1. 人魚の眠る家
《ネタバレ》 原作読後の鑑賞です。映画では母とマッドサイエンティストの狂気が悪目立ちしてる。もちろん原作の方もそのように読者をリードしている部分もあるが、考えるべきは家族が(特に子供などが突然に)脳死という状態に陥った時の事。事故で突然動けなくなった我が子が死んだか死んでないのか、それは脳死判定を行えばほぼ確定される状況なのに、その「判定テスト」は、臓器提供を表明しないと実行されないというルール。逆説でしか「死」を受け入れない日本の法律がおかしいのではないかという問題提起を、本作は前提レベルでスルーし、家族の話と狂気の部分をクローズアップして描いている。まあそれはそれでよい。そのレベルでのストーリーテリングで描こうというのならそれでもまあ良い。少しでも脳死を考える材料にはなっているから。 動かない幼子を中心に、登場人物はそれぞれの立場でものを言う。「あの子は生きている。まだ死んでなんかない」「自分の体を使って生活した方が生きる喜びを感じる」「延命措置は虚しい行為なのではないか」「技術の進歩にも超えてはならない一線がある」どれも間違ってない。個人の意見だ。 でもこんなに難しい問題を、個人が選ぶ権利として当事者に丸投げしている法律がやっぱり一番の問題。そしてこんな曖昧な法律の下、今後技術の進歩と倫理観はどう折り合いを付けていくのか。法律、政治、医学や技術開発が調和を取って、例えば政治では止められない人口減少の問題なども考えなくてはならない時代なのだろうと、原作を読んだときはそんな事まで考えてしまった。映画の方は、役者の演技はそれぞれとても良く、だからこそ単に悲しく切ない物語に留まってしまったように思う。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-06-28 14:04:20) |
2. ニューイヤーズ・イブ
このようなお祭りイベント映画でまさか感動してしまうとは、私も疲れているのか、丸くなったのか。0時の瞬間、ニューヨーク、タイムズスクエアという狭いエリアで、恋の始まり、復縁、誕生、死別、失恋、再開などが同時に繰り広げられる。その時の一瞬に向かって皆がまとまっていく感じが心地よい。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-07-04 16:14:03) |
3. ニュースの天才
《ネタバレ》 ジャーナリズムとは。と語り始める前途有望な若きジャーナリスト。会社では同僚からの人望もあるし、母校では成功者として自分の功績を意気揚々と(妄想で)語る。こんなヤツの化けの皮が一枚ずつ剥がされていく様が気の毒というか気持ちいいというか(笑)。ジャーナリズムとは、とかそういう話ではなく、自分を「野心家で出来るヤツ」と勘違いしてしまった小僧の話。こういうタチが悪いヤツいるなーっていう。表面的にはちゃんとしてるように見えるが崩れ始めると脆い。何かと「怒ってる?」と聞いてくるところが印象的で象徴的。なぜ捏造行為に陥ったかなんて、弱っちい甘ちゃんだったからってだけで解明する程の事でもないでしょう。地味な作品だが実話を分かりやすく伝えているし案外面白かった。 [地上波(字幕)] 6点(2013-03-29 14:19:23)(良:1票) |
4. 20世紀少年 -最終章- ぼくらの旗
《ネタバレ》 かなり良かったんですけど。てか皆さん厳しいですね。私は見終わった後、すっきりしました。そうだったのかと。確かに前半、というか大半は大した事無いです。でも、あのラスト!謎が多く残った原作の終わり方に、「そういうことか!納得ーー!!」と思わせる本作のラストに鳥肌が立ちましたよ!凄すぎる。いや前半、てゆうか大半は大したことないんですけどね、あのラストは原作読んだ者は、絶対見て納得しないと完結しないですよ。整形説とか双子説とかあったけど、それらの説の上を行く結末が一番スッキリです。ありがとう。いや、前半、てゆうか大半は大した事無いんですが、ラストのまとめ方は素晴らしい。20世紀という時代が、これでスッキリ終わりました。でもまた原作、読み直しです。 [映画館(邦画)] 8点(2009-09-02 21:36:48)(笑:1票) (良:1票) |
5. 20世紀少年
