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プロフィール
コメント数 3959
性別 男性
年齢 53歳

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1.  セトウツミ
どうも世の中、ストーリー信仰みたいなのがあって、ストーリーがつまらないと作品もつまらない、一般性もない、みたいに捉える向きがあるんですけれど、実はそんな事は無くって。もしそうなら、なぜ、あのストーリーがほぼ無く、オジサンがメシを食うだけの「孤独のグルメ」なるテレビ番組が、シーズンを重ね、何度も再放送されるのか? ストーリーが面白けりゃそれに越したことはないけれど、それ「だけ」だったら、一回見てスジが頭に入ればそれで終わりな訳で、でも実際はそうではなく、だから実際は、作品の魅力は他のところにある。その魅力を支えるスパイスとして、「ストーリー」というものがあったり、「美味しそうな料理」があったり、例えばこの『セトウツミ』では主人公ふたりのアホらしい会話があったり、するんですね。 そういう直截的な魅力以外に、午後の川べりの気だるくも何だか可笑しい雰囲気やら、二人の関係に微妙に入り込んでくる周囲の人々(謎のオジサン、イヤな先輩、バルーンアートの人、家族、といった人たちから、背景の通行人まで。あ、中条あやみを忘れてた。笑)やら、といった要素が加わって。 「おや」と思わせる瞬間があったり、そういった瞬間が積み重ねられることによる前後の連関があったり、作品を通じての大きな流れ、あるいは世界観があったりして、広義の「物語」が作られていく、結局はその広義の「物語」こそが作品の魅力なんだと思います。でなかったら、私がどうしてこの一見会話ばかりの映画を楽しめたのか、どうして見終わった後に充実感を覚えたのか、よくわからなくなっちゃう。 ここで語られている「物語」は、高校生としての「今」。誰だって、自分の高校生時代を「青春」のただ一言で括れる訳じゃない。漠然とした不安もあっただろうけど、だからと言って「不安」の一言で括れる訳でもなし。ただそこには、今しかない「今」がある。 ところで、メイン3人のうち池松壮亮だけが、関西ネイティブではないだけにイントネーションに微妙なズレがあります。が、違和感というほどではなく、作中で小さからぬウェイトを占める会話劇を、よく支えています。・・・しかしこの映画、関西弁じゃなかったらどんな作品になっていたんだろうか? このアホらしいオフビートの会話を成立させるには関西弁がマストのように思えるだけに、逆に、関西が舞台でなければ作品がどう化けるのか、ちょっと気になりました。
[インターネット(邦画)] 7点(2024-06-23 07:38:06)
2.  セルラー
これは面白い、面白すぎの一本。ですがそれもそのはず、原案がラリー・コーエン。このヒト、こういう面白い事を思いつくんだから、悪魔の赤ちゃんなんか3本も撮ってないで、こういうのこそ、自分で監督すればいいのに。と思うのですが、多分、このヒトには監督も脚本も任せない方がいい、ってことなんでしょう。自分で撮ったらおそらく、怪作の部類に入ってしまう・・・。 平和な家庭に、いきなり悪党どもが闖入し、家にいた母親が誘拐されてしまう。監禁された部屋には壊された電話機。この母親、理科教師ということで(こういう風にいちいち設定を活かそうとするのが楽しくもまたイヤらしいところですが)、電話機を何とか復旧しようと試行錯誤、その結果、どこかの誰かさんの電話に回線を繋ぐことに成功するのですが、その繋がった先というのがよりにもよって、とんでもなく軽薄な若造のケータイ電話。 すでにこの設定で映画を作ろうという事に無理があり、とりあえず面倒くさがりながらも警察に駆け込んで一件落着、というところなのですが案の定、うまい具合に都合よく、というかうまい具合に都合悪く、警察署で揉め事が発生したり、不自然に電波が弱くなったり、「逆・ご都合主義」でグイグイ物語が進んでいきます。なにせ、ケータイの持ち主が軽薄なテキトー男、こういう人には物語にブレーキをかけることなど、不可能です。無理があっても、こういう人が率先して物語を転がしていき、スピード感を高めていきます。 そりゃ、もう少し脚本の穴を繕うことだってできなくは無いんでしょうが、重要なのは、この勢い。