1. ヘンリー/ある連続殺人鬼の記録
《ネタバレ》 サイレント映画の時代から星の数ほど犯罪映画は撮られてきたけど、この映画を超えるのは本物のスナッフ・ムーヴィーしかないんじゃないかと思うほどで、実話犯罪映画のまさに極北です。ヘンリー役のマイケル・ルーカーがあまりに強烈で、他の映画で彼が出てくるたびに「あ、ヘンリーだ」っていまだに条件反射してしまう私です。 4年もオクラ入りしてようやく公開されたと言うだけあって、冒頭のタイトル・ロールからしてまるで自主製作映画みたいなシンプルさ、そして普通の人が蠅や蚊を退治する様な何気なさで殺人を重ねるヘンリーとオーティスの鬼畜の様な生活。これがほぼ実話だと言うのは凄いことで、創作なら誰もこんな恐ろしいお話しは考えつかないでしょう。思いのほかグロい描写は少ないのですが、こんなに淡々と人を殺すところを見せ続けられると、観てる方も精神的に参っちゃいます。 まさに取扱注意の毒薬ムーヴィーです。 [ビデオ(字幕)] 9点(2012-04-04 21:24:19) |
2. ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ
《ネタバレ》 いつも思うんだけど、マイケル・ケインのコメディ演技はどの映画でも最高です。シニカルでスノビッシュなキャラではとくにその技が冴えわたりますね。彼こそ、デヴィッド・ニーヴンの正統な後継者だったわけですね。 コン・ゲーム映画としては『テキサスの五人の仲間』に匹敵する後味の良さを持った映画でもあります。相手役のスティーヴ・マーティンがこれまた絶好調で、ケインの可哀想な弟に化けるシークエンスはもう爆笑です。オチは中盤からだいたい察しがつきましたけど、それでもラストのケインとマーティンが呆然自失となるダメ押しには大笑いさせて頂きました。これ、ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットをフィーチャーしてソダーバーグが監督でリメイクしたら面白いんじゃないですかね。コルゲート嬢はジュリア・ロバーツなんかを使って、おっとこれじゃあ『オーシャンズ』シリーズそのまんまでした(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-01-24 23:17:41)(良:1票) |
3. ヘル・レイザー
《ネタバレ》 魔道士はキョンシーの一味だと長いこと勘違いしていた自分です。クライヴ・バーカーの世界観は何となく判りますが、魔道士は悪魔なのか妖怪なのかイマイチ判りづらいのが難点で、要は地獄の番人でSMプレイのプロデューサーという感じみたいです。ビジュアル的にはサブカルにも多大な影響を及ぼした魔道士ですけど、本編ではほんと単なるわき役に過ぎなかったというのはある意味で衝撃。主役はあくまでフランク・コットンで、そこにジュリアとのドロドロな愛欲劇が絡むというのがメインストーリーなわけです。でも番人のくせにフランクが蘇って地獄を逃げ出したことに気づかないし、ヒロインと「嘘ついたら針千本の~ます」みたいなレベルの取り引きを交わすとか、魔道士ピンヘッドのわきの甘さはなんか微笑ましくなるぐらいです。まだCGがはびこる前の時代ですから、合成にしてもSFXにしても低予算が透けて見えるような手作り感が濃厚、蛆虫やゴキブリは生きた実物を使っていて、クライヴ・バーカーらしくヘンなところに拘りを見せてくれます。でも俳優さんたちには、あの皮膚なしベタベタ状態のフランクと絡んで接触しなけりゃいけなかった事の方が苦労だったでしょう。それでもこの妙な安っぽさというかB級感がまた独特のテイストを生んでいて好きです。ヒロインのパパがアンディ・ロビンソン(『ダーティハリー』のあの殺人鬼スコルピオで有名なお方)で、ついに彼も善人役を射止めたかと思いきや、フランクに殺されて皮をはがれ、その皮を被ったフランクが残忍の限りを尽くすのでけっきょくスコルピオと大して変わらないことになってしまいました(笑)。 余談ですが最後にアンディ・ロビンソンが魔道士に仕留められるときに“Jesus Wept!”という捨て台詞を吐くのですが、字幕では“イエスが泣いた”となっていました。“Jesus Wept!”は新約聖書で最短のフレーズでアンディ・ロビンソンがアドリブで発したセリフなんだそうですが、「くそっ!」とか「畜生!」とかが近いニュアンスのスラングで辞書にも用例が載っています。プロの翻訳者ならそれぐらい見落とさないで欲しいものです(ひょっとして翻訳者は戸田奈津子だったのかな?)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-02-09 23:37:37) |
4. ペット・セメタリー(1989)
