2. トゥモロー・ワールド
《ネタバレ》 ◆ジャンル的にはSFというよりか「極限状態モノ」。類型作品をあげるとしたら「戦場のピアニスト」だろう。◆「人類に生殖能力がなくなる」「世界は荒廃する」「その状況下で世界でひとりの妊婦がいたら?」…という「極限設定」は見事。それらに理由づけを求めるのはナンセンス…「もしも?」の極限世界を描きたい映画なのだから。◆この極限世界でダイナミックな輝きを放つのが「赤ちゃん」の存在だ。最初は守らねばならぬヤッカイなモノ、産まれたきたらその泣き声は所在を知らせる信号の役目を果たし、最後には主人公を救う究極の防護服になる。◆赤ちゃんを盾にした脱出シーンは、感動して泣くもよし、究極の「印籠」にひれ伏す兵士たちの微妙なリアクションを笑うもよし、撮影技術に驚嘆するもよし…といった、いろんな見方が可能なツクリ。◆以上、「命の尊さ」みたいなものを唄った偽善的な作品ではナイと感じた。極限化での人間たちが見せる、ヒューマニズムとユーモア性の描写、それに含まれた英国調の皮肉がこの作品の持ち味ではないか。◆…以下雑感。◆麻薬栽培をしてるじじさまのイキザマ、シニザマは、おかしくて哀しくて、涙腺を刺激された。大英帝国が産んだ究極のヒッピーというところか。◆多数登場する動物の描かれカタもオモシロイ。厳選された動物たちが、優秀なアニマルトレーナーの元で出演してる感じ。農家から主人公が逃走するシーンで追いかけてきた犬はあさっての方向に行っちゃうし(笑)◆ラストシーンは、霧の中で主人公が死んだ時点で「おしまい」にして欲しかった。◆技術面は文句なし、アクションシーンの臨場感バツグンで、近年の傑作だね。 [DVD(字幕)] 9点(2007-07-05 12:40:39) |