1. 追憶(2017)
《ネタバレ》 正統派な刑事サスペンスでした。短めの映画でしたが、その中でしっかり表現したいことが表現されていて過不足なく作られていたと感じました。 ネグレクトなど事情のある子どもを引き取って育てていた涼子とその引き取られた子どもである篤、悟、啓太たちの話。涼子に言い寄っていたヤクザの男を子どもたちが殺し、そこからなんとも言えない見えない重しを背負って彼らは生活を送ることになる。 起こるのは殺人事件で、映画なら珍しくもなんともない出来事なのだがその背景に過去の殺人や借金、さらには悟と会ってお金を貸した啓太の婚約者がかつて自分たちを育ててくれていた涼子さんの娘であることなどが事態をより複雑にする。それぞれの守りたい人のため彼らの口はどんどん固くなっていくのだった。『追憶』のタイトル通り過去にまつわる何かに追い立てられる人たちを描いた映画だった。 現実は人なんてだいたいもっと薄情で、昔は深い繋がりがあっても時間の経過とともにどんどんそれは希薄になり、大事な何かも失われていくものだ。この映画では忌まわしい記憶をずっと拭えなかったわけだが、ずっと忘れられないくらいの光輝く記憶を持ちたいと、逆に思った。 [インターネット(邦画)] 6点(2022-10-05 18:39:43) |
2. 罪の声
《ネタバレ》 なんて言えばいいんだろう。。。どこから書いていけばいいのかわかりませんが、とにかく見応えがあって、面白かった。まずはそこです。 原作は既読です。随分前に読んだきりですが。ですが個人的には映像化されたこちらのほうがより引き込まれました。物語自体もとても面白かったのですが、私が惹かれたのは小栗旬さん演じる記者=阿久津さんの記者としての姿勢でした。興味本位で人の人生を暴き立て書き立てる記者とは違い、彼は曽根俊也と接する中で記者としてのあり方に疑問を呈します。「あんたらは面白おかしく記事にして、でもこっちはどうなる?妻と子供もいるんです。子供の未来はどうなる?」 彼は元社会部の記者であり、事件の被害者の生の声を聞きながらも、それが他社を出し抜けるネタであるかどうか計算してしまう自分が嫌になり、社会部を辞め文化部へ。しかしこのギン萬事件をきっかけに再度記者としての自分を問い直す彼の姿を見ることが、この作品のもう一つの魅力でした。報道とは公正中立であるべきですが、かつ、取材対象に寄り添うことも両立できる記者なんていたらどれだけ良いだろう。阿久津さんはそんなことを思わせてくれました。曽根俊也が言うように、取材対象の娘を怖がらせてしまって、咄嗟に娘のことを慮り、嘘をついてその場を取りなす、そんな男ならとても好感が持てる。そんな人間ドラマが見れるという、それだけでも価値のある一作です。 利用して子供のその後の人生など顧みもせず、自分たちの所業を「正義」と言う曽根達雄に語りかける阿久津さんの言葉は重くもしかし痛快でした。本当に、こんな記者がいてくれれば良いなぁ、と思わずにはいられない映画でした。 そして、エンディング曲も素晴らしかったです。良い作品は、曲も作品に合っていて聴いていたくなりますね。 [インターネット(邦画)] 9点(2022-06-10 01:02:04) |
3. 冷たい熱帯魚
《ネタバレ》 『狐狼の血』を観た影響で、なんとなくグロいヤクザものを観たくなり、それっぽいなと思って選択しました。ヤクザ映画っていうか、サイコパス映画でした。この手の映画は、作中の人物に性格なり考え方が少しでも同調できるものがなかったらただただしんどい。社本一家も、村田も村田妻も、気持ちとか感情が何一つ理解できなかった。何をもって『冷たい熱帯魚』なのかも、ずっと考えながら見てたけどわからなかった。映像描写よりも、出てくる人間たちの性格がグロすぎて正視に耐えない映画でした、ってちゃんと見ましたけどね。 特に何が理解できなかったんだろうか。ノリや何らかの狙いの上で簡単に誰とでも寝る村田嫁?ちょっとのせられたくらいであんな店であんな格好で嬉々として働く娘?意味のわからない理屈で頬をはたかれながら抱かれる社本嫁? 「なんかすごい」と言わせるようなパワーがある映画だとは思いますが、私にはあまり刺さらなかった。有名な監督さんの作品がなにからしいのですが、すみません、良さが分かりませんでした。 [インターネット(邦画)] 3点(2021-07-22 23:59:31) |
4. 罪の余白
