1. ねむれ思い子 空のしとねに
《ネタバレ》 SFこそヒューマニズムを語るに最も相応しいジャンル。本作のストーリーは相当好みです。ただ、絵(画)のクオリティや声優の力量が、脚本のレベルに追いついていない気がします。一昔前のTVゲームのムービーシーンを彷彿とさせる無機質な画に、心動かされる要素はありません(注:これは完全に私の趣向です)。脚本は命ですが、映像もまた命。アニメーションなら尚更のこと。どんなに素晴らしい料理でも、紙皿やプラカップに盛り付けたのでは魅力半減と考えます。聞けば、ほとんど個人製作だそう。その努力は称賛に値しますが、それを作品評価に反映させることは監督に対してかえって失礼かと。努力賞は素人の特権ですから。然るべき製作スタジオの技術を駆使してリメイクしたらどんな素晴らしい映画になるだろうと想像してしまいます。 [DVD(邦画)] 6点(2019-03-15 22:23:15) |
2. 猫の恩返し
《ネタバレ》 「何でこんな事になっちゃったんだろうねえ……」そう呟く女は酷く窶れ、実年齢より随分と老けて見えた。「あの時わたしが止めていれば」少女は俯き唇を噛みしめた。あの日から3ヶ月。彼女は目を開けていない。窓から差し込む西日の長さと、蝉の喧騒から解放された涼しげな空気が、季節の移ろいを感じさせた。「昔からあの子は猫好きだったから…捨て猫にクッキーをあげたり、猫じゃらしの畑を作ろうと庭に種を植えたり、猫にプレゼントするんだって生きたネズミまで探したり……でもあの子には猫の心配より、自分の心配をして欲しかった。…自分の時間を…生きて、欲しかった」その刹那、一陣の風が窓を叩いた。いや風ではない。黒い、大きな鳥が、窓にぶつかったのだ。振動でゆれる棚。タキシードを着た猫の置物が彼女の枕元に、すっと舞い降りるように、落ちた。「あれ…バロン……おはよう」まるでいつもの朝のような笑顔をみせる彼女。信じられない出来事を目の当たりにして、親友と母親は声を失っていた。頬を暖かな涙がつたう。「あんたって子は…」やっと声を絞り出した母親は震える手で娘の髪を撫でた。「どうしたの…2人とも…何か…あったの?」「ううん、大丈夫だよハル、大丈夫。2人で17歳の夏をやり直そう」ひろみは優しくハルを抱きしめた。「ニャー」いつも椅子の上で寝てばかりいるムタが、ちょっとだけ片目を開けたような気がした。 こんなエンディングが付いたディレクターズカット版なら7点を付けたかもしれません。池脇千鶴の上手さに+1点。 [地上波(邦画)] 5点(2013-07-25 18:56:17) |
3. NEXT-ネクスト-
《ネタバレ》 主人公クリスが運命の女カーリーと出会う場面のこと。彼は未来を読み、アプローチのリハーサルを重ねます。でも何度やっても上手く行きません。するといい加減呆れた彼女はクリスが動く前に「お願い止めて」と遮ります。でもこれは変。彼女は彼の試行錯誤を知らないはずですから。彼女もまた主人公と同じ特殊能力の持ち主なのでしょうか?でも違うみたい。となると「止めて」の彼女は何だったのか?あれはクリスの予知ではなく想像(願望)の彼女の姿ではないかと。コレって結構重要なポイントだと思う。主人公が見ているのは「ただ過ぎていく未来」ではなく「こうあって欲しい未来」が含まれているからです。其処には主人公の意思が在る。数々の神業(ライフルの弾避け、車&丸太回避とか)も納得できるというもの。ニュアンスとしては“避けている”のではなく“周囲を思うように動かしている”。本作のテーマ『未来は変わる』は、より強いメッセージ『未来を変える』に転化していきます。なかなかニクイつくり。それだけに“2分後までの未来が予知できる”という肝となるルールを徹底しなかったのが悔やまれます。制約は緊張感を生む格好のアイテムなのに。勿体無いです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-08-06 20:56:58)(良:1票) |
4. 眠らない街〜新宿鮫〜
田中美奈子よりも奥田瑛二の方がエロイと思った自分はヤバいですか? [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-06-02 19:22:33) |
5. ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
