1. 宇宙からのツタンカーメン
《ネタバレ》 これ、昔、日曜洋画劇場で放送された時は「宇宙から来たツタンカーメン」ってタイトルでしたよねえ、確か。 しかし随分古い話なもんで、相当ヒドイ映画だった(あの日曜洋画のラインナップの中ですら際立ってヒドかった)という事自体は忘れるべくもないとは言え、細かい部分は記憶も薄れており、「たしかこんなシーンがあったはず」という記憶の中には、今回見てみたら存在しなかったものもあって、どうやら私の中で一部、ヒドい映画の記憶が混線している模様。やっぱり、歳かなあ。 それよりも、日曜洋画で放映された際の話で言うと、これも自分の記憶にやや自信が持てないのだけど、番組最後の解説であの淀川さんが(つまらない映画の放送の回は、作品と関係ない話をする、と本人も言ってたあの淀川さんが)、何に興奮したのか、視聴者に向かって「アンタ、何と、宇宙人だったんですよ!」と熱く語っていたような記憶があります。というかむしろ当時、私の姉が「視聴者に“アンタ”って呼びかけるなんて、そんなこと有るか?」と驚いていたのが印象的で。しかし、私はともかくとして、姉までもがこのヒドい映画の放送を見てた、というのが今となっては最大の謎。 とにかく、ヒドいんです。これ。 古代エジプトのミイラが、現代のアメリカで蘇り、人々に襲い掛かる、というオハナシ。まずミイラがアメリカに運ばれてきて、ツカミはOK。ただし、貴重なミイラにしては扱いがやや粗末な気がしてきますが、その辺りの描写は作品の予算と密接に関わる部分でもあるので、致し方なし。でもって、扱いが粗末であれば、蘇るミイラの方もそれなりに粗末なものとなり、「人々に襲い掛かる」と言ってもまるで迫力が無い。いや、好きで襲ってる訳じゃなくって、遺跡から持ち出された宝石を取り戻そうとしているらしい。エレベータの床をバリバリ破ってくるあたりはちょっと頼もしいけれど、基本的には凶暴ではなく、ヌルい攻撃に終始します。 ミイラの一人称目線のカメラ、などでそれなりに緊迫感を出そう、とはしていますが、まるで盛り上がりを欠いたまま、まるで見どころもないまま、終盤、ついにミイラの正体が明かされる! と言ってもおおよそ予想通りの展開、さらには邦題に書いている通り。はい、宇宙人でした、と。 この宇宙人のフォルムが、もう、いやはや、何ともかんとも。頼むから、何度も映さないで欲しい。目のやり場に困ります。 ラストには「To be continued」との表示(これは、すみません、日曜洋画の時にもあったのかどうか、まるで記憶なし)。こんなのでまさかまさか続編作るつもりだったのか、それとも投げ出すようなラストにこのクレジットでオチを付ける一種のギャグなのか。 とにかくヒドいんですが、個人的には、過去の記憶が多少、整理できて、その点は良かったです。 淀川さんの心境だけは、いまだによくわからない・・・。 [インターネット(字幕)] 2点(2024-09-23 08:21:55) |
2. ウホッホ探険隊
思えば80年代、つまり私が中高生の頃、邦画なるものにはまるで興味がなく、憧れはアメリカ映画の方にばかり偏っておりました。邦画のことはいっそ、憎んでいた、と言ってもいいくらい。映画雑誌で紹介される邦画の新作と言うと、コミック原作のアイドル主演映画か、地味で低予算で小難しそうな作品ばかり(という風に当時の私は捉えていたんです。すみません)。いわば、邦画の暗黒時代、と思ってた訳です。 で、ある日新聞を見てると、邦画作品が立て続けに途中打ち切りになった、という記事が。その一本が確か、この『ウホッホ探検隊』。タイトルが何だか子供向けの冒険映画みたいで、敬遠されたんだとか何だとか、良作に客が入らず打ち切りに追いやられていく現状を嘆いた記事だったように思いますが、そりゃこんなタイトルで地味そうな内容、客が入ると思う方がおかしいでしょ、というのが当時記事を読んだ時の私の感想。 そんなことを思ったせいで、この映画がずーっと気になってたのも事実だったりして、最近ようやく見たんですけどね(40年近く、引きずってた訳ですな)。うん、これでは、客は入らんよね、やっぱり。 田中邦衛と十朱幸代が夫婦、というのがまず、そりゃないよなあ、と。