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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令 《ネタバレ》 
今は有名になった庵野秀明氏が若い頃に関わった自主製作映画とのことで、現在は「シン・ウルトラマン」(2022)とともにアマゾン・プライムビデオで配信されている。映画というよりTVの30分番組の作りになっていて、中間あたりにCMの切れ目が入れてある。 基本的にはかなりまともな特撮怪獣物で、防衛基地の内部や装備品や街の建物などは、自主製作のミニチュア特撮としては信じられないほどよくできている。怪獣の着ぐるみもちゃんと作ってあり、顔の造作や唾液が糸を引くのが使徒を思わせる。怪獣の名前が「…エル」なのも天使イメージで使徒っぽいが、これは別の語源解説が付いているらしい。 背景音楽も昔のTV番組で聞き覚えのあるものを多用している。BGMの使い方として、TV番組では登場人物の私的ドラマで使われていたM27が、今作ではマットアローの発進場面にまで流れていたのは新鮮だったが、これは全体がハードな展開のため人間ドラマ限定の箇所がないからというだけかも知れない。 しかしどうしても突っ込みたくなるのはウルトラマンが本体・服装とも地球人仕様なことである。別に宇宙人が宇宙人顔である必然性はないにしても、全体として生真面目な作りなのにここだけギャグなのは変だろうが、これは学生時代からのシリーズとして外せない趣向だったということか。ウルトラマン以外はユーモラスな部分がないのは無味乾燥なようだが、終幕時の「こいつう!」(笑)はツボを押さえていたとはいえる。  物語について、市街地へ殊更に容赦ない攻撃が行われる展開だったのは、昭和(戦後)的にいえば一般民衆を顧みない軍組織への反感ということになるだろうが、しかしもう少し素朴な感覚でいえば、こういう怪獣モノで平気で街を壊すことへの微妙な反発の表われとも取れる。ガキの頃なら何とも思わなくても20代にもなれば、たとえ怪獣を倒すためとはいえ街が壊されれば人も死ぬだろうからまずくないか、という方向に意識が向くのは自然なことである。劇中現場がビル街ではなく住宅地が中心だったのも、一般の人々が現に住む場所が無惨に破壊されることへの心の痛みの表現といえる。 また人間ドラマに関しては、情を殺して義を立てるのを美徳とする戦前世代の硬直性や権威主義に対して、別に情を殺すこと自体に価値があるわけでもなく、誰も泣かずに済む方法を柔軟に考えるべきではないのか、と逆らってみせたのかと思った。ただし現実問題として人間にできることには限界があり、今回はウルトラマンの力を借りて最悪の事態は免れたものの、仲間1人が助かっただけでハッピーエンドともいえず、戦いで多くの人命が失われたことへの悔いは残った、ということかも知れない。当時の既成秩序や現実の中で苦闘する若い世代の姿を描写しているようではあった。  そのほか出演者の演技についてはコメントしないものとして、登場人物では隊長(年齢不詳)の顔の張り具合が北の最高指導者のようで、当時の日本人の栄養状態が良好だったことを思わせた。また防衛組織にちゃんと女性隊員がいて、防衛隊員らしい発声をしていたのは心地いい。一瞬だったが振り向いて「ウルトラマンです」と言った女性隊員は「新世紀エヴァンゲリオン」の伊吹マヤさんを思わせた。
[インターネット(邦画)] 5点(2023-07-08 15:21:24)
2.  タブロイド 《ネタバレ》 
TV報道を扱った映画である。劇中TV局はマイアミに拠点を置き、広くラテンアメリカを放送エリアにしたスペイン語放送ということらしい。 内容的には一応見たがだから何ですかという感じで、こういうことは実際あるだろうとは思うが、特に感慨深いものはなく面白味もない。原題/英題のCrónicas / Chroniclesは、普通にいえば年代記の意味だろうから意図が不明瞭だが、例えばこういう報道の連なりがやがて歴史になってしまうのはまずいと言いたいということか。また邦題は、普通はタブロイド版の印刷物のことだろうから看板に偽りのある印象だが、これは例えば劇中放送局の報道姿勢を表現するために、日本でいえば大衆紙のイメージの方がふさわしいという意味か。別に日本のTVが高級というわけでもないだろうが。 ところで日本語の解説文を読むと、1991年の湾岸戦争に関連して「当時テレビ局が流したニュースの中にはPR会社によって巧みに演出された映像が挿入されていた」などということが書いてある。またそれとは別に、1992-95年のボスニア紛争の関連でも「戦争広告代理店」という言葉が出ていた記憶があり、そういうことまで考えていいのであれば今日的な意義も当然ある映画ということになる(実際さんざん騙されている)。しかし邦題はまるでゴシップ紙の話であるかのように矮小化した形になっており、また実際見た印象としてもそれほどスケールの大きい問題提起にはなっていない。何にせよ20年近く前の映画なのでオールドメディア限定の世界ではある。  ところで製作国としてはメキシコの名前も出ているが、映画で見えているのは南米エクアドルのババオヨ市(Babahoyo)という設定になっている。実際そこで撮った映像も多かったのだろうが、他もエクアドル国内での撮影だったようである。 風景として特徴的だったのは高床式の家と、そこへ通じる高架の木橋が多く見えていたことで、これは実際にババオヨ市街地の南にある湿地だか沼だかに面した場所で見られるもののようだった。貧しい人々の住居という意味なのか不明だが、そんな家々にもちゃんとTVアンテナらしいものが立っていたのはこの映画のテーマにも結び付く風景だったのかも知れない。 そのほか夕方の街に多数の鳥が飛来(就塒前集合)していたのは、日本ならカラスとかムクドリだろうがエクアドルのこれは何だったのか。映画のテーマと関係ないようだが映像的にあえて目を引くよう取り上げられていた。
[DVD(字幕)] 4点(2023-04-08 09:39:20)
3.  たそがれの東京タワー 《ネタバレ》 
