1. どぶ
新藤兼人は脚本した作品には楽しい作品が多々あるのにどうして本人が監督も兼ねちゃうとこう真面目くさいものになっちゃうのか。66年『本能』なんかは社会派としての厳しさをユニークな作風の中にうまく描いていてけっこう好きなんだけど、この作品のようにひたすらシリアスで来られるときつい。乙羽信子の衝撃のアホ顔は最初この映画の中できつさを和ませるユニーク担当なのかと思ったが、どうしてどうして、より一層のきつさを出すためのものだった。この人の作風に美人は不要なのかもしれないが映画なんだからもうちょっとなんとかならんか。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-08-01 14:13:02) |
2. トイ・ストーリー
子供はこれを見たらオモチャを大切にするのか。しませんよ。うちの子だけかもしんないけど、全然しませんよ。車のオモチャは100%タイヤをはずしちゃうし人形の首はどっかいっちゃうし紙のお札はハサミで切っちゃうしとりあえず何もかも一度は口に入れちゃうし。で、これ見たってまさか本当にオモチャが自由に動き回るなんて思わんでしょ。もちろん映画も「オモチャを大切に」と言いたいわけじゃない(と思う)。単純にフルCGアニメの素材としてオモチャを選んでいるに過ぎない。本来動かないものが表情も含めて自由に動きまくる。実写だとホラーだ。アニメーションだから擬人化がスムースにされる。そして危機また危機の冒険活劇としてじゅうぶんに楽しい仕上がりになっている。そこまでわかっているにもかかわらずこのシリーズを心の底から絶賛できない自分がいるのはやはりこの作品を教科書的に感じてしまっている部分があるからかもしれない。毒の無さがそのまま物足りなさとなっているのかも。 それともうひとつ。ウッディもバズも顔が嫌い。 [DVD(吹替)] 6点(2011-07-19 15:47:19) |
3. ドニー・ダーコ
《ネタバレ》 病的になる一歩手前の独特の暗さが印象的。結局なんだったんだろうという後を引きずる結末もあってかカルト化してるとかしてないとか。『バタフライ・エフェクト』みたいだけどその自己犠牲は比べもんにならんほど最強。それとも自己犠牲なんかじゃなく後に見た『ラブリー・ボーン』の考え方、つまり自分が死ぬことで世界が好転するというポジティブシンキングなのか。はたまた『マルホランド・ドライブ』的死人の夢か。まあ、どれでもいい。そんなことよりも気になるのは何故銀色のウサギなのかってところ。あるいはその名前とか。何故80年代後半なのかとか。あと「世界の終わり」という魅力的なフレーズ。テレビに映される大統領選挙戦もある意味一つの世界が終わろうとしているんだよなとか思うと余計に気にかかる。いろんな意味でスッキリしない映画。意味がなくたっていいんだけど。実際、銀色ウサギはそれだけで幻想的でどこかホラーっぽくもあって映画をじゅうぶん盛り上げているんだし。でもやっぱね。ちょっと気になるじゃん。なんで銀色ウサギなのって。 [DVD(字幕)] 6点(2011-06-15 17:45:24) |
4. ドリーの冒険
アメリカ映画の父D・W・グリフィスのデビュー作。しっかりと物語映画。その題材に「誘拐」を選んでいるところが興味深い。「誘拐」には当然被害者の物語と加害者の物語がある。その後『國民の創生』『イントレランス』『嵐の孤児』等と同時進行する2つの物語を見せることに天才的な手腕を発揮することになるグリフィスらしい題材ではないか。このたった12分の物語にはちゃんと被害者の物語と加害者の物語があった。二者が交わるシーンのサスペンスまで用意されている。お見事としか言いようがない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-04-08 16:32:07) |
5. ドロップ
ちょっとびっくり。意外にもなんていうと失礼かもしんないけど、ちゃんとした映画だった。何よりもカメラが全く揺れない。すごく落ち着いている。アクションシーンさえも。この手のものによくある「やられたらやりかえす」を見事に笑いへと転化した怒涛の「お返し」合戦がまた素晴らしい。笑いへと転化していること自体もいいし、テンポもいいし、それゆえの休戦に入るシーンのギャップもいい。それでいてこの時この一瞬における喧嘩というものが端的に表されている。憎いから喧嘩するんじゃなくて、ただ喧嘩をする。そこに意味はない。ああ懐かしや。これが青春よ。健全なる若者の健全なる行動なり。しかし本職・お笑い芸人としての真髄でもある劇中頻繁に出てくるボケとツッコミがいちいち段取りくさいってのはどういうことよ。ダメじゃん。 [DVD(邦画)] 6点(2011-03-30 14:04:38) |