クリス・エヴァンス演じる軽薄兄さんの暴走に、脚本家も監督も、そして我々も、覚悟をもってついていくしかありません。欲も無ければ私怨もない、ただただ、巻き込まれた運の悪さに、こんな人を巻き込んでしまった運の悪さ。ひたすら、映画は突っ走っていきます。 そこにブレーキが掛けられるのはただ一人、警察官のウィリアム・H・メイシー。いや、こんな頼りない人に、この暴走映画を止めるなんて、無理でしょう。その彼が、この物語にどう関わるか、どう食い込むか。 あのイヤミこの上ない弁護士。このイヤミっぷりは実にお見事ですが、そのイヤミを以てしてもブレーキをかけるどころか、物語はさらにさらに加速して。 終盤まで危機また危機の連続、サービスし過ぎで、かえってここだけフツーの映画っぽくなっちゃった面もありますが、そこまで言うのは贅沢かな。いや、面白かったです。
[インターネット(字幕)] 9点(2024-05-06 15:03:06)
3.  セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ
ハリウッドの商業主義に大して怒っているらしい、のは確かにらしいんですが、おバカ路線に走ってるもんで、どこまで本気で怒ってるのやらサッパリわからない怪作。ジョン・ウォーターズなりの「照れ」みたいなものもあるんでしょう。 それにしちゃ、おバカ度が足りない気もして、意外に本気だったりして?? ふと脈絡もなく(?)思い出したのが『マイク・ザ・ウィザード』という映画で、マイク・ジトロフなる奇人が、周囲の無理解に耐えているのか無理解に気づいていないのか、孤軍奮闘、ヘンテコな特撮映画を作ってる。それはまるで報われない行為だけど、我々はそれをひっそりと見て、ひっそりと応援し、ひっそりと感動する。 一方、この『セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ』。仲間集めて徒党組んで、ついでに女優を誘拐したりして。実は、これはこれで、恵まれてるんじゃないの、と。 確かにジョン・ウォーターズ、仲間には恵まれていましたよね。さすがに私には犬のウンコ食ってくれる友人はいませんし。 今回は今回で一応、メチャクチャやってて、いいっちゃあいいんですけど、空回り感もあって。何となく、「映画を見る人たちは自分達に喝采を送るだろう」ということが織り込み済みのようなところがあって、作品としては、迫力不足。
[インターネット(字幕)] 5点(2024-01-21 19:32:27)
4.  西部無法伝 《ネタバレ》 
これは意外な拾い物、実に楽しい映画。 「奴隷制」、というか、さらにひろげれば「人種差別」というものを、気持ちよく笑い飛ばしてて、イヤミを感じさせません。もちろん今の目で見れば、踏み込みが足りないとかいう批判もありうるかも知れないけれど、後からだったら何でも言える訳で。白人・黒人のコンビによるバディ・ムービーとして、しっかり楽しめる娯楽作品になっています。 80年代になってエディ・マーフィーが登場し、白人と対等、あるいはさらに主導権を握るくらいになってくるけれど、エディ・マーフィーはあくまでエディ・マーフィー本人でしかなく、一種の特殊解でしかなかったような印象も。一方、この『西部無法伝』のコンビの片割れを演じる黒人俳優も、黒人を代表する存在とまでは言えないけれど、軽口を叩きつついわば白人と黒人との間のつなぎ役となり、しかもやっぱり両者の間には埋めきれない溝があることもラストで示して見せる。いや、埋められない溝を埋めるためには、まず溝の存在を認識しなきゃいけない、ということか。この役をサラリとイヤミなく演じたこの俳優、誰なんだろう、冒頭のクレジットには「Lou Gossett」と出ていたけど、ルイス・ゴセット・ジュニアと関係があるのかないのか・・・『愛と青春の旅だち』の時のイメージが強く、とても本人とは思えないけれど、と思いながら見てたんですが、どうも本人らしい。ちょっとビックリ。 で、主人公2人組にさらに絡んでくる女性(スーザン・クラーク)。これがまた、見るからにズルそうな顔をしていて、ホラやっぱり、という展開。人種差別反対だけでなくウーマンリブ的な要素も入れてやろう、と欲張った訳ではないのでしょうが(でもその影響は多少はあるのかもしれない)、作品にさらにコミカルな要素が加わります。 物語はスピーディに展開し、あくまで軽いノリですが、見せ方が上手いこともあって語り口が一本調子にならず、楽しい作品に仕上がっています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-01-02 07:46:04)