ってのは大きなお世話ですが、かえってそこに80年代邦画の閉塞感を感じてしまうのが、皮肉。いやまじで、「十朱幸代が演じる奥さん」ってのは、キツいものがあるんだこれが。で、なぜか田中邦衛がモテる役。そんなバカな、と思うけど、なにせタイトルが「ウホッホ探検隊」、ウホッホと聞いて連想できる人はこの邦衛さんしかいないんだから、まあしょうがない。 夫婦には二人の息子。この息子二人のセリフの臭さ、何とかならんもんですかね。これが「森田芳光」印だ、と言われれば、しょうがないけど。 バブルに向かって日本がそれなりに裕福になりつつあって、サラリーマン家庭の息子でもこうやって巨大なラジコン飛行機持ってたりして、でも親父は単身赴任とかで、いろいろと無理してる感じもある。家族の繋がりも何となく希薄になりつつ、それがいいと言う訳でも悪いという訳でもなく。 気だるい雰囲気が、80年代らしさと言えば、らしさ。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-03-30 05:43:41) |
3. 宇宙人東京に現わる
2年前の『ゴジラ』にはまだ何となく戦後感があったけど、こちらの作品ではそういう雰囲気は無くって。最初の方に出てくる、山形勲演じる松田博士の食卓を囲んだ一家団欒の光景など、だいぶブルジョアジーな感じがいたします。テーブルの中央にはやたら盛大に花が活けられていて、食卓にそれはさすがに邪魔なんじゃないの、と。大きなお世話ですが。 という訳で、大映製のカラー作品。ガメラは直接は出てこないけれど、飛行音だけカメオ出演しており(?)、大映特撮スペクタクルのルーツ、とでも言えそうな。 宇宙人が登場します。タイトル通りです。さて彼らパイラ人の目的は何なのか、それは見てのお楽しみ。ある程度、文明を持った宇宙人なら、それなりに地球人っぽく手足がある姿で描かれそうなもんですが、そういうのを度外視したデザインに設定してきたのが新機軸。ずばり、ヒトデ型。地球で言うところの棘皮動物ですね。5回対称という特殊な体の構造。ヒトデ、ウニ、ナマコなど(ナマコも輪切りにすると5回対称らしい)。基本、なるべく動かず、なるべくエネルギーを使わない生活を送っている。しかし我々人間が属する脊索動物同様、後口動物に属しているので、姿は違えど、人類とパイラ人とは親戚みたいなものなのです。なんのこっちゃ。 いや、あくまで宇宙人であって、ヒトデではないんですね。他人の空似でしたね。クレジットには、「色彩指導」として岡本太郎さんの名前がありますが、パイラ人のデザインなども担当したそうで。中央には巨大な目玉がギョロリ。奇抜でもあり、シンプルでもあり。 宇宙人だのナゾの天体Rだのと、SFスペクタクルな設定の割には、物語の方はいまいち地味で緊張感が無いのですが(物語が、というより、描写がいろいろとおマヌケ。まあ、ユーモアだと解釈しましょう)、それでも後半は映像的にもスペクタクル度が上昇。ミニチュアや合成映像も活用し、これがなかなか完成度が高いんです。洪水の描写もダイナミック。いやこれ、ちゃんとしているシーンと、していないシーンとの落差が、なかなかすごい。 居酒屋「宇宙軒」。いいねえ。繁盛しそうにないけど。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-03-17 15:48:20) |
4. ヴィジット
この映画が本当に言いたかった事とは、実は、「若い世代からしたら爺さん婆さんの世代の言動はいちいちアヤしくて理解不能かもしれんが、爺さん婆さんの世代からしたら、何かと言えば動画だのラップだのというあんたたちこそ意味不明なんだよ!」ということなんじゃないか、と。いや、誰も賛同してくれなくても結構ですが。しかし関係ないけど、「YouTuber」ってのはアレ、職業と言っていいのかい?(ブツブツ・・・)。 さてこの作品、姉弟の撮影する動画、が構成の基本になっている(一部、プロの手?と思しき風景ショットあり)、一種の疑似ドキュメンタリ形式。