1. ブロブ/宇宙からの不明物体
《ネタバレ》 「マックイーンの絶対の危機」のリメイク。粘液状の生命体が現れてからテンポよく進む。人々を襲って飲み込むシーンが見どころで、緊迫感ある映像だがあまり怖くない。リアルな恐怖感に欠け不謹慎ながらユーモラスにすら感じてしまう(ムンクの「叫び」のような顔や、足をバタバタさせるシーンなど)。 生命体が宇宙からの飛来物でなく、生物兵器として極秘開発という一連の展開は「アウトブレイク」を彷彿させるが、こちらの方が先だったことは好意的に評価したい。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-11-17 19:24:54)《更新》 |
2. 舟を編む
辞書を作る過程を通して言葉の奥深さを語り、一風変わった青年と周囲の人々の交流を温かみのある視線で描いている。 言葉は生き物で常に変化するもの。ゆえに「大渡海」のようなものはいつの世にも必要だろう。たとえそれがデジタルであろうとなかろうと…。1995年(ウィンドウズ95発売年)というIT化初期の時代設定が絶妙。何度も何度も校正を重ねる様はプロとして当然であるが、何といっても言葉に対する愛着が深い。 岸辺みどりが登場してから展開が一変してちょっとがっかり。古風な顔立ちとギャル風の役柄がミスマッチ。 映画の象徴的な話題、「右」とはどういう言葉で説明するか問われれば“〇〇から見て△△の方角”と答えるのはごく自然な反応だね。子どもの頃、「右」を答えるなぞなぞで“石の上に頭を出した子ども”の解答を思い出した。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-01-22 17:15:55) |
3. フレンチ・コネクション2
《ネタバレ》 前作の流れを受け継いで、ジミー “ポパイ” ドイル刑事が大奮闘して事件解決。ガソリン撒いて放火はやり過ぎの印象だが、巨悪を許さない執念がいいね。 異文化衝突を交えた米仏2人の刑事の掛け合いが見どころの一つで、B・フレッソンがいい味出してる。港町マルセイユの魅力も堪能。ポパイが麻薬中毒にされ、そこから這い上がる過程は定型的だが見ごたえあり。 破天荒なポパイ刑事だが、どこか愛嬌があり憎めない。レスラーに例えて言うならブルドッグ・ブラワーだね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-12-20 19:32:46) |
4. フレンチ・コネクション
テンポよく展開するセミ・ドキュメンタリー調刑事ドラマ。臨場感が巧みに醸成されており、高架鉄道と車の追跡シーンはカーアクションの名場面。華やかな大都市ニューヨークの、麻薬犯罪に蝕まれる実態を暴き出す点も出色で、後の刑事映画に多大な影響を与えただろうことは想像に難くない。 地べたに這いつくばるような捜査で執念をみせる“ポパイ”ことドイル刑事が抜群の存在感を見せる。麻薬組織の黒幕が高級料理を優雅に食べ、張り込みの刑事は寒さに震えながらピザをほおばる姿が何とも皮肉で、この刑事を思わず応援したくなる。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-12-06 10:59:13) |
5. フェリスはある朝突然に
「人生短いから楽しまなくちゃ」………映画の主題はこの言葉に凝縮される。 青春映画の軽いノリに目くじら立てるほどの事もないが、人生は結構長いと思うし、喜怒哀楽に関わるさまざまなことがあるから面白いのだ。「楽」を強調されても何だかなあ~~~。 自分にとって、たとえ低採点の映画でも大概の映画に何か得るものはあるのだが、この映画では得るものがなかった。観た後に何も残らない稀有な体験だったよ、フェリスくん。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2019-01-20 09:01:41) |
6. ブラジルから来た少年
