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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1282
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  ニューオーダー 《ネタバレ》 
メキシコ国家の悪を暴く映画である。映像面や物語構成についてはそれなりに見せているが、残酷な場面があるので一応要注意である(電気棒を尻に挿すなど)。 映画として何を訴えたいかは公式サイトに監督の言葉が一応書かれていて、民衆を顧みない政府をこのままにしておくといずれこうなる、という警告とのことだった。冒頭がショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」で始まるのでロシア革命の民衆蜂起のようなことを予感させるが、結果的に民衆が勝利したとはいえなかったという意味とも取れる。劇中では最初に暴動を起こしておいてから、軍隊がこれを鎮圧する体で新たに抑圧体制を作ったのが「新体制」の意味だったのかも知れないが、そうだとすれば特に目新しさを感じるものではない。題名は刺激的と思ったが期待外れだった。 現実の問題として、メキシコでは以前からの麻薬戦争との関係で、犯罪組織だけでなく警察や軍隊までが虐待・拷問をやってきたということはあるらしい。しかしこの映画のような営利目的の誘拐を、末端はともかく軍として組織的かつ大々的に行うことまで実際あるのか、あるいはやりかねないとアピールする根拠はあるのかどうか。まあ根拠があると地元民が思うなら他国民として否定できるものでもなく、一応何が起きるかわからない世の中とはいえるが、ちなみにメキシコ国家が本当にこれほど恐ろしいならこの映画も公開できない(関係者は生きていられない)だろうから、基本的には安全な環境で批判だけしている状態だろうと思っておく。 なお登場人物のうち「ビクトル」というのは父の友人とされているだけで実際何なのかは不明だったが、公的機関に関わっていて、軍の高官と思われる将軍よりも立場が上に見えたからにはかなりの権力者であるらしい。最後の場面で3人が並んでいたのは「軍」「政」「財」であって、これら勢力が癒着して国を動かしているが、実は「財」が痛めつけられる立場だというのを象徴的に示したのかも知れないと思った。  その他雑談として、メキシコでは公的健康保険の加入者は公立病院で自己負担なしで診療が受けられるそうで、それ自体は社会保障の手厚さを思わせる。ただし医療の質や治安の問題から、経済的に余裕のある人々は自己負担で私立病院を利用するとのことで、そのための民間医療保険に加入することもあるようだった。現地の日本人は私立病院の利用を勧められているようで、庶民向けが明らかに安かろう悪かろうという点に格差が見えているとも取れる。メキシコが世界最悪なわけでもないだろうが。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-09-16 10:03:27)
2.  N.Y.マックスマン 《ネタバレ》 
イケメンで固めた特撮変身ヒーロー物のようで(一応大人向け)、アメコミのヒーローが実体化したようなものらしい。同じシリーズの3作目だが、続編はなかったようなので三部作の最後ということになる。 初代と二代目のヒーローは東京で同じTV局に勤める兄弟という設定だが、今回の三代目はなぜかニューヨーク在住ということになっている。つまり題名の「N.Y.」とはアメリカのニューヨークのことで、冒頭では本物の空撮映像なども出ていたが、舞台挨拶によると撮影は全て東京の100m以内で収めたようなものらしい。実際見てもほとんどTV局の屋内で撮っている感じだった(テレビ朝日の中?)。  内容としてはヒーロー物ながらコメディ調で笑えるところもなくはない。またレギュラーで出ている悪者のせいで起きた事件の謎を、主人公の探偵が解明していくミステリー調の展開のようだったが、結局最後はありがちな結末で終わってしまう。敵が普通の人間なので、変身ヒーローとしての活躍があまりないのも不足感がある。 