《ネタバレ》 原作がスティーヴン・キングで脚本も本人が書いているのだからまさに純粋なキング・ワールドなんだけど、この後味の悪さは『ミスト』と肩を並べるぐらい。もっとも『ミスト』のバッドエンディングは映画独自のものなんだそうで、本作のほとんど悪趣味と言えるテイストはキングの本性がむき出しになった感じですかね。キングの家族愛が根底にあるストーリーには陰惨な結末になる傾向が見受けられ、この人の人生経験が反映されているのな。それでも怪談噺としては良く出来ている映画じゃないでしょうか。善玉幽霊として狂言回し的な絡み方をするパスコー君はユニークなキャラですけど、もしキング以外の脚本家なら絶対登場させないだろうな。アメリカには欧州みたいな怪談のネタになるような歴史が無いんですけど、本作みたいに原住民の伝説や霊界を基にしてストーリーを組み立てるのは良いアイデアだと思います。ラストの蘇った息子の暴れっぷりやビジュアルを観ていると、もうこりゃあ『チャイルドプレイ』のチャッキー人形の実写版じゃないですか!親父の注射であっさり冥界に戻されるところなんかはチャッキーと違って可愛げというか哀れみは感じました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-10 22:30:44) |
5. ペギー・スーの結婚
《ネタバレ》 この映画はタイムスリップものなのか単なる夢オチなのか判断に苦しみますが、コッポラは後年『胡蝶の夢』なんかも撮っていますので、自分にはこれは夢オチなんだろうという気がします。キャストが現在の視点で観るとけっこうな面子が揃っていて、中でもフランシス・コッポラ&ソフィア・コッポラ&ニコラス・ケイジという最初で最後であろう親族コラボ(『コットンクラブ』でのソフィアはエキストラ出演みたいなもの)は貴重でしょう。現在ではフランシスは映画監督は引退したも同然だし、ソフィアの監督作にニコジーが出演するなんて想像もできませんからね。ニコジーは本作では『初体験リッジモンド・ハイ』のころの面影とヘンな発声は残っていますが、割と理性的な部分もあるキャラでした。このニコジーはギリ高校生に見えなくもないですけど、万人が認める通りキャスリーン・ターナーは熟女のコスプレ以外の何物でもなかったです。他に撮っていないことからも推測できますが、コメディとくにラブコメはコッポラがもっとも苦手とするジャンル(あとSFもひどいな)みたいで、本作はイマイチ吹っ切れていないところが評価を下げています。まあこの映画をコメディと思うほうが間違いかもしれませんが。ジョン・バリーの音楽は『ある日どこかで』を彷彿させてくれて良かったです。やはりノスタルジーを音楽で表現させたら、彼の右に出る者はいないんじゃないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2019-12-07 22:43:52) |
6. ヘルレイザー2
《ネタバレ》 監督が『北斗の拳』で監督生命を散らせたトニー・ランデルの割には観れる作品です。前作のラストと完全に続きになっていて、今回の実質的主役はあの継母ジュリア、マットに染みついた血からのお約束の復活でございます。こいつが道を踏み外した精神病院長を取り込んでゆく過程が見ものというわけですが、院長が首だけ化け物になってからのビジュアルが笑わせてくれます。まるで自主製作映画みたいなレベルのストップモーション・アニメは本来笑うところなんですが、現在の眼で観るとかえってシュールで不気味ささえ感じるのはどうしてなんでしょうか。この映画の惜しいところは、地獄の奥の奥まで見せちゃったことでしょう。でもまるでカフカの世界みたいなチープな書き割りの迷宮は、個人的には好きな世界観ではあります。魔道士たちは前作以上にわき役に押しやられ、ラストではヒロインを助けて化け物と戦い全員あわれな最期を迎えるとは、「ふざけんな!」と暴れたくなりました。そしてこれも前作に続いてヒロインの恋人(というか好意を寄せるイケメン)が全く活躍せずあっさり途中退場となってしまうパターン、これも“80・90年代のホラー映画あるある”の一つです。ラストでヒロインが“ジュリアの皮かぶり作戦”で化け物に勝利を収めるところは、前作でやはりフランクがラリーの皮膚を被ったのとまるで同じ、でもまさかこれをヒロインにやらせるとは… クライヴ・バーカーがメガホンをとらなかった割には、なんとかギリギリにポテンシャルは保てたかなってのが、正直な感想でした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2019-02-13 21:09:05) |
7. へザース べロニカの熱い日
《ネタバレ》 いかにも80年代に流行したジョン・ヒューズ学園ものに対するアンチ・テーゼのようなコンセプトで、学園ヒエラルキーの底辺で鬱屈していた当時の高校生あたりにはウケたんでしょうね。でも脚本自体が中二病をこじらせただけみたいな出来なので、しょせん中高生にしかウケなかったと思いますよ、大人じゃ無理です。内容はとてもコメディと言えるものではなく、これは何かの寓話なのかと観ているあいだずっと考えてましたが、結局無駄でした。クリスチャン・スレイターを悪魔の変化した奴とすればもう少し面白い方向に展開できたかもしれません。だいたい、ヘザーという女生徒が恐怖の軍団で学園を支配する話かと思いきやヘザーはすぐ殺されちゃうし、そしたら途中から違うヘザーという子が出てきてますますこの映画の目指すところがつかめなくなりました。 しかし80年代のイケてるアメリカのJKで流行っていたのがゲートボール(?)だったとは笑ってしまいました。 [ビデオ(字幕)] 4点(2019-06-29 22:59:14) |