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《ネタバレ》 人間を縮小するというキテレツな設定ゆえに、配給会社は「おバカ・コメディ」を装って 宣伝してましたが、ぜんぜん違います。 そもそもアリエッティのスペクタクルを期待してはいけない。ビジュアル的な面白さを狙ってる作品ではないという事を、使用上(鑑賞上)の注意として明記したい。ピンポーン! 構造としてはビルドゥングスロマン(教養小説)的に見えるのですよね。時代の流れとともに産業構造、経済状況、人口動態、価値観、ライフスタイル・・・等々、モロモロの変化によって都市部の人間たちは青少年期がぐぐーっと延びて、いつまでも「成熟しない」万年青年が増えたんだろうと。だからイイ年して自分を見失っちゃう“ミッドライフ・クライシス”なんてことに陥る。だから、中年のおじさんが主人公の「成長物語」(教養小説)が成立する。 フツーの男が、なんとなく鬱々として、悩んで、悪あがきして、そんな中で、「自分の強みを生かしながら、今の自分のままで生きていけばいいよね」ってちょこっとブレイクスルーを果たす。・・・まぁ、アメリカ人にはウケないだろうな(笑)。 クリストフ・ヴァルツがフランス人をやってるってのも可笑しくて堪らない。ずっとフランス語なまりの英語しゃべってる。小人になって荒稼ぎしてるC・ヴァルツが「ここ(ミニサイズの社会)は西部開拓時代だよ」って言うのも面白い。従来の世界では、すでに搾取できる「辺境」が無くなってしまったが、小人の世界は新たなる辺境(ニューフロンティア)を出現させたと言う事か。 主人公は、このフランス人と仲良くしつつも、偶然出会ったベトナム人女性を通して、社会の底辺で生きる人々のことも知る。桃源郷のように謳われてたミニの世界でも格差社会は厳然として存在していたのだ。やがて、彼女が身を投じている社会奉仕活動を手伝うようになった主人公は、また、更なる旅と出会いによって自己変革を遂げていく。 うーむ、こうやってプロットを書いていくとホントに生真面目なハナシだねー(笑)。この辛気臭いナイーヴさは万人ウケしないでしょうなぁ。とほほ。 最後のトンネルなんて、すごくイイんですけどね。「未知との遭遇」(1977)のラストに近い感慨が。 [DVD(字幕)] 8点(2018-07-09 19:57:08) |