1. プラトーン
アメリカの自己批判映画は少なくないが、ほとんどがアメリカ至上主義に基づいた上での批判にすぎない。しかしこの映画は批判する意図さえなく、戦争の悲惨さを訴える反戦映画でもない。ただ監督が単に1人のアメリカ軍人として見た事実をありのままに描こうとしたにすぎない。そこには政治的なテーマはない。訴えようとするメッセージもない。スケールもない。事実と観客の間に作り手の意思が存在することをできるだけ拒否しようとしている点で類まれな映画である。もちろん映画にするためにバーンズとエリアスの対立などのドラマ性は脚色されてはいるが。そこにあった事実を伝え人の死を悼む。それだけである。あのレーガン大統領の任期中、さらに冷戦最中のアメリカでこのような映画が評価を受けたことは極めて意義深い。これを観た人が戦争の悲惨さを訴える反戦映画だと思えばそれはその人の良心であり、実際私はこの作品の存在が、当時のそして現在のアメリカ人の良心に訴え続けるものなることを願ってやまない。 10点(2003-05-14 02:22:15) |