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1.  炎のランナー 《ネタバレ》 
2024年パリ・オリンピック開催中に、1924パリ・オリンピックの映画を観る…いやいつでも観られる映画より歴史的瞬間のほう観ろよ!って思いつつ、映画観ちゃうんだなこれが…  “Chariots of Fire”『炎の戦車』。戦車というのはベン・ハーに出てくる競争用の馬車です。『我が炎の戦車(Chariot of Fire)を持て』という詩をモトに、イングランドの国歌の一つ『エルサレム』の歌詞の一部になっています。エルサレムは、1919年当時の愛国心高揚の歌だそうです。 有名なヴァンゲリスのテーマソングが美しい。このサントラのカセットテープ持ってましたよ。私の中でオリンピックの音楽といえば、この『タイトルズ』と'84ロスオリンピックの『ファンファーレ』です。ロスの方はジョン・ウィリアムズ作曲だったのか。だから、自分好みな音楽だったのかなぁ?  さて、映画の背景を見ると、公開は'81年。前年'80年はモスクワ・オリンピックがありましたが、ソ連のアフガン侵攻を受けて。西側諸国の大量ボイコットがありました。日本もアメリカも、この映画の製作国のイギリスも不参加でした。その前の'76年モントリオールも、南アのアパルトヘイトを理由にアフリカ諸国がボイコット。その前の'72ミュンヘン・オリンピックでは映画にもなった事件が。平和の祭典がどんどん、国家間の政治問題に利用されていた時代だったんですね。そして'84年が西側の雄アメリカで開催のオリンピックです。盛り上げなきゃいけません。それでこの映画です。 映画の舞台を'24年にしたのは、製作国イギリスが、第一次大戦の大きな傷跡から立ち直ったキッカケとなった大会だったからでしょうか。駅でハロルドが、勲章を付けた負傷兵が荷物運びをしているのに驚くシーンが印象的です。  炎のランナーといえば、海辺を走るオープニングの、純粋に走ることを楽しんでいる選手たちの美しさ。この映像に、この映画の伝えたいことが全部詰まっているように思えました。この映像は、インドア派の私でも気分が高まりますよ。公開当時モスクワのボイコットで辛い思いをしたアスリートたちも、再び闘志が湧き上がったことでしょう。そしてその闘志をぶつける舞台は、3年後のロス・オリンピック。この地味で美しいオリンピック映画はアカデミー作品賞を受賞します。アメリカも後押ししたんですね。娯楽超大作のレイダースに受賞させるより、3年後のロス・オリンピック。 ナイキとかスポンサーが全面に出てて、スケボーとかブレイキンとか娯楽要素の強い新しい競技が出てきて、いろんな人種の人がいろんな国に所属して出場し、日常生活とセットでタレントのような取り上げられ方の現代のアスリートたち。 中東の宗教問題、人種問題、東西冷戦に翻弄されつつも、ショー・ビジネスと宣伝広告の媒体となっていき、代理戦争の如く国家の威信を背負って競技に挑んだ'80年代のアスリートたち。 自身の肉体・精神の競技を象徴するように、無地の白いシャツ。シンプルな国旗のワッペンを胸に、裸足で海岸を走る100年前のアスリートたち。 舞台の100年前と、この映画が制作された43年前との、時代の変化を感じますね。
[ビデオ(字幕)] 6点(2024-08-11 12:57:55)
2.  ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ 《ネタバレ》 
“Sicario: Day of the Soldado”『暗殺者:兵士の夜明け』。デイ・オブ・ザ~で“初日”みたいな意味があるので、ミゲル視点のタイトルかなぁ?と想像しました。前作同様、終始緊張感があってピリピリする映画です。スーパーで突然起きる自爆テロの怖さ、日常がひっくり返る怖さ。前作でそういう映画だって解っていても、怖い。 Wiki見たら“スピンオフ”なんですね。たしかに前作の主人公ケイトが出てこない。だけど、いわゆる“常識人の目”はイザベルがやってくれます。  アメリカ市民のミゲル少年と、カルテルのボスの娘イザベル。この2人が出会って助け合って…なんて、そんな甘っちょろいシナリオじゃないことは想像できます。とはいえ物語上、死の危険にさらされるキャラクターが少女となると、『最後助かるんじゃないかな?』という安心感も抱いてしまいました。ミゲルとイザベルの役どころの性別が逆だったら、もっと怖かったかも? もちろんアレハンドロ(そういう名前だったか)が処刑されたところは驚きましたよ。