1. The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
《ネタバレ》 南北戦争下において、南部にある森の中の女学園。そこは園長をリーダーとして統率が取られていた。そこに若い男が迷い込んだら。その時自然界で生態系が崩れるかのような現象が起こった。それまで敬虔な集団として行動していた女たちが、それぞれに男に興味を抱き、色めき立ち、欲情を押さえきれなくなる。次に嫉妬やマウント、承認欲求など、女の悪い癖が目立ってくる。7人の女は大人から子供まで、小奇麗な身なりで上品な立ち居振る舞いをしているのだが、女の強い業やずる賢さ、意地汚さのようなものが内側から現れている。女優たちの演技と巧みなカメラワーク、暗い部屋にろうそくの炎などの演出がそれを表現している。 ある事が切っ掛けで狂暴化した男を前に、再び女たちは統率を取り男を排除する。外来種を排除し、自然界が元どおりに浄化されるように。 学園を取り囲む深い森は、外部からの侵入を許さない隔離された聖域のように、神秘的で美しかった。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-26 16:09:55) |
2. ヒート
《ネタバレ》 デニーロとパチーノで凄腕強盗とそれを追う凄腕刑事、って設定聞いただけでにやけてくる。冷静に犯行を追行するデニーロ、的確に俊敏に操作の指示を出していくパチーノ、想像どうりのカッコ良さです。喫茶店でのシーンも二人の控えめな会話がリアルで名シーンです。しかし、最後のヤマで繰り広げる銃撃戦はちとやり過ぎかと。それまで対等にそれぞれの立場でのカッコ良さってのを醸し出していたのに、これはデニーロの分が悪い。私欲の為に関係ない市民を巻き込み過ぎ。ま、そもそも私利私欲で犯行を行う強盗なんだから最初から指示できるわけもないのですが。カッコ良く思えたものが急に汚いものに見えてしまった。私の中では、ダブル主演の片割れがいち早く離脱してしまった感じでした。とは言っても当たり前のように銃撃戦に応戦し、街を戦場にしてしまった警察側もどうかしてますし、バルキルマーかっけぇとか思ってしまったというのもあります。矛盾した整理の出来ない感情で最後まで息つくことなく観終わってみて、残ったのは女たちの悲哀の部分か。デニーロ、パチーノ、バルキルマー、運転手やっちゃた黒人の子、それぞれのパートナーがみな揃って辛い思いをしている。そこには善悪を超越した愛や情があるんだなぁ。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-10-07 10:40:31)(良:1票) |
3. ビフォア・サンセット
《ネタバレ》 半年後に会えなかった事に対して、久々に再会した二人はお互い大人の対応で、ウィットあり下ネタありの二人らしい会話で進行してゆく。いよいよ別れが近付いた車中での会話あたりから、この作品の前作とは違う部分が現れる。ラブストーリーの続きには、後悔や悲しい現実があった。笑い飛ばしていた二人は、実はその別れによってそれぞれ深い心の傷を患い、再会をきっかけに塞がりかけていたその傷から再び血が流れ始めたみたいな、ちょっとシリアスな側面を見せる。ラストは二人らしい雰囲気のままさらっと終わらせてくれたのがまた良かった。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-07-18 10:36:37) |
4. 評決
《ネタバレ》 アル中弁護士が再起をかけての裁判で逆転勝ち。決してそんなシンプルなサクセスストーリーではない。彼は過去のトラウマから「正義って何?」と常に考えていたとても真面目な男なのである。酒を浴びながらも考えていたのである。そんな彼の所に舞い込んできた示談必至のケース。とりあえず撮影したベッドに横たわる原告のポラロイドは、まるで事件被害者の死体ではないかと、彼が忘れていた情熱を再び燃え上がらせたのも当然。しかし情熱と正義感はあるものの経験が無かった彼は、裁判に勝つテクニックを全く持っていなかった。裁判はテクニックなのである。どうやっても不利な原告側。もう何もできない。苦し紛れの最終弁論では陪審員の正義に問いかけることしか出来ない。裁判記録は消せるが、たった今目の前で見たものは記憶から消すことは出来ない、その正義を信じて。(同じように彼女の裏切りを記憶から消せなかったのだが。)まさに裁判とは水もので、同じ案件でも弁護人と裁判長を変えれば全く別の結果に流れるのだろう。今回たまたま勝てたフランクは喜びも満足感も味わうことなく、むしろ脱力感だけが残るラスト。セリフではなくポールニューマンの無言の演技だけで読み取る作品。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-12-17 15:13:45)(良:1票) |
