1. 天国の日々
《ネタバレ》 いつか機会があれば見てみたいと思っていた作品です。 風に波打つ黄金色に輝く麦畑。季節は移ろい、雪に覆われた白銀の世界。 その季節の中で、あるいは1日の中で、最も美しい瞬間をとらえる。 特に幾度と無く挿入される、赤く空を染める日没前後の美しさには心が震えるようでした。 そんな美しい作品の世界に自然と溶け込んでいくかのような巨匠モリコーネの音楽もやはり美しい。 病弱な農場主と、この農場に労働者としてやって来た男と女と、1人の少女。 彼らに訪れた、一見すると雄大で美しい自然の中での天国の日々。 しかしその微妙な関係は常に脆さや危うさをはらんでいる。 まるでマリックは遠くから彼らの日々を眺める傍観者のようでもありますが、 淡々とした日々の営みの中から人間の野望や嫉妬心といった、彼らの心の内を拾い上げていく。 どんなに文明が発展してもイナゴの大量発生の前になす術も無い人間。 本作が映し出す自然の大きさや美しさの前には、人間とはかくもちっぽけなものかと思わされます [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-09-08 21:40:11)(良:1票) |
2. テナント/恐怖を借りた男
アパートに住む主人公、部屋の中で次第に膨らむ妄想、薄気味悪いアパートの住人・・・。 ポランスキー自身の監督作「反撥」「ローズマリーの赤ちゃん」と共通する部分を多く感じるサイコサスペンス。 とあるアパートに転居してきた1人の男。自分の前の住人の女性は自殺している。 実は彼女はこのアパートの隣人達に自殺に追い詰められたか、あるいは彼らに殺されてしまったのではないのか・・・? そして隣人達は自分のことも自殺に追い込むか殺そうとしているのではないのか・・・? そんな妄想が彼の中で芽生え膨らんでいく様を、少しずつ小出しにじっくりと彼を苦しめ、追い詰めていくかのごとく描いていく。 1つ1つは些細なことを丁寧に積み上げていき、次第に彼の心を狂わせていく様に次第に目が離せなくなっていきます。 この主人公の男を演じるのはポランスキー自身。 久々に俳優ポランスキーを見ましたが、やはり見る者を引き付ける演技を見せてくれます。 このポランスキー演じる男はポーランド系フランス人であり、これはまさにポランスキー自身と重なります。 これは少年時代から隣人の目や迫害から身を隠し緊張を強いられて生きてきた、彼の生い立ちなどと無関係では無いのでしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2015-09-06 15:12:00) |
3. テキサス魂
映画史にその名を残すミュージカルの大スター、ジーン・ケリー。 監督としてもいくつもミュージカル映画を残していますが、こんなウエスタンも撮っていたんですねえ…。 もう、冒頭のジェームズ・スチュワートとヘンリー・フォンダの旅の道中の掛け合いから可笑しくって仕方がない。 ジェームズ・スチュワートの生真面目さと、ちょっとおとぼけキャラのヘンリー・フォンダ。 この2人を見ているだけでも飽きが来ない楽しさがある。 “シャイアン・ソーシャル・クラブ”の女主人を演じるシャーリー・ジョーンズも2人ととても楽しい絡みを見せてくれます。 監督ジーン・ケリーにジェームズ・スチュワートとヘンリー・フォンダ。 みんな既に全盛期を過ぎていますが、だからこその肩の力を抜いたような余裕シャクシャクという感じの、 のんびりとした味わいがあるハートウォーミングなコメディ・ウエスタンです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-09-05 21:30:26) |
4. テレフォン
