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ポッシュさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 43
性別 女性
年齢 59歳

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1.  スティーブ・ジョブズ(2015) 《ネタバレ》 
とにもかくにも、あの怒涛の会話劇!ア-ロン・ソーキン節炸裂なので、好きな人にはたまらんでしょう。 元恋人との間に生まれた娘を認知せず、十分な支援をしてあげなかったり、盟友ウォズニアックが別機の開発チームに対して「謝辞を言ってくれ」と頼んでも頑として拒んだり。部下に無理難題を押し付けといて、自分は何も出来ないくせに涼しい顔をしてたり。ホント、本作のジョブズは礼儀も情けもないクソ野郎なんだけど、こういうサイコパス的なところが、ぶっ飛んだ天才っぽい。  細かい演出も良かったと思う。1988年NeXT Cubeの発表会のとき、ロビーに飾られた花をジョブズが入れ替えるシーンがある。ケイト・ウィンスレットと話しながら、花瓶に挿された淡い色の花を抜いて、その前に宴会場で拝借していた真っ白なカラーを入れる。この花の入れ替えについては特にセリフもなくサラっと流れてしまうのだけど、舞台に上がる直前に一瞬、このテーブルが映る。そこにはブラックの完全なる立方体(実は目の錯覚を利用して1ミリだけ寸法をズラし「完全な立方体」に“見せている”ジョブズの仕掛けがある)、新製品ネクストキューブが置かれ、隣にスッキリとしたカラーが黒を引き立たせているのだ。完璧主義にも程があるというか、ほとんどビョーキ(笑)。こういうジョブズらしい「こだわり」の見せ方、魅せ方が実に上手いと思った。  株主にも顧客にも媚びないジョブズの姿を通して、この作品自体の「こだわり」というか「頑なさ」も感じられる。観客側にかなり「負荷をかけてくる」映画ですね。M気質の自分はゾクゾクしました(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2017-07-27 00:31:16)
2.  スカイライン-征服- 《ネタバレ》 
(かなりのネタバレ) もっとボロクソにけなされてるかと思いきや、わりと高評価レビューもあって腰砕け。 なにやら真面目にSF大作みたいな雰囲気出してるんで、私も途中までは「ひどいな、こりゃ」と思ってたんですが、後半のアホアホな展開でだんだん頬が弛んできた。エイリアン相手にまさかのフルボッコ!彼女の妊娠発覚で亀裂の入りかけたカップルが、エイリアン侵略という危機的状況に遭遇したことで絆を取り戻すという、ばっかじゃないの?なお話なのでした。犬も喰わない痴話ゲンカを繰り返す2人。そんな2人を喰おうとするエイリアン。説教たれる管理人、ときどき金髪美女。(なんだ、そりゃ)スケールでかいんだか小さいんだか良く分かりません。 ヘタレな主人公が家族愛に目覚めて「生まれ変わって」、最後はクローネンバーグみたいな悲哀も出しちゃって、もう好きにやってちょうだい、という感じでした(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2017-07-26 18:27:11)
3.  スケアクロウ 《ネタバレ》 
冒頭、マックス(G・ハックマン)とライオン(A・パチーノ)の出会いのシーンから、映画らしい息遣いに嬉しくなる。画面奥に長くのびる道路を大男のマックスがスタスタ歩いて行くと、後ろを背の低いライオンがちょこちょこ付いて行く。マンガみたいなでこぼこコンビの2人をカメラがロングショットで追う。風がビュービュー吹きすさぶ中、タンブルウィードが手前から奥にコロコロと転がる。奥行きのある画(え)と忍耐強いリズム。こういう画作りをする映画に最近はとんとお目にかからなくなった。ライターがつかないマックスにライオンが残り1本のマッチを惜しげもなく差し出し、2人の間に奇妙な友情の火が灯る。  2人は一緒に旅をすることになるが、粗暴なマックスは行く先々でトラブルを起こす。「寒いから」と言ってボロを何枚も重ね着しているのは、体ではなく心が冷え切っているのだ。他人を信じられない頑なな心を粗末な布切れで包み、必死で守っている。頑丈に覆われてはいない自我は脆く、些細なことで理性を失い攻撃の衝動を抑えられない。一方のライオンは、繊細な心を守るため「道化」を使う。「かかし(=スケアクロウ)は道化によって相手の信頼を得て危機を回避する」と言うのは彼らしい処世訓だ。そんな卑屈でひ弱なライオンの自我は、旅の途中で見舞われた不運、収容所での暴力によってバランスを崩し始める。  収容所では意地を張って友を守らなかった、その悔恨の思いがマックスを変える。喧嘩騒ぎを起こしかけた酒場で、寸でのところで拳を収めストリップでおどけて窮地を脱したマックス。他人に踏み込まれないよう、後生大事に守ってきた心を開かんと1枚1枚洋服を脱いでいく、不格好な大男の滑稽なダンスに涙が出た。彼はここで古い自分を脱ぎ捨てたのだ。ジーン・ハックマンの無骨な笑顔が眩しい。  マックスが人との繋がりを信じ始めていた時、ライオンは元妻との電話で人との繋がりを断たれてしまう。彼女に拒絶されウソをつかれるのだ。これは身重の身で捨てられた妻の復讐だったのか。不安定になっていた彼にはそれが決定打となってしまった。放心したように噴水の中に入っていくライオン。心理学で水は「無意識」を現わすが、意識の閾を越えて精神の闇に陥ってしまった比喩とも取れる。彼は心を閉ざし廃人のようになってしまう。診断した医師が「州立病院に移す」と言うのだが、当時のアメリカはベトナム帰還兵のPTSDが深刻で、精神病患者が増大し州立病院は軒並み精神病院に転換したというから、そのセリフの意味するところが推し量れる。そんなライオンを助けるためにマックスは開業資金として貯めていた金を、今度は自分の方が惜しげもなく友に捧げようとする。  ラストシーンは忘れられない。空港カウンターでのこの男のふるまいったら。こんなに無作法でカッコ悪い主人公がいるだろうか。「人は変われる」・・・そんなメッセージをこの映画から感じていたのに、最後にこんな姿を見せられたら、本当に彼は帰ってくるのか?と不安がよぎってしまう。人は変われる?そんな甘いものか?分からない。分からないけど信じたい。そんな、観客の祈るような思いを宙づりにして物語は幕を下ろす。ニューシネマは安心なんかさせてくれない(笑)。でも、このツンデレがたまらなく好きだ。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2017-07-24 11:05:23)
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