5.  戦後最大の賭場 《ネタバレ》 
関西が舞台ということで、鶴田浩二と高倉健が関西弁で軽口をたたき合う場念があって、これが正直、少々違和感があるというか、この二人には似合わないような気がしてしまって、もう少し若い世代に主演をやらせてもよかったかな、と思わないでもないのですが。ま、でもこの二人の共演、ありがたく拝見させていただきます。 要は、昔気質で友情と信頼に結び付けられたこの二人と、巨大利権を背景にした経済ヤクザの台頭との対比、ってな感じですかね。盃をもらうだの返すだの、いくら言ったところで、時代の流れは止められない。経済、さらには政治へ。はい、そのテの役は、金子信雄の出番ですね。 クライマックスは任侠映画らしく殴り込みの場面、にはなるのですが、その後のラストシーンはちょっとホラー。主人公が歪んだ血濡れの鏡の向こうに自分の姿を目撃したとき、何を思ったか。結局は、自分達の古い「仁義」が、この事態を招いたのではなかったか。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-09-25 17:47:28)
6.  千姫と秀頼
主演は美空ひばり。となると、途中に意味も無く歌が入ったりするんでしょ、と思ったらさにあらず。歌を封印し、しっかりと千姫を演じてます。 だったら主演は美空ひばりでなくてもいいやんか、ってなところですが、いや、これが見事にお姫様になりきってます。いかにもな女優さんが演じてない分、新鮮でもあり、妙に迫ってくるものもあります。ホントに、これぞキレちゃったお姫様、という感じ。 冒頭の大坂夏の陣の合戦シーンもダイナミックですが、映画全編を通じ、ロケ撮影の贅沢、スタジオ撮影の贅沢。双方をこれでもかと織り交ぜ、例によってエキストラも大量投入し、1時間半もない作品ながら、大作に引けを取ってません。 平幹二朗演じる出羽守の乱心シーンにおけるロングショットに圧倒され、千姫狂乱シーンにおける移動撮影に圧倒され、クライマックスの緊張感に圧倒され。このクライマックスシーンだって、こんなに大勢の人物を登場させる必要があるんでしょうか。 これぞ、贅沢。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-05-30 22:43:47)
7.  赤死病の仮面(1964)
疫病が蔓延する「外部」と享楽に溺れる「内部」とを普通に対比させて、それでもその「内部」に死そのものが忍び込んでくる不気味さとか絶望感とかを普通に描けば、それで充分だったんじゃないの、と、つい思ってしまうのですが、この作品、どうも妙な方向に走っちゃってます。アート系、とまでは言わないまでも、ちょっと勿体ぶった感じで、まどろっこしい。でもそれが、持ち味。 そもそも作りがチープなんだから、その路線に走っても、限界があるよね、と思いつつも、意外にスタジオセットらしき撮影が効果を上げてる瞬間もあったりして(効果を上げてない瞬間も沢山あるけど)、そこそこ、雰囲気だしてます。 とは言え、やっぱり、ヒロイン像が弱くって。映画の印象も弱くなります。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-05-21 22:04:16)
8.  絶叫屋敷へいらっしゃい
交通違反でとっ捕まった連中が連れてこられた判事さんの家が、いかにもアヤシい妖怪屋敷みたいなところでした。という、かなりよくワカラン映画。アブナイ映画と言ってもよいかも。テーマパークのアトラクション風のノリではあるのですが、にもかかわらず、何がやりたいのか、何がオモシロいのか、意味不明。すなわち予測不能、制御不能。 特殊メイクのダン・エイクロイドに、女装のジョン・キャンディ、デミ・ムーアとイチャイチャするチェビー・チェイス。楽屋ネタっぽい雰囲気がないでも無く、そこはちょっとヤな感じですが、それを吹き飛ばすくらいナンセンス路線に走っていて、もはや誰にも理解を求めていない気がしてくる。 ダン・エイクロイドって、一見、オモシロいオジサン、という印象ですが、ホントは相当アブナイ人なんじゃなかろうか。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-04-24 23:14:40)
