1. ピューと吹く!ジャガー THE MOVIE
《ネタバレ》 個人的には、おぎさんの演じる忍者の言動に対して、ジャガー役要潤がふつうに噴き出しているシーンが相当笑えた。この映画は要潤とおぎさんなくしては成立しえない不思議なバランスに立っているという点で、非常に稀有な映画であって、もしかすると名作なのかもしれない。しかし、この満載なチープ感を映画館で見たとしたら、茫然としたのではないかとも思う。レンタルDVDで正解だったと本気で思わせてくれた久々の作品だった。家で、お笑いDVDの一種としてみるとなかなかな味わいを見せる。 [DVD(邦画)] 7点(2010-06-20 13:51:44) |
2. 人のセックスを笑うな
《ネタバレ》 この映画の画面にはものすごい緊張感がある。例えば、蒼井優演じるエンちゃんがユリの展覧会を訪れるシーンで、会場入り口ちかくの椅子に座った蒼井優がフレームからはみ出そうとする場面がある。そこでカメラは女優を追わず、はみ出た蒼井優が戻ってくるのを待つ。フレーム内に戻ってきた蒼井優の手には、菓子がのっており、ここで観客ははじめてエンちゃんの「動き」を「行為」として理解することができる。このなんのことはないシーンが、いたってサスペンスフルになるのは、この映画のカメラがもつ視線が、人間ではなく、空間を撮ろうとしているからである。空間を場所と言いかえれば、この監督が正確な意味で小津安二郎のフォロワーであることが分かるだろう。したがって、この映画における観客は、登場人物に感情移入するのではなく、登場人物たちのやり取りをすぐそばで覗き見るという形での参画を促される。その結果、ラスト近くに堂本とエンちゃんのキスシーンが、非常に強く記憶に焼きつけられるのだ。「だってさわってみたかったんだもん」、「会えないから、終わるってもんでもないだろう」といった文学的名言も楽しめるが、この作品はまずはその画面力を堪能すべきである。 [映画館(邦画)] 9点(2008-10-17 16:54:30)(良:1票) |
3. 彼岸花
日本では、この映画で描かれているように、真剣な話は「ま、ちょっと座れ」からはじまっていた。その文化が消えてしまったのが『解夏』である(←別れ話を立ってする恋人たちが描かれている)。時代はめぐる。本作は小津作品のなかでも京都が出てくる数少ない作品だが、祇園の細い路地のシーンは、狭い空間をうまく写す小津のカメラにぴったりの素材だと思う。もっと京都を撮てちてくれれば…。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-09-21 16:35:54) |
4. ヒトラー 最期の12日間
僕はヒトラーについて詳しく知っているわけではないので、この映画を見た限りで言うと、ヒトラーは典型的なガキタイプの権力者だったようだ。基本的に、権力者は周囲の人間の予想を裏切ることで権威を成立させる。ヒトラーは成り上がりものだから、ある程度理不尽な振る舞いで周りをビビラセないといけなかったのだろう。この映画が着目している「ヒトラーの人間性」についてだが、自分の周りの人間には優しいが、遠くの人間には冷酷な一面を見せるなんて、「僕は人類を愛せても、隣人は愛せない」と作中で語らせたドストエフスキーとまるっきり反対だぁ。だから僕はヒトラーの優しさって、大人の優しさではない気がした。大人の優しさってもっと想像力をともなったものだと思う。端的に言って、ヒトラーの優しさはガキの優しさだ。だから、ヒトラーが人間的だったというより、ただのガキだったというのが僕がこの映画から受けた印象。 [映画館(字幕)] 7点(2005-09-10 10:45:24) |
5. ビフォア・ザ・レイン
この映画とすぐに結びつくのはニーチェの「永劫回帰」。ニーチェが言っていたのは、「まったく同じ(「似かよった」ではない)できごとが永遠に繰り返されているこの世を、肯定することができるか」ということだったと思う(うろ覚え)。この世がマジでおんなじことを繰り返してるのかは別にして、この映画に当てはめてみよう。「ひどい戦争が繰り返される世界に生きていて、しかも同じ争いが繰り返され、しかもそれを知る立場にいて(巧妙なことにこの立場は観客において初めて可能になる)、この世を肯定することができるか?」とこの映画は観客に言っていることになる。「それでも人生にイエスという!」という標語をドッかで聞いたことがあるけど、もう一回、いや永遠に同じ人生を生きると「知った」時にも同じこと言えますか? 劇中の人物が自身の人生を肯定できるかではなく、悲惨な争いが永遠に繰り返されるとラストに知らされた観客に人生への判断を迫るのがこの映画の主題なんだと思う。 [映画館(字幕)] 8点(2005-02-25 20:48:01) |
6. ビフォア・サンセット
《ネタバレ》 「恋人までの距離」は僕の大好きな映画のひとつ。でも邦題がもろに恋愛映画なので、あまり男友達に勧めれなかったんですが、この映画なら題名をいっても恥ずかしくない。配給会社に感謝。内容は前作よりも人生経験をつんだ二人の会話が、より深みを増していておもしろくなっている。前作は自分の知識や希望に基づいた会話、今回は自分の経験に基づいた自分の考えのやり取りが中心。でも根本的な世界観みたいのは二人ともあまり変わっていない印象。一番面白かったのは、セリーヌもジェシーもいろいろとウソをつくところ。街を歩くだけでデートになってしまうというヨーロッパの都市の底力をこれでもかと見せられた感じがする。ほとんど文句などないのだが、セリーヌとご近所さんのフランス語会話も字幕にしてくれると嬉しい。その願いを込めて9点。 9点(2005-02-25 17:29:30) |