複数のカメラの映像に基づくので映画の視点が切り替わったり、はたまた登場人物がカメラの存在を意識する場面があったりして、我々もまた、カメラの存在、というものをつい意識してしまう。この構成が本当に有効であったかどうか? カメラの存在、編集という作業、が我々に意識されれば、そこには実は隠れた意図があるんじゃないか、とか何とかいう疑いも湧いてくる訳で、ある意味、映画を収束から開放(多義性)へと向かわせる効果もあるのかも知れません。が、それ以前に、どうしてもそこには不自然さが伴い、せっかくの緊迫感が削がれてしまったりもします。その状況でも撮影を続ける不自然さ。映像の緊迫感を支えている視点、「一人称」であるはずの視点が、ちゃっかり切り替わってしまう、この「編集」という第三者的な人為作業・・・。 その構成自体の危うさが、作品の持ち味なのかも知れませんが、少なからず、制約になってしまっているように感じました。 物語上は、大小いくつもか仕掛けがあるのですが、「大」が大きすぎると「小」があまり活きてこなくなるのも、これもシャマラン作品の宿命なんでしょうか。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-07-16 05:52:31) |
5. ウィリーズ・ワンダーランド
こういう「何となく面白そうだけど、見たら期待外れに違いない」と思わせる映画には、どういう訳か大抵、ニコラス・ケイジが出演している。とまで言うのは言い過ぎですが、体感的にはそんな感じがあって。 「ニコラスケイジ映画にハズレ無し」と言い切る信念も無ければ義理もなくなった昨今ですが、彼が製作者としても名を連ねたこの作品は、一味違います。面白い! ほらやっぱり「ハズレ無し」だったね、と、何度騙されてもそう思わされてしまう、それがニコラスケイジ映画。 無口で小汚いオッサン役のニコラス・ケイジが、ひょんなことから、閉鎖された娯楽施設の宿直&清掃を任される。で、そこに展示されている機械仕掛けのゆるキャラどもが、なぜか襲い掛かってくる、というオハナシ。なぜ襲い掛かってくるのかもよくわからんし(これは一応、途中で理由が明かされるけれど、正直、どうでもよい内容)、さらにはなぜこのオッサンがこんなに強いのかもよくわからん(これは本当によくわからん)、そのよくわからなさが、間違いなくこの作品のスピード感に貢献しています。まずもって、この勢いが、いい。 展示されているキャラどもが部屋の奥に佇んでいて、動いているような動いていないような、いつ動き出すかわからんような、そういう不気味さを出しているのも、いい感じ。こいつら、主に動物のキャラなので、とにかくキャラ立ちしており、いざ動いて襲ってくるとそれぞれが個性的。これも素晴らしい。襲う側・襲われる側、斃す側・斃される側、どっちも応援したくなっちゃいます。 その中で、妙に強く、妙に律儀な主人公。この人が一番、規格外。 強いばかりでなく、汚れ切った施設をしっかり清掃する彼。映画の舞台となる施設が、彼の手によって掃き清められ、その光景は映画を通じて徐々に変化していく。こういう「変化」がまた、映画の魅力。ゆるキャラどもが斃されると何だか汚い油のようなものをまき散らすのだけど、それも含めてジャンジャン清掃し片づけていくこの主人公、まさに最強です。 満足度が高い作品で、すでに高評価のようですが、まだ現時点ではどなたも9点をつけておられないようなので、不肖、私めが、9点を。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-06-18 06:46:17)(良:2票) |
6. 牛泥棒
