1. 昼顔(2017)
《ネタバレ》 TVドラマを知らないで観ました。 不倫してバレて一度は別れた二人が、海辺の街で再会するのですね。 最初から、すでにラストはわかってしまう展開ですね。だって不倫モノですから、脚本的に「ふたりはようやく結ばれたのでした。めでたし」にするわけにはいかないですものね。 でも「二人の気持ちは変わらない」という根幹は変えられないわけで、そしたらもうどっちかが死ぬしかないですよねぇ(苦笑)。 そういうわけで北野先生はあっさり死んじゃうわけですが、「別れるくらいなら死ぬ」とマンションから飛び降りたり車で暴走して心中しようとした妻も、肝心の夫が死んじゃったらむしろスッキリしてフツーに生きていけそうな感じになってて、執着ってそーゆうもんなのかもしれませんね。 自分を捨てた人間が誰かと幸福になるのは自分が惨めすぎてつらいけど、死んじゃったらもういないから仕方がないもんね、みたいな。 ともあれ、配偶者の不倫を許して別れてあげるには、ものすごく器が大きいか、次の恋人がいないと無理なんじゃないでしょうか。 自分を騙していい人になろうとすると、北野妻みたいに精神的におかしくなって大暴走してしまいそう。 不倫男なんて最低、と見限れればいいけど、そうじゃなくて、夫の運命の人は自分じゃない人だった、みたいなのはつらいね。 ドラマは未視聴なので想像ですが、紗和の元夫は離婚してくれたみたいだし、家庭以外のよりどころ(仕事とか友人とか)をしっかり持っていれば、つらくても乗り切れるのかもしれませんね。 残念ながら、北野妻は業界が夫と同じなわけで、そーゆう意味でも気の毒だったなぁ。乗り切るには、やっぱ次の恋人を作るのが一番なのではないでしょうか。 なんで、やっぱり誰が一番つらいかって言えば北野妻だろうし、離婚後に元夫を愛称で呼ぶくらい許してやれよって紗和に対して思ったよ。 本音は嫌だろうけど、自分は北野先生を手に入れるんだから、許せよそれくらいって。元妻に対して本気で申し訳ないって思ってないなって気がしましたね。 まぁ、北野先生が怪しい行動をとりだしたら着の身着のまま飛び出して尾行するし、北野に対してはなにも譲れないってトコなのかな。 あと、海辺の街の人々が紗和の不倫を知ってすっごく冷たくなっていたけど、みんなまだ若いのに、なんでそんなスクエアに正義好きなの?そんなにみんな清廉潔白?ちょっと極端じゃない?って思ってしまったのは、田舎を知らないからかなぁ。海辺だから開放的に見えるけど、みんなあんな感じだとしたら、とっても怖いです…。 ラストで、実は紗和に新しい生命が…とゆーオチは、いらなかったでしょう。彼女はあの時生きることを決めたんだから、オマケというか後付けの理由はいらなかったと思う。 作品を希望的に終わらせるためにそうしたんでしょうけど、イマイチな感じがします。曖昧にしないで、スパッと紗和に一人で生きて行かせるべきでした。 でなければ、北野妻が妊娠していた方が、ストーリーとしてマシというか、面白かったと思います(笑) 彼は死んだけど赤ちゃんがいます…みたいなのは、キレイ事で依存的で、あまり好きになれないラストでした。 [インターネット(邦画)] 5点(2020-07-03 20:38:32) |
2. ヒトラー暗殺、13分の誤算