6. 永遠の戦場
第一次世界大戦中のフランスを舞台にしている。製作が第二次世界大戦以前ということもあって戦意抑揚映画というわけでもなく、かといって無駄に兵士が死んでゆく様はあっても反戦色もそれほど強くない。システムに対する皮肉は大いに感じるところはあるけど、そのあたりはホークスの盟友、文豪ウィリアム・フォークナーの戦争感の表れか。戦争を背景としながらも描かれる男女の三角関係はあくまで男女の三角関係の話であって、そのあれやこれやが戦争と絡み合ってメッセージを発信するといった面倒くさいドラマにはしていない。むしろ戦争は男女の恋愛ドラマを盛り上げるアイテムに過ぎない。このあたりがいかにもホークスらしい。とは言うもののその背景の撮り方も半端ない。撮影時には誰か死んでるんじゃないかってくらい戦場の爆発シーンは凄まじい。ヒロインのジューン・ラングという女優が場違いな美しさを発散させているが、大真面目な反戦映画でこの場違いさは致命的な欠点となりかねないだろうが、この作品ではこの場違いな美しさが映画に華を添えている。太田胃酸の音楽が泣かせてくれるのだが、反射的に心の中で「ありがとう、いい薬です」とつぶやいてしまうのが難儀である。 [映画館(字幕)] 7点(2011-01-31 16:33:43) |
7. 賭博師ボブ
原作があった『海の沈黙』『恐るべき子供たち』とは違いメルヴィルのオリジナル脚本ということもあって、後のフィルムノワール群を彷彿させるものになってます。『海の沈黙』では屋内の灯りに照らされる「顔」を美しく撮っていたアンリ・ドカエが今作では夜明け前の薄暗いモンマルトルの街並みを美しく撮りあげる。主役はこの街だ。街の顔役としてのボブのジャン・ギャバン的落ち着いた振る舞いがなかなかに様になっててかっこいいのだが、その貫禄はボブが発しているのではなく彼に対応する街の住人たちと、酒と女とギャンブルがどこか質素に、でも当たり前に存在するモンマルトルそのものがそう見せているだけのようでもある。だからちょっと微笑ましいラストの展開もすんなりと受け入れられる。まさに「賭博師ボブ」であった。この「ゆるさ」こそが古き良き時代のモンマルトルってことなのだろう。 [DVD(字幕)] 7点(2010-11-26 12:17:45)(良:1票) |
8. 逃走迷路
間違われ、巻き込まれ、逃亡し、追跡し、そしてアイディアと工夫に満ち、いかにもヒッチコック映画なんだけど、同年の『疑惑の影』なんかと比べてもいまひとつ印象が薄い(てか、『疑惑の影』と比べちゃダメか)のはあまりに見所を詰め込みすぎたエンタメ志向だからだろうか。先に『北北西に進路を取れ』や『めまい』を見ている者からしてみればそのエンタメの最たるシーンであるクライマックスもちょっと弱い。このクライマックスにも言えるんだけど、ヒロインがヒロインとして出てこないのが決定的に痛い。捕まったって、殺されるようなことにはならなそうで全然ドキドキしないし。前半の逃亡劇が面白く、盲目の老人の宅に雨宿りし、ここでようやくヒロイン登場となり、ここから又楽しくなりそうになるのに。編集で魅せる船の爆破シーンはうまいなあ。 [DVD(字幕)] 6点(2010-10-21 14:02:51) |
9. トータル・フィアーズ
映画が嘘の世界であることは承知しているが、核がこんなにも軽く描かれちゃっていいものか。主人公ジャック・ライアンと恋人が爆心地にいたというのにその後、先に作られたシリーズ作品では元気もりもり、子供も授かっているという矛盾はさておき、せめて核を描くことにいくらかの覚悟をもってほしかった。ここでの核爆弾は超デカイ爆弾でしかないようなのだが、まさか本気でそう思ってるわけでもなかろう。あと、子供の喧嘩じゃあるまいし、なんなのだ、このレベルの低い攻防は。とにかくジャック以外のアメリカ人、いや合衆国政府高官の面々はアホばかりなのだが、9.11後のアフガニスタンへの空爆やイラク戦争へと向かったアメリカを見てるとあながちはずれてもないのか。 [DVD(字幕)] 4点(2010-10-13 16:44:32) |
