1. ナインスゲート
中世の稀覯書(きこうしょ)にまつわる純ヨーロッパ的なミステリー。ボルヘス風の題材が面白く、冒頭から物語に引き込まれてしまった。九枚目の版画を贋物とすり替えておいたのはセニサ兄弟らしいが、そもそもこの兄弟は何者だったのか? また、エマニュエル・セイナー演じる謎の女は天使なのか悪魔なのか? そしてコルソは「九番目の門」を潜り抜けてどこへ行くのか? などと多くの謎が説明されないまま残されるのだが、変に合理的な説明を与えることなく、あえて観客の解釈に委ねる態度を取ったところが新鮮な効果を挙げている。知的な興奮を体験させてくれる稀有の映画というべきだ。(ちなみにコルソ兄弟を一人二役で演じた役者はもともとキューブリックの助監督。役者ではなかったのにポランスキーが掻き口説いて出演させたとのこと。物語の結末近くでコルソ兄弟の店を片付けている引越業者も同じ人物が演じているということを、観終わった後で初めて知って驚いた) 10点(2003-05-06 09:35:34) |