あ~やっぱりシカリオだ。あの映画の続編だ。って。イザベルは最後助かるだろうって、ハリウッド娯楽映画の安心感の糸。アレハンドロが撃たれ、糸が切れた凧状態のイザベルからの、最後そうなるんだ。って流れは、映画としては上手いと思います。アレハンドロのその後は、えぇ~??とは思いましたが…。まぁいくらリアリティに拘るにしても、わざわざお金を払って、後味悪く劇場をあとにはしたくないでしょうからね。2人が再会しないのも良いさじ加減だと思います。  前作も本作も、劇場で公開されてたことさえ知らなかったけど、こういう泥臭い血なまぐさい映画って、あまり宣伝されないですよね。お客さん入んないからでしょうか?少なくとも女性ウケはしない内容だから、デートムービーにはならないし。 でもこういうハードな映画も、一部の映画好き以外にも観てほしいって思ったりします。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-14 12:50:27)
3.  ホワイトナイツ/白夜 《ネタバレ》 
“White Nights”『白夜(が続く)』。この映画に限らずだけど、'80年代中盤のハリウッドってソ連に対しメチャクチャ敵意を持っていたのが伝わる。ソ連に不満を持つ人がいい人に描かれているというか…  ニコライの圧巻のダンスから飛行機の緊急着陸の緊張感の展開は、物語にグイッと引き込まれて素晴らしい。だけどソ連(と言うかチャイコ大佐)がニコライをどうしたいのか、脱走兵のレイモンドと組ませてどういう効果を狙ったのか、イマイチ解らない。グレゴリー・ハインズのタップダンスも素晴らしいけど、畑違いの2人を組み合わせるなら、何かしらのステージで成功して終わる姿も観てみたかった。 ただ最後の脱走劇と、レイモンドの最後、緊張感と安堵感があって、この終わり方でも良いのかって思ってしまった。  本当にソ連から亡命したミハイル・バリシニコフの起用。日本では当時エディ・マーフィに次ぐ人気(だったと思う)の黒人俳優グレゴリー・ハインズ。主題歌"Say You, Say Me"も懐かしくて良いけど、力強いビソツキーの歌がソ連らしくて良い。 フイザベラ・ロッセリーニをロシア人として起用したのは、お母さんが演じた『追想』のアナスタシアを意識してのことだろう。きっと劇中のニコライやレイモンド以上に、フィザベラはリアルな重圧を感じていたに違いない。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-03-26 00:01:05)
4.  ポリス・ストーリー/香港国際警察 《ネタバレ》 
“警察故事”『警察物語』…あ~このタイトルにしなかったんだ。刑事物語もあるし、紛らわしいからね。 ジャッキーの現代版映画の代表作ですね。あと個人的に、ちゃんと観た最後のジャッキー映画かもしれません。修行してカンフーマスターになるジャッキーのアクション映画が好きだった私は、現実の街並みを舞台としたジャッキーのスタント映画にあまり興味がなかったようです。正直この作品も、他のジャッキー現代劇とゴッチャになってます。当時の記憶だと坂の住宅を走るカースタント。2階建てバスを追いかける。デパートのシャンデリアをスルスル落下…しか覚えてませんでした。  で今回改めて観たけど、私の記憶もそうハズレてないというか、スタントの見所はだいたいあの3ヵ所だったわ。だけどそれ以外にも電話を使ったコントっぽいアクションとか、サリナとの会話テープを法廷で流すところとか、笑えるシーンも多いのね。大抵のアクション俳優は売れるとカッコいい役しかやりたがらないけど、こういう三枚目な役もこなすのが、ジャッキーの憎めないところ。  ストーリーはねぇ…麻薬組織のボスを追うってのが一応あるけど、オマケのようなもので、やっぱりウリはスタント。シャンデリア3連発はちょっとクドく感じるけど、それ以外のスタントも『どうしてそんなシーン撮ろうと思ったの?』って、ガラスをバリバリ割って、とんでもないところから落下してってのが連発します。物語は唐突に終わるけど、そもそもこの映画を観る人って、スタントなりアクションなりを、観たい人だと思うから、アレでいいんだろうな。エンディングとともに流れるNGシーン集ももうジャッキー映画のお約束。 あと印象的な主題歌ね。あれはぜひ覚えたい。そして同年代が集まるカラオケでみんなで熱唱したいわぁ~~~メンチ!!