9.  ゼロの焦点(1961)
これ以上短い「ゼロの焦点」は作れないんじゃないか、と思うくらいの細密充填構造。折りたためる部分は徹底して折りたたみ、コンパクトに仕上がってます。 ラストは定番中の定番(それともこの作品が元祖なのか?)、断崖絶壁の上。と言いたいところだけど、ラストというより、後半まるまる、といった感じ。これも映画をコンパクトに仕上げる工夫かもしれないけれど、それにしてもこの断崖の、見事な絶景ぶり。ロケーションの素晴らしさでもって、作品の素晴らしさが約束されたようなもんです。 原作は、松本清張の代表作の一つでありながら、社会派の要素が強く、ミステリとして読むと少々物足りない気もするんですけどね。映画はまた違った魅力を付け加えてくれました。
[インターネット(邦画)] 7点(2022-03-10 23:02:35)(良:1票)
10.  青春の殺人者 《ネタバレ》 
長谷川和彦監督の2本の作品、正直、私はよく判りません。なのに世評は高いようで。結局のところ、私は映画というもの、あるいは映画ファンという人たちと、絶望的なまでに相性が悪いのではないかと思えてきてしまう。 どちらの作品も共通して、全くどこにも行き着かない。実際そういうのを描きたいんだろうとは思うものの、それの何が面白いのかピンとこないのです。 この作品の前半の親殺し。セリフ、状況設定、その他すべてが作為じみているように思えて、どうもゲンナリしてしまう。 だけど『太陽を盗んだ男』よりは取っ付き易いのは、自己破壊欲みたいなもの(しかも空振り気味)が作品のあちこちに表れていて、そういう部分に、同感というか、一種の普遍性が感じられるからだと思います。前半はどうかと思っていても、後半にはだんだん引き込まれていきます。市原悦子もスゴいんどけど、やっぱり何と言っても原田美枝子。いや前半にあの市原悦子がいたからこその原田美枝子かも知れないけれど、そこは仕方が無い。ひたすらイモっぽいんどけど、何かがありそうな。 女優を目指すお嬢さんが、脱いだら大女優になれますよ、と騙されて脱がされてるような。という風に騙されているのは私の方なんだろうけど、それもまた良し。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-11-28 15:17:33)(良:1票)
11.  世界残酷物語
タイトルこそオドロオドロしいですが基本テイストはコミカル(ごく一部のみ猟奇的)。世界の珍しい風習がこれでもかとゾクゾク登場。しかも最初のエピソード(女性ファンが寄ってたかって服をむしり取る!)からいきなり、ヤラセ感全開。印象としては、ほぼ全編がヤラセの中、実はヤラセではないシーンもあるんだけど、さてどれでしょう、ぐらいの勢い。 いや、私とて、「ハンブルクの酔っ払い」の存在まで疑う訳ではないですけどね(映像の選定基準はどこにあったんだろうか?)。 世界の珍しい風習を網羅するなら、「インチキドキュメンタリーで一儲けを企む映画監督」ってのも入れてみたら、どうだったんだろうか。 それはともかく、ホント、次から次に謎映像が登場し、しかもそれらが、「●●繋がり」みたいな関連付けで次のエピソードを呼び起こすという趣向。まるで世界のあらゆる不思議を一筆書きで描こうとするかのような。 内容がどんなにヒドくても、この手腕は、見事です。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-11-13 08:16:43)
12.  戦後残酷物語
戦後の混乱期、進駐軍のMPに強姦され人生を狂わされてしまった女性の姿を描く。日本の立場が弱かった時代の理不尽な苦しみを描こうという気持ちはよくわかるんですけれど、何せ原作が、後に「ノストラダムスの大予言」で悪名を馳せる、あの五島勉氏。と言うんだから、もうこれは、運が悪かったとしか言いようがありません。ほぼ、ぶち壊し(笑)。 こういう題材なら、やっぱり松本清張とか。何か他に手があったのでは。と今さら言っても、ねえ。 米兵たちはひたすら好色一直線。だもんで、やたらレイプシーンが繰り返されて。まあ、それなりに主人公の人生にも起伏はあるんですけど、それでもさすがに単調。煽情的なのに、単調。込み上げるべき怒りも、これと言って込み上げて来やしない。 でもって、哀しいラスト(?)を切々と歌い上げる、謎のフォークソング風の歌声。込み上げるべき涙も、どう足掻いたって込み上げる訳もなく。 なんか、五島勉のせいとばかりは言えないような気がしてきたなあ。変なエロ作品でした。
