2. 127時間
《ネタバレ》 私自身は決して一人であんな峡谷へは行かないと思うので、その意味で主人公の行動には最初から感情移入しにくかったが、「腕だけが岩に挟まれ動けなくなる」という特異なシチュエーションに惹かれ鑑賞。アーロンはアウトドアのベテランらしく、はじめは冷静に様々な脱出策を試みるが、それがほぼ不可能と悟るや次第にこの岩場に至る自分の人生を振り返り始める。そして最後は「この岩は隕石の時から俺の上に落ちてくるのを待っていたんだ」と、親不孝や、恋人へのわがままな態度、そして行き先を告げずに峡谷に出かける無用心さなどが招いた因果応報をいやというほど思い知ることになる。こうした主人公の内省プロセスは観ている者自身の生き方も省みさせるだけの効果があった。こういった題材を単調にせずに商業映画として完成させるには、シナリオやカット割、撮影の順番などが大変難しいと思うが(俳優の衰弱具合を時系列にしなければならない)、ビデオカメラを上手に使ったり、ウォーターボトルなどを容器の側から撮るところなど、いろいろ工夫されていた。またあえて他の場所にシーン転換せず、ひたすら岩場と回想・幻想のみに場面を限定したことで、観客もアーロンと共に最後まで岩場から動けない状態にさせることに成功している。人は誰しも窮地に立たされた時に初めて本当に大切な物事や普段の生活のありがたさを思い知るわけだが、本作のような映画はそのような疑似体験ができる意味で非常に有意義であると思う。 [DVD(字幕)] 7点(2012-03-03 18:26:43)(良:2票) |