《ネタバレ》 これは怖い。もはや、一種のホラー映画です。 なにゆえ怖いかと言うと、作品の主要な部分を占める一連のシーンが、夜だから、ですね。人の理性を狂わせる闇。何が起きるかわからない、何が起きてもおかしくない、不穏な時間の流れ。モノクロ映像が不気味な迫力を醸し出しています。 本来ならヒーロー役であるところのヘンリー・フォンダ、後の某作品で他の11人の陪審員に立ち向かって見せたヘンリー・フォンダなら、この事態を何とかしてくれるんじゃないか、とつい思っちゃうのですが、彼の正義感もここでは無力。彼の存在が一抹の希望を抱かせるけれど、その対比によって、絶望の闇はさらに深くなる。 では彼は一体、この作品に何のために登場したのか、何のために彼に相棒がいたのか、というと、相棒へ読み聞かせるという名目で、「手紙を読みあげる」ためにこそ、この主人公は存在したのだ、というラスト。 ただ、この手紙、人の心を動かすどれほどの内容が書かれていたのだろうか、と作品自身がだいぶハードルを上げてしまったので、正直、割とフツーの内容だったかな、と思わなくもないのですが(ゴメン)、映画を貫く緊迫感と迫力は、それを補って余りあると思います。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-04-15 11:41:20)(良:1票) |
7. 噂の二人
《ネタバレ》 クソガキのばら撒いた噂話によって、二人の女性教師が同性愛者というレッテルを貼られ、社会生活をブチ壊される。 ということで、子供のウソに大人が振り回されて人生を狂わされてしまうオハナシ。ではあるのですが、それがウソかどうかよりも、同性愛者という理由で差別される社会こそ問題ではないか、というテーマも、見えてきます。すなわち「不寛容」のオハナシ。 さらには、人を信じること、疑うこと、のオハナシでもあります。子供を疑うのか。フィアンセを信じられるのか。自分を疑った人間を、はたして信じることができるのか。 そういったことも全て、クソガキの素晴らしいクソガキ演技があってこその演出で、アカデミークソガキ賞ってのがあったら是非差し上げたい。激戦になりそうだけど。 二人の女性教師を演じる、オードリー・ヘップバーンとシャーリー・マクレーン、髪の色に合わせるかのように、何となくオードリーの方が濃い色の服を着てて、対照的な雰囲気を出しつつも、どこか二人は双子のようにシンクロしてるようなところもあって。 ラスト間際に発生する異変、その緊迫感。我々は何が起こったのかをすでに察しつつ、オードリーの表情を正面から突きつけられることになります。くずおれた彼女の手前には、倒れた椅子と、ベッドのシーツに映る、揺れる足の影。衝撃的です。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-06-18 10:33:42) |
8. ウィッカーマン(1973)
《ネタバレ》 行方不明の少女を捜すお巡りさんが足を踏み入れた島は、エロ教団に支配されてましたとさ。と言う訳で、ややオカルトじみたサスペンス、というかエロ映画。というか、なぜかこれ、ミュージカル仕立てなんですねえ。一体、何なんでしょうか。 エロと言っても、かなり投げやりなハダカですが。 という、何だか煮え切らない映画、そうはいいつつも何となく迷宮感みたいなものが徐々に出て来た挙げ句、終盤は妙にテンション上がって盛り上がる、というのがますます訳が判らない。うん、ホント、妙に盛り上がるんです。たぶん、投げやりだからでしょう。 炎に包まれた巨大な人形が崩れた向こうに、海に沈みゆく夕日をカメラが捉えるラストシーンなどは、こんなヘンタイ映画にもったいないくらいに素晴らしくもカッコいいではないですか。ちょっと、ヤラレたな、と。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-06-12 22:35:34) |
9. 浮草物語
旅芸人の一座がとある町にやってきて、それがいかにも街道沿いの宿場町か何かみたいなことろ。風情があります。 で、その町には、一座の親方の元妻と元息子、いや息子に「元」は不要ですね。「元」をつけると何だか今では娘になってしまったみたいで、決してそうではありません。それはともかく、彼らの存在が嫉妬を呼んで、思わぬ展開となっていく。前半は(自分が実の父とは知らない)息子と一緒に釣りに行ったり、わりとホノボノしたシーンが続き、そこから後半は波乱の展開。余韻を残すラストまで、なかなか巧みな物語構成で、グイグイ引っ張っていきます。 クライマックスで、一座の娘が二階に上がり、息子と視線を交わす場面、その無言のやり取りの雄弁さ。まさにサイレントならでは。 [インターネット(邦画)] 8点(2022-03-16 23:03:21) |
