1. セッション
《ネタバレ》 ジャズ版「フルメタル・ジャケット」。 もしこれに後半があったなら、鬼教官に鍛えられた精神を武器に海外の戦場に繰り出し、北欧(理論の鬼)や南米(リズム感覚の鬼)のミュージシャンとの死闘が繰り広げられるんでしょうか。 しかしチャーリー・パーカーが演奏していたような安酒場ならいざ知らず、あんな値段の高そうなコンサートホールで自分の評判に泥を塗ってまで嫌がらせをするのは無いと思う。 登場人物たちの行動に納得いかない部分は幾つかありますが、チャレンジングな制作姿勢は評価します。 [DVD(字幕)] 7点(2016-06-12 18:58:43) |
2. ゼロ・グラビティ
お話のほとんど全てが衛星軌道上の無重力・無音空間で展開する。絵ヅラがとても新鮮でした。演劇の背景絵のごとくバックにずーっと映し出される地球の様相も、巨大台風があったり、夜になって夜景がキレイだったり、様々に変化してて面白い。たっぷりお金をかけた「アイデア一発もの」という感じでかなり好きです。 自ら命綱を外して同僚を助ける彼は、長いキャリアの中で自分も同じ経験があったんでしょうかね。自分を見失いかけのアメリカ人とそれをリードする力強いロシア人?というのは、最近のアメリカ人の心情を反映してる・・というのは考えすぎかしら。 他の方が仰られる通り、あそこで何故止まらないのかは意味不明でした。あと酸素の供給が無く対流も無いのにあの大火事とか・・。物理的にどれだけ根拠あるのかな。 [DVD(字幕)] 9点(2016-02-27 08:21:12) |
3. 世界の果ての通学路
人間の子供版「WATARIDORI」って感じ。子供がてんでバラバラに登場してくるな・・・と思っていたら、時系列に登校時間に合わせてあるんですね。 自分も小学校の頃は片道4kmの道のりを通学してたので何か懐かしかったです。(自分の場合はお菓子我慢したらバスにも乗れましたけども。)特に下校時は延々2~3時間かけて繁華街、田んぼの中、神社の中、ススキヶ原、森の中等々を通り、遠回りして友達の友達の団地に寄ったり、森に作った秘密基地で遊んだり、開発で出来た断崖絶壁によじ登っては怒られたり・・毎日が面白くて仕方なかった記憶があります。(学区が改変され、家のすぐ近くに学校が建ってしまった時のガッカリ感と来たらなかった。) ・・とにかく「通学路」に特化した点が本作の良さの一つでしょう。学校のカリキュラムなんて余分だし、そんなものを入れたら途端に陳腐なプロパガンダ臭を発してしまう。このような雄大な風景の中を、兄妹或いは友達と、毎日毎日通い続けたという事、その記憶自体が彼等にとっての財産となるのでは・・と思います。 欲を言うと、4チームのほとんどが広大な平原を進むってのが視覚的にもう少しバラエティが欲しかった気も。どこか南米だったか、ジャングルの山から山へ手作りの巨大なロープウェイを伝って通学する子供の写真を見た事ありますが、こういうのも入れてほしかったです。続編もあるといいな。 [DVD(字幕)] 9点(2015-05-31 10:41:32) |
4. 切腹
《ネタバレ》 何やらミステリーじみた出だしに、おぉ・・と見入りましたが、こんな展開になろうとは。まず違和感を感じたのが、子供が熱にうなされてるのになぜ直ちに町医者に駆け込まない?という事でした。普通は金の有る無いに係らずとりあえず診てくれるはず。そもそも「寺子屋の先生の坊ちゃんが大変」なのに長屋の人達は何で無関心なんだろう、一体どういう近所付き合いだったんだろう…とも思ってしまいます。製作者は落語の世界にでも浸ってもう少し江戸の下町文化について学ぶべき。また主人公が鬼の首を取ったように叫ぶ「事実無根で藩の取潰し」も変。幕府もそんな事でわざわざ内乱のリスクを高める事はしないでしょう。赤穂浪士でさえ廃藩には異論が無く、異議は「相手が無罪放免である事」。更に言えば、身分社会といえど武士から商人・職人・僧侶等への転職はゴマンとあるわけで、武士に未練無い筈の息子氏は竹光刺して何をしたかったのか意味不明。また、主人公が16年プラプラ遊んでた割にに強すぎるのは「関ヶ原で実戦を積んだから」の一言で片づけられますが、外国へ傭兵に行ったわけじゃあるまいし、関ヶ原経験者など譜代大名にもゴロゴロ居るはず。「いや、その中でも超人的に強い」のであれば、仕官など引く手あまただった筈で「上役に気を使わないで気楽でいいわい」と自堕落な生き様で同情を引くのは無理がある・・・等々、キリがありませんが、とにかく違和感だらけ。一見「とても酷い話」なのによく考えるとおかしな事だらけ、というのは何やら「我々は日本軍に強制連行されて来たニダ」に共通するものを感じてしまいます。内容0点、映像は良かったのでこの位かな・・。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2011-12-05 23:23:16)(良:1票) |