《ネタバレ》 チェーンソー男との戦いは、絵理と陽介の心の中の出来事。共に大切な人を亡くしたばかりの憔悴した心が作り出した幻。しかし顔に傷は残っていた。チェーンソーに割られた水筒も消えてなかった。先生のバイクは黒焦げです。妄想オチでお茶を濁していません。このファンタジー処理がとても気に入りました。チェーンソー男は実在したということです。少なくとも2人にとっては。関めぐみが市原に冒頭で言う「誰も信じてくれない事は実際には無かったことと同じ」の裏返しとも言えます。「信じてくれる人がいればそれは真実になる」。2人は確かに戦った。それが現実の世界か空想の世界かを問う事に意味はありません。重要なのは戦った事実。生き残った結果。だから今、だらだらと幸せを味わえる。それで十分です。家族も親友も、ある日突然居なくなる。地球もいつか消えてなくなる。そして自分も。命あるものが死ぬのは必然です。誰も逃げられない。だから“どうする?”“どうしたい?”誰でも必ず自問自答する。その答えが本作には在ったと思います。愛しい人が傍にいる幸せ、自転車を2人乗りする楽しさ。それが生きる意味って答えじゃダメですか。本作は至極真っ当な恋物語でした。そういう意味で、本作のヒロインは主人公が一目惚れするくらいとびきりの美人じゃなきゃいけなかった。関めぐみちゃんには花丸を差し上げたい。もちろん市原くんも感情移入し易いキャラクターを創り上げてくれました。彼の相棒もイイ感じです。青春SF?ラブストーリーの佳作でした。追伸。防御力1.62倍の鎖帷子、あれ、欲しい。 [DVD(邦画)] 8点(2009-04-18 21:49:36)(良:1票) |
6. ネットワーク
《ネタバレ》 その職に固執するあまり、我を失ってしまった落ち目のキャスター。視聴率至上主義で暴走する女プロデューサーや重役。「ビジネスだから」では片付けられない執念が垣間見えます。彼らを突き動かした真の原動力。それは欲望だと思う。自己顕示欲や承認欲求、優越感、成功欲等々。人が欲して止まない要求を満たしてくれるものが、TV業界にはあるということ。それも頷けます。一度に数千万人を相手にし、その結果が視聴率となってはね返ってくる。これだけ大規模な成果を短期間で、かつ数値として確認で出来るのがテレビならではの醍醐味。成功で得られる快感は凄まじいと思う。手にしたものが大きいほど、そして得難いほど、手放したくないのが人情です。ただ今回のケースは度を越えている。予言者という名の道化に身を落とすキャスター。視聴率を守るために殺人を示唆する幹部たち。みな狂っています。マスメディアの力、というより、その先にある大衆の力に飲み込まれたのだと感じます。ラストの銃撃事件。一人は局の幹部から依頼された人間。では、もう一人は誰か?おそらくただの一般人。つまり大衆の一部です。大衆を欲し、大衆に祀り上げられ、大衆に殺された一人の男。その憐れな末路が大衆の前に延々と晒される皮肉。恐ろしいと思いました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-25 19:04:43) |
7. 寝ずの番
《ネタバレ》 “ウィット”や“ウエット”に富んでおり、随所でニヤリとさせられます。もちろん爆笑もある。役者陣もみな上手い。「楽しめなかった」と言えばウソになります。ただ、エピソードを積み重ねただけなので平坦な印象は拭えません。「そそ」と「かんかんのう」といった目玉を、序盤に使ってしまったので中盤がやや薄いか。それでも「歌合戦」からの畳み掛けはお見事でした。ポイントはラストの電車踊り。あの輪の中に入れたか否か。一緒に踊れた人は、本作を十分に堪能できた人。一門や、堺正章、監督と同じように内輪に入れたということです。(一緒に踊っていたけれど、蛭子能収は外の人だと思う。)残念ながら自分は内に入れなかった組。このチェックは結構厳しい。それ相当の人生経験を必要とします。年を取っているだけではダメ。もちろん、そういう経験をしているから偉いと言う訳ではありません。観ている景色が違うだけ。夕日が美しいと思う人もいれば、車のフォルムにみとれる人もいる。どの景色が美しいかは、それぞれが決めればいいと思う。ただし、監督は多分そう思っていない。(不遜な言い方で申し訳ないですが)謙虚さが感じられない。この景色が世界で一番だと信じて疑わない。「楽しめない奴はイキじゃないね」と自信満々です。主義義主張のない監督よりは100倍マシ。だけどその強い自信の前に、弱い人間は萎縮してしまう。江頭に爆笑し、ダチョウの竜ちゃんに腹を抱える自分のセンスがダメなんじゃないかと思えてくる。(いや実際ダメなんですけど。)内輪に入れて共感できた人には素晴らしく心地いい世界。ただ敷居は驚くほど高いと思います。 [DVD(邦画)] 6点(2007-10-25 19:57:59)(良:1票) |