「宇宙人東京に現わる」(1956)という映画のブルーレイを入手したところなぜかこの映画のDVDが一緒に入っていた。他の視聴方法もあるのかも知れないが、もしかしてそういう特殊な趣味の人間しか見られない映画ということか。ちなみに東京タワーは映画前年の1958年に完成したが、1961年には早くもモスラに破壊されていた。  内容としてはいわゆるメロドラマだそうで、東京タワーでたまたま出会った男女の恋の行方を描いている。序盤では都会に馴染めない主人公の疎外感や不安定感が自分のことのように感じられ、さらに「悪い子」になってからは気が気でなくなって見るのがつらくなる。これで最後がハッピーエンドだったら話を作りすぎだろうと思っていたが、終幕は意外に納得感があって悪くなかった。エレベーターガールの人は困惑していたが、大事な場面というのはわかったと思われる。BGMのアニーローリーが心に染みる。 荒唐無稽とはいえ単純なシンデレラストーリーではなかったようだが、これと当時の世相の関係をどう受け取ればいいのかわからない。社会階層の違いがあるのは当時も今も同じだろうが、この映画では上流を目指すというよりも、新しい居場所を自分らで作ろうとしたと思えばいいか。そういう可能性を期待したくなる上向き感が当時の社会にあって、東京タワーというものをそのシンボルにしたのかと思っておく。  ところで鏡の中の主人公は本人の反転像であって、本人が内向的で実直とすれば外向的で奔放な人格といえる。これが主人公に悪事を唆したことで新しい世界が開かれた一方、悪事への悔いから人としての正しい道を主人公に再認識させ、本来の性格を補強する役割もあったのかも知れない。単純に本人のダークサイドでもなく、これ自体が複雑性を持ったキャラクターだったらしい。 また複雑といえば男の許嫁もそのように見える。未来の社長夫人の道は絶たれたものの、経営者につながる立場は確保できたと思われるので実利は失っていない。一方、終盤で思いがけず主人公の真心に感じ入ったのは本当と思われるので、その上で幼馴染を幸せにしてやろうという善意を働かせた結果が最後の展開と思われる(自分は選ばれなかったという落胆を隠して)。さすが上流階級の人はいろいろ考えがあると思わされるが、それに快く協力した社長も大人物だったらしい。社会階層の上下はあっても人の心は通じることを信じる映画だったようである。
[DVD(邦画)] 7点(2023-01-21 13:47:15)
4.  箪笥 《ネタバレ》 
原題の「薔花,紅蓮」とは、19世紀初めの古典小説「薔花紅蓮伝」に出る姉妹の名前である。もとの物語は中朝国境に近い平安道(現・平安北道)の鉄山という場所で、継母のせいで死んだ姉妹の亡霊が官衙に訴えて処罰させる話らしいが、この映画では継母と姉妹という設定だけ借りて別の物語を作っている。姉妹の名前も薔花・紅蓮とは違っているが、ちなみに漢字で書くとスミ:秀美、スヨン:秀妍になるらしい。  内容的には陰惨な心理劇のようなもので、台詞に出ていた「本当の恐怖」から逃れられない残酷な現実が最後に明らかになる。ゾンビとか貞子のようなありきたりなホラー要素はかえって不要ではないかと思ったが、致命的な事故に気づきながら結果的に見過ごしにした人物が罰せられるという、もとの小説にあった勧善懲悪的な(というより懲悪的な)趣向には生かされている。 また映像面や音響面でのこだわりがあったらしいのは悪くない。タイトルバックの花柄模様は古風なだけでなく、いろいろ変なものがこっちを見ているかのような気色悪さがある。屋内の場面は日本風の家屋(外観は別?)にして古い雰囲気を出したとのことで、こういうことなら極端に地味な邦題も生きるという気はした。 最後に真相がわかってみると辻褄が合わないところもなくはなかったが、あまり詰めて考えずに、要は主人公の妄想が展開していく過程だったと思っておけばいいかと個人的には思った。もとの小説は1924年(大正13年)以来何度も映画化されたとのことだが、今回は現代的なホラーに寄せた形で作ったということかも知れない。テーマ曲が最後に物悲しい余韻を残す映画だった。  個別の場面では、序盤で朝になってから怖いことが起きたのはタイミングとして斬新だと思ったが、ここは実は心霊現象でもなく、本人の体調変化を知らせる明け方の悪夢ということか。また終盤で“見ざるの像”(仮称)を壊したのが結果的によかったのかはわからなかった。 登場人物に関しては、特に継母が憎悪を発散する表情や口調が恐ろしく、こういう場面には一生居合わせたくないものだと思わせる。晩餐時の狂気じみた独り語りとか、その後の発作か何かの壮絶な様子など、役者で印象づけられる場面が多かった。 また姉妹も一見愛らしいようでいて、特に姉役が激昂する顔など見ると可愛いとも何ともいえなくなるので困る。ちなみに妹役はこの頃「国民の妹」の扱いだったそうである。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-02-26 09:47:35)
5.  淡水河の奇跡<TVM>
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。駅は淡水駅、街の名前も淡水(新北市淡水區)で、台北市から流れて来る淡水河の河口に近い港町である。19世紀には台湾島の主要な貿易港だったとのことだが、この映画ではそういう歴史的なことは関係なく、そもそも街の風景もあまり出ない。主人公の母親が「魚団子」の食堂を経営していたのがかろうじてそれらしい。 なお原題の「鮮肉老爸」は漢字だけ見ると意味不明だが(鮮魚ならまだしも何で肉?)、これは「美少年父さん」というような意味かと思われる。  全体的にはタイムスリップをテーマにしたSFコメディであり、あまり深みを感じさせるものでもないが娯楽映画としてよくできている。コメディらしくそれなりに可笑しいところがあり、序盤ではかなり下品だと思っていたが、プロポーズの背景で歌う場面でまずは失笑させられた。中盤のTV番組やエンディングの楽曲「野性的青春」もふざけている。 