1. ひばりが丘の対決
《ネタバレ》 怪談映画のマエストロ中川信夫が撮った、ちょっと変なテイストの映画です。いちおうアクションというジャンルになるとは思うんですけど、なんかヘンなんですよね。 『カルメン故郷に帰る』をパクった様なプロットで、北海道の山奥が舞台という設定なんですが、たしかに山奥だけどどうも北海道らしくない風景で、本州のどこかでロケしている事は間違いない。新東宝の予算で北海道ロケなぞ出来るわけないでしょ(笑)。この“カルメン”が久保菜穂子で、この山奥が故郷というわけじゃなく失踪した兄を捜しに浅草からはるばるやって来ました。職業はもちろんストリッパーです。たしかにこの映画の久保菜穂子はすこぶるチャーミングでして、彼女の新東宝でのフィルモグラフィの中でもっとも輝いているキャラだと思います。彼女が歌い踊るシーンが2つありますが、湖畔で見せてくれるダンスは♪アンパーヌプリヌプリコ、エッパーウ♪なんて何語か判らん歌詞が妙に頭に残りました。 でもカップルは馬車で駅と村を往復する仕事に命をかける高島忠夫と郵便局長の娘矢代京子の方なんです、久保菜穂子は引き立てキャラなのに彼女の方が目立っちゃってます。高島忠夫はちょっとオツムが弱いのかと思うほど茫洋としたキャラで、なんかこの人の容貌にピッタリの役です。 三人組の脱獄囚が後半に登場、こいつら村の家に押し入って強盗殺人、おまけに矢代京子を人質にして逃走。そしてクライマックス、霧が立ち込める峠で三人組と高島忠夫の対決となるわけですが、ここで見せる高島のアクションが鈍重極まりないのはご愛敬です。 どうも『ひばりが丘』というのはこの峠の荒れ地のことみたいなんですが、劇中そんな地名はまったく出てきません。もちろん、西武新宿線の駅がある街でもありません。まあこの題名を見て、まさか北海道の山奥が舞台の映画だと思う人は誰もいないでしょうけど(笑)。 中川信夫の現代劇映画は、どのジャンルでも共通してなんかヘンなテイストを持っているんですよ。まあその頂点にあたるのが『地獄』なんでしょうけど。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2014-06-26 23:45:41) |
2. 美女と液体人間
《ネタバレ》 最近、新東宝のプログラム・ピクチャーに嵌まっていたので久しぶりにこの映画を観ましたが、同時期の新東宝の映画と比べるともう超大作という感じでした(笑)。東宝特撮映画にしては珍しくタイトルに“美女”なんて単語を使っているところなぞ、それでも多少は新東宝の路線を意識していたのかな(新東宝なら間違いなく『裸女と液体人間』でしょうな) 人間が水爆実験の死の灰を浴びて液体生物に成り果てるなんて現代では大クレームが殺到すること間違いなしですが、その後ハマープロなど海外でも使われたことでも判るように、けっこうセンス・オブ・ワンダーに満ちたプロットだと思います。だけど、液体人間が何でギャングたちの周辺に出没する必然性が意味不明。ここら辺をよく整理した脚本だったらもっと良い作品になったことでしょう。 “美女”こと白川由美、彼女こそ東宝特撮映画のクイーンなのかもしれないと見直しました、それぐらい彼女は光り輝いていましたね。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2012-10-14 23:22:11)(良:1票) |
3. 人喰海女
《ネタバレ》 邦画にはかつて“海女映画”というジャンルがありました。といっても、このジャンルの作品を製作したのは新東宝という映画会社だけで、その生みの親こそ社長で“和製ロジャー・コーマン”“エクスプロイテーション映画の天皇”として歴史に名を残す大蔵貢です。もっとも、キャリアから言うとコーマンを“ハリウッドの大蔵貢”と呼んだ方が正しいのかも。ピンク映画すら存在しなかった時代に、いかに女体を売り物にするかと彼が知恵を絞って生まれたジャンルなのです(S・ローレンの『島の女』をパクっただけなのかもしれませんが)。 というわけで本作のご紹介となるわけですが、はっきり言って他愛のないストーリーなぞどうでも良い。