[インターネット(邦画)] 4点(2021-11-07 22:26:13)
13.  008 皇帝ミッション
謎の一味に狙われているワガママ皇帝のみを守るべく、ポンコツ発明家が奮闘する。という、何だか分かったような分からないようなオハナシですが、見たら分かる通り、何だかよく分からないオハナシです。ハイ。 パロディの連続、デタラメの連続。あまりにデタラメな展開に、もはやついていくのは不可能かと思ったら、そこにちゃんとオチがつく。素晴らしい。です。 と、あまりのナンセンスぶりに感心させられつつ、圧倒されつつ、呆れまくってしまうのですが、そうは言っても、この主人公の夫婦ほど素敵なカップル、映画でもなかなかお目にかからないです。素敵です。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-10-19 22:17:19)
14.  成龍拳
昔のカンフー映画見てると、とても戦ってるようには見えないぎこちない動きを、ヨイショヨイショと息を合わせながら、いつまでも繰り広げてたりするのですが、本作は、しっかりとスピーディーな格闘を見せてくれます。やれば出来るんじゃないの。 ジャッキーが何やらいいトコロの御曹司らしいのですが、いきなりフィアンセを邪険に追い出してしまう。それもこれも、一族の宿敵、人面桃蜂党(だっけ?)との戦いが迫っており、死を覚悟していたから。 彼女の今後は友人に託し、かくして彼は、 一家揃って決死の戦いへと赴く。 ここからオハナシは二転三転。激しいアクションを挟みつつ、物語は意外な方向へ。 何が意外といって、ジャッキー、やたらモテ過ぎ。別れたフィアンセにはずっと想われてるし、知り合った隊長さんには妙に好感持たれてるし、さらにはまさかまさか、こんなヒトまでジャッキーに片想い。 ま、確かにこの映画のジャッキーはキリッとした顔立ちなんですけど、なんかちょっと、ヘンかも・・・。 とにもかくにも、登場人物の配置、意外な展開、物語の収束、いずれもが巧みだし、アクションもカット割ばかりには頼らない見応えあるものになってます。逆回しで高所に飛び移るように見せる演出なども、数々の身軽な動きと合わせて、なかなか効果的です。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-05-23 22:31:19)
15.  戦慄の絆 《ネタバレ》 
一人二役で双子を演じるジェレミー・アイアンズ。普通の映画なら(新しい方の八つ墓村の岸田今日子は別として)、その二役をどう演じ分けるか、ということになるのかも知れないけれど、少なくとも作品前半は、むしろ、まるで同一人物であるかのような描かれ方。見た目も同じなら言動にも差がなく、「おいおい、こんな役でまさか二人分の出演ギャラをせしめたんじゃなかろうな」などと要らぬ事を考えてしまうのですが(ホントはどうか知りませんが)、それはともかく、まるで二人は、精神面で互いにシャム双生児のごとく結合しているかのような、 それが後半になって、徐々に二人のキャラクターが分裂し始める。二人の「区別の無さ」を、前半に見せられてきているが故に、我々もここで不思議な感覚に捉えられてきます。 しかし、それでも二人は、分裂することを拒絶しようとし、やがて悲劇が訪れることに。 あのヘンな医療器具の悪夢的なイメージ、さらには映像上の違和感を全く感じさせない見事な合成による一人二役。もはや、一人二役なんだか、二役一役なんだか。 これなら、二人分のギャラもらっても、いいんじゃないか。もらったのかどうか知りませんけど。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-05-22 08:21:01)(良:1票)
16.  西部魂(1941)