ただし終盤で、今回の主人公だけが持つ特殊能力が初めて明らかになり(ほとんど反則)、そこまでの間で不可解に見えた場面の真相を明らかにしていくのは少し意外で面白かった。どうせ安手のしょうもない映画だろうと思っていたが、いかにも低予算でTVドラマ風ながら、最終的な印象は意外に悪くなかった。  なお若手の顔ぶれを見ると、仮面ライダー/スーパー戦隊の出演経験者に出番を用意するための映画のようでもある。自分がこれを見たのは「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(2015~2016)の「かすみ姉」(百地霞/モモニンジャー)が出ていたからで、この映画では印象の全く違う役どころだが、演者の山谷花純さんはもともとこういう感じの役が多い気がする。今回は「許さない」と「キモ」の表情が見どころか。 ちなみに二代目ヒーローの相手役の内田理央という人は今回も主要人物で出ているが、初代ヒーローの婚約者役である山本美月という人はほとんど見えなかった。またどうでもいいことだが、千葉雄大という役者はいつ見ても年齢不詳だ(この時点で28歳と本人が言っていた)。
[DVD(邦画)] 6点(2021-03-13 20:22:33)
3.  人間失格 太宰治と3人の女たち 《ネタバレ》 
初日に行ったが年齢層は若干高めだった。 実話をもとにしたフィクションとのことで、主人公のほか登場人物は実在の人物らしい。冒頭の入水事件を除き、ほとんどの部分は1946年に主人公が東京に移転してから1948年に死去するまでの足かけ3年の話である。 日頃この作家の著作に親しんでいるわけでもない男(走れメロスしか知らない)として共感できるものは特にないが、文豪の創作の背景を描いたものとして見ごたえのある映画と思われる(ただし少し眠くなる)。物語のほかにも映像面や役者の演技で見どころは多いだろうが、自分としてはカニを買った場面が好きだ(台詞と顔)。また題名の小説を書く前に主人公が死んでしまうのではないかと思っていたが、最後に執筆経過を手際よくまとめていたのはよかった。  事実がどうかは別としてこの映画で見た限り、主人公が創作のために何人もの女性を身勝手に翻弄したのは非道ともいえるが、しかしできた作品が傑作だから許されるなどと言い訳するまでもなく、この男はこのようにしか生きられなかったというだけに見える。主人公は最後までバカなままで死んだようだが、そのことで「3人の女たち」はそれぞれ最後に得たものがあったらしく、これで基本的にはハッピーエンドと取れる。また最後に傑作が残されたからには読者も得をしたわけで、他のみんなが喜ぶ一方で主人公だけがブチ壊れて滅んだという結末らしいが、そういう理解でこの作家のファンが納得するのかはわからない。 登場人物に関しては、何といっても「3人の女たち」が見どころだろうがそれほど極端にエロい場面はない。個人的な関心事として、山谷花純という若手女優がどこに出ているかと思っていたら最後まで気づかないまま終わってしまったが、本人によれば「田部シメ子役」とのことで、冒頭で入水した人物(実在)がそうだったらしい。出番は短いが「3人の女たち」に加えたもう1人の女としての位置付けになる。 なお主人公の長女役は名の知れた子役のようだったが、長男役の子役はどこから連れて来たのか気になった。  以上のようなことで、自分としては特に大絶賛ということにはならないが、鑑賞者側の限界のために評価しきれていないところが多いと思われる。そういう場合の通例としてとりあえず点数は5点にしておく。
[映画館(邦画)] 5点(2019-09-14 19:44:20)(良:1票)
4.  にがくてあまい 《ネタバレ》 