素直に映画として面白かった。でも微妙。それは、なぜゲオルグがヒトラー暗殺を企てたのか、一番大事なその動機が描かれていないからだ。 ナチが嫌い、組織が嫌い、自由が好き。それだけが動機では弱すぎるだろう。 自分の街にナチが人種差別を広め、隣人を笑いものにし、思想が違う党員を逮捕し強制労働させる。ナチに追従しなければろくに仕事もない、娯楽もない。 そのように、ゲオルグの愛する自由が奪われていく様子は、とてもよく描写されている。 しかし戦時下であれば、どの国でも街でもある程度は同じような閉塞感に包まれていたはず。ゲオルグがヒトラー暗殺を企てる強い動機にはならない。 そのせいか私には、ゲオルグのその時の生活や人生がうまくいっていないがための、突破口としての行動が暗殺(爆破テロ)だったのではないか、と思えた。 出産してすぐの子どもの死亡、そこからの恋人との不和・別れ・結婚の取り消し、生活苦(仕事の先行き不透明さ)等など。 自分の生きにくさは戦争のせいだ、この戦争はどう考えたってナチが不当である、そして英米仏に負けるであろうこと、この国の将来の暗さ、それらはすべてナチとヒトラーのせいなのだ、と人生の不満が暗殺に帰結したように感じられてならなかった。 なのでゲオルグがナチに逮捕された後、なぜ自分の素性を明かすのをあそこまで拒んだのか、もよくわからなかったなぁ。 確かに最愛の恋人と別れ子どもを亡くし「いつ死んでもいい」と思ったのかもしれないけど、それだけであそこまで頑張れるかなぁ? たぶんあの抵抗は、映画のストーリーを盛り上げるためなのではないかなぁ。 などと考える人間(自分)に、感動ができるはずもないのだ。いい映画なんだが…残念。 あと、裏切り者の将校を縛り首にするのにピアノ線を使ったり、どうせ銃殺するつもりのゲオルグを戦争末期まで生かしておいたり、謎が多い。ヒトラーとはそういう人間だったのだ、といいたいのかもしれないけど、それも伝わってきたわけではなくこっちの想像だし。もう少し親切に描いてほしかったな。 あとね、ゲオルグの姓エルザーと恋人の名エルザが一緒なのがいまいち。最後のモノローグで「2回離婚したエルザー‥?あっエルザか」と一瞬混乱した。 実名だから仕方がないのでしょうけど、そのちょっとの逡巡が感動までの間を作るなぁ。惜しいなぁ、と思ってしまった(混乱するようなオマヌケは私ぐらいかもしれませんが)。 こうして書いてみると「いい映画」と言いつつ、けっこう文句が出る映画だったようです。 事実を映画化すると、わからないことが多くてつじつま合わせが大変なのかも。映画的な盛り上げも必要だしね。 ゲオルグの思想「自由でいたい。自由な世界が好きだ」は素敵だと思ったけど、暗殺(爆破テロ)という行動は、やはり賛同しかねる。その相手がたとえヒトラーでも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-01-04 22:32:46) |
3. ヒストリー・オブ・バイオレンス
「悪い仲間から足ぬけするのは大変だ!!」…という映画。 たとえ行方をくらまし名前を変え別の人間として生きても、何かで見つかったら一巻の終わり。 スッキリ生まれ変わるためには、悪い仲間たちを皆殺しにするしかないらしい。 「ゴルゴ13か?!」というような殺し屋っぷりが不自然な気もしたが、あまりにも殺人機械として優秀だったからこそ自暴自棄になり残虐行為に走り、そんな自分の人生に絶望したのかもしれない……と、想像させるものがヴィゴ・モーテンセンにはある。 生まれた場所がギャング一家という「暴力から逃れられない運命」を振り捨てるには、別人になるしかなかったのだろう。 彼が何も言わなくとも、生まれ変わった彼が作った彼の家族たちはそれを知っている。 彼がギャングであろうとも、本質的にはどんな人間か。 わかっていても受け入れがたいのが、平和や愛を尊ぶ人間だろう。 一度入ったら足ぬけするのは大変なので、悪い仲間とはかかわらないのが一番ですね…。 それにしても、マリア・ペロは美人なのにセクシーじゃないなぁ。(褒めてる) 普通に色気はあるんだけど、持ち味が理知的というのか、女性にも好かれるタイプだと思った。 無駄に色気のあるヴィゴとはいい組み合わせですね。 [DVD(吹替)] 5点(2017-10-13 17:20:03)(良:1票) |