10. ドリヴン
《ネタバレ》 実際のカーレースはただ走っているその映像だけで面白いのに、サービス精神旺盛な映画を作る側の人たちはそれだけじゃ我慢できないのだろう。だからクラッシュという見せ場を作るんだけど、この映画、異様にそのクラッシュが多い。そのうえ派手。カーレースに本来あるだろう緊張感をすっ飛ばして見た目の派手さだけが目に飛び込んでくる。派手なアクションに定評があるレニー・ハーリンの趣向が裏目に出ている。違和感のほうが突出してしまっているCGもレースシーンをしらけさせている。フォーミュラカーを公道で走らせたのは面白いが、ライトの無い車が夜の街を疾走する緊張感は皆無。恋愛をからめたストーリーはかまわないけど、深みが全く無い。セカンドドライバーの暴走→事故という流れもあまりに短絡的であきれる。往年のカーアクションスター、バート・レイノルズをチームオーナーにしたツボを心得たキャスティングとケミカル・ブラザーズの「Out Of Control」にプラス1点。 [DVD(字幕)] 4点(2010-09-08 17:35:37) |
11. ドゥ・ザ・ライト・シング
ちょっと逸れたところから入るが、以前ジョナサン・デミ『レイチェルの結婚』のレビューの中で同監督『サムシング・ワイルド』がスパイク・リーの映画のように云々と書いたことがあったんだけど、そのとき念頭にあったのがこの『ドゥ・ザ・ライト・シング』。でかいラジカセを担いで歩く黒人が印象的だったり、劇中に多彩な音楽がかかったり。あと、『サムシング・ワイルド』は劇中の人物がエンディング曲を歌い『ドゥ・ザ・ライト・シング』は劇中の人物がオープニング曲をバックに踊る。『サムシング・ワイルド』で使われる歌「ワイルド・シング」と「ライト・シング」まで言っちゃうとこじつけか。スパイク・リーのほうが後なので同じニューヨーカーのデミに敬意を表し、また人種のるつぼとしてのニューヨークを描いていることに対してのリスペクトなのではと。いや知らんけど。と、そんなことを書いてると内容に触れるスペースがなくなってきたのだが、要するに何が言いたいのかというと、何かとメッセージ性を語られる監督だけど、実はメッセージよりも映画としての見せ方の工夫とかのほうにしっかりと力が入ってて、それゆえにメッセージがどこか冷めた視点となり、結果映画がより深みを得ているんじゃないかと。この作品は特に。 [DVD(字幕)] 7点(2010-08-19 15:15:24) |
12. 東京暗黒街・竹の家
冒頭の列車強盗から警察の現場検証までことごとくバックに悠然と在る富士山の美しいこと。当時と今とじゃ富士山自体はそう変わらんのだろうからまわりの景色の差なんだろうけど本当に美しい。貴重な画だと思う。噂のヘンテコなニッポンはさほど気になりませんでした。『キル・ビル』のようにあえてそうしている映画がウケている現代ではむしろアバンギャルドという褒め言葉で受け入れられる範疇にあろうかと。実際、踊る芸子(?)さんらが着物からドレスに早変わりするところなんかはその方向を狙ったものなんじゃなかろうか。とはいうものの『ブラックレイン』とは違って主役も敵役もアメリカ人なのでニッポンを舞台とする必要性ってのは物語的には全く無かったりする。それでもあまりにもアメリカと違った世界には当然ながらアメリカにはないアイテムに溢れ、結果アクションシーン一つとってみても実にオリジナリティ溢れるシーンとなって我々を楽しませることとなる。その点においてこのニッポンは実に魅力的な舞台として効力を発揮している。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-07-15 14:40:58) |
13. トランスフォーマー