原作マンガは読んだことがない。イケメンで料理上手な同性愛者とヒロインが同居する、という設定にどういう必然性があるのかわからないまま進んでいくが、恐らく女子の人々にはこういうシチュエーションが心地よく感じられるのだろうとは思った。また自分は何とも思わないが、野菜料理の映像面でそそられる観客もいたかも知れない。ブロッコリーの茎の部分まで刻み始めたなと思っていたらそこが重要なところだったらしい。 一応のドラマらしきものもないではないが話が薄いので、まずはこの状況自体を楽しむことの方が大事なのだと思われる(連続TVドラマ向きか)。男女関係の方は進展しないままで焦らす感じになっているが、男同士の関係も濃密にはならず、キュウリの件などで気を引いておいてはぐらかすのは女性向けの刺激的サービスか。バカバカしいので笑ってしまうところもあり、キノコの件は発想の原点がどこにあったのか聞きたい(ある程度以上の年齢なら昔の記憶を呼び起されるものがある)。また個別の場面としては、元同居人のシャツをヒロインが直球で投げたところは悪くなかった。 自分としては主な対象層に含まれているとは全く思わないが、見れば意外に悪くない雰囲気だったのでそれなりの点にしておく。男女関係のラブコメよりもかえって単純に面白がれる話ができている。  なおキャストに関しては、主演女優が好きで見たわけではないので、どちらかというとその母親(さぞかし昔は可愛かったろうと思わせるおっ母さん)に見とれてしまった。また途中で登場した美少女タレントは半端な存在感を出して終わってしまったので、出したからには最後にもう一場面くらいフォローを入れてもよかったと思う。ほかバーのマスターの出番は妙に心地よく感じた。
[DVD(邦画)] 6点(2018-10-07 20:25:51)
5.  2085年、恋愛消滅。 《ネタバレ》 
冒頭から出る文字のフォントとか、全編にわたる視覚効果や各種小道具によってレトロでファンタジックかつ作り物感とチープ感のある世界像を作っている。非常に安っぽく見える映画だが、あえて狙ってやっているのだと言われればそれまでである。時々出るモニターの出現の仕方などはけっこう気に入ってしまった。 基本設定に関しては、2014から連載されて2017年に映画化もされた「恋と嘘」の影響を受けている可能性もある。劇中世界の状況に関する解説を聞いてもそれほど現実味がある気はしなかったが、最大の問題が少子化であって、男女雇用機会均等法をその発端に位置づける感覚自体は理解できる。劇中の国の政策は、現実に地方の公的機関などもやっている婚活イベントを国家プロジェクトとしてやるようなものと思えばいいらしい。 運営側のスタッフは実はみな90歳以上とのことで、恋愛に消極的な若者にハッパをかける年長者という位置づけになっているが、2085年で仮に90歳とすれば1995年生まれで出演者と同世代ということになる。この映画の対象層も同じくらいだとすれば、こういう未来を回避するために、今の若者に奮起を促そうとする映画というつもりかも知れない。  お話の方は「恋愛合宿」とのことで基本的にはラブコメ調だが、全国最高レベルの超奥手集団という設定のため、ひたすら素朴な失笑ラブストーリーになっている。また主人公の妹が可愛らしいので和む。 国の意向に従わなければ処罰というような、国家による圧迫を示唆するディストピア風の設定もあるが、「国の思惑なんかには負けたくない」というヒロインの台詞からすれば、社会は社会として自分は自分という主体性はきっちり確保されていたようである。「R地区」「P地区」の設定を悲劇的に使うのかと思っていたが、人生の多様な充実感を表現する方向につながっていたようで安心した。 なお点数としては、普通に映画として見ればいい点はつけられないが、個人的に話の内容が嫌いでないのと、ヒロイン役の溝口恵という人のカラッとした感じが好きなので少し上げておく。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-21 14:28:13)
6.  NINJA THE MONSTER 《ネタバレ》 
どうせ主演俳優(よく知らない)のPVのようなものだろうと思っていたら意外に悪くない映画だった。 もともと海外向けに製作されたとのことで、国内向け時代劇として見ればかなり荒唐無稽である。天明三年の浅間山噴火とその後の大飢饉を背景にしていることはわかったが、冒頭からして関ケ原から183年後にやっと戦国時代が終わったかのような説明が出ていたのは呆れる。また劇中の「もののけ」は、今年春以降の国内状況からすると単純に「クマ」に置き換えればいいのではないかと思っていたら、どうも最後は星の世界に還ったらしく、時代劇にしては奔放な想像力の所産のようである。 そういうのはまあいいとしても、この映画の最大の問題点は恐らく派手な部分がないことである。