10. 馬を放つ
《ネタバレ》 主人公のオジサン。結構、普通のヒトなんですよね。ツケで茶を飲んで、ついでに店の女性と浮気寸前、なんとか踏みとどまったりして。ちょっとした事件もある、普通の日常。 一方でオジサンは、他人が飼ってる馬をこっそり逃がしてしまう、という妙なクセがある。もちろんこれは犯罪。しかし、その背景には、馬とともにノビノビと暮らしてきた、遊牧民としての民族性みたいなものが、オジサンの心の一角を占めている、というのがあって。 民族の誇り。それは別に、意味も無く自分たちを持ち上げて自慢することなんかじゃない(そこは勘違いしちゃいけない点)。先祖から受け継いだものに対する、責任感、とでも言えばよいか。 しかし、誰もが同じ責任感を共有している訳じゃなく、時代は変わり、価値観も変わり、揺らぎが生じる。オジサンはいささか、ラジカルに過ぎたのかもしれない。けれど、それをただ排除すればいいのか? オジサンの正体は、実はこの映画の監督さんで(笑)、やはり、祖国の美しい景色を、飾ることなく在るがまま、しかし真摯に映画へと焼き付けています。主人公が映写技師だったというエピソードもまた、映画愛の表れのようでもあり、フィルムに収められた「古き良き時代」(イヤでもここには「良き」が付いてしまう)に対する郷愁の表れのようでもあり。 ラストは一種の悲劇、ではありますが、イマイチ頼りない主人公の息子が、主人公の何かを受け取ったのかもしれない、ということを微かに感じさせて、映画を締めくくります。 [インターネット(字幕)] 9点(2022-03-13 12:30:35) |
11. 宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟
せいぜい、テレビシリーズで挿入される1エピソードの拡大版、といった感じ、その分しっかりと中身を描こうというのは、できそうでなかなかできなかった賢明な取り組みだと思います。いや、「新たなる旅立ち」がOKだとか言うつもりは無いですけど。 どうしても物語を肥大化させ、とても一本の映画に収まらないもんだから上っ面だけ撫でて行く、という宇宙戦艦ヤマト映画の宿命、それとは一線を画しており、中盤はほとんど幻想譚ともいうべき異色の(いささかこじんまりとした)作品になってます。こういうヤマトもアリなんだ、という大らかな気持ちを持たずに見ると、肩透かしかも。 かつての手描きで表現された立体感、あのビミョーな感じが、「宇宙戦艦ヤマト」というアニメの驚きでもありスリリングなところでもあったのですが、それがCG化されて、より精密な立体表現となり、これはこれで、見ててカッコよかったりして。そりゃま、いくらケチョンケチョンに言ってる『SPACE BATTLESHIP ヤマト』だって、別に一瞬たりともカッコよさを感じなかったという訳でも無し。 ただ、このアニメ、宇宙艦の描写にCGを使うのは良いけれど、より立体感を出そうというのか視点を闇雲に動かし、さしずめ実写なら「そんなにカメラが高速に動く訳ないだろ」というぐらい視点が移動するもんで、何だか、ミニチュア撮影よりもさらにミニチュアに見えてしまったりして。せっかくのCGなんだから、例えば艦の巨大さといったものを、もう少しうまく表現できなかったんでしょうか。どうも、質感が乏しくて。 『スター・ウォーズ』冒頭のスター・デストロイヤーは、間違いなくデカかった...。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2022-02-13 07:29:20) |
12. 浮世絵残酷物語