《ネタバレ》 ジョン・フランケンハイマー監督作「影なき狙撃者」を思い出すプロットですが、「影なき狙撃者」のような重苦しさはなく、その分緊張感は薄いですが見やすさのあるスパイ・サスペンスです。 アメリカに任務のため乗り込んだKGB少佐(ブロンソン)と手引きするKGBエージェントのアメリカ人の女。この女の背後にあるものも凝っていますが、男と女だけにこの結末は予測できる。この女の背後と真の任務もあり、この結末に向けての2人の葛藤や心理戦があるはずですが、そこが抜け落ちて何事も無かったかのように仲良くラストを迎えるのが惜しい。 ブロンソンvsドナルド・プレザンスの攻防戦も薄い。もっと一刻を争うサスペンスに出来たはずだと思うし、ドナルド・プレザンス演じるテロを誘発する男の冷酷さ、あるいは悲哀などの思いをもうちょっと感じさせて欲しかったです。 [DVD(字幕)] 4点(2011-09-21 20:10:13) |
5. 天国から落ちた男
スティーブ・マーティンの記念すべき初主演映画です。とは言え、この頃にはサタデーナイト・ライブで既に彼は人気者だった訳ですが。 全編に渡り彼の独壇場で、超ハイテンションの濃いスティーブ・マーティン芸が炸裂しまくりです。しかし初主演に張り切りすぎたのかサタデーナイト・ライブと映画はやはり違うものなのか、自慢の芸が映画の流れの中で結構スベッている所も見られます。よって、スティーブ・マーティンが苦手な方は見てはいけない映画かもしれません。 しかし、スティーブ・マーティンが大好きに僕にとってはそういうのも全部含めてやっぱりスティーブ・マーティンは楽しいなあ・・・という映画です。究極に見る人を選ぶ映画ですが、僕にとっては十分!すぎるほどに(ホントに十分すぎますよ!)スティーブ芸を堪能させていただきました。 [DVD(字幕)] 5点(2011-08-07 14:33:00) |
6. 天国から来たチャンピオン
《ネタバレ》 死んだはずの人間が天使を伴って地上に舞い戻るというファンタジーの定番のお話なのですが、この作品の最大の魅力はウォーレン・ビーティ演じる主人公の男のキャラクターでしょう。何があっても夢を諦めないその姿が実に爽やかでいいです。更に脇役も愛すべきキャラクター揃いなので、ほのぼのとした気持ちで観ることができます。記憶が消されるという結末は残酷ではありますが、それでもジョーの記憶の片隅には彼女の事がすごく小さいですが残っているようでもあり、彼女の方はジョーの正体に気づいているようであり、少し物悲しくもその後の二人にちょっとだけ期待をさせてくれるラストもとても良かったと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2009-11-29 00:43:14) |
7. テス
このような気が滅入りそうになるストーリーの映画は正直あまり好きになれない。嫌なニュースの多い昨今、せめて映画を観ている時くらいハッピーな気持ちになりたいという考えがあるので、多少強引でも、都合の良すぎる展開でも、ハッピーエンドの映画が好きです。しかしこの映画に関してはナスターシャ・キンスキーの凛とした美しさと彼女の演じるテスの芯の強さがとても印象に残りました。 [DVD(字幕)] 4点(2009-03-23 22:46:20) |
8. ディア・ハンター
《ネタバレ》 戦争映画に分類される作品だと思いますが、むしろベトナム戦争という暗い時代を生きた若者達の青春群像劇と僕はとらえています。 前半の長~い結婚式は賛否ありますが、アメリカではマイノリティーであるスラヴ系の人々が集まって暮らす小さな町の新しいカップルの誕生を町中皆で祝える喜びが画面を通してその息遣いまでも伝わってくるようでした。映画の中で結婚式が描かれることは少なくないですが、本作で描かれる結婚式は本当に素晴しかったと思います。 その後の鹿狩りの雄大な自然とその荘厳さ、ベトナムのことを少しでも忘れていたいかのような出征前夜の男たちの酔っ払った馬鹿騒ぎの宴。この前半の全てが後半に見事に生きています。 ラストで仲間たちが集まって歌うgod bless americaとエンドクレジットで流れるその仲間たちの出征前の表情、特にデ・ニーロのおどけた表情とウォーケンの笑顔が忘れられません。 [DVD(字幕)] 8点(2008-12-26 11:52:39) |