1. 女系家族
《ネタバレ》 大阪・船場の老舗商店を舞台に、娘婿の死をきっかけにした“遺産争続”の悲喜劇を描く。ドロドロした人間模様が展開する愛憎劇ながら、そこはかとないユーモアが感じられる。加えて、妊娠を確かめるえげつなさも盛り込み人間の本性に食い込む。 終盤、勝ち誇ったような文乃が、遺言状の日付が決め手になることを指摘され動揺する表情がいい。一見文乃が大逆転で爽快にも思えるが、最後に愛人が得するのもなんだかなあ……という感じ。 3姉妹だけでなく大番頭や叔母含め欲深なキツネとタヌキの化かし合いの末、吹っ切れてサバサバした表情を見せる雛子に唯一救いがあった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-10-30 14:30:21) |
2. 日本沈没(1973)
「危機におけるリーダーのあり方」という観点から改めて観直した。俳優陣は島田正吾はじめ大時代的な芝居が目立つが、テーマがテーマだけに、まあいいか。 特撮は臨場感が十分に感じられ、今にも怪獣が現れそうな錯覚に陥る。黒焦げになった死体が、関東大震災や先の大戦における空襲を想起させリアルさがある。小野寺と玲子の恋愛はご都合主義的展開の尻切れトンボとなった。 日本からの大々的な移民構想は危機管理として妥当だろう。受入れをめぐる国連の議論も、近年は地球温暖化による海面上昇で多くの島国が危機に陥っており、そのような事態を想定すれば現実味がある。 遅刻常習と言われる俳優と、それを窘めた俳優が日本の命運を語るシーンに興趣がわく。窘められた俳優が首相を手堅く演じた。指導力があるのかないのか判然としないが、危機にあたっての苦悩と苦渋の決断は適切に表現されている。リーダーをめぐる現実とフィクション、彼我の差に思いが至る。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-08-30 14:04:53)(良:1票) |
3. ニューヨーク1997
子役のイメージを脱したK・ラッセルがマッチョに変身。L・V・クリーフやE・ボーグナインなど脇役陣のクセ者ぶりが楽しめる。中でもミュージシャンのI・ヘイズは意外な怪演。大統領役がD・プレザンスというのは「?」だな。 監獄が舞台とはいえ退廃的でごみごみした近未来は好みじゃない。まあこの世界観が後の映画に影響を与えたんだろうけど、未来は多少でも希望がなくっちゃ。 時限付き大統領救出という題材はいいが、起伏の乏しい展開で中だるみ気味。オックス・ベーカーは小道具(武器)を使わず、殴る・蹴るの方がお似合いだ。 救出された大統領の身だしなみは風刺を感じるし、テープをすり替えて捨てるところは爽快感があった。でも、世界平和につながるならちょっと惜しい気が・・・。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-10-30 20:18:34) |
4. 2001年宇宙の旅
宇宙空間の壮大さをゆったりした映像で表現し、音楽と一体化して見せる一大叙事詩。セリフが極力抑えられており、環境映像のような見方で画面に集中できる。製作当時は米ソ冷戦真っ只中であり、宇宙開発にしのぎを削っていた時代。監督の前作「博士の異常な愛情・・・」からの流れで見れば、対立から協調を経て、宇宙開発における米ソの協力を織り込んでいる。先見性という点で、本作の評価には直結しないが21世紀におけるソ連の存在は、映像の完成度が高いだけにイタかったなあ。HALの予測ミスをあたかも証明したかのようだ。セリフはもっと厳選してもよかったろう。また、木星探査計画での女性・非白人のクルーがいない描き方も物足りない(同時期に製作の「スタートレック」と対照的)。オープニングからHALの叛乱あたりまでは完璧な画面作りに挑み、宇宙船の窓の人影が動く描写など緻密だ。最後の「木星 そして無限の宇宙の彼方へ」の章は、あえて明快な描写をせず、観る人にそれぞれの解釈を委ねる演出だが、これは諸刃の剣だろう。観終わってから、ある人がAという解釈をすれば別の人はしたり顔でBと反論するような議論百出の問題作。進化をめぐるモノリスやスターチャイルドの姿を見ると、科学・哲学と宗教のごちゃ混ぜ感は否めない。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2015-11-29 16:46:06) |
5. 日本のいちばん長い日(1967)
史実に基づいて、終戦間際の日本の運命を決する数日間を描いた秀作。登場人物たちの「汗」が緊迫感あふれる事態を象徴している。最高戦争指導会議でポツダム宣言受諾をめぐる議論が続く。対ソ連外交の失敗もあって結論が先延ばしとなり、大臣といえど下からの突き上げで早期終戦をなかなか語れない。徹底抗戦派が強く主張すると、「場の空気読み」で異論を出しにくくなる。これは、指導層(官僚)の無責任体質や「勇ましい意見を言ったもの勝ち」的なもので、現代でも似たような例はある。多くの都市が空襲で焼かれ、原爆を2発落とされてもなおポツダム宣言を拒否し本土決戦を叫ぶ若手将校たち。宮城事件を詳細に描写しており、もしこれが成功していたら、混乱に乗じてソ連が北海道を占領し日本が朝鮮半島のように分断されたかもしれない。そう思うとゾッとする。畑中少佐役黒沢年男は終始ギョロ目で狂気を演じており好演。ナレーションの状況説明が適切で、ポツダム宣言をめぐる議論から玉音放送に至る経過がわかりやすい。 [映画館(邦画)] 8点(2015-09-03 19:36:23) |
6. ニュー・シネマ・パラダイス
うーん、いいね。いいんだけど、映画人の自己満足的というか、自慰というか、そんな感じがしたなあ。また観たい、とはあまり思わない。 [地上波(吹替)] 4点(2012-12-29 09:50:20) |