武智鉄二監督の残酷物語シリーズ第二弾(シリーズではないかもしれないけど)。もちろん世界残酷物語とは何の関係もなくモンド映画でもないけれど、日本らしい題材でもって、さしずめ日本残酷物語とでも言ったところでしょうか。 ただ、前半こそ、浮世絵で究極のエロスを表現するべく、絵師が絵のモデルとして娘を弟子に手籠めにさせる、という狂気が描かれるものの、だんだん浮世絵とはあまり関係ない話になっていって、最後はある意味普通の「血塗れ殺戮ショー」となってしまうのが、何だかよくわからん。こういうのを「残酷」って、言うんだろうか? それより、時代劇にしちゃあ、貧相だなあ、というのが何とも残念。手持ちカメラでそれなりにカメラワークにこだわったのかもしれないけれど、無意味に映像がブレて、これがどうにも安っぽく見えてしまう。 ハダカや濡れ場もふんだんに登場しますが、これももう一つパッとしない。ちょっとポエムなシーンもあって、うん、ちょっと恥ずかしいかも。 という、これも変なエロ映画でした。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-11-08 22:39:51) |
13. 丑三つの村
いわゆる「津山三十人殺し」事件を犯人側から描いて、ちょっと青春ドラマ風に若者の鬱屈を描いたりもしてるのですが、だからといって主人公の追い詰められていく過程が説得力を持ってしっかり描かれている訳でもなく、主人公の異常性を描く訳でもなく(一部アヤシげな呟きをさせるとは言え、主人公は最後まで正気を保っている)、クライマックスの殺戮が、やや唐突に感じられます。 それに、同じく松竹映画である「八つ墓村」が、あのオドロオドロしさでもってこの殺戮を描いた後でもあり、比べてしまうと、どうもインパクトが弱くなっちゃう。 銃撃とともに血しぶき飛び散る描写などは、製作陣の意気込みを感じさせますが。 女優たちの濡れ場競演、ってのがもう一つの見所、ただしポルノ枠ではないことを意識したのか、男優がフンドシ穿いたまま、という不自然なものになってます。 それにしても池波志乃のハダカは、迫力満点ですな。もはやこれは、大艦巨砲主義とでもいいますか。そういう女性たちの、ムラの因習を伴ったような生命力に対し、古尾谷雅人の、線の細さ。石橋蓮司との小競り合いも、あまり迫力が無い。 もともと、勝てないのよね。 [インターネット(邦画)] 6点(2021-07-03 11:13:19)(良:1票) |
14. 宇宙大怪獣ドゴラ
《ネタバレ》 デーブ・スペクターみたいな外国人タレントって、昔からいたんだなあ、と。 この映画、こういうタイトルではありますが、基本は宝石窃盗団と当局との戦いのオハナシです。そういうのを、例えば大嵐の中の戦いとして描くとか、何か天変地異と絡めた物語とする、というのなら、まあアリかな、と思うのですが、本作はその代わりに「宇宙大怪獣の襲撃」を背景として描くもんだから、斬新というか、ワケワカランというか。 嵐ならば戦いにも大きく影響しそうですが、なにせ遥か上空で暴れるだけの怪獣、だもんで、戦ってる連中も怪獣のことには無頓着、まるで関心なさそうな。 このまま、窃盗団の話と怪獣の話が最初から最後まで全く噛み合わずに終われば、相当ハイレベルの斬新さとワケワカラナさがあったところ、ですが、さすがにそんなコトはなくって、この宇宙生物の「炭素大好き」癖が、事件の解明に一役買っている、という意外な関わりを見せてくれます。そう、宇宙生物が奪おうとするのは炭素。石炭も炭素、ダイヤも炭素素、たけど宇宙生物が狙わなかったニセダイヤの正体は、氷砂糖・・・これもやっぱり炭素(炭水化物)じゃないのかなあ。ブツブツ。 ついでに、酔っ払いのオッサンも、炭素でできてる、ってか。怪獣が出てくるまでの謎めいた事件の数々が、なかなか魅惑的。 肝心の怪獣は、これまた意外をつく無脊椎動物、それも腔腸動物系かしらん。やたらとリアルで有機的な動きに、注目。 怪獣といいながら、やはり映画の中での扱われ方は、天変地異のメタファーなどではなく、見るからに天変地異そのもの。上空からの間接的な襲撃が、攻撃のほとんど(海外は手酷く襲撃されたようだが、詳細不明)。 怪獣にしては、引っ込み思案で、いささか消極的なのでした。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-03 23:47:53) |
15. 宇宙大戦争