アメリカ映画見てると時々、荒野に一本道が走っていて、その脇に電柱が立てられてるのが延々と続く、ってな光景を目にしますけれど、アレの原点みたいな作品ですね。開拓時代、荒野に電柱を立て、町から町へと通信線を張り巡らせる。 その事業に関わった男たちが、主要な登場人物ですが、そのうちの一人はどうやらお尋ね者らしいことが、映画の冒頭で示されます。彼は荒野で倒れている男を発見、馬をかっぱらおうとするけれど、男が瀕死の状態であることに気づき、結局は男を助けて近くの町まで運ぶ。 で、お尋ね者も正体を隠して事業に参加することになり、彼らはなんだかんだと意気投合。先住民に絡まれるのを機転を利かせて危機を乗り切ったりと、ユーモアあふれる場面もあったりするのですが、そうは言っても元悪党。かつての悪党仲間と完全に縁を切ることはできず、ついに対決することになる。 火災シーンのスペクタクルに、クライマックスの床屋における決闘シーン。この辺りは、作品の大きな見どころになってます。 正直、ランドルフ・スコットってどういう訳か妙に頼りないヒトに見えてしまうのですが、本作にはそれが、これまた妙によくマッチしてますね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-01-04 16:29:49)
17.  聖衣 《ネタバレ》 
歴史スペクタクル、とは言っても大規模な戦闘シーンを売り物にしている訳ではないのですが(チャンバラが多少)、大がかりなセットに大勢のエキストラ、やはりこれはスペクタクル。 イエス・キリストの処刑にまつわるオハナシで、例によってイエスの顔は劇中には登場しません。そして意外にアッサリと処刑されてしまう。その処刑の際にイエスが身に着けていた衣装、「聖衣」がこの作品のテーマ。 イエスは生前、人々の病気を治す奇蹟をおこなった、らしいのだけど、作中ではその奇蹟が直接描かれる訳ではなく、イエスを自らの手で処刑し後に続くマーセラスの苦しみも、聖衣に触れたため、というよりは、聖衣を通じて自分の良心の呵責に触れたため、という描かれ方になってます。キリスト教とは無縁の人間が観ても、納得感がありますね。 ラストシーンで胸を張って処刑場に赴く主人公と、その恋人。彼らの背景が、次第に現実のものから大霊界(?)へと変化していく描写が、これは今見ると少し気恥ずかしいものがあったりもするのですが、しかしなるほど、合成技術によりこういう表現もできるんだなあ。というワケで、この手法は少林サッカーあたりにも影響を与えているのではないか、と(まさか)。 基本は宗教劇なので、活劇の要素は多くはありませんが、ペテロの集会が軍隊に襲われる場面や、終盤の城への侵入シーンなどは、なかなかの見せ場になっています。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-01-04 15:43:28)(良:1票)
18.  制覇(1982)
物語の中心人物が、「谷」口組の田「所」組長、ってんだから、モデルが誰なのかは明らかで、さすが芸能界にも幅を利かせた人物だけのことはあって(なのかどうかは知らないけれど)、これでもかと有名俳優が名を連ねたオールスター映画となってます。冒頭に出演者がクレジットされないので、誰が出てくるかは見てのお楽しみ。まあ、あの人この人、出てくるわ出てくるわ。まずは主人公に、世界のミフネ。 医者役にはどこかで見たことのあるオジサンが。と思ったら鶴田浩二で、本来、このヒトの端正な顔立ちはこういう役にピッタリだと思うのだけど、ヤクザ映画にカタギの役で出てくるとヘンな違和感が。一瞬、誰かワカランかったぞ。そんでもって、日活からやってきた大スター、小林旭の顔も。なんだかこの辺り、モデルとなった組長さんとは因縁深いヒトたちでもありますが。 他にも菅原文太、若山富三郎、丹波哲郎などが続々登場、それから、意外に重要な役でハングマン名高達郎、意外に重要でない役でアオレンジャー宮内洋、等々。次は誰が出てくるかを気にしだしたら、お腹いっぱいになってしまいます。後半に入ったらもう新たには誰も出てこないだろう、と思ってたら何と、披露宴のシーンに志茂田景樹の姿が(?)。ただしこれは原作者枠であることがラストのクレジットで判明。 と、賑やかな顔触れのヤクザ映画巨編、という訳ですが、組長の家庭のシーンになると、これが途轍もなく日常的、庶民的。完全にホームドラマの世界です。暴力の世界と家族の世界を表裏一体で描く。