1. NOPE/ノープ
《ネタバレ》 完全【ネタバレ】です、あしからず。 ホラーかと思ったら、モンスター映画だった。 しかも、モンスター退治じゃなく、モンスターで村おこし的な展開がユニークでモニーク。 中国系アメリカ人のリッキーは、空飛ぶモンスターをテーマパークの目玉イベントにして、スターになろうとし 黒人牧場主OJと彼の妹は、モンスターの映像を撮って一攫千金を狙おうとする。 だが、相手は宇宙から来た?人畜有害な未確認生物なので、思うようにいく筈かない。 リッキーは子役時代に経験した血の惨劇を、テーマパークで拡大再生産したあげく、自分もモンスターの餌食となってしまう。 OJは、高名なドキュメンタリー監督を雇い、ボランティア参加の電気技師と自由過ぎる妹の4人でスクープを狙うが・・・ そんなお話。不気味で謎に満ちたSFホラーミステリーかと思ったら、ド直球のモンスターパニック。ジョーダン・ピール的な裏テーマの有無は別として、考察が必要な映画かと言えば、必要はない。単純明快なストーリー。 ただ一箇所だけ、意味不明な演出がある。 テーマパークのオーナー、リッキーの回想シーン(ソープオペラ撮影中に起きたチンパンジーの暴走事件)そこで発生した超常現象。これは説明がないが観客の目を引くように強調されている。 具体的には、物理的な衝撃が無いのに割れる風船。スタジオ照明の異常な明滅。そして重力に反して直立している靴。 これには必ず理由があるはず。推理してみよう・・・ その場にいたのは凶暴化したチンパンジー、テーブルの下に隠れていたリッキー少年、襲われてピクリとも動かずに倒れている被害者たち。この映画がSFという形式をとっている以上、謎の考察は科学的ロジックで納得できるように解くべきである。 考えられるのは、リッキーに発現した《ESP能力》による超常現象。 ESPとは、Extrasensory Perception の略。 超心理学用語で、精神感応(テレパシー)・予知・透視などの総称。超感覚的知覚とも言う。その多くは少年期に発現し、触らずに物を動かすなど、ポルターガイストの原因としても多数の報告がされている。 撮影の重圧に加え、周囲の大人たちからのプレッシャー(年齢差と東洋人差別的な圧力)による過度のストレスを受けていたリッキー少年にESP能力が発現し、無自覚に風船を破裂させ、電気器具を狂わせ、靴を有り得ない直立状態にした。そして少年の深層心理に影響されたチンパンジーがストレスの原因である大人たちを襲ったとすれば辻褄が合う。 (OJの妹が唐突に見せるバイクでの『AKIRA』オマージュにも意味がでてくる) この時、人間以外の生き物と心が繋がる(自分の代わりに望みを叶えてくれた)という体験が、UFOモンスターとのコミュニケーションに繋がっているのは明らかで、リッキーが牧場での事件の元凶になったと推測できる。 (モンスターがテーマパークと牧場周辺をテリトリーにした理由) OJも劇中で「ジュープ(リッキー)は以前から《奴》と取引してたんだろう」と推測を語っている。牧場で事件が起きる前からリッキーとUFOモンスターの間にコミュニケーションが成立していたなら、まさに今回の事件とテレビスタジオの事件は同じことの繰り返しとなる。 これはつまり、上下関係、《使う者と使われる者の間に起きるストレス》の話。それは、リッキーとモンスター、リッキーとOJ、OJと妹、OJと電気屋、電気屋と監督、OJと馬、すべてに存在する問題で、その変化に注目して映画を観ると、パニック映画とは別の面白さがある。 完売で買えなかったが、パンフレットには映画に散りばめた裏テーマなどが監督のコメントや解説として掲載されているらしい。(私は読めていない、残念) 多くのレビューがそれに影響されて裏テーマの考察ばかりしているようだが、正直ここまでエンターテイメントに徹した作品だと(靴のシーン以外は)特に不条理には感じない訳で、そこにテーマを薄く表現したのなら、テーマの伝え方として今回のジョーダン・ピールは完全に失敗したと言える。 もっとストレートにテーマを表現するべきだったと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2022-09-06 10:10:18)(良:3票) |