映画のジャンルとしてはコメディ/ロマンスとされているが、基本は家族の物語のはずなのでどこがロマンスかと思っていると、終盤の見せ場に至って初めてそういう意味だったのかと納得させられる。途中で一度は邪魔されたキスシーンも、最後にちゃんと実現(情熱的!)していたのは正直感動的だった。ほかにも観客の意表をつくところのある作りだが、個人的にはここが最も意外な展開だった。 なおSF的にいえば、過去を変えたらどうなるかという大問題があったはずだがあえて回避する結末になっていた。  登場人物としては、主人公の彼女(演・方志友 Beatrice Fang)がなかなか可愛いので好きだが、若手の科学者だったようで主人公には向いていない。また主人公の母親(演・苗可麗 Miao Ke-Li)は、Wikipedia(中文)では「淡水公認第一美魔女」と紹介されており、確かに少しカワイイ系の入った美女にも見える。ちょっと体型的に厳しいところもあったが、終盤の見せ場では役どころにふさわしい姿を見せていた。これは同年配の女性が見て心ときめく(羨む)展開だったかも知れない。 ほかどうでもいいことだが、劇中のTV番組に出ていた「命理大師」役は、このシリーズのプロデューサーで7作中2作の監督もしている葉天倫という映画監督である。他の回にも出ていたが、今回も個性的な容貌に合ったしょうもない人物役を芸達者に演じていた。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-15 14:47:48)
6.  ダブル・ビジョン 《ネタバレ》 
1000年前の道教の予言がもとで現代に起きた連続殺人事件を、台北市の刑事とFBIの捜査官が協力して解明していくミステリー調のホラーである。 全体的に陰鬱で不穏な劇中世界ができており、一応は21世紀なので大企業のオフィスなどはそれなりに現代的だが、特に警察署内が日本でいえば昭和の刑事物のようで20世紀色が濃厚に見える。若干くどい感じの背景音楽が流れるのも古風な印象を出している。 ホラー要素としては、不気味な死に方が連続するのは予告の通りだが、そのほか突然の壮絶な殺し合いもあったりして驚かされた。また「双瞳」というものの見せ方はうまくできている。  謎解き部分は実はよくわからなかったが、主人公も犠牲者になるのかと思わせておいて、実は別の役割だったという意外な展開だったらしい(よくわからない)。永遠の命を求めていた真犯人は、最終的には主人公のせいで目的を達せられなかったのだろうと思うが(よくわからない)、実はそのことも含めて予告されていたと思えばいいか(よくわからない)。また同時並行で主人公の家族物語が展開し、これもすっきり納得はできなかったが、ラストはしみじみした印象で悪くなかった。 また個人的に面白かったのが主人公とアメリカ人の異文化交流だった。自分としては「レッドブル」(1988)を思い出したが、人物の関係性は当然違っており、この映画では科学捜査と俗信の対比を見せる形になっている。御守りなら日本の警察にもありそうだが、本来は赤い守り袋でなければならないらしい。「アメリカにも悪霊…」「科学捜査は…」「長年FBIで働いてれば…」には笑った(共感した)。 そういった感覚のギャップを含めてコミカルな場面が実は結構あり、これは日本でいえば呪怨シリーズのようなものかも知れない。笑わそうとする意図を前面に出さず、真面目な顔で可笑しいことを言ってみせる印象なのは結構好きだ。ただ「ママに感謝」がわかりにくく、終盤ではこれが主人公の妻に向けた言葉になっていたらしいが意味不明瞭なのは残念だった。現地の言葉は全く知らないが謝謝你媽と言ったのか。  出演者については主人公役が香港、他は台湾の役者のようである。怪しい少女役は林涵Hannah Linという人で、当時本当に17歳くらい(16歳?)だったらしいがなかなかの迫力を出していた。また個人的にはショートヘアの監察医や主人公の妻が(年齢はともかく)なかなか可愛い感じで好きだ。
[DVD(字幕)] 6点(2021-04-24 11:29:19)
7.  ダンスウィズミー(2019) 《ネタバレ》 
宣伝文では「ハッピーミュージカルコメディ」とのことだが、ミュージカルに徹するわけでもなくそれほど大笑いもしない。しかし一応ハッピーな気分で終わるので悪くない映画ではある。ちなみにミュージカル成分は、昔の映画でいうと優香出演の「恋に唄えば♪」(2002)と似たようなものかと思った(もっと少ないか)。 序盤のオフィスやレストランのミュージカルパートでは、せっかく周囲を巻き込んで歌とダンスで盛り上がったと思ったのに現実が悲惨だったのは非常に落胆させられたが、これはそれこそミュージカルの虚構性の表現ということか。その後のロードムービー部分で仲間と歌っているのは普通に楽しげで、特に恥ずかしいトラブルもなく、こういう純粋に音楽を楽しむところまでいったん戻ってから最後のトラウマ解消に至ったという全体構成だったのなら納得できなくはない。歌につられて自然に身体が動くのは変ではないだろうとはいえる。 歌の選曲としては少し古い方へ寄っていたようだが、個人的には「夢の中へ」とか「年下の男の子」のあたりは劇中人物のノリに同調できた。また普段、映画を見ながら先読みなどはしない方だが、3人組での「ウエディング・ベル」に関しては直前の予感が当たった(この状況ではこの歌しかありえない)…実は自分としては柄にもなくこの歌が心に刺さるものがあって痛い。 ちなみに何の説明もなく突然方言を聞かせるのが好きな監督ということなのか、今回また耳慣れない方言が出て来ていたが、これは新潟県の言葉だったのか(新潟市はほぼ標準語だと思っていた)。  キャストに関して、主演の三吉彩花という人は子役時代からいろいろ出ていたのを見たことがあり、昔から長身で美形だったので、周囲の子役の中で変に目立ってしまうところがあったように思うが、ここに至ってやっとふさわしい姿で出られるようになって他人事ながら感無量である。単純な美人女優でもないようで、今後とも幅広く活躍できる役者になってもらいたい。 ほかに名の知れた役者もいるがあらかじめ情報が出ていなかったようで、黒川芽以が出演しているのは実際見て初めてわかった(姉の「友美」役)。また「ウォーターボーイズ」(2001)のエンターテインメント性を一気に向上させた立役者である秋定里穂さんが出ているのは最初から知っていたが、実際見ると出番が少ないので不満に終わった。ここはもう少しファンに配慮してもらいたかった。
