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1.  ナチュラル 《ネタバレ》 
野球少年にとってサヨナラホームランは夢。しかしこの映画ほどのシチュエーションとクライマックスは想像出来まい。理想の中の理想だ。この監督、光の使い方が素晴らしい。観客席でロイの試合を見つめるアイリスにだけ夕日が当たったり、見舞いに来る病室なども美しい。しかし極めつけはもちろんクライマックスのボールがライトに当って次々とライトがショートし火花を放つシーンだ。バットボーイのはじける笑顔、アイリスの笑み、内側に傾きながら淡々とベースを回るロイの向こうにはじける火花、そして監督のメガネに映る降り注ぐ火の粉…何もかもが叙情的だ。監督の目にはロイは野球の神様が遣わせた天使の姿と映っていただろう。ロイは紆余曲折があったけれど努力したからこんな素晴らしい結果を出せた、というサクセスストーリーな描写ではない。メジャーまでの苦労話を省いたのはそのためだ。結果はどうあれ努力するのみ。それが僅かなチャンスでもあきらめない。よくあるテーマだが、それは王道であり、万国の人々共通の目標だ。それがこの映画の根幹にあるから私たちが胸を熱くするのだ。努力するものへの讃歌なのだ。ラストシーンは冒頭の伏線を含めすべてをきれいに収めるキャッチボールシーン。グレン・クローズの立ち方も美しい。そして何よりレッドフォード最大の武器である少年のような笑顔。見事としか言いようがない。最近見た「ジュリエットからの手紙」と同様、あまりにも出来すぎなストーリーにこっ恥ずかしさをわずかに感じながらも、あまりにもド真ん中の直球に感動するしかない自分をうれしく思う。
[ビデオ(字幕)] 10点(2013-09-17 21:30:06)(良:1票)
2.  ナイト ミュージアム 《ネタバレ》 
そもそも博物館の標本は何のためにあるのか。その場所で見ることのできない、もしくは現在では見ることのできないものを再現するためである。観客たちはそれを見ながらその場所やその時代に思いをはせるのである。この映画、それを楽しく実現してくれているのだ。単なる子供向き映画ではなく、博物館にとっての究極の夢の具現化といってもいい。さらにこの映画は博物館内の陳列物同士の人間関係まで膨らませている。ローマ人とガンマン、ルーズベルトとサカジャウィアなどなど、それぞれが蝋人形やミニチュアとわきまえながら今を生きているのだ。この映画を見た後の博物館見学はもっとゆっくり標本を見て回ろうとおもう。江戸時代の侍がマリー・アントワネットの噂話をしながら、ピラミッドの建設を手伝っているかもしれない。そして驚くべきは、エンドロールでのディック・ヴァン・ダイク。奇跡のようなダンスが披露されている。おそらく現場のスタッフ全員で感動したに違いない。チキチキバンバンやメリーポピンズで育った世代にとってあの柔軟な身のこなしは、博物館にしまっておくものではないと判断したのだろう。
[映画館(吹替)] 8点(2008-06-14 12:53:14)
3.  ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合 《ネタバレ》 
この映画のすごいところは、特殊メークなしのエディより太ったクランプ教授がとても魅力的なところ。映画での性格付けやストーリー展開ということではなく、彼のたたずまいや表情そのものが実にチャーミング。思わずエディ・マーフィというよりは、このクランプ教授役の俳優で別な作品も見てみたいと思ってしまった。大したもんだよ。アクターズスタジオで若手俳優を厳しく指導したリー・ストラスバーグが生きていたら、なんていうだろうか。
[DVD(字幕)] 8点(2007-09-03 02:45:35)
4.  なつかしい風来坊 《ネタバレ》 
本作はいわゆる「馬鹿」シリーズ(すごいシリーズ名!)の一つ。まさに寅さんのキャラの原点と思える主人公をハナ肇が熱演している。そういった意味でも価値ある一本。高度経済成長を遂げゆく日本人の「忘れた何か」を、その時代にいながらにして訴える姿勢には頭が下がる。ラストシーンは「遥かなる山の呼び声」を彷彿とする名シーン、ここもまた見所。年月が変わって役の立場も変わったハナと倍賞千恵子が「遥かなる~」の収録中にどんな会話をしたのか、想像するだけでも楽しい。それにしても、倍賞は美しい。
[地上波(字幕)] 8点(2005-11-30 21:57:55)
5.  ながらえば<TVM>
私のドラマ好きの原点。今は亡き父とともに見て感動でお互い無言になった思い出がよみがえります。この作品は、山田太一氏がNHKプロデューサーに「どうしても笠さんでやりたい」という彼には珍しいリクエストで実現したとのこと。その後この作品のヒットで2作(「今朝の秋」「冬構え」)が作られ、3部作扱いになりました。それほどこの作品は完成度が高い!おそらく、山田さんの予想以上のできばえだったのではないでしょうか。 演出、脇のキャスティング、ロケーションと文句なし。それ以上に笠さんの芝居は、完全に演技を越えた佇まいです。とくにひょんなことから一泊せざるを得なくなった旅館の主人(宇野重吉)との夜の会話は名シーン中の名シーン!珠玉のドラマです。その感動はいつまでも色褪せません。
[地上波(字幕)] 10点(2005-10-31 02:48:36)(良:2票)
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