《ネタバレ》 いじめっ子の主犯格の子が、かなり若い小沢真珠さんに見えました。 という冗談はさておき、不快感やら嫌悪感やら、色々ざわざわした気持ちになる映画でした。 舞台はミッション系の女子校。そこで早速女子生徒三名がなにやら不穏な空気を醸し出す。なんか嫌な空気感だなと思った瞬間、そのうちの一人がベランダの手すりにのぼり、そこから足を踏み外す。そんなところから始まる『罪の余白』 いじめに至るまでの過程がよくわからない。最初は誕生日にケーキあげたり普通に仲良かったはずなのに、なぜ急にいじめる対象に変わらなければならなかったのか。でもその辺が不透明なところも、ある意味リアルなのかもしれない。実際のいじめも他人から見ればよく分からない理由で始まってることも多々あるんだろう。良いか悪いかは別にして。 安藤父(=内野聖陽さん)は娘の事故死以降抜け殻のようになりますが、日記の存在を知ってから一転、彼女の死の真相を究明すべく動き出します。動き出したはいいのですが、やっていることは基本、「娘の学校周りをうろついて関係者を問い詰める」or「関係者を捕まえたら娘について知ってることを聞く」その二つの武器のみで物語全編を闘います。一応、合間に娘の携帯のデータを復帰させたりとか、主犯の子のプライベート探ったりとかはするんですが、それをその子たちに問い詰めたりする材料としては使わないと言う、じゃあその携帯のデータ復帰のくだりはいるのかねっていう感想です。使わないならそんなシーンなくても良かったのに。 なんか、頭の良さげな冷淡な女子高生って設定は、『古畑任三郎』シリーズや『ガリレオ』などでもよく似たやつを見たことがあるので、自分の中では二番煎じ感が強くてあまり入り込めなかったです。かといってそんなに話の中のキャラに魅力を感じたわけでもなく、淡々とストーリーが流れていってしまいました。思ってたようなストーリーが思ってたように流れてしまった。もう少し、意外な展開や仕掛けが欲しかったと言うのが正直な感想です。 小沢真珠さん二世、なんていったら失礼かもしれませんが吉本実優さん、とても印象に残りました。それがこの映画での収穫かな。今後気にしていきたい女優さんです。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-04-20 01:12:22) |
5. 劔岳 点の記
《ネタバレ》 まず言いたいのは、私は登山をしません。したいとも思いません。事前に綿密に準備して、ものすごい荷物を持ちながらものすごい危険を冒して、ただ山を登って降りる。・・・いやぁ、無理です。でもこの映画を観ると、少なくともあの景色を肉眼で見てみたいと思わせられました。そう、肉眼で。個人的にはこの映画のポイントはそこにあるのかなと思いました。現実の剱岳はスクリーンのそれよりもっと壮大で荒々しく、清冽で危険な山でしょう。映画のそれは縦横のみの、しかも角度も決められた所詮二次元の映像です。しかしそこで出来うる限りの映像を木村監督は魅せてくれ、「本物はもっと素晴らしいよ、これをきっかけに本物を見に行ってほしい」というメッセージを私に送ってくれました。個人的な勝手な解釈なのであしからず。 昨今の銀幕事情は、CGなどの人が映像に手を入れる技術が当たり前になっています。決してそれらを批判するわけではありません。SFなどの実際にはありえない事象に対してCGなどで表現できるようになったのは、観る側として純粋に映画を楽しむ幅が広くなりました。ただ、求めれば実物があるのにCGに走ってしまうのはもったいないと思ってしまいます。『空撮・CG一切なし』けっこうだと思います。その中でしか味わえない自然の本物もあったと思いますし、それに触れた役者もだからこその演技が出来たのではないでしょうか。 役者といえば、宇治長次郎氏の存在が忘れられません。誠実で素直で、山に対して真摯に正面から向き合う山男を完璧に演じ上げていました。人に対しても自然に対しても礼を欠かさないその姿勢は、自分が見習うべきものをたくさん見せてくれました。 私は登山をしません。したいとも思いません。ですが、山に限らずこの世界にある風景を出来る限りたくさん肉眼で見ていきたいと、そう思わせてくれた作品でした。 [映画館(邦画)] 10点(2009-08-04 10:31:55)(良:4票) |
6. 追跡者(1998)
