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1.  パブリック・アクセス
『ユージュアル・サスペクツ』ほどには驚愕させられる心理サスペンスではないが、私には大変面白い映画である。ことに前半のテレビ番組場面の作り方が楽しい。室内の気だるい熱さは『バートン・フィンク』を思わせる。ブルースターの町にどこからともなくワイリーがやって来た。彼は視聴者制作番組用チャンネル8に、自らがホストをつとめる番組を放送し始めた。さながら公開討論番組であり、電子会議室といったところだ。害虫である蛾を集める街灯、ゆっくりと回る扇風機となって、町の人々の醜いコミュニケーションの実態を採集し始める。ところがバブリック・アクセスであるにもかかわらず、現実にはプライベート・アクセスに終始した。その余りの醜悪さに、彼の美学は嘔吐した。彼はふたりを殺害した。ひとりは町長の悪口を言う元高校教師ジェフだ。ここで音楽はペールギュントとなる。これは絶妙で、キューブリック『2001年宙の旅』以来のエレガントな使用法だ。もうひとりはヘンリーの教え子で、ワイリーの恋人レイチェルだ。ワイリーは町長のために町の「害虫」ヘンリーを殺害するが、彼はことの真実をレイチェルから教えられ、町長の実態を知ってしまう。それなのにレイチェルをも殺害した。やり過ぎたと内心は軽く省みつつも、事の流れに乗って(町長支持に託つけて)レイチェルを殺害して、ブルースターから爽やかに消えて行った。大家であり元町長であるボブは、かつてのワイリーの部屋に入り、天井の扇風機を止めて、放心したように座り込んだ。主題歌は皮肉にも『レイチェル・マイ・ディア』で、「わたしをひとりにしないと約束して」という文句で終わる。この不思議な寓話は何だろう?まるで昔話のように、コミュニケーションの曖昧さを示している。昔話は基礎付け作用が小さいので、それだけコミュニケーションのことを語りやすいのであろう。ワイリーとは何者か?元町長のボブが信じたエイリアンと思えなくもない。理想郷を思い描くエイリアン=ワイリーは、ピカレスクの含み笑いとともに、人々のコミュニケーションに巣くう蛾々=害虫を採集摘出していく。シーンの繋げ方は大変にうまい。不良青年の死体を発見して警官が慌てて走ってくるシーンと、パーティでおどけて子供が飛び跳ねるシーンを映像的に同一化させ、これを共通分母として場面を滑るように転換させていく。殺害というショッキングなテーマをあざ笑うかのように、すぐにパーティのふざけた音楽で悪意をもって見る者に襲いかからせる。何とも言えぬ悪魔的な諧謔にぞくぞくとさせられる。結局、ワイリーはラストシーンで子供に語る「ストレンジャー」なのだろう。彼はブルースターのために派遣されたメディシィンマンなのだろう。ブルースターの真実のために、皮肉にも真実を語る者を殺害し(不良少年も)、嘘を言う者を支持した。こうしてひとつの真実を探りだす渦巻き運動は去っていった。綺譚めいたブルースター神話であり、神様の間違った計らいのようである。見当違いの天使であり、捜査を誤ったターミネーターである。
10点(2003-01-06 23:41:51)
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