1. ノスタルジア
《ネタバレ》 過去の記憶や思い出は、言語や色彩を持たない映像の断片であり、現在は意味や原因を持たない事実と結果の連続なのかもしれない。 意志を持たない過去と現在を繋ぐ映像の持続の中で、観客はただ、ドメニコは焼身自殺を遂げることが出来るのかを、アンドレイはロウソクの炎を消さずに温泉の底を横断できるのかを、ラストの奥行きも高さもある画面にどのようにして雪を降らしているのかを考えながら、映画と自分の間で絶えず更新される現在を純粋に見守ればいい。 その楽しい時間が終わってしまえば、「映画を観た」という記憶は過去のものとなり、この文章を書いている間にも刻一刻と稀薄に断片化され、捏造されていくのだろう。 その時、思い出されるのは前述したような言語も色彩もない美しい映像の断片達であるのかもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2017-10-14 22:36:46) |
2. 野火(2014)
日常で目にする空よりより青く、雲はより白く、樹々はより青々と生い茂る。 血はより赤く、暗闇は全てを飲み込むかのように暗い。暗闇に照らされた光は、無機的な明るさを放つ。そうした色が混ざり合い、全てが主張する事が、世界の混沌を作り出す。 音は増長され、視覚(カメラ)は混乱を起こし、時間は感覚を失う。敵が、さらには自分すらどこにいるのか、どこから弾が飛んでくるのかもわからない。 色彩も状況も感覚も、全てが方向性を失い麻痺したとき、飢えが極限をむかえ、人間が道徳や倫理観を超える。 そこでは、観客が画面の向こうで、安心して出来事を見る事を決して許すことはない。 [DVD(邦画)] 8点(2016-06-09 03:18:05) |
3. 脳内ポイズンベリー
《ネタバレ》 いちこも早乙女も越智も結局は全て他人だよりで、人のせいにする。 最後の脳内会議を経て、始めて他人頼りでない、いちこになったかと思ったが、ラストシーンでまた最初のシーンを繰り返す事で、恋の予感を感じさせる。その後の展開は変わるものだとしても、少なくとも、いちこという人間の変化を感じられない円環構造にし、同じ描写をする事は絶対に避けるべきであったと思う。 物を拾ってくれた人物への対応の変化を見せる事が、脳内会議をした意味となるし、この映画の存在意義になると思う。 そして、意図的であるにしろ越智という人物が若さなど関係ないほど、あまりにも軽薄な人間で、危ういながらも人を惹きつける魅力がある人物には全く見えない。画面に出てくるたびに、ただただ不快だった。 [DVD(邦画)] 4点(2016-05-18 21:11:24) |
4. の・ようなもの
《ネタバレ》 この映画を包み込む全てが愛おしくなった。 生きていくという事は良くも悪くも変わっていく事。変わらなければ生きていけないのが人生。それは時には喜びであり、時にはとてつもない悲しみを伴う事でもある。この映画は酸いも甘いも出会いも別れも含めて、人生は素晴らしいということを心の奥底から感じさせてくれたし、ずっとこの人たちの人生を見て共に時の流れを感じていたいと思った。 しかし楽しい時間は終わる。物語からカーテンコールのように登場人物は一人一人それぞれの人生を歩み始めるかのように去っていき、最後には無人になる宴会会場。祭りの後の言葉にしがたい寂しさ。でも確実に残った幸福感。 この映画に出会う前より少しだけ、だけど確実に人生に前向きになれた気がした。そして画面の外に最後に取り残された自分も、日々変わっていく人生を歩んでいかなければならないと思った。 [DVD(邦画)] 9点(2016-02-08 15:23:57) |
5. ノーカントリー
《ネタバレ》 絶対的な力を持つ純粋悪の前では、正義、道徳、情け、懺悔といった当たり前のような価値観は一切通用せず、ただその力に従うしかない。そこにあるのは、身勝手なルールだけ。 自分は、モスがシガーを殺して金を持ち帰るか、保安官の最期の大仕事によって事件が解決するのか、あるいはモスとシガーの直接対決を見せる、という展開を予想しました。しかし物語は、そこまであったお決まりの空気を一気に変え、全く予想しない展開を迎えます。そして全てを終え家に戻った老いた保安官は、自分の無力さを感じ、ただ慰めあう事しかできない。 こんな終わり方はきっとあってはいけない。しかしこの映画はそんな、人に対する、映画に対する、予定調和を一切許さず、自分の中にあるあらゆる物に対する物差しを見事に壊し、現実で起こり得るかもしれない残酷な結果を突きつけてきました。 [DVD(字幕)] 9点(2009-10-27 18:45:47) |
6. ノー・マンズ・ランド(2001)
事件は現場で起こっているんですね… [DVD(字幕)] 7点(2007-06-14 15:57:25)(良:1票) |