4. ピンクとグレー
《ネタバレ》 原作付きなのですね。 なんか仕掛けが若いというか…最後に判明する自殺の本当の理由も若いというか…そもそも幽霊が真相を話すってどうなの?アリ?ナシでしょ(苦笑) あと歩道橋からライター投げちゃダメだよ。海ならともかく。危ないなぁ。 役者陣がすっごくよかっただけに、ストーリーやプロットの穴が目立って残念でした。 仕掛けなんてやらないで、素直に青春モノにしておけばよかったのにね。 [DVD(邦画)] 4点(2016-12-17 20:18:08) |
5. ヒア アフター
サラッと現在と死後の世界を描いた映画。 こじつけがましい運命論はナシ、説教くさい現世・来世の話もナシ。 (「ヒアアフター」は訳すと「来世」ですが、日本語の「来世」とは意味合いがかなり違う。単純に「現世の次の世界」というような感じ。「あの世」でもOKだと思います) 当然のように死んだ者はあの世にいて、まれに、ジョージのようなサイキックを通して、現世の者とほんの少しだけ交信する。 生の隣には死が存在しているのに、生きる者は死を全く意識していない。 それと同じで、死に触れた経験を持つ者だけが、死後の世界を知っている。 その経験は生しか見ていない人間にはまったく理解してもらえず、彼ら彼女らには孤独が付きまとう。 死を強く知ってしまった彼らは、死を知らない人間たちよりも数倍、生きるのが困難なのだ。 そんな彼らが、悩み、行動し、迷い、考え、感じる姿が描かれる。 彼らの望む幸福は、死を知らない人間たちと同じ、ごく普通の幸福だ。 だが死を知っている分、彼らの方が幸福の得難さ・有りがたさを何十倍も感じているのだろう。 だから、自分にもたらされた小さな幸福を、彼らはきっととてもとても大切にして生きていくに違いない。 そんな風に感じるラストでした。 [地上波(字幕)] 6点(2013-12-12 16:10:19) |
6. P2
《ネタバレ》 設定は好み。ヒロインの女優さんも好み。 なのに、何がいけないって……犯人役がすべて悪かった気がします(苦笑)。 あと、97分は長すぎた。 題材が密室系で、登場人物が基本2人だけなんだから、せめて70~80分程度にすべきでした。 そうしたら無駄なシーンがはぶけてダルダル感がなくなり、もう少しクオリティがあがったのではないでしょうか。 あるいは、もっと低予算でギリギリ~という状態で作った作品なら、もっと緊迫感が出たのかも? なんて、それは違うか…。 とにかく一番のネックは、犯人役のウェス・ベントレー。 怖くないし、気味が悪いというより気持ち悪いだけで、凄みもないし、みっともないだけだし。 最初から最後まで、「なんじゃコイツ、バカか」としか思えない程度の悪人ぶり。そういう意味では、現実的な犯人像なんだろうけど、でも、映画なんだから。 リアルを追求するなら、もっと設定からリアルにすべきだし(あの大きなビルをたった一人で警備ってオカシイ、犬連れOKつーのもオカシイ)、サスペンスチックを狙うならば、もっとオドロオドロしい犯人像にすべきだった(単にモテない君というのではなく、異常な性癖を持つとか)。 そういう意味では、中途半端な作品ですね。 土台の設定が悪くないだけに、残念。料理の仕方を間違って、いい素材がイマイチな味になっちゃった~て感じです。 リメイクされたら(って誰もしないだろうけど)、もっと面白くなるかも?です(苦笑)。 ラストシーンでようやく外界が映りますが、凍えるようなホワイト・クリスマスの寒さが画面から伝わってきて、こっちまで震えが来ました。 キリスト教圏の人が思うクリスマスはわからないのですが、きっと日本人とじゃラストシーンの受け止め方も違うんでしょうね。 私は「早く彼女を保護してあげて~」って思って終わり、でした(笑)。 [DVD(字幕)] 5点(2012-12-16 11:13:17) |