"シャイア・ラブーフは、いかにも厄介な事件に巻き込まれそうな顔をしている"と書いたのは『イーグル・アイ』のレビューなのだが、ここでの巻き込まれぶりもなかなか様になってる。とは言うものの善玉トランスフォーマーと主人公の関係はいたって良好。それどころかトランスフォーマーのおかげで手の届かない存在だった学園のマドンナといい感じになっちゃう。この展開は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だ(「ドラえもん」ともいう)。このベタベタな展開は悪くない。CGによるトランスフォーマーたちもいい。CGというのはこの場合、非現実的なものを現実の世界に違和感なく描くためのものなのだが、この作品で最も冴えていたのは逆に非現実的なる者、つまりトランスフォーマーたちが現実の世界にいることの違和感をもろに露呈させ、その滑稽さを笑いに転化させたシーンだろう(主人公宅に集合するやつね)。まあ、おそらくは最もこの映画が見せたいところのバトルシーンは正直どうでもいい。というか酷い(中東で悪玉初登場シーンは良かったけど)。話がベタなもんだから見せ方もありがちなCGバトルで済ませたってわけでもなかろうが。どうしても本物っぽく見せることが優先されちゃうので見せ方も決まってきちゃうんだろうか。 [DVD(字幕)] 6点(2010-03-10 17:49:21) |
14. トロピカル・マラディ
《ネタバレ》 前半は男と男の出会いとイチャイチャが言葉少なに描かれてゆく。男女ではなく男同士であること以外はべつに変わったところはなく、ちょっとした笑いも交えてなんとも清清しい恋愛の一端を見せられているような、そんな前半であった。ところが二人がデートを終え、一人が夜の闇に消えてゆく瞬間から強烈な緊張感が出現する。人が虎になるという民間伝承が語られ、そこからはいつ虎と化した若者が出てくるのかというサスペンスが常につきまとうことになる。しかしこの映画の凄いところはそこではなく、度々映し出される闇と、その闇の中に浮かび上がる虎の映像にある。このシーンの凄さをどう伝えればいいのかわからない。息をすることすら忘れて凝視した。全く異なった時間の流れを感じさせるのは、前半の日常の丁寧な描写が活きているのだろう。この闇と虎はなにかの比喩なのかもしれない。男を好きになってしまった男の深遠に潜む虎、とか。日常の狭間で悩み、自らの虎を抑えきれなくなった若者は虎を開放してしまう。それを恋人は受け入れる。そんな物語かなと思ったんだけど、実はそんな解釈もどうでもよくって、この映画の最大の魅力は、この映画を見て感じた戸惑いそのものにあるような気がする。なぜ戸惑うのか。それはこの映画が私の許容範囲を超えたものを見せてくれたからに他ならない。 [映画館(字幕)] 7点(2010-01-22 14:08:06) |
15. トゥー・ブラザーズ
《ネタバレ》 『子熊物語』でも感心したけど、脚本に沿った演技をするはずもない動物の動向を脚本にはめこんでゆく労力には恐れ入る。とくに子虎の一喜一憂の動向、表情は素晴らしい。表情があるように思える分、熊よりも虎の方がドラマ向きかもしれない。だけどこの表情のせいでえらく擬人化されてしまっているのも確かで、人間的な行動規範を持つ虎がアニメのキャラならまだしも、本物の虎でやられちゃうとなんだかしらける。というか本物を使ってこんなことしてなんになる?とか思いながらも結末にホッと胸を撫で下ろすのであった。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-18 17:20:55) |
16. トロピック・サンダー/史上最低の作戦
《ネタバレ》 人気ラッパーの名前がアルパ・チーノってのが元ネタの人の昨今の大袈裟な台詞回しを揶揄しているのかどうかは知らないが、きわどいなと。映画はまずこのラッパー出演の清涼飲料水のCM、そしてユニバーサル配給のいかにもハリウッドアクション大作のシリーズ新作のCM、それからこちらはニューラインシネマで、特殊メイクを駆使して一人で何役もこなすというどこかで見たことあるようなコメディ映画のこれもシリーズ新作のCM、最後はフォックスで問題作であることをウリにした真面目を装った映画のCMが流れる。要するにこの4本のCMに登場する個性豊かな4人が一つの作品を作り上げてゆくということになるのだが、この4人という数に問題がある。多すぎる。実際映画はほぼ2人に絞って見せてゆくのだが冒頭の対等さからすれば編集の段階で切られたんじゃなかろうか。ここまで切るんなら、あるいはそもそもそこまでの役ならば少なくともジャック・ブラックはいらんでしょ。一方ちょい役ながらトム・クルーズの存在感は際立っていた。むちゃくちゃ楽しそうに見えるし。エンディングなんて独壇場にしちゃってるし。てかエンディングを独壇場としてあけわたしたベン・スティラーもいいセンスしてる。 [DVD(字幕)] 6点(2009-12-11 15:30:14) |