5. ヒア アフター
《ネタバレ》 誰でも一度は「死んだらどうなる?」「死後の世界(天国や地獄、冥土みたいなもの)ってあるの?」とか考えたことあるよね?ってそこから作られたようなお話なので、入りやすいテーマである。でも普通の人々は忙しい日常生活に追われて、ヒアアフターのことなんて考える余裕は無い。そこでこの三都市で暮らす三人、である。ある事をきっかけにヒアアフターを考え始めた二人と、考えまいとして工場で普通に働き、料理教室に通ったりして普通に生活しようとする一人。この三人が出会ったらどんな化学反応が起こるのだろう、と見進めていくと。ヒアアフターを考えない普通の日常の中に、たまにご先祖様や逝ってしまった家族のことを想う時間があったら、その瞬間こそが来世と繋がっている事実であり、呪いでも何でもない、普通の事だよ、という優しいラスト。これまた監督の優しさが滲み出た瞬間を目撃した。 [映画館(吹替)] 8点(2011-03-04 18:29:14) |
6. P.S. アイラヴユー
《ネタバレ》 原作未読。全世界500万人が涙したベストセラー小説の映画化という知識のみ。劇場では普段見ないジャンルだが試写会が当たったので行ってきた。どんだけ泣けるラブストーリーなんだろうと半信半疑だったが、いきなりそうくるか。で泣きまくるわけか。かなり卑怯な泣かせのドラマだな、というのが最初の印象。だが映画全体は案外カラッとした雰囲気で、主人公ヒラリースワンク一人がいつまでもじめじめしている。アイルランドの美しい景色が、やさしかった夫そのもののように全てを包み込む。もの凄い包容力だ。孤独に陥った人もそうでない人も、実は見えないものや大自然や、いろんな種類の愛に包まれて生きているんだな、ということだろう。泣けるラブストーリーではなかった。原作を読んでみようと思う。 [試写会(字幕)] 6点(2008-11-08 16:47:27) |
7. ヒストリー・オブ・バイオレンス
こんなに尺の短い作品とは知らなかったので、いきなりのエンドに、リモコンのスキップボタン間違って押しちゃったのかと焦ったほど、これで終わり?な感じだった。トムが自分の過去を認める前まではとてもテンポ良く楽しめたが、その後は失速ぎみ。で、あっけなくエンド。なんだか物足りない。しかしそのラストには巨大な余韻が残る。ここでは描かれていない過去、ジョーイとはどんな男だったんだろう、あの兄弟はどんな少年時代を過ごし、どんだけロクデナシだったんだろう。更に描かれていない未来、あの家族はどうなったんだろう、きっとゆっくり時間をかけて元のストール一家に戻る努力をするんだろう、息子は、娘は、どう育つんだろう、店は、保安官は、などと想像は膨らんでゆく。想像のヒントになるような気の利いたエピソードやアイテムなんかがもう少し随所に散りばめられていたら、もっと奥行きが広がるのになあと思ったりもした。 [DVD(字幕)] 7点(2008-04-30 16:19:41)(良:2票) |
8. ヒューマンネイチュア
題材は深い。文明はパンツ。文明の対義語は自由。文明を受け入れた人間は自由を失った。パンツを履かなくてはならない。本能を抑える理性が無くてはならない。ラスト、アスファルトの道路から森へ裸で入っていったパフ。そこが文明と自由の境界線だったのだが、その後の車のシーンにはちょっと驚いた。ライラとの約束は?人間も動物もエロの部分は同じ、エロだけが文明と共存した自由ということか。深い。面白い題材なのでもっと面白い監督に面白く撮ってもらいたかったかな。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-03-12 16:18:15) |
9. ヒー・セッド、シー・セッド/彼の言い分、彼女の言い分
人って自分に都合良く記憶をすり替えたり、悪いことばかりクローズアップして記憶を膨らませたりする。男と女に関してはそもそも脳みそからして違うので殊更に感じられるのかも。二回繰り返して見ると双方の記憶のズレがよりはっきり分かり、面白く良く出来たラブコメディになっているが、記憶って曖昧で怖いなぁってのも正直な感想。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-02-04 17:47:58) |
