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1.  そこのみにて光輝く 《ネタバレ》 
地方の貧困と、弱者同士の儚いラブストーリー 冒頭から、どう見てもクズの主人公綾野剛の、どうしようもないその日暮らし振りが、同じくクズとしかいいようがない大城拓児と出会って、なんとなく仲良くなるあたりはかなりリアルだ 汚くてバカで育ちが悪いが良い奴、って言う感じが、ひしひしと伝わって来るのはそれなりに巧い作りだと思った 大城家の家は凄まじく貧乏だが、地方都市の海沿いのバラックにはこんな人達が住んでるかも、と思わせる容赦ない演出 主人公がその凄まじい家に、ためらいながら入る一歩目を運命的に見せているカメラワークは秀逸 しかし中盤で綾野剛がクズではなくて、山で発破を使う仕事をしていたが、部下を失って街に降りて来て悔恨の日々を送っている人物だと言う事がわかると気持ちがさっと冷めた どうしようもないクズがほんのちょっとでも前に進む話じゃ無くて、「元々はクズじゃなかった」&ありがちな「心にキズを負って立ち直れないでいる人」だったのだ これはちょっとがっかりした 個人的な期待が裏切られたせいか、主人公が山で部下を失ったシーンを、最初に見せても良かったんじゃなかろうかと思った ヒロインが週三回の工場のアルバイトをしながらも、体を売って家族を支えても、尚この究極の貧困という状況がいまいちピンとこない 寝たきりの父親の世話だけじゃなく、性欲の処理までもする貧困からくる残酷がテンコ盛りすぎる理由がわからない この話に感情移入するためにも、この状況になったはっきりした理由が欲しい なので、むしろヒロインはもっとクズの方がリアルだ ラストで主人公が拓児をアパートの廊下で抱きしめるシーンは泣ける この拓児役の菅田将暉の熱演が光る この人を憶えておこうと思った エンディングもほんのちょとだけ救いが有るとおもわせる展開 朝の美しい光の中で、この二人にとっては今がどん底で、この先には今よりはマシな未来が待っていると思わせるラストシーンに心が震えた
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2016-05-10 12:36:54)
2.  ゾンビアス 《ネタバレ》 
グロはまだ良いがゲロやクソはちょっと勘弁と思ったが以外にウソっぽくて大丈夫だった ヒロインの体を張った演技で驚く、スゲーよ中村有沙! キチガイ博士の娘も結構巧くて驚いた この二人を見るだけでも充分価値がある ゾンビがお尻をむけて襲ってくるとか、おならで空を飛ぶとか、設定が突き抜けてるがもうひとつバカバカしさのテンポが悪いと思った あともうちょっとタタミかけるように笑わせてほしかったなぁ でも何故か評価が高い電人ザボーガーよりはおもしろかった
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2014-11-02 20:43:17)
3.  ソナチネ(1993) 《ネタバレ》 
北野映画ってこんなんだよねって感じの代表作 おかしな間、ためのない暴力、らしくないキャスト、笑えない悪ふざけ、遠い目線、北野映画のすべての要素が満載だ キャストが遠い目をするとバイオレンスシーンになるのがお約束 ヤクザの夏休みを青い空の下で延々と描く 花火をしたり、踊ったり、落とし穴を掘ったり、ビーチで相撲をするシーンは、部屋の中で和気あいあいとトントン相撲をするシーンと繋がっていて楽しい しかしその先の悲劇を予感させて、切なくて哀しい名シーンだ エンターテイメントからは少し遠ざかるが非常にバランスがいい作品だと思う ラストで自殺するたけしは今となってはわかりやすすぎてあまりにも文芸チック 今のたけしだったらもっと違ったラストになっていた気がする
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2014-06-09 16:12:24)
4.  そして父になる 《ネタバレ》 
子供を取り違えた場合に起こるであろう親子の機微がすべて起こる 父親が自分に似ていない子供に対する不信 母親が愛する子供を本当の両親に返さなければならないための心身症を伴うストレス 交換された後に子供が感じる、親に捨てられてしまったんじゃないかという元の親への不信感 新しい親を心から愛せない子供 返してしまった子供を忘れてしまうんじゃないかと思う親の恐怖 話は福山雅治演じる野々宮家を中心に進む 取り違えられたもう一つの家族、斎木家の方の家族の思いはほとんど描かれない テーマが薄まってしまわないためにはしかたがなかったのかもしれないが、ちょっと寂しい 斎木家にも長男を渡さなければならなかった葛藤があったはずだ 劇中ではくせがある斎木家のリリーフランキーが、むしろエリートの野々宮よりもいい父親、いい家族であるという描かれ方だが、自分には野々宮も仕事中心で家庭を見ている時間がないまでも、良い父親としてある程度努力しているように見えた ピアノを一緒に引いたりゲームしたり子供の誕生日を祝ったり、父親としては一般的であると言う所をちゃんと描くのは是枝監督はたいしたものだと思った 普通ならもっとわかりやすく福山雅治を鼻持ちならない嫌な奴に描いただろう その場合はわかりやすいが、日々の家族のリアル感は失われる 私には子供の取り違えが発覚する前から、野々宮は充分いい父親に見えた 対して野々宮の妻の方がむしろ問題がある様に思えた 野々宮の不注意な一言を後々までトラウマとなっているような妻の言い方はむしろ怒りを憶えた 子供を交換する直前に息子が固辞した一眼レフから息子が撮った父親の姿が出て来た時はおもわず涙が出た ふた家族がそろった河原のキャンプで、新しい両親が息子の事を好きだと言うと、息子が「パパよりも?」と聞いてきて、ちょっと間があって「そうだ」と答える おもわず息を飲んだ 息子・慶多にとっては衝撃だっただろう しかし子供のためを思う野々宮の気持ちを思うと、それはそれで人間としては立派であると思ったが、父親としてはどうかなと思わざるを得なかった その帳尻を最後の最後に自分で償うエンディングは、父親としてエリートのプライドを捨てた野々宮の見事な「そして父になる」にふさわしいラストシーンだと思った 傑作だと思う