アクションは一般的な時代劇の域を出るものではなく、ホラーっぽいところもあるが少し怖がらせただけで終わりになる。ストーリー的にも、延々と山中を歩くうちに人の心が見えて来た、といった感じのもので、終盤だけ少し盛り上がるが結局は何が何だかわからないまま危機が去り、それで最後にみんなが幸せになるわけでもない。 そのようなことで主演俳優のファン以外だと不全感が残るかも知れないが、しかし個人的な印象としては地味なのもそれほど気にはならず、かえって一定の感慨を残す映画になっていたというのが実感だった。  ところで舞台挨拶で、主演俳優が続編の可能性をやたらにアピールしていたのはかなり違和感が大きかった。自分にとってのこの映画は、気丈で健気な姫様の儚く切ない恋物語であって、劇中の忍者の行末などは正直どうでもいいわけである。仮に続編を作っても同じ姫様の物語として成り立たないのは明らかで、従って自分的には今回限りで終わりである。 劇中では変に難しげな台詞が多かったが、その中でも「覚悟とは…暗闇の中に、光を見出すこと」というのは結構いい感じで、また最後に犬笛が残ったのも物語的なポイントを押さえている。姫様役の女優に関しては、今回出演のこの人でなければならない理由は特にない気はするが、実際見れば可憐で愛すべき姫様の人物像がちゃんとできている。「江戸に着かなければいいのに」とボソっと言うところなどはこの人ならではの感じを出していた。
[DVD(邦画)] 6点(2016-06-15 23:38:45)
7.  虹男 《ネタバレ》 
昭和特撮ファンの間ではそれなりに知られた映画だが、実際見ればどこが特撮映画かと呆れることは間違いない。 実態としては探偵小説(推理小説)を映画化したもので、1947年に新聞連載されたものが翌年に出版され、さらにその翌年には映画化されたということである。映像には戦後4年目の屋外風景も出ており、駅の場面では「日本通運新宿支店」「八王子支店」という看板が見えて場所が知られる。 当時を知らない人間としては敗戦直後など余裕がなくて大変だったろうと思うわけだが、そういう時期でもこんな小説なり映画が発表されているのを見ると、戦争の勝敗にかかわらず人間は娯楽を欲するものだなという感慨がある。また戦後という時代を受けてのことか、女性の地位の変化ということに微妙に踏み込んだように見えなくもない(特に原作の方)。 なお劇中の博士は虹の研究をしていたとのことだが、それが何の役に立つかについて本人の説明を聞くと、遠い天体からの光をスペクトルに分解することで宇宙の膨張による赤方偏移の観測に使える、ということだったようで、これは結構まともな(普通の)ことを言っている。  ところでこの映画を見るために原作まで読む人間は全国でも多くないだろうが、あえて読んでみるとけっこう原作に忠実に作ったようである。ただし長編小説を1時間半に収めたため、原作でもわかりづらいところがさらに理解困難になった面はあるかも知れない。 また映画では真犯人とラストの展開を大きく変え、ハッピーエンド化したことで娯楽性を高めたようにも思われる。しかし原作では悲劇性を強く出した上で最後だけほんのり泣けるというのが非常によかったので、これが映画では形だけになっているのが残念だった。舞台になった旧家の異常さも印象が薄くなっており(映像化困難な面はあるが)、どうも中途半端な映画になったように見えた。 ちなみに原作の虹男は「赤衣をまとい額のただ中にただ一つの緑眼怪しく光る男」で「火のごとく虹を吐きたり」という伝承になっている。  ところでこれだけ遡ると知っている役者が少ないが、一応の主役である小林桂樹氏に関しては、後年の赤ひげ先生や田所博士とは思えない軽い人物に見える。また旧家の長男役が、後の“おもちゃじいさん”や“金山老人”だというのは昭和特撮ファンの関心事ではなかろうか。 ほか音楽担当が伊福部昭氏のため、今にも怪獣が出そうだが出なかった。
[DVD(邦画)] 4点(2016-06-04 09:23:54)(良:1票)
8.  2ちゃんねるの呪い 劇場版 《ネタバレ》 