他の組織との抗争、跡継ぎの問題。まあ、『ゴッドファーザー』みたいな路線を狙ったんだろう、とは、おそらく誰しもが感じるところ。 もちろん、完全に同じ路線ではないし、実際遠く及ばないし、一方で本作ならではの(良くも悪くも)日本らしさ、みたいなものがあったりもするのですが、いかんせん、内容的にチト弱い印象。組長襲撃に端を発する前半は、悪くないとは思うのですが、後半、やや薄味になってしまったような気がします。若山富三郎の無骨さは光っていますが、どうも尺の長さに割に見どころが少なくって。 とは言え、主役のモデルになったお方の息子さんが作品に関わっていることもあってか、雰囲気はよく出ています。跡目を発表する岡田茉莉子を前にして、幹部たちが居ずまいを正すシーンなんか、いいですね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-12-26 06:10:36)
19.  絶唱(1975) 《ネタバレ》 
いや~それにしてもまさか、ラストのあの土壇場で、山口百恵が生き返るとは。ってのは大ウソですスミマセン。あそこで生き返ったんじゃ、完全にゾンビです。 最初からいきなり「身分を超えた純愛」が炸裂して、歯の浮くセリフのオンパレード。ラブラブなのはいいけれど、さすがに観る側はそこまでテンション上げられないので、ちと、ついていけない。 だけど、その二人を待ち受ける困難こそが、本編で描かれる物語なので、冒頭はガンガン進めないといけない、らしい。ま、三浦友和&山口百恵ペアなもんだから、いきさつ等を多少端折っても、二人がラブラブなんだということは一応、理解できますけれども。 三浦友和の出木杉クンぶりが目に眩しいですが、それ以上に、人懐っこい表情で好青年ぶりを発揮する大和田伸也、じゃなくって獏、じゃなかったやっぱり伸也、がさらに目に眩しい。 戦時下が舞台ということで、後半は三浦友和が出征し、二人は離れ離れに。山口百恵は相変わらずイモっぽいのですが、途中から病に犯され、体が弱ってくると、だんだんキレイに見えてくる、気がする。のはいいけれど、終盤、彼女の顔面ドアップの連続でドラマを乗り切ろう、ってのは、さすがに苦しいか。 いまわの際に、ついに三浦友和が復員して帰宅する(いつのまにか戦争が終わっているのだけど、劇中にはこれという描写もなく、終戦の事実のみが我々に伝えられる)。海岸の方から歩いて帰ってきたようだけど、まさか日本まで泳いで帰ってきたのか?ってのはどうでもいいんですけど、とにかく彼の帰宅とともに山口百恵は世を去る。そして、何となく映画の尺が余ってしまう。余ったわけじゃないのかもしれないけれど、何だかこの後、蛇足気味に映画が続いてしまい、もうひとつ、締まらない印象。そりゃま、ラストはどうしても、あの場所で終わらないといけないんだろうけど。 あと数分、映画が続いたら、ホントに山口百恵が生き返ってしまったのではなかろうか。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2020-10-03 16:29:15)
20.  戦場(1949)
誰が主人公ということもなく、ある部隊の行軍が描かれていきます。誰に特別スポットが当たる訳でもない代わりに、各々がある程度個性的に描かれていて、それぞれが主人公。それぞれの存在が心に引っかかりのようなものを残します。 いやそれこそ、映画の前半で言えば、一人の兵士がかっぱらってきた「生卵」だって、主人公の一人と言ってもいいかも知れません。はたしてこの卵は、誰かに無事食べられるのか否か。目が離せません。 後半は、「雪」も重要なファクターになります。兵士のヘルメットに降りかかっては解ける雪、あるいはすでに降り積もってサラサラとした雪。非常に印象的です。 一連の戦闘を潜り抜けた後の、映画ラストの行進。それはやっぱり、訓練の時とは明らかに異なる行進、なんですよね。で、そのまま他の隊とすれ違って映画が終わる。これをカッコイイと言ってよいのかどうかわからないけれど、感無量、絵になるラスト、です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-08-31 21:42:01)
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