものは「フェイス・トゥ・フェイス」の関係であるということを、家族や地域などの濃密な人間関係を舞台にして描いてあります。ニヒリスティックな個人主義でもない、いけいけドンドンのナショナリズムでもない、個人と国家の中間にある具体的対人関係を等閑にしては、幸福の実感など夢のまた夢――。個人主義の極たる守銭奴のポッターはいうまでもなく、国民的英雄たる撃墜王の弟でさえ、決して幸福を実感させる描写とはなっていません(単なる主人公の引き立て役)。100%完全に孤独の人間など、この世にはいない(生まれてくること自体、独力ではないのですから)。いかなる人も、生かし、生かされ、自立し、依存し。自らを取り巻く重層的な人間関係の束(それは時としてウザイものだけど)から生じる瑣末な人生の断片にしか、天使は降臨しない(幸福は宿らない)のでしょう。そして、いかにツラい現実があろうと、そこから目をそむけることなく、冷静に受け止め、肯定する姿勢こそが、幸福の第一歩であるのでしょう。 9点(2004-02-27 23:54:56) |