こういうのを見てると、日本映画の特撮技術って、1950年代が一番すごかったんじゃないか、と思えてきます。とにかく、特殊技術の豊富さ、レベルの高さに驚かされます。 そりゃまあ、チャチな部分が、無いとは言いませんけれど。でも、大したもんです。 これで、もうちょっと中身があればよかったんですけどね。なんだか、高度な文明を持ってるはずの宇宙人側の方が、弱く見えて仕方が無い。小型円盤がふんだんに出てきては、ふんだんに破壊されまくる。 だいたい、宇宙人のいかにもボイスチェンジャー使ってます、と言う話し声が、イマイチ迫力がない。と言うより、喋りすぎ。どうせ弱いくせに。 だけど、終盤、月世界から地球上へと舞台を戻してからは、なかなか豪快なところを見せてくれます。ようやく、地球人との戦いが、互角ぐらいにはなったかな、と。 正直、ストーリーはあまり見るべきものがなくって、特撮を楽しむ映画、ですね。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-19 22:51:12) |
16. 海燕ジョーの奇跡
沖縄からフィリピンへ、大規模なロケを敢行して描く、青春アクション巨篇。ってなところなんでしょうけれど、奥山和由サン的には、本当にこの仕上がりが、狙った路線通り、だったんですかねえ。 確かに、中盤の小舟で海を渡るシーンなども、しっかりと時間をとって、実に壮大な描き方がなされてはいるのですが、映画を通じてあまり軸となる物語がなく、どうしても弛緩した時間が流れることになります。 時任三郎は若者らしく、随所で感情を露わにした表情を見せるけれど、映画を通じて見ると、何だかオトナたちに丸め込まれているだけ、のような。 ラストは確かにカッコいいので、そこに至るまでのクライマックスは、もう少し盛り上げて欲しかった。海外ロケやりました、というだけで盛り上がるワケでもないですからねえ。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-05-16 15:16:21) |
17. ウェス・クレイヴンズ ウィッシュマスター
こんなタイトルですが、別にウェス・クレイヴンが監督してるわけでもなく、製作総指揮の座にちゃっかり収まって、登場する脇役の俳優陣もフレディだのジェイソン(の中身)だのキャンディマンだの、なんだかまるで、内輪で盛り上がって勢いだけで作っちゃったんじゃないの?ってな感じの作品で。 だもんで(かどうかは知らんけど)ちっともコワくないホラー映画。冒頭からなかなかの残酷シーンを展開してくれるけど、それがキモチ悪いながらもどこかユーモラスで。コワくない代わりにビックリさせるシーンは何度か挿入され、これも、「いかにも」なコケオドシなので、思わず苦笑しちゃう。そしてヒロインはと言うと、ホラーの主演女優たるもの、叫んでナンボでしょ、とばかり、しつこいくらいに叫びまくる。 と言うわけで、若干パロディじみたところのあるホラー映画、なのですが、たったらそれなりに楽しめるのかと言うとイマイチ面白くなかったりして、一体、何でしょうね。やっぱりこの、「願いを聴いてくれる魑魅魍魎」、っていう設定が、あまりに童話か何か、っぽ過ぎて、ちょっとついて行けない、というか。 ストーリー運びも、ちょっと、雑。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-04-26 23:19:45) |
18. 宇宙からのメッセージ
映画全編に横溢する、この手作り感・・・なんか、落ち着きますなあ。ちょっと、ノスタルジー。 わざわざ、スターウォーズにあやかって、はっきり云やあスターウォーズをパクって、こんな映画を日本で作らなくても、とは思うのですが、これって一種の地産地消みたいな考え方なんですかね??? 手作りっぽさ、要するにチープ、ではあるのですが、見てると、ミニチュアも含め潤沢にセットが準備され、メーキャップも顔を銀色に塗ってるだけとは言えこれもそれなりに手間がかかるはず、何だか意外に金がかかっちゃってそうな雰囲気も。もしかして、おカネのかけ方、少し間違えましたかね。 この数年後に製作された『里見八犬伝』の先駆けみたいに、勇者が徐々に集まってくるオハナシですが、そのせいで、登場人物の誰一人として目立たない、という副作用が。