クローン技術を使っても全く同じ人間を作れないとはよく言われること。「新たなモーツァルトやピカソが誕生」するためには環境を同じにしなければ不可能、という要素が加わるためだが、少々雲行きが怪しくなってきた。 クローン人間の作成は倫理を無視すれば技術的に可能な段階に達している。そして、現代の技術では不可能だがそう遠くない時期に意識や記憶の移植が可能になるとのこと。そうなれば(ヒトラーの時代には間に合わなかったが)、やがてどこかの国の独裁者をクローン+意識・記憶移植でコピーする悪夢が現実にならないとは言い切れない。そういった意味で、この映画は時代を先取りした怖さがある。 老優二人の鬼気迫る競演は見ごたえがあった。特にG・ペックはメンゲレの狂気をオーバーアクトで魅せてくれる。 ドーリング家の鏡に映る数多くのエリック(ヒトラーのクローン)は作品のテーマを暗示する名場面。テレビ放映当時、「ヒトラーのクローン役の子供が可愛くない」という意見に対し、「ヒトラーの子供時代が可愛いわけがない」と反論があったが、後者の意見に1票。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-09-02 14:20:10) |
7. プレイス・イン・ザ・ハート
《ネタバレ》 大恐慌後のテキサスの田舎町。生きづらい時代における弱者の象徴ともいえる3人(未亡人、失業した黒人、盲人)の共助と祈り、女性の自立がテンポよく描かれる。 多くの困難に直面する主人公に対し、同居人二人が生きるヒントや励ましを与え、お互いの不信感がやがて心を通じ合わせる展開がいい。ウィルが料理のまずさを口実に炊事を申し出るシーンはさりげない見せ所。 おっ、外壁の板に張られたポップをよく見ると、綿花栽培だけでなく野菜、卵、ミルクの産直やクッキー、ジャムなど6次産業化をやってるね。小規模農家の生きる道としては妥当だろう。フロンティア精神全開。 終盤、教会の礼拝は綺麗ごとの感が強いものの、白人から黒人へと杯を受け取りながら死者とも交わっていく姿は印象深い。人と人のつながりに救いを見いだす・・・ラストはハート・ウォーミング。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-09-17 11:58:09) |
8. ブラック・レイン
大阪ってこういう雰囲気?「ブレード・ランナー」のような退廃的・煙っぽい空気感が合うか疑問。 「黒い雨」は菅井のセリフに出てくるが、原爆とヤクザの存在を無理やり結びつけたような印象で、映画全体にテーマ性は感じない。物語の展開としてはチャーリーの殺されるシークエンスが弱い。ラストの原版のやり取りも意味深だが心に響かず。指詰めは「ザ・ヤクザ」と変わらぬハリウッドの日本観が滲み出てるね。「芸者遊び」とか「完」も同様でステレオタイプの感。どちらかと言えば「ザ・ヤクザ」の方がいい。 主要キャスト3人の適演に加え神山繁がいい味出してる。あの人誰?と思ったら、ああーあ、プロフェッサー田中かい。 最後にひとつ、ニックが吐く皮肉交じりのセリフ「Fuck you very much」はうまく心情を表して面白い。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-07-16 17:12:33) |
9. プライベート・ライアン
《ネタバレ》 ノルマンディ上陸作戦は連合軍の被害も大きかったという知識があっただけに、ドイツ軍の抵抗を受けるオマハビーチの戦場は従軍しているような臨場感があり、フーバーな任務(=めちゃくちゃな任務)というのも頷ける。極度の緊張・戦闘場面のリアルな迫力は十分な説得力がある。 戦場の土を詰めた複数の缶は、イタリア・フランスなど多くの戦場を転戦した過酷さを物語る。加えて「この光景、すごいな」のリアルさ。 1人のため8人が命をかけるのは理屈に合わないが、それに対する下っ端の心情も掬い取っているので違和感はない。所詮戦争とは不条理の連続。そして戦場では母の話で盛り上がる。死に際の兵士の最後の言葉は「ママ」、これは本作のテーマに沿った重みのある場面。旧日本軍でも同じ話を聞くし、日系人部隊「442連隊」でも同様の実話があったとのこと。 ライアンの残留意向は至極当然のように思う。これに対し、中隊長が命令通り帰還するか残って戦闘に加わるかは究極の選択だが、後者を選択し妥当な展開。最後は助けた捕虜に味方を殺される皮肉。結局、戦場で情けは仇になり、捕虜の待遇に条約違反を語ったアパムが助けた相手を殺す、これまた皮肉。 老いたライアンによる回想は、あの時代と今を繋ぐ意味があり手堅い手法。同じような構成の映画を想起させ、なぜか「リバティ・バランスを射った男」を思い出した。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-03-26 11:57:59) |