[DVD(邦画)] 6点(2020-05-03 20:29:16)(良:1票)
8.  太平洋奇跡の作戦 キスカ 《ネタバレ》 
かなり昔にTVで見たことがあり、その時点で記憶に残ったのは船を一杯二杯と数えていたことだったが、今回は伊号第七潜水艦(イ7)を「いのななせんすいかん」と呼んでいるという細かいところに気づいた。軍艦は往時の円谷特撮で映像化しており、戦艦大和のような有名どころでない地味な艦を大型の模型で細かく作ってある。個人的には海防艦国後の造形に注目した。  内容としては実際あったエピソードの組替えや一部改変で映画向けの物語を作っているが、結末はわかっているので不安要因はあまりない。司令官は臆病者かと疑うこともなく、また申し訳ないが最後の歓喜も予定通りに見える。 しかし途中で味方と衝突したとか、海岸近くをぎりぎりで航行する(少し誇張気味か)あたりは手に汗握る雰囲気を出している。そもそも司令官がこの役者であるからには、やる時はやるはずだというのもあらかじめ見えており、実際に潮流が激しい場所を恐る恐るでなく全速で一気に乗り切る場面を作っていた。だいたい水雷戦隊司令官が臆病者では務まらない。 また当然ながら現代の感覚で好感が持たれるのは、精神論より合理的判断を優先した気象班長のエピソード、及び撤退時に陸軍兵が銃を海中に捨てていた場面である。これは天皇から預かった銃が生命より重いかのように思われていた時代に、道具より人間を優先した指揮官がいたという史実をもとにしている。 太平洋戦争で日本が守勢に回って以降、ほとんど唯一完璧に成功したのが撤退作戦だったというのも情けないが、現代の感覚としてはまあそんなものだと思わなくはない。全員逃げてからも敵は気づかず、上陸作戦で大混乱だったというのは痛快ではあるが、どうせなら同志討ちの米兵も死なずに済めばもっと完璧な結末だったろうと思ったりする。  なお劇中では、なぜか犬をつないだまま逃げていたので心配させられたが、これも米軍の上陸時点でちゃんと生きていたらしい。 ほかこの作戦のために潜水艦の乗員69人が犠牲になったのが玉に瑕のように見えたが、この事件自体は映画での創作だったようである。台詞にもあったが史実としては、それ以前の段階で撤退や補給に従事していた潜水艦が何隻か失われたとのことで、それをこの映画ではイ7潜1隻で代表させた形だったらしい。映画を見ていると、艦隊参謀に続いて発射管室の人々くらいは出られるのではと思ってしまうが、そこは残念ながらもう間に合わなかったことになっていた。
[DVD(邦画)] 6点(2019-12-07 11:22:22)
9.  太陽のない街 《ネタバレ》 
原作にかなり忠実に見える。特に大きな改変はないようで、これは製作時点の昭和29年でも、大正末年~昭和初期の内容がそのまま通用するとの考えだと思われる。 話としては同じでも、登場人物の生の迫力が映像的な価値を加えており、また例えば「婦人部会」はこういう場所でやっていたのかといった意外感もある(座敷があるとは思わなかった)。追加要素として、玉の井に売られたとか妊婦の拷問場面(少し)といった刺激的なところもあるが、運動会での人々の表情や、独自要素としての人形劇などユーモラスな場面も加えている。ストーブの煙突が熱かったのは笑った。 撮影場所に関しては、谷間の長屋は広大な空き地(現・駒沢オリンピック公園)にオープンセットを作ったとのことだが、ほか主人公が坂を降りて来る場面で右側に見える塀は、現在の小石川植物園の敷地北西側にある塀と同じに見える(65年間も同じ塀???)ので、他にも小石川の現地周辺で撮った部分があったかも知れない。  ところで今さらながらの素朴な疑問は、労働運動と革命運動は必ずセットでなければならないのかということである。要は19世紀ドイツの著名な思想家の影響なのはわかるが、劇中の争議団員は必ずしも革命自体を目指していたようには見えず、一方で経営者側の台詞によれば真に問題なのは「赤色攻勢(??)」であって、この争議自体には妥協の余地もあったということらしかった。つまり体制側がロシア革命の波及を恐れたことが弾圧を招いたのであり、争議の敗因もこの辺にあったように取れる。 労働者が力を持ち、社会的地位の向上や労働条件の改善を目指すこと自体が否定されるものでは当然ないが、少なくとも現在の感覚でいえば、この時期に日本でも革命が起きていればよかったなどとは全く思えない(社会主義国も戦争はする)。最初の方で、「失業者がうんと出りゃそれだけ革命が早くなる」という発言に対して中心人物の男が反発していたのは、本当に大事なのは労働者の生活であること、さらにいえば、労働者が野心家(革命家)の道具にされてはならないとの主張にも感じられた。 この映画(と原作)がこれまでどう解釈されてきたのかは知らないが、とりあえず自分としては以上のように思っておく。  ほか出演者としては、幹部連中の中にいた加藤嘉氏がイメージと全く違う姿で意外だった。また「生きる」(1952)で印象深い小田切みきという女優が主人公と親しい役で目立っていた。
[DVD(邦画)] 6点(2019-11-30 14:29:09)
10.  たいむすりっぷメガネ 《ネタバレ》 