《ネタバレ》 今時分の日本で観るとトミー・リー・ジョーンズはどうしても缶コーヒーのCMに出てくる「宇宙人のジョーンズさん」と重ねてしまう(笑)日本の労働基準法にグチを言い、商用車を駐禁取られ、八代亜紀に泣くこの男が・・・(笑) 前作『逃亡者』のほうはものすごく小さなときに観た記憶がうっすらある程度だったので、続編としてではなくほとんど『追跡者』単独で観たわけですが、それでも十分楽しかった(*^ー^*) アクションとしては長いほうのこの映画ですが、2時間たっぷり充実感があります。もう遅いから早く寝たいな~と思いつつもやめられない、止まらない。 『追跡者』と言うだけあって、サム(=トミー・リー・ジョーンズ)率いる追跡チームの手際のよさにはプロを感じる。今の映画みたいに「製作費~億ドル!」とか「目を見張るほどのSFX」なんて無いし、そういう意味では地味な映画だけど、こういう映画を観てきて育った世代にはこのどこか素朴で純粋なストーリーが単純に面白い。最近無いもんねー、こういう単純に楽しめるアクション。大事にしたい一作だなと感じました。 [DVD(字幕)] 8点(2006-12-04 01:25:04)(良:1票) |
7. 翼をください
《ネタバレ》 なんでだろうか。オレは男なのに、トリーに突き放されたポーリーの気持ちが痛いほど伝わってきました。またそれとは逆にトリーの気持ちはいまいちピンと来ないものがあり、口では「愛している」と言いながらその愛する者をあんな風に簡単に切り捨てられるのかと・・・。突き放した後トリーはポーリーに対して何度も「愛しているけどもうだめなの」的な事を言いますが、ちぃっとも信用できませんでした。ポーリーは真剣に彼女を愛し、トリーはほんの火遊び程度のつもりだったと言うことなんだろう。今時は誰でも、もちろんこんなことを書いているオレも、表面的な格好ばかりを気にして本気を出せない人たちばかりです。例え社会のはみ出し者でもあくまで自分の生き方に従ったポーリーは尊敬にすら値します。 「私はトリーを愛している。レズビアンじゃない。」 きっと、真に一人の人を愛すということはこういうことなんでしょうね。ラストのほうの妙に儀式的なところはあまり好きになれませんが、どんな形にせよポーリーの気持ちの強さはまわりがどう思おうとかっこいいと思います。「気持ちの強さ」なんて言葉では言い表せないほど爽快かつ余韻の重い作品でした。 [DVD(字幕)] 8点(2006-02-13 23:49:25) |
8. ツイステッド
《ネタバレ》 いやいやそんな早くから手袋しちゃったらダメでしょうサミュエル。中盤の緊張感に比べ、後半はなんと気が抜けた事か。「ほら!ジェシカ(=アシュリー・ジャド)!なんで手袋なんかしてんのか早くサミュエルに突っ込めよ!」と心の中でずーっと叫んでたのに結局それは流されてサミュっちは撃たれて死んじゃいました(泣)。せっかくそれまですっと、「犯人はあの軽薄そうな元彼だ!」とか目星つけてたのに。彼がバスタブで死んでからも、「あれはフェイクだ!」とか言ってスクリーム並みにあり得ない復活を期待してたのに。がっかりだ。 てゆーかなんでこういう映画の題材でキャストがアシュリー・ジャドなんでしょう?今まで彼女がおばちゃんキャラをこなしてる映画しか観たことがないので、なんかすごく役柄との不一致を感じました。若作りはしてましたけどね。 サミュエルは相変わらず上の立場から悟ったように部下をなだめる役柄が似合ってます。嫌いじゃないですこういうキャラ。アンディ・ガルシアはなんか老けました??よれよれのコートが似合いすぎて(笑)。「デンジャラス・マインド」の時と比べると「同一人物か!?」ってぐらい違いますよね。 この映画のメインテーマである、「自分と寝た男が死んでいく不気味さ」みたいなのはやっぱ視聴者からすればそんな感覚あんま伝わってきませんよね。その後に続く「自分が殺したのかどうかわからない恐怖」ってのはミステリー的に面白かったですが。まぁ所詮映画の中での話なんですが、いくら怪しいからって警察の同僚が日常会話の中で「おまえなんだろ殺したの?」みたいな言葉を同僚に浴びせていたのが信じられませんね。ちゃんとした容疑者としての取調べ中ならともかく、あんな「ランボー」の警官並みにデリカシーがない人間が警官ってのが腹立ちました(爆) 5点(2005-03-01 14:33:45) |
9. 翼のない天使
《ネタバレ》 まあ表面的に見れば、死を理解しようとする子供の成長を描くという映画ですね。そういう点では「ポネット」とよく似てますね。でもこっちの、ジョシュアの方は、乗り越え方がけっこう男らしい。その成長の過程で自分をいじめてたクラスメイトを別れの時はやさしく声をかけたり、あそこは泣けました。最後なんか、それまで子供の面倒をみてるつもりだったお父さんがだらしない格好で洗面所にいるジョシュアをいつもどおりに見に行ったら、子供の方がきっちりと準備完了してたのなんか、ジョシュアの成長がほほえましいのと同時に笑えましたね。オススメです。 8点(2004-03-21 22:53:05) |