1. チョコレート(2001)
黒人女性レティシアは死刑囚の夫ローレンスを失い、その悲しみも癒えぬ間に息子タイレルを事故で失うことになる。その事故の現場に通りかかり、彼女の助けになってゆくのが、皮肉にも彼女の夫の刑の立会人で看守のハンクであった。ハンクは差別主義者の元看守の父と、やはり同刑務所で働くソニーと共に暮らしていた。が、ローレンスの刑の当日、ミスを犯した息子と口論になる。ハンクの容赦ない叱責に、ソニーは「父さんは俺が憎いだろう?でも俺は父さんを愛してた」と自分に向け引き金を引いた。人生のすべてを他人の手により消去されたレティシアと、自らの過ちにより大切なものを失ったハンク。黒人女性と白人男性。すべてが正反対の二人は、この不幸な出来事さえなければ惹かれあう事の無かった二人は、悲しみのなか出会うことになる。お互いがお互いの存在を知らぬまま、お互いの人生の最悪の時のなかで・・・。新鋭監督マーク・フォスターは、観客にある一定の距離をつくり、このサディスティックな愛の物語を撮りあげている。観客に涙させるのでなく、冷静に運命の結末を見守らせ、あえてレティシアを孤高の女性に仕立て上げた。だからこそ、運命の残酷さより、彼女の孤独感に感情が震え、失う痛みより、手にする痛みに不安感を抱かせることに成功したのであろう。そして注目すべきは、レティシアに命を与えたハル・ベリーの全身をかけた演技。息子タイレルを失い泣き崩れる彼女の演技には、身体中を電撃ににた衝撃を受けるにとに違いない。これは失う以上の痛みを伴う愛の物語。レティシアが最後に手にするのは果たして幸せなのだろうか?彼女自身は答えを見つけた。あなたはどんな答えを見つけるのであろう。 10点(2002-11-09 23:30:20) |