アイドル主演のホラー映画など最初から全く期待していないわけだが、基本的に落ち着いた雰囲気なのは悪くない。シリーズ全体のことは知らないが、「鮫島事件」「赤い部屋」といったネット発祥の要素を組み込んだのは企画意図に沿った形と思われる。 ただしストーリーとしては「リング」を思わせる展開で特に新味を感じない。主人公が従事する特殊清掃業務が、ただの飾り物ではなく事件の展開に直接関わる形になっていたのはいいと思ったが、それで生じた結果は必ずしも納得できるものではなく尻すぼみの印象があった。また「2ちゃんねるの…」が前提条件のためかオチが非常にふざけた感じになっており、それまでの登場人物の思いを全て無にしたようなのは気に入らない。劇中の出来事に不自然なところが多いのも、脚本のせいではなく掲示板の投稿だからというように正当化されてしまった感じである。夢オチでもないが騙されたような印象が残るのは同じだった。 なお今回出演のアイドルは、姉役・妹役ともアイドルグループ「アイドリング!!!」のメンバー(当時)とのことである。姉役はものすごくかわいい場面とあか抜けない場面が混在している気がしたが、妹役の方も終始素朴な顔であまりアイドルらしく見えない。これでファンはどう思ったか知らないが、部外者にとってはまあ自然な感じでかえってよかったかという気もする。
[DVD(邦画)] 4点(2016-03-04 19:51:10)
9.  日本以外全部沈没 《ネタバレ》 
原作の短編を大拡張した形だが、それにしてもあまりに間延びした印象がある。ギャグも全般的に面白くないが、一か所だけ爆笑したのは北の独裁者の「今ごろきじゅいたか」だった。諸国民の融和を説く映画だとすればここで笑うのは不謹慎だろうが、逆にいえばそんな高尚な意図はないだろうということである。 劇中では日本人の心が狭いという指摘もあったが、可住地面積が狭ければ起こることはどこの国も同じであって、国民国家が存続したままならこの映画のようになり、無政府状態なら殺し合いになるだろう。日本人夫妻が変に仲睦まじいのに比べ、主人公と外人妻の関係などは永遠に分かり合えないことの象徴のようだった。世界平和が到来したのが最後の一瞬だけというのも皮肉な話であり、結果としてなかなか心に残る物語ではあった。  なお劇中のTVに出ていた賽銭泥棒の「マーヴィン・ウェッブ」は、「ウルトラセブン」第14~15話の諜報員の役名「マービン・ウェッブ」から、もう一人の「ハロルド・コーウェイ」は戦後の東宝特撮映画によく出ていた外人俳優「ハロルド・コンウェイ」から採っており、神社のあった「北川町」も「ウルトラセブン」第8話の「狙われた街」の場所である。また主人公の自宅の壁にかかっていた絵は、「シルバー仮面」第9話のドミノ星人のデザイン画(池谷仙克氏による)である。一般の観客は無視して構わないような小細工だが、制作側としては観客に気づいてもらいたくて出したのだろうから一応付き合ってやることにした。 それから完全にどうでもいいことだが、劇中の首相は映画公開当時の首相よりも東日本大震災当時の首相に似ている。
[DVD(邦画)] 4点(2015-06-29 23:28:38)
10.  日本沈没(2006) 《ネタバレ》 
原作はかなり昔に読んでいるが、現実問題として経済・社会の国際化が進んでいる21世紀に同じテーマを再現しようとするよりも、基本設定を借りながら中身を別物にしたのはかえって妥当と思われる。昭和版の映画でも、原作本来のテーマというより特撮技術を活用した災害描写が印象的だったわけで(少なくとも自分としては)、これを継承した上でその後の阪神淡路大震災も意識しながら、ここで改めて問題意識を提示しようとしたなら理解できる。 この映画で具体的に問われているのは、社会全体が危機に見舞われた際に個人はどう行動すべきかということだろう。結果としては軽薄な自己犠牲のように見えなくもないが、しかし劇中では“みんなを放っておいて自分だけが幸せにはなれない”とか、“愛する者(家族など)のためには必ずしも自分の生命が最優先にはならない”といった個々人の思いを語らせて、これで主人公が内面的な思いを募らせていき、結果として最後の行動に至ったらしいのは自然な展開に思われる。 また特に個人的に心に残ったのは、序盤で首相が危機管理担当大臣を選んだ動機が“あなたには心がある”だったことである。自分としてはこの場面を見て、現実にもそういう人物が為政者であってもらいたいと心から願う思いだった。こんな安易なリメイク映画の綺麗事にしか聞こえない軽薄な台詞に泣かされる自分が馬鹿のように思われるが、先の震災時に実際に起こったことを思えば、意外にこの場面が庶民の思いを素直に代弁したものだったという気がしなくもない。 なお正直に書くと劇中の少女には結構泣かされた。何としても守りたい人物の好例である。