2011年から2014年まで活動していたアイドルユニット「AeLL.」(エール)が所属していた芸能プロダクションが製作し、メンバー4人が出演したアイドル映画である。主演の篠崎愛という人は巨乳だそうだがこの映画では隠している(脚は見せている)。撮影場所の山梨県南アルプス市というのは、このグループが地元と協力した農業体験イベント「AeLL.村プロジェクト」をやっていた場所らしい。  内容としては、地元眼鏡店(時計店)で作られた眼鏡をかけると一回だけ過去に戻れるという他愛ない設定をもとに、現代→高校時代(8年前)→また現代、という三部構成を作っており、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の矮小化版のようでもある。宣伝上は「ハートフルコメディ」とのことだが実際そう簡単ではなく、まず最初の現代を殺伐とした世界に見せておき、タイムスリップ後の高校時代ではその殺伐感を引き継いだようでいて微妙に笑わせる要素を取り入れながら、最後は映像効果付きのドタバタコメディにまで発展する。最後の現代はまた真面目な展開になり、普通にハートフルな内容にして最後を締めている。タイムスリップの効果としては、主人公の周囲の状況が著しく改善された一方、一番大事なことは結局何も変わっていなかったように見えたが、しかし外面的に変わらなくても本人の気づきがあった、というのが物語の落ちらしい。 導入部からコメディへの移行があまりスムーズでなかった気はするが、主人公が机の引き出しに片足を入れた場面など、真面目な顔で笑わせるような感覚は嫌いでない。コメディだと思えば、主人公が同級生に「老けた」と言われるとか、古典的スケ番の扮装が突っ込みどころというのもわかる。途中で何となく間が悪いようなところもあったが、結果的にはそれほど悪くないと思わされる映画だった。  ちなみに個人的にはこの映画で南アルプス市のイメージが向上するということは全くなかった。当初段階で地元に残っていたのがろくでもない連中ばかりに見えたのはともかく、市役所ぐるみで悪徳業者に騙されるなど全くいいところがなく、景観面でもそれほど美的なところはなかったが、地元の人々がこれで満足だったのであれば結構だ。
[インターネット(邦画)] 4点(2019-08-24 15:07:32)
11.  ターミネーター 《ネタバレ》 
最初に見たのは公開後のTV放送と思われる。1984年の映画なので世紀末にはまだ間があったが、いわゆる「ノストラダムスの大予言」が事実無根ということが証明されていなかったこともあり、少し先取りした終末感を煽るラストが非常に印象的だった。その後の実生活でも、どうも嵐が来そうだとか漠然とした不安があるときに、この映画のテーマ曲が頭の中で鳴っているということはあった。 もう一つ、ラブストーリーの面では「僕は君に会うために時をこえて来た」(I came across time for you)という台詞が女性にとっては胸キュンに違いないとずっと思っていた(自分で使ったことはない)。ただし今回見たBDの字幕では、なぜか素っ気なく「僕は君のために来た」としか書いてないのは心外だった。「時をこえて」と書くからいいのではないか。こんなことを言える男はそうそういるものではない。  今回見て思ったのは、やはりいかにも低予算な映画だということである。基本的にはアクションで見せており、金属製の腱?を動かすと指が動くとか、目玉をほじくり出すとかを見どころと思っていたらしいのはかなりショボい。ただストップモーション撮影の部分は、昔は何とも思わなかったが、いま見てもまあこんなもんだと思わなくはない。 もう一つは(少し前から思っていたが)、現時点でドローンの軍事利用に関わっている連中は絶対この映画が念頭にあるだろうなということである。またAI技術の進展や情報通信ネットワークに関わる世界的企業が存在感を増しているなど、劇中のスカイネットそのままではないにせよ、何か恐ろしい時代が来るのではないかと不安な情勢になっている(便利になるのは結構だ)。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-06-22 23:21:08)
12.  旅猫リポート 《ネタバレ》 
大変申し訳ないが全く好きになれない映画だった。 まず、映画ならときどき見るがTVドラマは見慣れていないので、笑えないドタバタとか過剰に苛立たしい人物表現が気に障り、序盤の30分くらいで好意的に見ようとする気が完全になくなった。ドラマとしても底が浅いようだが、とりあえず登場人物が声をあげて泣くことで観客を泣かそうとするのはやめてもらいたい。 またアニメならともかく動物の擬人化を実写でやるのは嫌いだ。ネコの姿をしていても、人と同じようにものを考える生物などネコとは思えない。ネコとヒトは違う動物であるから考えることも違うと思うのが基本であって、それでもちゃんと接点が生じるから家族扱いされるのである。少なくともうちのネコ(2匹)は絶対にこんなことを考えていないと断言するが、このように人間側の思いや都合をネコに投影しようとするのが世間の常識ならこっちが野暮ということになる。 ちなみに最後まで責任をもって飼うという発想も登場人物にはあったようだが、野良化させてもいいというのでは厳しさがない。自分としては、戸が締まった家の中で食い物がなくなって仕方なく腐乱死体を食って腹を壊すようなことがないように、ネコ(2匹)より先には絶対死なないことが人生の目標になると思っている。ネコに看取ってもらうなど筋違いだ。  以上により、2点は少し厳しすぎるかも知れないが好きになれないので仕方ない。 なお細かい点として、足元にネコがいる(という想定の)場所でヤカンを落とすのはやめてもらいたい。またあの墓園(若松区)から南西方向に虹は出ないのではないか。好きな女優は特に出ていないが、広瀬アリスという人は最近嫌いでない。高校生役は無理があるがそれをいえば他の男連中も同じだ。
[DVD(邦画)] 2点(2019-05-18 09:57:30)
13.  脱脱脱脱17 《ネタバレ》 