10. 光の旅人 K-PAX
《ネタバレ》 原作を読みたくなった。本編を見る限りプロートは宇宙人なのか、精神異常者なのか、二重人格者の片割れなのかは分からないまま。対して原作はどんなアプローチを見せているのか。でもプロートが何者だろうと関係なく、宇宙の広さを考えたら身近な悩みなんてちっぽけで、今の自分の世界を見ろ!という言葉が心に残る。SF的にはK-PAX星人はいるけど、ヒューマンドラマ的にはそんなの関係ねーというメッセージ深いドラマである。ケビンスペイシーは素晴らしい。宇宙人にも精神分裂の人にも見える。妖精とか地球外分子にすら見える。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-08-15 22:20:41) |
11. ひまわり(1970)
「究極のメロドラマ」という印象ももちろん受けますが、それだけに留まらず戦争の不毛さ、やるせなさを男女のロマンスでもって充分に表していると言えます。むせ返るほどのひまわり(その下には兵士が眠るという)、丘の斜面に整然と並ぶ無数の墓標、勝気で美しかった女性が日増しにやつれていく様、愛する妻のことを案外あっさり忘れていった夫、それら全てが悲しく切なくやるせない。何度か使われる駅での別離、再会。そしてマンシーニの音楽。どこを取っても「どうしようもなく切ない反戦メロドラマ」です。 8点(2004-11-07 15:25:11) |
12. ビッグ
大人って、誰もが子供時代を過ごしてきたわけで、その時の心は忘れてしまうこともあるけど、思い出すことも出来る。そして子供は、今の心を大事に忘れないで欲しい。ジョッシュがスーザンの事を決して忘れない様に。この頃のトム・ハンクスは今より輝いていたなぁ・・・。 8点(2004-03-12 16:05:24) |
13. 評決のとき
日本には縁遠い人種差別問題と陪審員制度を軸にして、興味深い作品だった。あの最終弁論は、人種差別の根本の解決にはなっていない様で、いまいちすっきりしなかったが、偏見も差別意識も持ち合わせた法の素人である陪審員を相手に一発逆転を臨むなら、その方法しかなかったのだろう。「差別はよくない」と分かってはいても、多くの人が無意識に差別(区別)をしている。作者がその深層心理を露呈したかったことは明らか。黒人解放運動もKKKも同じレベルで描かれており、むしろ死刑制度に絶対反対するエレンこそ本当の平等主義の象徴として存在させたのだと思う。ケビン・スペイシー、サミュエル・L・ジャクソン、キーファー・サザーランドなどははまり役。マシューは敏腕じゃなさそうなところがいいんだろう。最初は、頼りないなぁと不安だったが。 7点(2003-11-11 09:46:49) |
14. ビューティフル・マインド
予備知識有りで観た。その為か観ながら「シックス・センス」「グッド・ウィル・ハンティング」「レインマン」を思い出したり、ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」を連想してみたり。ストーリーや背景は違うが、それらの作品のエッセンスを要所要所に感じてしまった。この作品に関しては、ノーベル賞経済学賞受賞者ジョン・ナッシュが主人公の実話(を元にしたフィクション)なのだから、既存作品のパクリと言い切れないのが強みか。それにしてもアカデミー賞作品賞等受賞した感動作と期待して観たが、新鮮さを感じる事が出来なかったのは事実。脚本は良かったので非常に分かりやすく、でもだからこそ二度観る必要はないと思ってしまった。いい味出してたチャールズって、ジェニファー・コネリーの夫なんだってねぇ。 6点(2003-06-27 14:25:24) |
15. 羊たちの沈黙
サイコサスペンスの最高峰。当時のプロファイリングブームはここから始まったと言っても良いほど衝撃的だった。原作モノなだけに説明不足なまま始まるが、それが功を奏してどんどんその世界に引き込まれて行く。創造すればするほどレクターの人物像は膨らんで行く。だから怖い!レクターとクラリスは似た者同士にして正反対で、磁石の同極の様。決してくっ付くことはないが互いの共通点を感じている。二人の関係は映画史上に残る微妙な関係。だから切ない。それだけに「ハンニバル」でこのコンビが見れなかったのが残念! [映画館(字幕)] 10点(2003-05-05 15:42:44)(良:1票) |