7. ヒルズ・ハブ・アイズ2
《ネタバレ》 あんな面白い「1」の続編なのに、面白くなかった。 へっぽこ軍人たちは、新兵の演習中だからへっぽこでも仕方がないとして、あの食人鬼たちの平凡さ・つまらなさったら、一体ナニ?! 「核実験の影響によって奇形化し、健常者を憎む食人鬼」という哀しくも恐ろしい設定を、今回まるで無視ですか~。 ストーリーもキャラクターもまったく工夫なし、食人鬼たちが餌場にやってきた軍人と殺しあう、ただそんだけ。軍人なのにメンタル弱いし。食人鬼なのに結構あっけないし。 よくもこんなつまらない話にしてくれて…(怒) テリトリーが洞窟、というのもツマラナイ。 「1」のように、砂漠の中に忽然と街が現れ、一見すると普通にも見える街が食人鬼たちの隠れ住む街で、主役らはその中へさまよい込んていく…なんていう設定は、「蝋人形の館」もそうですが、異界(異世界?)へ迷い込む雰囲気がすごくよかったのに。 これじゃ~単なるモンスターパニック映画。「ディセント2」「クライモリ」と変わらんじゃないですか。 まぁ監督が変わった続編に、駄作はつきものって事なんでしょうね…残念。 もし「3」が出来ても、アジャ監督じゃなかったら、も~観ません。 [DVD(字幕)] 4点(2012-07-09 23:11:59) |
8. ヒルズ・ハブ・アイズ
《ネタバレ》 しまった。面白かった。 「サランドラ」は観ていないのですが、元核実験場の砂漠に隠れ住む食人鬼一家が旅人を襲っては食べちゃう、というストーリーを忠実にリメイクしたのが、本作。 なので、ナゼ <放射能によって奇形になった ←→ 人を襲って食べる>がリンクしちゃってるの?という謎をつついても、しょうがナイ。リメイクだから(苦笑)。 でも、面白かった。 アジャ監督の力量でしょうか。前半、獲物として誘い込まれた一家がメタメタにやられていくのですが、その演出の容赦のなさ・スピード感によって、どんどん作品のテンションが上がっていきます。 強いものから次々に殺され、残ったのは、たよりないティーンの姉弟と優男のムコ殿。え~コレどうなんの?と思わせるのが上手。 キャラクターの設定もいい。 元警官のマッチョ舅にバカにされるムコ役の、アーロン・スタンフォードが特によかった。 髭・メガネ・ちょいロン毛・携帯関係のお仕事という、理系で優しくて穏やかで家庭的な、いかにもな現代の若者が、妻を殺され、子どもを拉致され、極限状態に追い詰められて原始の怒りを目覚めさせていく過程は、非常にみごたえがありました。 理不尽な暴力に対しては、理性も文明も何の役にも立ちゃしない。大切なものを暴力から守りたいと思ったのなら、自分の中に封印した凶暴なものを解放せざるを得ない。そこにホンの少しでもためらいがあったら、負けてしまう。イコール、死。ならば、襲ってくる相手に対して非情にならざるを得ない、むしろ、なるべきなのだ、と。 この映画は、ある日いきなり犯罪に巻き込まれてしまった人が、こんな理不尽で恐ろしい目にあうなんて、ナゼ?!と混乱するのと全く同じ状況を描き、さらに、それに立向かわなくてはならない状況を設定して、そして勝ってみせるところまでを描いてくれました。 よくある「知らない土地に行ったら襲われた系ホラー」であるのに、鑑賞後の後味が非常に良かった。それは、人間の掟を捨て野獣に堕ちて殺し合いをしたのは、もっとも弱くて大切な赤子を守るためだった、から。そしてそれを守りきることができたから。 あらためて、好きだな~アジャ監督。 [DVD(吹替)] 7点(2012-07-05 09:31:00)(良:2票) |