21. フルートベール駅で
《ネタバレ》 アメリカに今も根深く存在する人種差別。そのやりきれない事件を怒りを抑えるかのように静かに淡々と告発する。 かつては罪を犯し、刑務所に服役した過去を持つ。 しかし子煩悩で、母親や祖母思いの一面。 勤め先を解雇されそうになっても、安易に悪の道に戻ろうとせず、何とかもう一度働けないかと店長に談判する。 買い物に来た白人女性に見せる陽気で人懐っこい一面。 1人の妻子ある黒人の若者オスカーの、事件に至る大晦日から新年を迎える1日を淡々と実に丁寧に描いています。 作品の大半を占める、黒人青年の何気無い1日の描写が効いている。 そんな1日の終わり、新しい年が明けた矢先に起こった事件。何ともやるせない思いが残る。 病院で彼の無事を家族や友人が祈っている。本作を見る者も同じ思いで祈る。しかし・・・。 撃った白人警官は11ヶ月で刑務所を出所したという。 撃った側と撃たれた側、これが逆だったならどうなっていたのでしょうか・・・。 [DVD(字幕)] 8点(2014-09-10 22:06:21)(良:1票) |
22. ブルージャスミン
《ネタバレ》 アレンのコミカルなヨーロッパ巡りは小休止。(あるいは終了?) アメリカに帰ってきた本作は久々に笑いの要素は控え目、 人生の分岐点を描いた少々シリアスな人間ドラマ。これもアレンお得意のパターン。 アレン映画独特の味わいのある色調に、相変わらず音楽がいい。 ケイト・ブランシェット演じるジャスミン。 “虚栄心”という言葉が真っ先に思い浮かぶ人物像。 かなりイタイお人柄ではあるのですが、 このジャスミンという女性を絶妙のバランスでどこか憎めないキャラクターに仕立て上げています。 また、ジンジャーとのあまりにも違う幸せへの価値観の違いや、 シリアスさのあるドラマの中に登場する男どもの、 少々なさけなくもコミカルなキャラクターもいいですね。 自身の監督作で何人もの俳優にアカデミー賞を獲らせてきたアレンですが、本作でケイトが主演女優賞を受賞。 相変わらず自ら脚本を手掛け、年1本ペースを貫く。 まだまだその手腕に衰え無し、その健在ぶりが嬉しい。 [映画館(字幕)] 7点(2014-05-28 21:33:46) |
23. 42~世界を変えた男~
《ネタバレ》 序盤のジャッキー・ロビンソンと、ブルックリン・ドジャースのリッキー会長が初めて出会うシーンが印象深い。 ジャッキーに我慢を求める会長に対し、ジャッキーは「やり返す勇気の無い選手になれと?」と反論する。 しかし会長は「やり返さない勇気を持つ選手になるのだ!」と説く。 実際にあったやりとりなんでしょうね。この精神が彼の支えの1つになったのでしょう。 世界を変えた男、ジャッキー・ロビンソン。彼の闘いの日々の描写には当然厳しい表現も含まれます。 しかし共に世界を変えたもう1人の男であるリッキー会長との関係や、明るく前向きなレイチェル夫人との2人3脚ぶり、 次第に打ち解けていくチームメートとの関係の描き方がよく、スポーツものとしての熱さも巧くミックスされた感動作に仕立て上げられています。 終盤にベンチの上から、ジャッキーが多くの白人や黒人の子ども達にサインをねだられている。こんな何気無い1つ1つのシーンが素敵です。 100年をゆうに超える歴史を持つメジャーリーグベースボール。MLB好きにとっては古き良きボールパークの佇まいもたまらない。 本作でも、他の野球映画を見ても、いかに野球が時代を超えてアメリカ人に愛されてきたのかが伝わってきますね。 アメリカ映画らしい良さを随所に感じる作品でした。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2014-05-01 16:17:26)(良:2票) |
24. ファインド・アウト
主演アマンダ・セイフライドがほとんどずっと出ずっぱりの作品なので、彼女をお目当てで見るのにはいいんじゃないでしょうか。ミステリー・サスペンスとしては、怪しさのある男たちが登場するのですが、事件にはほとんど絡んできません。特にアマンダと連絡を取り合う新人刑事はもう少し使い方があったのでは。出ずっぱりのアマンダに常に緊張感や追われる状況を作り、アマンダに立ち止まらせないのでテンポのいい作品となっています。本作に登場する警察は、相談者の悲痛なSOSにも全く耳を貸そうとせず、かなり腹立たしい存在に描かれています。アメリカでは今、失踪事件や行方不明事件の増大が社会問題になっているのだという。警察の事件と向き合う姿勢なども含め、そんな事件に対する問題提起という意図もあったのでしょうか。それは警察署に何人もの被害者女性の写真が届くラストからも強く感じました。 [DVD(字幕)] 6点(2014-01-27 22:20:05)(良:1票) |
25. ブルーバレンタイン
《ネタバレ》 ある男と女が出会い愛が芽生え結婚に至る過去と、その結婚生活に行き詰る今を同時進行で描く。特に今のパートに関しては切ないというか、見ているのが辛い映画です。 2人それぞれに楽しかった日々を思い出すかのように、「今」の合間に挿入される幸せそうな過去の2人。揺れる手持ちカメラの映像の中の過去の2人は不安定でもありますが、若さや躍動感が伝わってきます。それだけに今の疲れたような2人との対比が痛々しく辛い。 結局は2人が別れるまでを見せる作品ですが、映画だからこそ、愛する娘と共にもう一度再生の過程を歩み始める2人の姿で終わってほしかった気もします。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-03-01 21:37:04)(良:1票) |