[DVD(邦画)] 5点(2015-06-29 23:28:34)
11.  日本沈没(1973) 《ネタバレ》 
初見がいつかは忘れたがかなり昔である。原作のストーリーをけっこう克明に追っているようだが総集編のようでもあり、特にドラマ部分はブツ切れに見えた。密度の濃い長編を映画にするとこんな風にしかならないのか、というような失望を初めて感じた映画だったが、今回見返してみると140分もあり、これでも可能な限りの内容を詰め込もうとしたらしいことはわかる。 内容としては原作本来のテーマも表現しているようだが、原作既読の立場としては改めてそれを映画に教えてもらう必要はない。それよりこの映画で衝撃的だったのは、東宝特撮の大迫力で描写された都市破壊場面の方だった。制作側の意識としては東京大空襲あたりの記憶も入っていたのだろうが、古くは関東大震災の教訓も生かし、また高層ビルのガラスの雨といった現代的な危険も含めて、巨大都市を襲う巨大災害の恐怖を映像化して見せたインパクトは大きかった。 今は昔になるが90年代前半頃、東京東部の某区の職員が“今やわが区は23区で最も安全な区になりました”と防災対策の現状を語ったのを聞いた気がするが、そのような対策が現実に行われてきた背景にも、こういう災害パニック映画が一役買っていたのではなかったかという気がする。劇中でも“とんでもない大バカ者が騒いでおけば360万人は死なずに済んだ”といったような台詞があったが、その大バカ者の役をこの映画も現実に担ったのだと考えたい。 加えて個人的にはプレートテクトニクスの考え方を初めて習ったのがこれであり、映画ではコンニャクのようなのがプルンという映像が印象に残っている。そういうお勉強の面でもためになった原作/映画だった。
[DVD(邦画)] 7点(2015-06-29 23:28:30)(良:1票)
12.  ニライカナイからの手紙 《ネタバレ》 
先日、沖縄からの来客とお会いしたので記念に書いておく(映画と無関係だが)。 最初から大体の結末は予告されているが、終盤で事情が明らかになってみればやはりその通りである。その後にまだ少し時間があったのでもうひと捻りあるかと思っていたらそうでもなく、そのまま力押しして終わったような形だった。単純な保護しか考えていなかった祖父に比べ、母の愛情はより深く周到だった、といった作り込みはなされており、決して悪い話ではないのだが特に感動を催すほどのこともない。従って、どちらかといえば風景や設えなどの映像美と、ただ愛らしいだけではない個性的な女優としての蒼井優をしっかり見ることが重要なのだと思われる。  また登場人物のうち友人役で出演していた比嘉愛未は、最近の主演映画(「飛べ!ダコタ」2013)を見るとかなりいい感じに年齢とキャリアを重ねていたようだが、この映画ではまだ18歳くらいで超絶美形かつモデル体型なのが印象付けられてしまった。この人の演じる登場人物は、どうも最初から主人公にライバル意識を持っていたようであり、そのことからしても最後は主人公が島へ帰らないことで全体が調和するよう予定されていたようである。 ほか劇中では地元民のような人々が台詞付きで登場していたようだが、中でも「おばあ」と呼ばれていた人の容貌と発言には何ともいえない風格があって忘れがたい。 全体として絶賛する気にはならないが、けっこう好意的に見られる映画ではあったので、ここは少しだけいい点を付けておく。
[DVD(邦画)] 6点(2015-01-24 17:47:32)
13.  NINIFUNI 《ネタバレ》 