真田サンはひたすら軽いノリでヒロイズムのカケラも感じさせず(彼の相方その他、誰だかよくわからん外国人俳優たちもほぼ同様)、ではヴィック・モローくらいは何とか存在感を示すのかというと、これも何だか、やる気があるんだか無いんだか。千葉真一もかなり微妙。 大体、あの皆が有難がっている木の実も、ただのクルミにしか見えんのだけど、ロボットまでが有難がっているのを見ると・・・なんか、落ち着きます、かねえ? そんな中、やたらと丹波哲郎だけは、やたらとしっくり来ている。さすがは大霊界、だね! とにかく、これはもう明らかにパクリ企画の、珍品の類の映画、なんですが(何も音楽までショスタコの5番をパクらんでも)、こういうのを作っちゃうノリの良さ、というか、どうせやるならハチャメチャやっちゃえ的な図々しさ、というか、とにかく勢いみたいなものを感じさせて。「宇宙空間で音がするのか?」とか、「宇宙服を着ないで宇宙遊泳して大丈夫なのか?」とか言う以前に、「宇宙空間でホントに手を搔いて泳いでるぞ!」というのが、ここまでくるとちょっと惚れ惚れしてしまいます。 まあ、正直、ヒドい作品だとは思うんですけどね。 ただ、いくらパクリ企画とは言え、さすがに志穂美悦子はキャリー・フィッシャーよりも美人だと思うぞ。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-03-13 12:47:33)(良:2票) |
19. 宇宙大怪獣ギララ
《ネタバレ》 いずみたく先生の主題歌。だもんで、音楽が妙に明るく、妙に陽気。いきなり宇宙に飛び出したはいいけれど、UFOを目撃しても誰も慌てず騒がず驚かず、宇宙で入浴とか、どうでもいいシーンばかりが登場し、一向に怪獣が出てこない。もしかして、こんなタイトルだけど、これは怪獣が出てこない映画なんじゃないか、と諦めかけたその時。 さんざん待たせて、ようやく出てきたのがオマエかよ。 とは言いたくなるものの、まあ確かにこの造形、宇宙っぽいっちゃあ、宇宙っぽい。 特撮の方も、最初はどうかと心配させられるものの、以外に頑張ってる。松竹にも作れちゃうのが、怪獣映画。 怪獣が暴れ出すと、あんなに陽気だった音楽が一転、ひたすら単調で地味なテーマに。まるで盛り上がらない。 で、せっかく大暴れしてた怪獣も、例によって、ツマラナイ弱点があり、結局は塩をかけられたナメクジのごとき最期を迎えて。 対象年齢不明の映画でした。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-03-11 23:31:00) |
20. ウインド・リバー
「実話」ってのが背景にあるらしいのだけど、おそらくは、特定の異常な事件の顛末を「異常なもの」として描くことを意図しているのではなく、むしろ、一見異常な事件をあえて平凡な「ありふれたもの」として描こうとしているような。背景に異常さを抱えた日常、抱えざるを得ない日常、というもの自体の、異常さ。 雪の中で見つかった裸足の女性の遺体、という一見謎めいた事件の発端ながら、最終的に明かされる真相は、さほど意外なものではなく、被害者も明らかなら加害者も明らか。だけど、真相に至るまでの過程は、これはどうにもフツーとは言えなくって。雪に閉ざされた閉塞状況の地域で、出口のない反目が渦巻き、どう考えても、犯人さえ挙げればいい、という話とは思えなくなってくる。 エリザベス・オルセンが演じるFBI捜査官は、明らかにここでは外部の人間、その彼女が訳もわからないままにこの事件に足を踏み入れることになり、一方、ジェレミー・レナーはこの土地の内部の人間でありながら、どこか、さらに外部から事態を冷ややかに眺めているようなところがあって。 土地に縛られた人間の達観、いや、諦念か。それがさらに、社会の矛盾を、見ている我々に感じさせる。 最後にテロップで表示される、一種の告発。物語そのものは、その核心を必ずしも突いていないようにも感じるけれど、逆に、ズバリ核心を突かないが故に感じる闇の深さ、ってのもある訳で。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-02-25 18:07:11)(良:1票) |