1. 楢山節考(1983)
《ネタバレ》 正直いって、今村昌平の映画は好きじゃない。猥雑な底辺の人間臭さ。そんなもの、わざわざ映画で見せつけられてもしかたがない。けれども、ここまで強烈に描かれては、脱帽する。若い醜男がなんとまあ、犬に夜這いかけて獣姦する。ちょっと前まで死にかけていた老女が頼まれて相手してやる。......漁港ではエイを、ヨーロッパでは牧童は羊を代用にして姦するという話を聞いたことがあるけれども、犬もありか。犬との獣姦シーンを観たのは初めてだ。そんな強烈な猥雑さと、貧しさゆえの残酷さ。しかし、それだけじゃなくて、神の山で死ぬということが、病気などで在宅で死ぬのとちがって、崇高な死に方なのだという信仰がちゃんと描かれていた。ひょっとすると、この老婆のように、昔の貧しい山村の生き方では、死に時と死に場所の選択が、おのれの意志にもとづいて、案外しっかりおこなわれていたのかもしれん。現代のわれわれには、意志いかんにかかわりなく、むりやり病院で、それもぎりぎりまで延命治療で生かされて、不自由に死んでゆくことしか許されていないのだ。はたしてどちらが崇高な死に方か。こんなふうに、猥雑さと残酷さにくわえて、崇高さも描かれているこの作品は、今村昌平の最良の作とお見受けする。 [DVD(邦画)] 9点(2009-01-24 03:48:33) |
2. 長い長い殺人
へたな演出、ぱっとしない画面、めりはりのない話。 [DVD(邦画)] 3点(2009-01-04 22:42:53) |
3. 涙そうそう
《ネタバレ》 主人公の二人は、筋書き上はいちおう血はつながってないということにしてあるけれども、本当はこれは兄妹近親相姦ものと見た。この手の話は、インモラルゆえに、ハッピーエンドで終わらすわけにゆかず、主人公の少なくともどちらかは死ぬのが決まりみたいなものなので、この作品もこうしたお決まりにしたがっているだけなのだ。ならば、もっと明白に兄妹近親相姦ものでゆくべきだった。でないと、一方の死が唐突すぎるし、観客も納得しにくい。しかし、この二人はさわやかで、よろしゅうございました。 [DVD(邦画)] 7点(2008-10-16 09:20:06) |
4. ナイロビの蜂
パッケージに「サスペンス映画の傑作」とあったので、借りてきて観たが、期待はずれ。なるほど、製薬会社なら本当にやっていそうな話だが、主演の男が頼りないうえに、女がまるで環境テロリスト連中にでもいそうな嫌な奴で、社会を告発するなら、もうすこし感情移入できる筋立てにしてほしかった。それに白人はあいかわらず立派で、アフリカ人はあいかわらずかわいそうでダメな人種なのか。 [DVD(吹替)] 4点(2007-03-06 04:52:54) |
5. ナビィの恋
日本映画には数少ないミュージカル映画の傑作。小林薫主演の沖縄映画『ウンタマギルー』(1989)もミュージカル仕立ての傑作だった。どうして沖縄映画だとミュージカル調がこうもはまるのだろう。これは結局、いわゆる本土では津軽あたりを除けば、われわれ自身の生きた民謡、フォークミュージックを失ってしまっているのだ、ということに気づいて愕然とする。この映画にでてくるアイルランド人が演奏するのが、ケルト・ミュージックだというのも意味深だ。 10点(2005-01-02 05:28:08) |