1. 忠次旅日記
大河内傳次郎、まさかの28歳。28歳であの貫禄。 …ていうか、この人は活劇もやれるけど人情話も得意なオールマイティーだったんだなあ、って再認識しました。 『丹下左膳 百萬両の壺』でああいう演技に振ったのは、監督の意向もあるにせよ、役者としての素質がモノを言ったんだなあ、と理解。 杖ついて半身が動かない状態でヨロヨロと山道を行く忠治の姿なんかもう、剣劇以上に心に残る名場面でした。 『御用編』の後半ではほぼ寝たままの演技で、表情だけで人生語っちゃうしもう。 こういう、西部劇とは一線を画す作品が作れちゃうのも時代劇の懐のあるとこだね、って思ったなあ。 同じプログラムでもっと前の作品『長恨』もかかりました。 忠治旅日記が滅びの静なら、こっちは滅びの動。1巻まるまる大立ち回りオンリーの捕り物で終始するってのが凄まじくかっこよかったです。 これ、(消失した忠治本編もそうですが)本作と鏡合わせになって見事な作品だったなあという感想でした。 [映画館(邦画)] 7点(2015-06-15 12:32:30) |
2. 父親たちの星条旗
『ハンバーガーヒル』+『ランボー』の品格高い版。 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』以上だと噂に聞いていた時間ジャンピングは、ジョイス文学やヴォネガット文学みたいなモンだと思って観てれば違和感はない。というか論理がよくわかる。個人的には『ラグタイム』の原作のような視点ジャンピングを使った方が効果的だったんじゃないかと思う(まあ読まないとわかんないでしょうが…『Xメン』のプロフェッサーⅩが書いた歴史小説みたいな感じで凄いんですよ)。 指摘しておきたい点として、砲撃のさなかの空撮シーンは、記録フィルムよりは圧倒的に宮崎駿アニメの方に近いね。画面に出るたび『未来少年コナン』を思い浮かべちゃって困りましたよ。おそらく硫黄島の地形が、ギガントを思い起こさせる形状になってるからなんだろうな。 観終わって、まず「マンハッタン計画がもう少し早く始まって、ここに原爆が落ちてりゃなあ…」と嘆息しました。エンリコ・フェルミが日本の都市で爆発実験したがってたのは事実だけど。平時には何の価値もないこの島に落ちてたら、戦後がどれだけ変わっていたことか…。 プログラム的に『蟹工船』と続けて観てしまうという結果となったので、残念ながらインパクトの弱さが致命的になっちゃいました(船から人が落ちるシーン、向こうはカメラマンが命張って撮ってるからなァ)。が、後日DVDで見直す事があればもっと正当な評価を下します。あー来月は『硫黄島からの手紙』対『麦の穂を揺らす風』なんだよなあ…これもクリント・イーストウッドが割りを食いそうなカードだぜ…。 [映画館(字幕)] 3点(2007-04-18 20:14:07) |
3. チャイコフスキー
その曲は当代の人々に溺愛され、今でも多くのファンを持ちつつも、人としての愛に恵まれなかったチャイコフスキーを描く伝記大作。 チャイコフスキーの音楽演奏は、ともすると非難ばっかりが集中して、ロシア音楽からドイツ音楽へ、またはジャズやポップスへと簡単に切替えられるこのCD時代に楽しむのは相当辛いモノがあるんですが、これが彼の人生にミックスされると俄然、肌合が変わります。一応彼を擁護しておくと、チャイコフスキーは大編成を好み、金管が派手で、和声にポリシーがなく、メロディ重視。彼の時代には、既にオーケストラは貴族の遊興を離れて大衆の娯楽になってますから、この流れに乗った「ひたすら耳に心地よく、意味不明にゴージャス」な音は正しかったわけっすよ。音楽史的にはね。 ところが映画はそんな音楽論を一切無視、「一人の男の生きざまを音楽で綴る」という、まるでミュージック・クリップのような展開をしています。しかも筋がなくって、ほとんどが内面描写。ロシア映画の伝統である時間経過の独特な表現もあいまって、彼の人生についてわかる明確なイベントは結婚した事と離婚した事くらいで、あとはひたすら音楽がナレーションがわりとなり、内面の成長・成熟を描く。これはクラッシック作曲家映画としては超王道でしょう。音とモンタージュの力で宗教的な、時には人間的な、悲痛で荘厳な世界が拓けていきます。 『マーラー』と双壁をなす、音楽映画の傑作。 [映画館(字幕)] 7点(2007-03-17 21:05:54) |
4. 血と骨