娯楽として「映画」が好きか「漫画」が好きかによって評価が分かれると思う。原作を読んでいるか否かも重要だが、読んでいても原作(漫画)に対する思い入れが高ければ高いほど、それに反比例して本作(映画)の評価は低くなってしまうものだろう。私の場合「映画」も「漫画」も好きで、原作もそこそこな感じで読んだのだが、漫画原作の映画化にしてはかなり良かったと思う。現存する天才の内の一人である(と私は思う)浦沢直樹の超大作を、本人が大いに携わって作られた本作だけに、まんがの1コマ1コマがそのまま映像化されていて、二次元で見たお話の世界が現実になってしまったような恐怖を感じた。全く読んでいないと置いていかれそうな展開の速さ、一つの作品として楽しめるかと問えば、当たりはずれに関わらず最初から三部作と謳ってしまっている時点で端からそんなつもりも無い。一作としての完成度だけを測ると確かに完璧とは言えないが、原作が持つ謎めいた独特な雰囲気、ノスタルジーと記憶の矛盾のような歯がゆさは十分伝わってくる。三作全てを見終わってからでないと評価は出来ないのではないか。スタッフの皆さん、気を抜かずに最後まで頑張って作ってください。 [映画館(邦画)] 8点(2008-09-21 18:23:42) |
6. ニューヨーク・ストーリー
ニューヨークとそこの監督を集合させたオムニバスで、三作にリンクするものはない。皆さんはどの監督が好き?というプロモーションかプレゼンといった感じ。当然好みは分かれる。で私はアレン>スコセッシ>コッポラ でした。 [地上波(字幕)] 4点(2008-06-10 16:30:41) |
7. 尼僧物語
《ネタバレ》 尼僧たちが皆美しいです。清楚で控えめで規律を守り、無駄の無い身のこなし、凛とした姿が美しいです。でも中でもオードリーヘプバーンは別格に美しいのです。その他大勢と同じ動きをしていても格別に美しいのです。その美しさは容姿だけでなく内面からにじみ出てくるもので、シスタールークの心の葛藤を演じているからだと思います。従順で厳戒な他の尼僧との違い=心の葛藤が美しさオーラとなって発光しているのです。すごいです。彼女の葛藤は、自分のプライドを捨てなくてはならない事への抵抗。彼女には目標、目的があるからそもそも尼僧には向いていませんでした。人間が最もストレスを感じる時とは「自分のプライド、自尊心を傷つけられたとき」と聴いたことがあります。ストレスの元となる「プライド」。持つべきか持たぬべきか…。彼女の場合は持つなと言われた事がストレスになっています。深いです。アフリカコンゴでのシーンはドキュメンタリー映画のようで、そこに投げ込まれたオードリーは何とも違和感があり必見かも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-09-22 08:59:14)(良:1票) |
8. 2001年宇宙の旅
《ネタバレ》 む、難しい・・・。率直に面白かったとは言えないが、傑作なのは確か。原作読んでない予備知識ほとんどない知恵もない私が、考え悩んで勝手に出した見解をこの場を借りて発表させていただきます~「人類の夜明け、それは猿人が謎の石版モノリスに触れた事から始まった。この大胆な仮説に則り物語は進行する。月面にもモノリス。HAL9000の暴走もモノリスの仕業か。人工知能が感情を持ち始めた事による危険性は、猿人が道具を使い始めた時のそれと同じ。モノリスは神から人類への贈り物(英知)であり、それをどう使うか(破滅に向うか、進化を遂げるか)は贈られた者の選択である。がラストで神は救いの手を差し伸べた。死から生へ。輪廻転生。赤ちゃんが巨大(スターチャイルド)な意味が良く分からなかったが、その隣で美しく青く輝く地球も遠い昔にこうやって生まれたんだよ、という象徴的なシーンと受け取る~。」とこんな感じです。1968年、人類がまだ月にすら降り立っていなかった時代、近い未来を夢見て作られたこの作品には計り知れないロマンを感じる。人類の知への欲求は、とどまる事を知らない、言わば宇宙より巨大な存在であり、また宇宙も、人間の無限の想像力を超えるものである。難解な作品ではあるが、とにかくスケールの大きさと、何やら宗教的・哲学的なメッセージを感じる。2001年を超えてしまった現在、あたかもドキュメンタリー映画を視聴しているかの錯覚を覚えるくらい淡々と進むのは退屈に感じてしまうが、'68年当時の見方はもちろん違っただろう。キューブリック監督が2001年を待たず、そして人工知能を扱った「A.I.」も撮れずに'99年で他界したのは何とも皮肉なことだ。 [映画館(字幕)] 9点(2004-01-15 11:04:27) |