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1.  花束みたいな恋をした 《ネタバレ》 
瀧波ユカリさんがnoteで大絶賛していたので気になり会社を出た後映画館に滑りこんだ。  端的に言うと映画史に残ると思いました。 この映画のGoogleのストリートビューに映り込む(資本主義に包括される)ラストは、「麦にとっては幸せな結末だった」という予感のみを提示してくるが、それが観客、日本人にとってどうなのか?という問いを、劇中にもメンバーが出演し、広告でも使用されたシティポップバンドのヒットソングをエンドロールに流さないという演出によって余韻と共に残している。ある意味、シンゴジラのラストに近い。  また、今村夏子のピクニックという小説名が何度か出てくるが、あれは記号的な意味ではない。なぜかと言うと、ピクニックは特に顕著だが、今村夏子という作家の特徴として「語り手が情報を提示しない」という面があり、それによって、物語内の見え方をまるで読者の想像力によって万華鏡のようにガラッと変えてしまうという作品を多く執筆している。このピクニックという小説の構造は花束みたいな恋をしたという映画の構造と似ており、観客によって、メリーバッドエンドにもビターエンドにも単なるハッピーエンドにもバッドエンドにも見えるどころか、ラストに至る過程ですら、ホラーを見せられているのか、純愛映画を見せられているのか、ドキュメンタリー映画を見せられているのか、みている人間にとって感想どころか物語そのものへの認識がバラバラになるように作られている。これは、この映画のテーマである「同じ物を見ている、聞いているつもりでも感じていることはそれぞれ違う」というイヤホンのRとLの反復される蘊蓄から作品内の細部でも示され続けている  また、まだコンビニもなかった時代の深夜の街が印象的に語られるビューティフルドリーマーの作者であり全共闘世代の押井守が現代の大学生である麦と絹と邂逅する引用の必然性。また、麦が忙殺され始め2人の予定がすれ違い見れなかったエドワード・ヤン監督による1991年の長尺台湾映画『牯嶺街少年殺人事件』への必然的な引用についても既に評論されているので省くが、表層的には2人の関係性の親密さを表す暗号的な役割として固有名詞が効果的に使われているが、それと並行して、メタメッセージとしても巧妙に引用されていると言っていいし、この引用について記号的という指摘は、単なる受け取る側の問題でしかないように思える。なんならここまで固有名詞を効果的に使った例は殆どないのではないだろうか。メンバーも脱退し、低迷していたオーサムシティクラブが現実で売れているのも、ラストシーンのきのこ帝国解散、今村夏子の芥川賞受賞によって日々の移り変わりを表す演出も相まって面白い。  そして、この映画の一番恐ろしく凄まじい面として、絹と麦は押井守や『ゴールデンカムイ』、『希望のかなた』、『牯嶺街少年殺人事件』などの「社会的」と呼ばれるマイノリティを取り扱った作品を好んでいる描写が目立つが、『花束みたいな恋をした』そのものは賞レース向きの題材を避けた上で、『パラサイト 』『万引き家族』『ノマドランド』『ミナリ』『あのこは貴族』『すばらしき世界』『希望のかなた』『ヤクザと家族』などの賞レース向けに作られたマイノリティを題材にした「社会派」映画の主人公達を「鑑賞」しているであろう麦と絹2人を恋愛映画という大衆的な題材のまま「社会的」な視点で「鑑賞」仕返している面にある。これは、それこそ映画をよくみているであろう我々みたいなカルチャーを消費している人たちへの鋭い視線ではないか。  カルチャーを好む我々は大衆映画を斜めに構えて鑑賞しがちだが、マイノリティの社会問題を消費している我々もそう変わらず俗な大衆の一部なのではないか?そして、深刻な社会問題は賞レースに則りみんながみんなマイノリティを題材にせずともすぐ身近にあるのではないか?という問いかけを感じた。  私はこの映画を、東京のカルチャーを写実的に捉えることに成功しながら、尚且つ現代の恋愛映画として新しい答えを提示し商業的な成功を収めた上で、若い世代に広く見られる画期的な社会派映画としてカルチャーを好む人たちへ大きな問いかけを残す日本映画史の金字塔的大傑作映画だと思いました。  今も評価されている映画だとは思いますが、冗談ではなく、後々小津安二郎の『東京物語』のような大きな評価を貰うべき映画だと感じています。
[映画館(邦画)] 10点(2021-04-17 03:35:20)(良:1票)
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