《ネタバレ》 なんだこのイヤな太陽族(笑)。 本作で特徴的なのは、戦後史特有の記号がほとんど排されている事。確かに軍歌も歌えばダッコちゃんも出てくるが、必要最小限以下に抑えられているため恐ろしいほど時代感覚に欠けている。逆に言うと超時代的な記号の比率が高い(昭和の長屋の原風景?)。さらには民族的な記号も抑えに抑えられ、たまに出てくる字幕で「あ、これ日本人の話じゃなかったんだっけ」と思い出す次第。つまりガルシア・マルケスの『百年の孤独』が大阪の裏路地に出現してしまったワケだ。この映画、古臭い話に見えながら実はポストモダンなのではと推測。 このマジックが、マルケスがやったのと同じように「極限の父性」を描き出すのも偶然じゃないだろう。崔洋一は明らかに同じ手法・同じ路線を狙っている。異なるのは「画」だけだ。 そう、画。時たま「ここを観てくれ~っ!」という監督の叫びが聞こえそうなシーンが出てくる(豚の解体場面や、俊平宅での行水や、首吊りのシーンなど)。確かに凄い。重い。こんな映像ばっか観たくねえ(笑)…と思ったかどうかは知らないが、思いっきり弱気のシーンもある。オダギリジョーは明らかに演技が立ち過ぎていて、笑えるくらい意味を成していない。 崔洋一、映画の集客力を気にして「《たけし映画》ってだけじゃ客を呼べないかも」と弱気だったのかもしれない。いや、監督は気にしなくてもプロデューサーは気にするだろう。その結果の駆け引きがオダギリジョーになり、ラストの北朝鮮(あれは語り手の想像外の領域だから、明らかに不要)での回想になり、違和感ありまくりの要素を紛れ込ませる結果になったんじゃないだろうか。全体に散らばる記号のアンバランスさは、そういう製作の裏側を想像させるくらい「不快感」と「受け狙い」の両極に散っている。 実はオイラは、その弱気さが何となく愛らしくて好きだ。崔洋一も金俊平には負けちゃったのだ。ぶち壊れた映画全体のフォルムの中から、金という男のとてつもなさが、そして監督の普通な人間らしさが浮かび上がってくる。スタイルが不格好なのは、ポストモダンでは「アリ」ですよ。 注:原作読んでません。いずれ読んでから書き直すかも。 [DVD(邦画)] 7点(2006-08-14 15:39:41)(良:2票) |
5. 地球の静止する日
ああ~、プロフィールで「DVD買ってきて観てみま~す」と約束してから、はや1年半。やっと買ってきました(980円に落ちるまで待ってたという話も…)。さて、草木も眠る丑三つ時に、DVDをプレーヤーに突っ込んで…うぁははは~! 宇宙服がバブルマンだよ~^^こうなると判ってて何でアメリカに着陸すんだよ~^^部屋ちゃんと片付けろよ~^^ワシントンが昼ならヨーロッパは夕方じゃないのかよ~^^『キャプテン・スーパーマーケット』の呪文の元ネタはコレかよ~^^!! …むぉほんッ、た、大変楽しい時間を過ごさせて戴きましたありがとうワイズ監督。 SF映画史に足跡を残す、大変貴重な作品だとは思います。そして、終戦直後のアメリカとソビエトと中国が陥った全体主義を批判するのにUFOを使うというアイデアは、当時画期的だったとも思います。そして、以後量産される宇宙人侵略SF(『プラン9・フロム・アウター・スペース』から『MARS NEEDS WOMEN』に至るまで…)の基本形の全てがここにありますな。『2001年宇宙の旅』が登場するまでの20年弱、SF映画のパラダイムを保ち続けたという意味では歴史に残る名作でしょう…その証拠というか、バートンとライミに思いっきり遊ばれちゃってますが…時代の流れは酷いのぉ…。 ●追記:いま気づきましたが、石井輝男監督・日本初の宇宙ヒーロー活劇スーパージャイアンツ第3~4話『怪星人の魔城』『地球滅亡寸前』は、本作の静止シーンが元ネタかぁ…あ、そもそも1話目からかぶってるシーンもあるし…つまり本作は、仮面ライダー系ヒーロー特撮の源流でもあるワケですなぁ。勉強になりますた。 [DVD(字幕)] 5点(2006-03-15 19:43:51)(笑:1票) |
6. チャーリーとチョコレート工場
《ネタバレ》 金曜日に酔っ払ってレビュー書いたら、送信しないまんまブラウザ落としちゃった…トホホ…さて辛口リトライだ。まーなんというか2点です。ジーン・ワイルダー快演のオリジナル見ちゃった後ではもう。オリジナルとのストーリーの違いはラストが「左足にオブライエン空中半回転ひねりが入ってるだけ(=たいしたことない)」だし、ジョニデのクドさが悪い方向に働いてるし(てゆーか親たちに負けてるっすよ)、それより何よりウンパルンパの歌がディスコ調でアレンジされた分、オリジナルが持っていた貴重な生命を失いました。ま、このネタを与えられてそこそこペイできる作品に仕上げられるのはバートンしかいないでしょうが、リメイクの意義が極めて薄かったので、あえてダメ出しします。 閑話休題。むしろ非常に興味があるのは、この時代になって本作をリメイクしたワーナー側の意図なんですよね。オリジナルはTV批判がキツすぎてTV放映されなかったという幻の作品ですから、コレをオリジナル通りに製作するのは無謀なはずなんですよ(でもそのあたり、手を抜かずにしっかりやってますぞ…"You get no Commercial!!" は言わなかったけど (^^;)。莫大な全米TVネットの放映料を最初から諦める大作映画なんて、今までなかった(と思う)ですよ。これ、本気でアメリカのメディア界が変質してきている印じゃないかと思うんですね。ネット時代に入って視聴率が伸び悩む現代。これは商業サイドでの「実験作」と位置づけていいんじゃないかと思います。次にワーナーが仕掛けるのはなんなのか…そこまではまだ見えませんがナァ…。そういう、先の見えない業界の羅針盤的な価値を上乗せして、+1点です。 [DVD(字幕)] 3点(2006-02-06 21:44:05) |