5. 精霊の島
タイトルから見て幻想的なお話を想像しがちですが、とある寒村の嫌になる程の日常的な物語。アメリカに憧れる青年によって村がくちゃくちゃになってしまうのはこの国にもあるんだなという感じ。家族同士どんなに忌み嫌いあっても絆がしっかりと保たれている点が印象に残りました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2005-09-25 15:02:23) |
6. 聖なる狂気
原生林を舞台に女性を巡って野生児とカルト宗教の嬰児が対峙する…この監督、相変わらず説明不足な感じですが、独特の映像センスはかなり好きです。最後はハリウッドのモンスター映画風の展開になっていしまい、全体的にちぐはぐな印象になってしまったのが残念。 それにしても前作に比べてなんという適当な邦題だろうか。 [地上波(字幕)] 7点(2005-08-28 23:07:24) |
7. 1984(1984)
《ネタバレ》 自分の行動が全体の中では塵芥に過ぎない事までをも受け入れてレジスタンスに身を投じたのに、釣る為の罠だったとは… この僅かの隙すら許されない絶望感が、映画ではさらっと流されていて残念でした。近い時期に上映された「ブラジル」に良い所を持っていかれた感じ。それにしても1984年を20年も過ぎた現在、これに似た国がお隣にあるのは怖ろしかばい。 6点(2004-03-19 21:51:14) |
8. セブン・イヤーズ・イン・チベット
「ナチのホロコーストに匹敵する」と言われる中国のチベット侵略を、極めて控えめな表現で描写。仏教国チベットらしく淡々と、必要以上に被害者意識を強調しすぎない所に好感が持てました。これは「既に過ぎ去った出来事」ではなく今現在も「進行中」の侵略、こういった映画が作られる意義は極めて大きいでしょう。少年は実在のダライ・ラマによく似てるなと思いました。死んでから思いっきり美化される人物はいますが、この人はまだ現役、ゴマカしようが無いです。といっても中国の圧力で訪日すらできない現状だそうで、ダライ・ラマ知ってる方は少ないかもしれませんが…(誰に訪日を許可しようが日本の自由なはずなのにおかしな話です。) 映像の美しさが特筆もので、中央アジアの雄大な光景を舞台にした一種のロードムービー的な味わいが素晴しかったです。 9点(2004-01-11 05:15:40) |
9. 戦場のピアニスト
ひたすら逃げるだけというプロットが良い。映像も美しい。 ただユダヤ人が現在パレスチナやアラブ社会で何を行っているかを見ると、あまりに単純な善悪二元化に感じて素直に感動できない。 相手を糾弾するハナから自分達が同じ事やってちゃいけません。 結局この映画がブッシュの中東侵略・占領の強力な後押しになったわけで、どうにもやるせない。 5点(2003-11-29 23:15:34)(良:1票) |
10. セブン
《ネタバレ》 何かに見立てた殺人(童謡の通りに人が殺されるとか)は推理小説ではよくある手法。ただし本作は単に死体に細工するのでなしに、殺し方そのものが「見立て」になっているのがスゴイ。「大食」の罪で胃袋が破れるまでスパゲティを喰わされる男、「怠慢」の罪でベットに縛り付けられ数百日かけて衰弱死させられる男、「高慢」の罪で自らのプライドのため死を選ばざるを得ない女…等々、被害者が自らの罪を悔いながら死んでいく。 -そういう意味では最後の2つはどうも釈然としない。刑事は「怒り」を露にした事を後悔などしないだろうし、そもそもこの人が人一倍怒りっぽいわけでもない。彼の罪を問うとすればあえて「幸福」の罪だろうが、それをキリストは罪と認めていない。 あと犯人自身「嫉妬」により他の被害者と同格になってしまうのも変。他の被害者と同格という事ははつまり「犯人は神に代わって他人を裁く資格などない」という事になってしまう。(囚人が裁判官になり得ないのに同じ。) これがため「大衆に原罪を自覚させる」どころか、「あんたに言われたくない」とか「彼も寂しかったんだね」程度の印象しか与えられないと思う。それまでが凄かったのでなんとも残念なオチ。 7点(2003-11-21 21:27:01)(良:1票) |