[ブルーレイ(邦画)] 9点(2014-05-10 13:43:50)
5.  ゾンビランド 《ネタバレ》 
冒頭からタイトル部分がスローモーションでゾンビに襲われる人間達をコミカルに描くが、ロゴの演出などやたらスタイリッシュ、この部分が抜群である このタイトルだけで自分は完全にやられた 掴みとしては完璧と言える その後も主人公の新ルールがゲーム風のロゴで描かれていて楽しい へたれの主人公とイケイケマッチョのカーボーイのコンビは絶妙だ この主人公じゃなければこの映画いたって普通だった チームが誰も死なないのも良い この手の映画でハッピーエンドなのも以外でいい けなす所が無い傑作ゾンビコメディ 続編が見たいと思った
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2014-02-02 22:35:47)
6.  ゾンビ/ディレクターズカット完全版 《ネタバレ》 
140分のDC版を見る さすがに140分は長いかな 長いからといってさほど人間ドラマがあるわけじゃ無く、消費社会の風刺が延々と描かれる 最近のゾンビ映画に比べるとメインキャストがなかなかゾンビに齧られない 途中からいい気になってキャッホー状態の死亡フラグ出まくりの奴もなかなか齧られなくて焼きもきさせられる この辺のタメが演出ならば見事にイライラさせられた ヘリのパイロットのへたれぶりもイライラさせるが、巨大ショッピングモールにヘリで乗り付けて好き放題みたいなのは今見ても十分おもしろい ゾンビはめちゃ鈍いのにたびたび窮地に陥るのはちょっと嘘くさい 総じてゾンビ映画はゾンビが近づくのに気が付かなさすぎ もっとやすやすと攻略したりするほうが珍しくておもしろいんじゃないか でもパイオニアだからしかたないのか すれ違いながらどんどん頭をふっとばしながら歩くとか、かっこいいじゃないか 以外にノロノロゾンビを簡単に攻略する映画が無いのは何故だろう もっとゾンビを制圧する作戦とか暴走族を迎え撃つ準備とか見たかった 途中で登場人物が「地獄が溢れた」みたいな言い方をするがいろんな映画でこのセリフを聞いた気がする ゾンビのメイクは今よりだいぶ地味だ
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2014-02-02 22:17:51)
7.  続・座頭市物語 《ネタバレ》 
一作目から完全に続いている作り 違う話のように始まって一作目と同じ場所 同じキャストで後半へ続くのはなかなかいい しかし設定がなぁ 今回敵役の実の兄は人間的にも風貌もめちゃ小物 デブなドさんぴん感一杯なのはしらける しかも市が追われる原因がつまらなすぎる 黒田家の殿様がノータリンなことがばれたから口封じとか三流の脚本すぎ そもそも自分たちが市をあんまに呼んだのが原因だし どうせならもう少しバカバカしければ笑って許せたかもしれない コメディにするべきだった 監督が三隅研次から変わったのが一番の原因か カメラワークもいたって普通の出来 しかし途中の殺陣で市を背中から引きのカメラで撮って、仕込みを抜いたとたんに両脇の二人が同時に倒れるという抜群にうまいシーンがあった 殺陣だけは中々いいが勝新に依る所が多い
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2013-12-31 00:52:35)(良:1票)
8.  その男、凶暴につき 《ネタバレ》 
記念すべきたけし一作目 久しぶりに見る もし自分が監督だったらこう作りたかったんだろうなと思うアイデアが満載 その後の北野作品の基本となるセンスのすべてがある 引きの絵 タメの無い暴力 妙な間のカットなど この奇妙な間のカット(たとえば登場人物達の長い沈黙とかエキストラに近い出演者の動きの途中でのカットとか葬式の場でゴルフの練習をする刑事とか)がその後の北野作品の大事な心理描写に繋がる 執拗でしかもタメの無い暴力描写はこの作品で初めて見た たけし扮する刑事を映画館の前で待ち伏せして襲うシーンでは、大きく引いたカメラから素早く近づいて刺す白竜が立て続けに銃を発砲するが、かわされて通りがかりの女性を直撃するまでをまったくタメの無いカットの連続で描くのは映画史に残る名シーンだと思う 冒頭で白竜が登場するシーンはアウトレイジのタイトルが出たシーンにそっくり 思えば黒塗りの高級車はヤクザの象徴という北野作品独特のイメージは既に第一作からあったのかと思い感慨深い エンディングの新人刑事のエピソードは付け足し感があって蛇足 無い方がよかった
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2013-12-16 16:33:55)
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