現在は女子大生監督になっている松本花奈という人が17歳の時に撮った映画とのことである。 ジャンルに「音楽」が入っているのは、映画と音楽のコラボレーションによる映画祭「MOOSIC LAB」に出品されたからで、コラボの相手であるガールズバンド「the peggies」の北澤ゆうほ(ボーカル+ギター)という人が実質主演もやっている。MOOSIC LABでの上映時には78分だったそうだが、アマゾンPrime Videoで見られるのは108分バージョンである。ちなみに「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016」で受賞もしている。  内容としては17歳の高校生女子と、17年間高校に在籍していた男の2人がそれぞれ「脱」をやりとげる話と思われる。女子高生がストリップ劇場の舞台に立つという刺激的な場面もあるが4回脱ぐわけではない。 2人のうち女子に関しては、話が複雑でどうも簡単にまとめられない。自分が自分でいるためには自分をしっかり持つ必要がある、しかし他人との交流を遮断してしまっては得られないものもあり、それも一方通行ではなく互いに本当の姿を受け入れ合うこと、また心から自分を思ってくれる相手や、心から相手を思うことも大事だ、というような感じのことが連なっている印象がある。それで自分として何か刺さるものがあったかというとないわけだが(主に年代の関係で)、しかし一定の内容をそれなりのインパクトをもってぶつけて来ようとしているとは感じられる。母子関係がどうなったのかよくわからなかったが、要は自立した個人として向き合う準備ができたということか。 一方で男については、見た目からしてこんな奴に肩入れしてやる義理はないと突き放したくなるところだが、しかし自分としても男子であるから、夜の海岸で主人公女子にかけた言葉は素直に心に響いた。否定的に言われる場面もあったが、単なるバカということでもなく基本は誠実な男だったらしい(キスは許せない)。 ほかちょっとした場面だが、夜空に星が2つ飛んで来たところは若干泣かせるものがあった。マリアという人がその後どうしたのか不明瞭なのは残念だ。  なお実質主演の人は、歌は本業なので当然できるとして、外見的にも童顔ながら大人っぽいカワイさがあって目が離せない。チャップリンからのやりとりなどは自然にうまい感じに聞こえる。また教育実習生の人物造形も結構好きだ(かなり可笑しい)。ちなみに監督本人もセーラー服姿で一瞬出ていたようだった。 [追記]見てから少し時間が経つと何だか愛しい映画に思えてきた。年齢的には対象外だろうが。
[インターネット(邦画)] 7点(2019-04-27 10:23:56)
14.  旅人は夢を奏でる 《ネタバレ》 
フィンランドのロードムービーである。邦題はどちらかというと意味不明で(「夢」はあるか?)、英題は北への道というような感じだろうが、原題では”pohjoiseen”が「入格」というのを使っており、単純に方向を示すのではなく“北の地へ入って行く道”というような意味だと思えばいいか。 移動の経路としては、国の南端にある首都ヘルシンキから北に向かってユヴァスキュラをまず訪れ、アーネコスキに立ち寄った後、セイナヨキを通って? ボスニア湾岸に出て? オウル経由で? 北上してロヴァニエミ(フィンランド北部のラッピ県の中心都市)に至り、さらに奥地のケミヤルヴィから北に入り込んだ場所を終焉の地にして終わっている。行程中で特に目を見張るような景観はなく、ただ淡々とフィンランドの普通の風景を映しているようである。  物語としては突然帰った父親が、かつての自分の所業のせいで混乱して停滞していたものをひっかき回してぶち壊して、結果的に息子の人生を立て直して家族を再構成した話に見える。 難しいのは父親の語る寓話のようなものの解釈で、うち孫に語ったスグリの実の話は、これまで永遠の40歳のつもりだったが何もできずに来た男が、世界最良のものに出会ったのが人生の最後だった、という状況を語っていたと思えばいいか。コメディめかしていながらどうも最初から陰気臭さが感じられて、自分としてはこのジジイの行末に不吉なものがありそうだとばかり思いながら見ていた。また「射手」の話はストーリーの根幹に関わるものだろうが、何と結末部分が語られないで終わってしまう。ここは息子なり観客なりがそれぞれ思ったことそのままでいいということか。 結果として悪い話ではないだろうが、個人的にはそれほど共感できる箇所もなかった。当然ながら世間では評判がいいらしく、こういうのをいいと思わない自分は映画好きとはいえないのだろうなと思った。  ちなみに今回勉強になったこととして、英語の”Earl”というのはフィンランド人にとっても発音しにくい言葉だったらしい。またホテルで披露されたピアノ曲「ねこふんじゃった」を台詞では”Kissanpolkka”と言っていたが、これは「ネコのポルカ」(kissa「ネコ」→kissan「ネコの」+polkka「ポルカ」)という意味である。フィンランド語の題名にもちゃんとネコが出ていることがわかって若干感動的だった。ついでにいうとジジイの孫はるみちゃんという子だったが、lumiというのは雪の意味である(ゆきちゃん)。
[DVD(字幕)] 5点(2018-12-31 12:58:06)
15.  竹取物語(1987) 《ネタバレ》 
原作付きの映画ということになるがまともに読んだことはない。 当時の感覚としては「未知との遭遇」(1977)などよりはるか大昔から、日本ではこういう壮大なスペースファンタジーがあったと言いたかったのだと思われる。最初がまるきり「まんが日本昔ばなし」だったのは少し呆れたが、求婚者のうち一人を本命扱いして純愛物語のようにしたのは悪くなく、衣装にかなり力が入っていたのが目を引いたりして、娯楽映画としてけっこう楽しめるものになっている。大昔にTVで見たときには割といい印象だったのを憶えているが、それもそれほど間違ってはいなかったらしい。ただ主人公の姫は人物造形が不十分のようで、どういう人格なのかがはっきりせず、結局あまり好きになれなかった。また眉毛をきつい感じで描いていた割に凛とした感じが足りないようでもある。  ところで少し気になったのは劇中年代がいつなのかということで、原作で求婚者のモデルになったとされるのは飛鳥時代から奈良時代初期にかけての人々だが、映画のラストでは「八世紀の末の(西暦七九〇年頃)ことである」と出たので少し驚いた。七九〇年が西暦というなら八世紀も西暦だろうがそれはまあいいとして、この時代設定だと劇中の「帝」は桓武天皇ということになり、従来の世界観を覆す出来事に触発されたために(長岡京を経て?)