10. フットルース
いつの世にもある新旧価値観の対立を描くところは、往年の映画「青春の旅情」と重なる。片や小説、もう一方はダンスやロックを対立軸に、表現することの意義を問う。新しい動きに反対するキーパーソンの存在も共通する。 終始奏でられる音楽はゴキゲンで、クライマックスのダンスシーンは圧巻だ。が、女優に魅力的な人が全然いない。キャストが弱かったなあ。 ラストは妥当な落としどころで、鑑賞した後の気分はよい。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-01-29 13:05:25) |
11. プラトーン
ベトナム戦争に従軍した1兵士の視点から、戦争の実態がリアルに描かれる。ジャングルでの過酷な行軍、疑心暗鬼、服従、裏切り、狂気・・・。さらに、村人の虐殺、焼き討ち、部隊内での殺人、誤爆などこれでもかというほど暗部を暴く。麻薬汚染はいかにもアメリカ的ではある。 製作当時のアメリカ映画としては異色の力作だが、過酷な戦場を描いたら(作品名を挙げるまでもなく)太平洋戦争を題材にした日本映画の方がはるかに説得力があるのではないか。本作と決定的に違うのは、日本映画の場合、物資の補給不足による悲惨な飢えが加わること。時には人食いさえも描かれる。その点は所詮アメリカ映画。エリアス軍曹が最後に両手を上げるシーンは神への祈りなのか戦争への怒りなのか?印象的な場面だが、このポーズでさえ「カッコつけ」に思えてしまうほどヒロイズムを感じる。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2015-12-20 14:09:11) |
12. ファントム・オブ・パラダイス
怪作にして快作。音楽業界を背景にした人間模様が原色コテコテに展開という感じで、ロック・ミュージカルという印象ではない。「オペラ座の怪人」「ファウスト」を土台にしているため物語がしっかりしているのもむべなるかな。ファントムの悲恋が切ないが、怪奇的・喜劇的な要素タップリで、特にビーフ(まさにキモカワイイ)の歌うシーンは何度観ても笑ってしまう。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-07-18 14:48:33) |
13. 舞踏会の手帖
あの頃出会ったあの人はどんな人生を送ったのだろうか、という思いが時々頭をよぎる。若いころに舞踏会で踊った相手の消息を訪ね歩くヒロインも、歳を重ね未亡人ということもあり、そんな感傷を抱いたのか?相手もひとつひとつの人生を送っている。中には犯罪者もおり、十人十色、栄枯盛衰、人生いろいろ、山あり谷あり・・・さまざまな言葉が思い浮かぶ。人生の意味を深く問いかけるような映画だった。だいぶ前にテレビで一度見たきりなので、また観たい映画の代表格。この映画の監督J・デュヴィヴィエ、F・キャプラ、木下恵介は何か相通じるものを感じる。3人とも巨匠として評価されているけど、私としてはトップクラスで名前を挙げたい監督だね。 [地上波(字幕)] 10点(2013-06-23 21:55:15) |
14. フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)
不死身の心臓を持つフランケンシュタイン、その戦争への利用は極めて今日的なテーマであり、彼の成長過程を描く場面もリアルな怖さ、悲しみが伝わってくる。フランケン、バラゴン双方が身長20m台であまり大きくない点も特撮の腕の見せ所であり、特にアパートの水野久美とフランケンシュタインの遭遇場面などハッとする出来栄えである。全怪獣の中でバラゴンの造形が一番好きだ。フランケンシュタインのメークもピッタリで、両方とも活き活きとした動きである。初公開の頃、フランケンがバラゴンを両手で持ち上げるポーズのポスターが印象的だった。後年、怪獣映画のボディリフト(相手を仰向けに持ち上げる)と、プロレスのボディリフト(相手をうつ伏せに持ち上げる)の違いに気づいた。大好きな高橋紀子もちょっと出演。大ダコが出てくるアメリカ公開版はいただけない。山火事の中で地中に沈む日本版がいい。 [映画館(邦画)] 9点(2012-12-22 21:07:11) |