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1.  チョコレート(2001) 《ネタバレ》 
これはね、決してテーマは、ラブストーリーでも人種差別でも死刑制度でもないと思うんです。そういう頭で観てしまうと、いろいろ文句のつけどころがいっぱいあるような気がします、確かに。だからこんなに評価が割れるんでしょう。“たかが愛の代用品”って最近じゃ珍しく、見事なコピーだと思いましたよ、観終わって。配給元に、そうはいってもちゃんと映画を観れてる人がいるんだな、って。つまりそういう映画なんですよ。失いたくないのに不意に失ってしまうもの。失ってしまってはじめて気付く絶対的な喪失感。失ってからようやく、それを本当に本当に愛おしいと思っていたのかどうかの疑念に苛まれる罪悪感。死刑になった夫。目の前で自殺した、同じひとりの娼婦を呼んでいた気弱な息子。目の前で事故で死んだ、愛情の欠落を埋めるようにチョコバーを隠れてむさぼる息子。愛した妻で息子の母親である女性を蔑む独善的な差別主義の父親。愛したかったのに全身で愛しきらなかった愛おしい人々。喪失感、ってもしかしたら、もともと持っていないのにずっと持ってるって勘違いしていたものを、自分が本当は持っていないんだって事実に気付かされた時に感じる感情なんだろう、そう思いました。でも、それでも、絶望的な事実に気付いてしまった後でなお、もし、そばにいてくれる同じ喪失感を抱えた人が一匙の甘くて冷たいチョコレートアイスを無邪気に差し出してくれたら。にっこり笑って、いや、なんとか笑顔を作って、差し出してくれた優しさにそうっと寄り添うようにスプーンの上の生温く解けた甘いものを受け止めるんでしょうか。もしそれを受け止めてくれたら、無邪気な喪失感を抱えた哀れな男は、もう一度、ゆっくりと、生きていくことにむかっていく、なんだか勇気に似たものを自分のなかに持てるのかもしれません。男って常にバカ。女の人って常に現実的。何一つわかりません。でも。その瞬間に二人に通う優しい想いと、馬鹿みたいに綺麗な星空はきっと、その瞬間だけの真実なんです。きっとこの二人はうまく行かないんです。この先は。そんなの関係ないんです。訪れる優しい瞬間の素晴らしさ。生きてる意味の向こう側で輝くなにかをなんとか閉じ込めようとして、半ば成功していると思うんです。すごく好きです。そして痛々しい。あんなに興奮しないベッドシーンって。あんなに美しい人が演じてるのに。だから素晴らしいんでしょう。
9点(2004-04-14 03:02:46)(良:3票)
2.  小さな中国のお針子 《ネタバレ》 
なんともかわいらしい。お針子も、おじいちゃんも、村長さんも、メガネも。もちろん、下放政策って現実にはもっと厳しい側面もあったんでしょう。でも、十九二十歳の生意気で血気盛んで変に知恵と知識がついて芸術と西洋文化に理想と憧れを持った、都会の若者ふたりが、車も通れないような山村でしなやかにたくましく笑って生きている美しい少女に出会ってしまったら。もちろん一生忘れられない恋に落ちてしまうでしょう、二人とも。エピソード一つ一つがすごく可愛らしくて微笑ましくて、いかにもフランス映画的ですが、風景や小道具の仕掛けは濃厚に文革当時や今現在の中国を映し出してて、その微妙なずれ、みたいなものがファンタジックだったり、ノスタルジーを醸し出したりして、いい感じでした。一度でも友達の彼女に惚れてしまったことのある男の子は身につまされるかも。女の子って時に残酷。でもだから好きになるんだよね。たくましいのはいつも旅立っていく女の子で、僕らは呆然とそれを見送ってなんとか想い出を美しくするのに必死になるのが関の山なんです。何も知らないのは結局頭の中を本の知識でいっぱいにした僕らの方なんです。でも、読んだことないバルザックを読んでみたくなったかな、少しだけ。ホント言うと、お針子が、10年前好きだった娘にすごく似てて、なんだかざわざわしっぱなしでした。いやはや。
7点(2004-04-04 23:39:58)
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