平安京へ遷都したということにしたかったのか。 そうすると映像に出る条坊制の都は藤原京ではなく平城京だったことになるが、それなら最初の風景映像に出た大和三山のような感じのもの(4つ見えるが)は何だったのか。また劇中人物の名前でも「耳成の長者」「畝傍の真名井?」といったようなのがあり、どうも最初は飛鳥時代のこととして制作を進めていたのが、途中で方針を変えて前記キャプションを入れたので変になったのではという気がした。  なお自分として面白かったのは、求婚者の一人が竜を発見した場面が東宝伝統の怪獣特撮だったことで、ここで海面に竜が現れたので船が危ないと思ったら、いったん無視して通り過ぎていったのはかなり意外で斬新だった。怪獣映画なら最初から狙ったように船を壊しに来るだろうが、この映画では変に刺激しなければ難を逃れられたはずというのが野生生物的といえる。
[DVD(邦画)] 6点(2018-05-19 00:00:06)
16.  たたら侍 《ネタバレ》 
公開中はかなりの悪評だったようだがなるべく素直に見るようにした。DVDで見たので編集後のバージョンと思われる。 大まかにいうと、まずは奥出雲で製鉄の技が受け継がれてきたことを紹介し、さらに時代を戦国期に設定することで、「侍」に関する思いをそこに込めたという感じに取れる。しかし結果的には褒める気にならない映画だったので、その理由をなるべく手短に書いておく。  (1)全体構成の問題として、製鉄の伝統が途絶えそうになる危機が発生するわけでもなく、主人公のせいで一時的に混乱しただけで、事件前後で村は何も変わらなかったように見える。それはそれで変わらないこと自体の表現かも知れないが、しかし主人公の人格形成という面でも、結果的に父親や先代と同じ認識に至っただけで、あの頃おれは馬鹿だった、という物語にしかなっていない。あってもなくても同じだった(と観客の立場で思う)出来事を映画にしても、ドラマとしては弱い気がする。 (2)物語の展開に納得できない。主人公に関していえば、若者の純粋な思いと愚行と挫折、といったことが自然に受け取れず、一体この男は何をやっているのか???という疑問の方が先に立つ。また近江商人がわざわざ奥出雲まで出張って来て姑息な手段で村の支配を目論んでいたようだが、普通に考えれば劇中の発言通り「(織田が)攻め込んで来るはずがなかろう」で終わりであり、これで騙される筋書き自体が不自然である。 (3)「侍」ということに関しては、戦国時代なのに観念論のような武士の心構えなど語られても現実味がなく、またそれで結局何がいいたかったのかも不明である。劇中の村の状況を見ると、一定の制約のもとで自衛力を保持するが戦争はしない、という戦後日本の状況を容認しているとも取れるが、しかし主人公が広い天下の情勢を見てからの企てが失敗したことからすれば、あえて視野を狭めて外は見ないで武器は嫌いだ戦さは嫌だと閉じこもるのが理想だというようでもある。そういういわば社会的メッセージのようなものがありそうでいて、実際あるのかないのか不明瞭なので非常に気持ち悪い状態だった。  なお出演者に関しては、ダンスグループのメンバーには当然関心がないが、石井杏奈という人は顔を見ていると和むので好きだ。今回はダンスでもなく舞いの場面をわざわざ入れていたようである。ほか田畑智子さんも嫌いでないが、今回は何だかよくわからない役で残念だった。
[DVD(邦画)] 4点(2018-04-30 23:58:07)
17.  たまこラブストーリー 《ネタバレ》 
TV版は見ていない。「けいおん!」の劇場版と似たようなものかと思ったが、こっちの方が単体の映画としてまとまっている。ちなみに冒頭で「南の島のデラちゃん」という小編が出るが、各映画情報サイトではなぜかこれだけで独立の映画として扱われており、この「たまこラブストーリー」を見る上では完全無視で構わないと思われる。 各種情報によると、TV版の方は妙な生物が人々の平穏な暮らしをひっかき回す類のコメディだった感じだが、この映画は普通に人(若年者)の心を扱ったドラマになっている。ただTV版の雰囲気を継承しているからか、特に前半は結構笑わせる(失笑させられる)展開で、体育館の床をササササというのも変だが、主人公が告白された後の迷走ぶりなども笑った。 後半はひたすら清純なラブストーリーになるが、恋の結末というよりも、何かをまともに受け止める、というテーマの方が前面に出ていた感じである。ラストでは公衆の面前で感情が爆発するのかと危惧していたところ、最後は2人だけの専用回線に移行したのが奥ゆかしい感じで、ここは自然な共感を呼ぶ作りになっていた。この2人は、この先何ともならないままで別離に至る可能性もないではないだろうが、まだ3年生の前半のうちだろうから今後の進展があるのかも知れず、また劇中で親世代の夫婦像が提示されていたこともあり、何にせよ決して悪くない未来があるはずだ、と思わせる結末にはなっていた。 ほか主人公の親友2人にも多少の変化があったようで、ちなみに常盤みどりは少し腹黒いところが「聲の形」(2016)の植野直花のようでもあるが、最後まで主人公の味方だったのは安心した。もう1人の親友も突っ込みが容赦ないようでいて悪気が全くないところが好きだ。そういうこともあってこの映画全体も好きになった。  なお余談として、救急車に「うさぎ山消防局」と書いてあったということは、商店街だけでなく都市全体が架空の「うさぎ山」市なのかと思うわけだが(兎山の表記も見られる)、実際は現地に詳しくない者でもわかる実在の場所が映像に出て来る。登場人物が川に沈んで目を開けてブクブクする場面があったが、そういうことができるほど鴨川(高野川?)の水はきれいだということか。終盤の京都タワーはさすがに見覚えのある風景だった。
[DVD(邦画)] 7点(2017-09-15 19:57:02)
18.  太陽の王子 ホルスの大冒険 《ネタバレ》 