制作意図は言葉で説明されているが、そういう試みがこれまで映画(邦画)界にはなかったということなのか。それを特別なことのように言われても今さらという気がする。 まずは制作側の意向に応じて自由に感じたことを書くとすれば、共感の余地のない男が自己都合により変なところで死んだためにアイドルのPV撮影に影響が出るかと思ったら結果的に問題はなく、みんな笑顔で撮影を終えられてよかった、ということになる。ただし時には死んだ男に本気で感情移入する観客もいて、人が死んだことを何だと思っているのか、とかいう建前をふりかざす恐れもあるので言葉には注意する必要がある(してないが)。 以上は第三者的な見方だが、仮に自分を死んだ男の位置において考えると、世の中は忙しいのでさまざまなことが同時並行で進んでおり、自分などが死んでも関係なしに世の中は動いていく。それで当然なわけだが、これから伸びようとしている若い連中の姿は死人の目から見ても嬉しく感じられるだろうとも思う。実際に自分が死ぬ時は、登下校の児童生徒が窓から見えるような場所で死にたいものである。  ところで、もしこの映画の撮影予定と「東北地方太平洋沖地震」との間で時間的な前後が逆転していた場合、この場所(茨城県神栖市、千葉県旭市)では制作に支障を生じていただろうことを自分ならまず考える。何となくナルシスティックな印象のあるこの映画にとって、世の中全てを巻き込まずにはおかない大災害など想定範囲の外だろうが、しかし現実に多数の死者が出ている世界でなおアイドルというものが果たしうる役割を、他ならぬ劇中のアイドルグループもちゃんと担っていたことを自分としては想起せずにいられない。 そもそも社会的な意義を持つ存在であるアイドルと、ただの男を同列に扱うことなどできないわけだが、もし死んだ男が最初からこのグループのファンであったなら、あるいは結末も違っていたのではと思わなくはない…まあそういうことのできない(広い意味での文化性に欠ける)男だからこういうことになったのだろうが。  なお劇中のアイドルグループは「ももいろクローバー 」という名称が耳慣れないのと、人数が6人もいるため自分の立場としては若干の違和感があるが、今から3年以上前ということでまだ中学生が2人おり、みんな少しずつ若くて可愛らしく見える。メイキングも可笑しい。
[DVD(邦画)] 3点(2014-11-08 20:53:22)
14.  虹色ほたる ~永遠の夏休み~ 《ネタバレ》 
背景描写は丁寧で美しいが、人物の作画にはどうしても違和感が残る。いろいろと考えはあるのだろうが、正面から見た顔と俯いた顔、横顔の印象が全く違うのはさすがに困ったことであり、また登場人物のイメージを壊すような表現は問題と思われる。 またストーリー面では、終盤で少女が「一生懸命光るから」と言ったので何が起こるか期待していたのに、実際はどこがどう光っていたのかわからず、主人公の青年がたまたま目をつけただけのように見えていたのは落胆する。見栄え優先の大がかりな奇跡など起こさなくとも、ささやかな奇跡でいいからヒロインが“光ること”の方に重点を置いてもらいたかった。どうもこのラストが軽薄で安易に思えるが、これが原作に由来するのだとすれば残念なことである。加えて個人的には1977年の山村を見てノスタルジーに浸る気にもならないので、全体として絶賛したいというほどの映画にはなっていなかったというのが実感だった。  ただし、中盤で主人公の少年が神社裏に呼び出された場面では、浴衣姿の芳澤さんがあまりにきれいで愛らしいため、年甲斐もなく少年の心情に同調してしまうところがあった。また終盤で少年が「ホタルはさ...光るんだよね!」と少女に語りかけた場面では、それまではっきりしていなかった純愛ストーリーとしての性格がここで一気に表面化したように見えて感動的だった。ここまでに少女への思いをつのらせていった過程を、自分としてもこの少年と共有できていた気がする。 ...とはいえ、前記の通りこの感動が最後までつながっていかないのは困ったことだが、とにかくそういった点で思春期的な(まだ小学生だが)切なさも感じられたことから、どちらかといえば好きな映画として位置づけなければ済まない気にはなる。いろいろ不満はありながらも、ラストがハッピーエンドだったのはやはり嬉しいことで、現実問題として見れば主人公も友人も、小学生の頃に恋心を抱いた相手と大人になってからちゃんと結ばれたというだけで奇跡のように思われる。
[DVD(邦画)] 6点(2014-08-23 08:54:43)
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