7. チーム★アメリカ ワールドポリス
ハリウッド史上最も壮大なゲロ映画。別にチェックするパペット・マニアはいないでしょうが、いちおう情報として…人形の操演技術は本場中欧に比べるとイマイチでした。DVDでも宜しいかと思います。まっと・でいもん。 [映画館(字幕)] 5点(2005-07-30 21:11:52) |
8. 中国超人インフラマン
予断をもって見て欲しくないので、オイラはレビューは書きません。以上。 [DVD(字幕)] 9点(2005-05-10 14:31:34) |
9. 小さな兵隊
「見ず嫌い」の映画監督が何人かいるんだけど、ゴダールもその一人(ルイ・マルは好きなんだけど…)。で、理解しやすそうな本作を選んで、初めてチャレンジしたんですが…なんじゃこりゃ! 芸術性ウンヌンよりも先に、製作サイドのとてつもなく貧乏な台所事情が涙を誘いますねえ。これ、この必死に風景で誤魔化しつつモノローグでシーンをつなぎ、アクションシーンをわざとカットし(たように見せかけ)てモノローグでつなぎ、大戦の被害者であるが故にアルジェリア問題をこじらせてしまったフランスの若者のやるせない状況を長い長いモノローグで…ってモノローグばっかじゃん! コレでさー、拷問シーンの合間に女の子のストリップとレスリングが挟まってたら、まんまエド・ウッドの『グレンとグレンダ』になるっすよ。いやま、ベラ・ルゴシ級の怪優も必要だけどさー。話としてはありがちスパイ物なんで、なおさらエド・ウッドの持っていた新奇性と比較しちゃうなー。うーん、ゴダールってようわからん…。 [DVD(字幕)] 4点(2005-04-21 00:36:01) |
10. 「超」怖い話A~闇の鴉
低予算でもいいんです! 怖くなくてもいいんです! ヒロイン目当てで借りたから、佐藤寛子がピュア~で可愛ければそれでいいんです! 実はこれを借りるためにネットレンタルに入会までしたんです! ま、話は怖いというよりドッキリ系なんだけどね。あと彼女のGカップを堪能できるシーンが少ないのはどうかと思う(お約束の全力疾走シーンも無理やり挿入した感じだし)。オイラには珍しく、ヒロインの可愛らしさだけで煩悩採点(苦笑)。 6点(2004-10-09 15:46:26) |
11. チャド
インディペンデントのホラーだから手加減はするが、どうあがいても点数は低いな。浮浪者モンスターだけあって弱い弱い。ただ、クライマックス近くから話が暴走し始めると面白い。ニュースの扱い方や、世間の反応などにセンスがあるからだろう。●9/18追記:そうかパーネル・ホール脚本かあ。どうりで磨きのかかった地味加減(笑)。好感度が上がったので1点おまけっ。 4点(2004-05-06 03:49:33) |
12. チェンジリング(1980)
この映画で初めてジョージ・C・スコットという俳優を意識した。だからオイラにとっての彼の魅力は、「堂々とした風貌ながらも悲哀を漂わせる誠実な男」これに尽きる。最初に『パットン大戦車軍団』や『博士の異常な愛情』や『炎の少女チャーリー』に出会わなくて本当によかったと思う。世間での彼の代表作はパットンだろうが、オイラにとっては『チェンジリング』だ。アメリカンなマッチョ男が不幸な運命の子供に溢れんばかりの愛情を注ぐ異色「ハートフルホラー」。そんなジャンルがあるわきゃないが、この映画が語るのはまさにそういう世界だ。『ゾンビ』に駆逐される寸前のホラー界ではこんな事もやれていたんだよね。 8点(2004-05-01 03:19:59)(良:1票) |
13. 地下鉄のザジ
なんか昨日からロリ物のレビューまとめてやってる…まあいいか。何はともあれザジ。最高ですね。展開は飽きないし、フィルムは手が込んでるし、ザジは元気で可愛いし。でもしかし! ザジの叔母さんの清楚な美貌もイイのであります。いやドイツ娘もなかなか…なんて言ってると怪しい警官になってしまうのでありますが。見よ! 我がトレール・スケイヨンの力を~! …ごめん、ちと壊れてマス。 9点(2004-02-20 03:03:44) |