17. ドラムライン
ベタなのはいいんだけど限度がある。ライバルチームの監督のキャラがいかにもで萎えた。一応相手チームだって同じ泣いたり笑ったりする人間で同じ青春を謳歌する大学生なわけで、「敵」としてしか登場しないことに潔さを感じることができずひたすら呆れた。たしかにドラムプレイはかっこよく、特に最後のドラム同士の対戦で背景を真っ暗にしてライトアップして見せるあたりはなるほどミュージッククリップっぽくて、よりドラムプレイのかっこよさが出ているように思った。生の迫力には到底勝てんだろうけど、スティックさばきをアップで見る機会もそうはないだろうし、映画の中で繰り広げられた演奏とパフォーマンスはそれなりに楽しめた。かな? [DVD(字幕)] 3点(2009-11-25 14:14:33)(良:1票) |
18. トレーニング デイ
《ネタバレ》 汚職に塗れた警官を描いた映画はゴマンとあるが、その多くの汚職警官映画の中でこの作品がオリジナルな魅力を発散させているのは「社会派」の色合いを全く持っていないところだろうか。見終えてみると(ネタバレ)、悪徳刑事が自分のしでかしたミス(ロシアンマフィアがらみで金が必要)を帳消しにするためのアレコレがこの作品の大筋なのだから。要するに、訓練日を描いているように見せながら、訓練日にかこつけたある計画だったというミステリーでしかない。汚職に抵抗する若い警官の葛藤ったって、なにせ訓練日一日の出来事なので『セルピコ』のパチーノのように孤独に苛まれたり『コップランド』のスタローンのように現状維持の平安との選択に悩んだりするたびに顔を出す「社会派」たるものは出てくる暇もないのだ。ある意味、深みがない。にも関わらず面白いのは悪徳刑事の悪徳ぶりの凄まじさとその怖さがリアルに且つハイテンポで襲ってくるから。そしてデンゼル・ワシントンがめちゃくちゃにその悪党ぶり、非情ぶりが様になってるから。 [DVD(字幕)] 7点(2009-09-17 15:42:41) |
19. TOKKO―特攻―
日系アメリカ人が撮ったからどうのといったことはあまり感じられなかったけども、特攻隊の生存者だけでなく特攻を受けた戦艦の生存者の証言映像があるのはインタビュー形式のドキュメンタリーとしての強度を得ている。はたして特攻隊とはなんだったのか。そこに狂気はなかったのか。特攻隊の生存者の一人が言う。天皇がもう少し早く降伏してくれてたらと。今だから言えるのかもしれないし、そう感じる人だからこそ生きて帰ってきたとも言えるかもしれない。つまり、生存者の証言では特攻に狂信めいたものはないのだが、特攻で命を落とした者もそうとは言い切れないってこと。私の祖父は戦死している。私の父は、内心では天皇なんかくそくらえ!と思っていると母から聞いたことがある(ここで言う天皇とは個人ではなく、戦時の概念としての)。でもそれは今生きている父が思うのであって祖父がどう思って死んでいったのかはわからないってこと。だから何もかもがこの映画でわかるわけじゃない。もしかしたら偏った伝え方になっているかもしれない。でも少なくとも証言者は「死にたくない」と思っていた特攻隊員だったのだ。別の生存者が映画終了間際に言う。語り継がなければいけないが、謙虚にしゃべらなきゃならないと。重い言葉だと思った。 [DVD(邦画)] 6点(2009-08-06 15:00:50) |
20. 時をかける少女(1983)
尾道の古風な町並みが背景にあるおかげでかなり救われていると思う。その背景に合わせて『ねらわれた学園』のようなトンデモなSF映像が抑えられているのも救い。古風な街で古風な性格をした原田知世が古風な格好してる(下駄履いて石段下りてくとか)のもSFという非現実的なものがより非現実的なものに見えてよかったかもしれない。それでも大林監督の演出ってなんか苦手かも。セリフ棒読みとか大根演技とかはべつにいい。でも大林監督の求めてる棒読みと大根演技はちょっと違う。なんか独特の空気持ってる。それさえクリアできればけっこう楽しめるんだろうけど。だいたい尾道なのにみんな標準語ってだけでもう独特な雰囲気になってるというか、これが大林ワールドなのか。ゴローちゃんが一番かわいそうってのは激しく同感(↓)。あと根岸季衣のホットパンツはきついものがあった。 [DVD(邦画)] 5点(2009-06-24 16:49:01)(良:1票) |