古いアニメと思ってほとんど期待していなかったが、冒頭から狼との戦いのスピード感で予想を裏切られた気分になり、序盤で舟を操る主人公の背景を太陽が横切ったところなどは少し驚かされた。かなり力の入った動画のようだが、ただ途中、なぜか静止画ばかりが続く場面があったのはさすがに制作上の都合を勘繰らざるを得なかった。 音楽面でも聞くべきものがあり、ヒロインの独唱のほか、管弦楽を背景にした合唱の場面もあったりして歌劇とかオラトリオのような印象を出している。非常に微妙ながらソビエト連邦の大衆向け音楽の雰囲気が感じられたのは時代の反映かと思うが、劇中でも歌を大衆の心理操作に利用しようとする人物が出ており、そういうことを制作側がどの程度意識していたのかはわからなかった。 お話としては子ども向けには地味かも知れないが、終盤で巨大怪獣同士の戦いのようになっていたのは昭和特撮の影響かと思ったりする。真っ正直な主人公が秘密の多いヒロインに翻弄され、単純バカのように詰られていたのは思春期物らしい印象だが、結局は主人公のまっすぐな意志が事態を打開していたのは人の世の正道を示したようで清々しい。男子たるものやはりこうあるべきだろうと思わせる。 結果としては大感動作ともいえないが、「まんが映画」という触れ込みの割には素人目にも出来の違うアニメに見えた。  以下はよけいなことかも知れないが、ストーリーの基本は地縁共同体が団結して外敵を撃退した話になっており、敵は単純に人を滅ぼそうとしていたのであって支配と搾取を目的にしていたわけではない。また最終的に村長の地位が揺らいだようでもなく、倉を壊した場面以外は階級闘争の要素もない。東映の労働争議が制作姿勢に影響を及ぼしたとの話があるようだが、劇中で言っているのは「団結」までであって、自分としてはそれ以上の社会的な問題意識を提示しているようには見えなかった。「団結」だけなら労働者の団結も国民の団結も同じである。 ちなみに「ヒルダの子守唄」はまともに聞くとものすごく皮肉な歌詞なので笑った。解釈はそれぞれだろうが個人的には、生態系と同じように人間も複雑につながった社会を作っており、利害の対立がありながらも何とか成り立っているものであるから、単純思考で誰かを悪人にして叩けばよいというものではない、ということかと勝手に思った。
[DVD(邦画)] 7点(2017-07-05 19:44:53)(良:1票)
19.  男子高校生の日常 《ネタバレ》 
題名からすると男しか出ていないようで見る気が薄れるが、実際見れば男女比が均衡しているので悪い印象はない。男は要はバカばっかりだが、くどくならないのでわりと気分よく見ていられる。女子の不敵な態度とか酷薄な感じも悪くなく、主人公の妹の強硬姿勢も見ていて心地いい。個別の台詞としては「温暖化そんな甘くないっつーの」という突き放した一言が個人的に好きだ。 男女それぞれ日常会話で騒ぐ場面が多く、話の内容自体に大した意味はないわけだが男女別の特徴は出ている。同じ監督の「私たちのハァハァ」(2015)も見たことがあるが、若い連中のわちゃわちゃ感のようなものを好む監督なのかも知れない。また原作由来かも知れないがギャグネタが可笑しいところもあり、登場人物の行動(演出)で失笑させられる場面も多い。物語の面では特に何だというほどのものはないが、年に一度の非日常のハレの日を何となく迎え、実はそれぞれ期待するところのあった男3人の思いが実を結ばず終わった侘しさと、明日からまた日常が戻って来るという諦念を残したラストに見えたのは悪くない。 登場人物に関しては、今回は目当ての女優が三浦透子さんと山谷花純さんの2人いたので個人的には豪華キャストだったが、ほかにコンビニのお姉さんにも目を引かれてしまったりする。また「チームしゃちほこ」の当時のメンバーが全員出ていたようで、劇中ではマイナー扱いだったが自分でさえグループ名だけは知っている。名乗り部分にものすごい脱力感を覚えるグループだった(ただし4年前)。 以上、人生への啓示を得られるようなものでは全くないが、自分としては単純に面白かった。これはけっこう好きだ。全国的に評判がよくないようだが悪い点はつけられない。  ちなみに中身と関係ないが、撮影に使った海の見える学校は静岡県沼津市の廃校ではないかと思うが、今回を含めて自分としてはここで撮った映画を3つ(または4つ)見たことがあり、その全部に前記の三浦透子さんが出ていたりする。近年かなり便利に使われているらしい。
[DVD(邦画)] 6点(2017-05-30 19:54:30)
20.  正しく忘れる 《ネタバレ》 
近親者の死による悲しみそのものでなく、そこから派生するいわば二次的な感情が問題にされていたようだが正直よくわからなかった。適切に忘れるというのは皆が普通にやっていることで、自ずとそうなるのなら別に問題ないだろうが、あえて抵抗しようとするのは自分がそうされたくないことの裏返しということか。また最後に主人公は故人の遺志を継ぐと決意した感じだったが、それだととりあえず現段階での凌ぎ方でしかない気がする。これが確定結果ということなのかどうか。 ほか全体的に台詞の文章量が多い上に話が難しいので登場人物が理屈っぽく見える。主人公に関しては、どうするのがいいか頭ではわかっていながらわざわざ逆方向に感情を掻き立てているようで、必死の思いで何かにすがるような切実さが感じられるわけでもなく、見る側を否応なしに同調させる作りにはなっていない。 そのようなことで、よくわからないが自分としては共感できない映画だった。心の底から共感できたのは、よく目にするが目的地にはならない「中央林間」という場所に行ってみるところだった(たまたま通過したことはある)。  ちなみに出演者のうち、主人公の弟役は素人目にも心許ない感じで(これが監督本人?)、タイトル直後の夕食場面でこの人物の顔が映ったところでいきなり映画自体が安っぽく見えた。自覚した上でやっているのだろうから言っても仕方ないわけだが。また主演女優は好印象だが、サークル仲間の少年は演技がくどい。
[DVD(邦画)] 4点(2017-04-05 20:36:21)
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