三原葉子の演じるファム・ファタールが宇津井健を翻弄し、丹波哲郎には弱みを握られて操られるも、最後には良心に目覚めて死んでゆく。宇津井健は大半の登場シーンが海パン姿というのが良く考えると笑えてくるし、海女たちがみんなグラマラスな若い娘ばかりというのもあまりにも強引です。ちゃんと海中撮影をしているのですが、泳ぐ海女を捉えるショットがあまりに露骨なアングルなので爆笑でした。狂言まわし的な役柄ながら、殿山泰司がコロンボみたいな刑事でちょっと光っていました。あと監督の実弟である平田昭彦がほんの1シーンですが友情(?)出演しています。そして特筆すべきは三ツ矢歌子で、わたしらの世代にはホームドラマのお母ちゃんというイメージが強いけど、若いころは露出演技に体を張ってたんですね(まあ新東宝所属じゃしょうがなかったかも)。 それにしても『人喰海女』とはあまりに題名が大げさ、こういうところがいかにも大蔵貢らしいエクスプロイテーションです。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2012-09-19 20:24:21) |
4. ピーター・セラーズのマ☆ウ☆ス
《ネタバレ》 原作はレナード・ウィバリーのユーモア小説「子鼠ニューヨークを侵略」です。フランスの隣に「大フェンウィック公国」という世界最小の独立国があり、その国はグロリアナ12世という女王が治めていました。中世に英国人貴族が創った国ですがずっと平和に過ごしてきたので、軍隊は持っていますがなんと武器は弓矢で軍装は中世時代の経帷子。唯一の産業はワインの輸出で「フェンウィック・ワイン」として世界的に売れていたのですが、カリフォルニアの業者が「エンウィック・ワイン」という偽ブランドでシェアを奪い、大フェンウィック公国の財政は破たん状態になってしまいます。困った首相ルパート伯爵は突拍子もない戦略を考えます。それは米国に宣戦布告して開戦し、すぐに降伏して米国に占領してもらいます。米国は寛大だから敗戦国大フェンウィック公国に財政援助をしてくれて、きっとお国の財政状態は回復して繁栄するに違いないという思惑です。ここら辺の理屈は、太平洋戦争の敗戦国である日本人には耳が痛いジョークです。この作品では、ピーター・セラーズが女王・首相・NYに派遣される軍司令官(本職は森番)の三役を演じています。最も本作では「博士の異常な愛情」ほどアクの強い演技ではないので、ちょっと拍子抜けですが。弓矢を担いで経帷子を着た22人の遠征軍は苦労してNYにオンボロ船でたどり着きますが、そこで降伏してくるはずが指令を間違えて、開発中のポータブル新型核爆弾と開発者父娘たちを人質として連れて帰国してしまいます。そこから英・仏・露を巻き込んで、子鼠の様な小国が世界を相手に思わぬ駆け引きをすることになります。と、ストーリーは諷刺が効いて面白いのですが、監督がB級SF専門のJ・アーノルドなのでもたもたした印象しか残らないんですね。後半は核兵器廃絶を訴えるメッセージが前面に出てくるのですが、その分皮肉が薄れて笑えないのが残念でした。英国人で、リチャード・レスターの様な人が監督したらもっと面白かっただろうと思います。それから本作はコロンビア映画の配給ですが、最初に映るトレードマークの女神がびっくりさせてくれます。これは観てのお楽しみ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-09-17 08:09:08) |
5. 非情の罠
《ネタバレ》 キューブリックの実質的デビュー作で原作も彼のアイデアですが、結構ストーリー展開に粗さが目立ちますね。でもそこはキューブリック、あのマネキン大乱闘を筆頭に随意にキューブリックらしい構図と伏線があって興味深い作品です。ただあの女の描き方だけは訳わからんし、とってつけたようなラストにも納得がいきません。そこら辺は、キューブリックも若かったということでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-27 00:09:55) |