1. 映画 ビリギャル
《ネタバレ》 実話ものらしいが映画からは真実味というものはあまり伝わってこない。担任の教師と塾講師が主人公のことで喫茶店で話をするシーン。塾講師が熱く語る傍らには塾の生徒二人が見守っているというあまりに出来過ぎたシチュエーション。家庭においては父の歪んだ愛情は息子にのみ注がれるという極端な環境。母の端から見れば異様に見えるくらいの娘を守ろうとする姿勢。本当にこんなことがあったのかと思わせるところが多く、おそらくいろんな脚色がされているんだろうなという思いで観ていた。 しかし、そういう極端さはこの映画においてはあまりマイナスになっていない。それはこの映画が愚直なまでに何かにのめり込む人たちの物語だからだ。愚直なまでに主人公を信じる母親と塾講師。息子をプロ野球選手に育てるべくその環境を何の迷いもなく用意する父親。そして、主人公のさやかは不良ぶっていて教師に反抗的な態度をとってはいるが、塾に来てからの彼女は素直そのものだ。反抗的な態度をとるのは挫折しそうになった一度だけ。あとは塾講師の言うことに耳を傾け一心不乱に勉強に打ち込む。 こういう作品にひねりの利いた展開やリアルさを追求することは逆に邪魔になるだろう。愚直の何が悪いんだと言わんばかりの真っすぐな展開が逆に気持ち良いくらいだ。塾仲間の野村周平との間に恋愛要素が微塵もないところが良い。 キャストは皆熱演しているが母親の“あーちゃん”を演じた吉田羊が素晴らしい。本当に家族に対しているかのような彼女の演技がこの映画に必要なリアルさを引き出している。受験の話と思わせているが実は家族の再生の話でもある今作においてとても重要な要素だと思う。有村架純はあまりギャルっぽく見えない感じだが素直さがにじみ出るような雰囲気が良い。へそ出しで出てきたときは素直にかわいいと思ってしまった。 ベタな展開は良いのだが終盤の手紙のやり取りは少々くどい。そこまで言葉にしてしまうのかと。テレビ的な作り方をしているとはいえやはり映画ならではの描き方もしてほしかったというのも正直な感想。 [インターネット(邦画)] 7点(2017-12-06 01:35:37)(良:1票) |