1. 天使と悪魔
《ネタバレ》 魅力ある歴史ロマンを前面に押しだしつつも、けっして難解ではなく、キレのいいサスペンス要素で大満足のエンタテイメント作品に仕上がっている。今回はヴァチカンから呼ばれたラングドン教授が、深夜までに事件を解決するという過程をメインにみせるパワフルな構成。コンクラーベや謎解き、アクションを交えたハイテンションな歴史的建造物のオリエンテーションは、画的にもサスペンス的にも非常に満足度が高い。またスピーディでせわしなくヴァチカンを奔走する展開だが、浮いた感じもなく、歴史的背景や荘厳な音楽を巧く用いて重厚感が漂っているのも素晴らしい点だ。中でも前作から引き続いてのテーマ曲は美しい。事件の顛末については少し後味が悪く、やりきれない思いの残るものになっている。ユアンの演じたカルロという男は、間違いなく崇高な志を持った聖人だと思う。しかし自分の思想、ヴァチカン、多くの他人の為に自らを犠牲にするが、狂気の間違いも犯す。「天使と悪魔」というタイトルの通り、人間の中に潜む二面性を彼は表現している。他作品のネタバレになるので、あえて作品名は挙げないが最近のハリウッド作品は(似てると言ったらお終いだけど)正義と悪、正しいこととそうでないことの境界が曖昧に描かれている気がする。一概に何が正しいとか言えず非常に考えさせられる。 [映画館(字幕)] 7点(2009-05-20 14:21:14)(良:1票) |
2. デトロイト・メタル・シティ
《ネタバレ》 素直に面白いと感じた作品。松山ケンイチくんを俳優として評価したい。複雑な展開など全くないが、直球勝負と勢いの物語の中で「クラウザー=根岸くん」というギャップからくる笑いもツボを押さえている。またライブシーンも製作側の意欲や熱意が伝わるほどの出来で余念がない。ド派手なライブパフォーマンスや汚い言葉の洪水に過激なトコロが話題になるかもしれないが、作品自体やその根底には根岸くんのような優しさや丁寧さが感じられる一作。 [映画館(邦画)] 7点(2008-09-12 22:52:23) |
3. デジャヴ(2006)
《ネタバレ》 僕はこの作品をSFとサスペンスとアクションを盛り込んだラヴ・ストーリーだと思っている。ダグは初めて死体であるクレアに会ったときに既視感を感じるがそれは一目惚れと似たようなものだったのではないか。だからこそモニター越しの彼女に惹かれ、彼女がタイム・ウィンドウの向こう側で”生きている”ことを知ったときにあそこまで感情的になり最終的には命がけで向こう側に飛び込んだのではないか。爆発を止めるのではなく、クレアを助け出すことが事件を未然に防ぐことになるという発想がダグという人間を表している。脚本だけではわからない部分のキャラクターの肉付けをエモーショナルに繊細に表現したデンゼルの演技は本当に素晴らしい。ヴァル・キルマー、エルデン・ヘンソン、アダム・ゴールドバーグも好演しておりこのような娯楽作の中でも演技が確実に活きている。またこの作品の見所であるタイムリミットのある緊迫感に満ちたアクションも迫力十分。盛り上げ方、見せ方が非常にうまい。中でも過去と現在のカーチェイスは秀逸だ。ロマンス面で流れるとてもムーディな曲をはじめ音楽も非常に良かった。 [映画館(字幕)] 8点(2008-03-22 21:22:47)(良:1票) |
4. ディセンバー・ボーイズ
《ネタバレ》 最後まで飽きることなく鑑賞したけどあまり印象には残らなかった。過去に観た英国映画の真似事みたいでこの作品オリジナルという点がみうけられなかったのが残念。お話がダラダラ進んでいくのにキャラクターの性格や感情が捉えにくいのもよくない。ダンとしたたかチビ眼鏡くんは可としても後の二人のディセンバー・ボーイズはやはり造形が甘すぎたと思う。でも雰囲気はよかったしダンはハリー・ポッターからのイメチェンには成功したと思う。 [映画館(字幕)] 4点(2008-03-16 15:02:50) |
5. ディパーテッド
《ネタバレ》 互いの組織に潜入した二人の息詰まる攻防をキレのいい演出で描いた上質のクライムサスペンス。レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモンは自分を偽る男を好演し、緊迫感を加速させる。特にレオ、がっちりとした体格に鋭い眼光で犯罪者と警官を見事に演じ分けた。訛りも素晴らしい。そして暗闇の中から顔をみせる冒頭のシーンから圧倒的な風格でフランクを演じるジャック・ニコルソンの存在感はさすがだ。脇を固める俳優も良い。マーク・ウォールバーグは攻撃的な言葉を連呼し本物の凄みを感じさせ、アレック・ボールドウィン、マーチン・シーンも味のある演技だ。ラストはやや駆け足であるが複雑なストーリーをテンポよく見せる編集も音楽の使い方も巧く見応えがある。 [映画館(字幕)] 8点(2008-02-02 23:52:16) |