[地上波(吹替)] 6点(2023-03-03 22:50:05)
5.  ボルサリーノ 《ネタバレ》 
- BORSALINO - イタリアのアレッサンドリアに拠点を置く帽子のブランド。…から名前を持ってきたって、どういうこと?フランス映画なのに…??一つ5万円とかする高級帽子みたいで、マフィアの世界で上を目指す者にとって、ボルサリーノは成功者の証だったり、見栄っぱりの必須アイテムだったりしたのかもしれません。  アラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモンドというフランスの国際的人気俳優の共演作。二人の出会いから、ちょっとコミカルなまったりとした殴り合い。競争馬を盗んだり、魚屋に腐った魚混ぜたり、マフィアの犯罪というよりイタズラの延長のような手口で成り上がるシフレディとカペラ。出だしはユーモアあるマフィア映画だった。強盗らしき犯罪者が銃撃戦ののち逮捕される場を目撃して、眉をひそめるカペラに“俺たちは人を傷付けずに知恵と工夫で成功を目指すぜ”とかあるのかと思いきや、後半は撃たれた、撃ち返した、殺した、殺されたの、普通のマフィアの抗争に。  二人の決別から最後も、アメリカン・ニューシネマ全盛期の影響を受けたのか、国際的な2大スターを使うからには、国際的なウケを狙ってみたのか、そんな風に思えてしまった。史実ならともかく、最初に“すべて創作です”って断ってるんだから、前半部分のゆる~い空気でお洒落なマフィア映画で貫き通しても良かったように思う。 耳馴染みの良い軽快な音楽が何度も掛かり、なんか『君よ憤怒の河を渉れ』を思い出してしまった。しかも何故か場面切り替えで音楽ブツ切りするし。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-11-24 00:59:53)
6.  暴力街(1974) 《ネタバレ》 
ヤクザ映画だけど、仁義だ任侠だって世界というより、バイオレンス中心のギャング映画って趣。 冒頭のフラメンコが異国感を醸し出していたし、経営者が足を洗った元ヤクザの組長って設定は、何もして無くても怖い安藤昇の訳アリ感を高めてくれる。 なんかヤクザ版カサブランカみたいな感じに思えた。  バーグマンは出てこないけどお色気シーンあり。でもここのキャスト欄を見ての通り、男・男・男・・・まぁこの時期のヤクザ映画でよく観る人たちがワヤワヤ出てきます。ある意味ヒロイン・オカマの殺し屋マダム・ジョイはかなりのインパクト。 キャストで言えば《BIG4が暴力街に集結》ってポスターの左2人(菅原&丹波)の登場があまりに遅く、退場もそれなりに早く、ちょっと期待外れな印象。  対立組織の仕業に見せかけてアイドル歌手を誘拐!なんて、暴力団と芸能界が密接な関係だった、当時の暗黙の事実が描かれていたのは面白かった。事務所の移籍騒動って件で森七菜をイメージしてしまったけど、そういうの、今も昔も変わらないのかなぁ?おっかないなぁ… 特に後半、バイオレスアクション強めで、血が飛び散るわ飛び散るわ。養鶏所のニワトリもいい迷惑だ。主役2人が迎える結末と、札束の舞う檻の中の犬2匹の画が印象深い。
[インターネット(邦画)] 5点(2022-11-08 20:13:32)
7.  ポンペイ 《ネタバレ》 
-Pompeii-ナポリ近郊の2.5万人規模の都市。ベスビオ山の噴火で消滅し、2千人程が亡くなった。…市民全滅ではなかったのね。 火山の噴火という自然災害に身分の異なる男女の恋愛を取り入れ、贅沢にも剣闘士のアクションまで取り入れた欲張りな作品。タイタニックとグラディエーターをいっぺんに観てるような、そんな気分になれるかもしれない。  しかしあそこまで恋愛路線に傾いてるとは思わなかった。何故か一目惚れして、何故か相思相愛になってて、何故か逃走して。あの短時間に恋敵であり親の仇が登場し、ヒロインが連れ去られたり取り返したりと忙しい。闘技場から屋敷に走って、また闘技場に戻ってと、本当に忙しい。ポンペイってディズニーランドくらいの広さなんだろうか?人口から考えて本当にそれくらいかも?  2人の恋にベスビオ山の噴火がどう関わってくるか。火山の噴火と火砕流に呑まれる街の描写は中々気合が入っている。だけど、突然噴火するだけで、火山の前フリとか登場人物との絡みが殆どないのね。劇中、溶岩が溜まっていく様子とか、頻発する地震とか、建物のひび割れとか、馬に落とされて亀裂に呑まれる人とかの“噴火の予兆”はあったけど、それを俯瞰で観察して、ポンペイの未来に危機感を感じてる登場人物が出てこない。当時の学者なんかを主要人物に入れて、予兆を体験させて「このままでは噴火するぞ、市民を逃さないと」みたいな盛り上げ方は必要だったかと。 あ、剣闘シーンはなかなか。歌いながら場面説明をする、黄金のマスクマンたちは雰囲気出てた。  オープニングの石膏で再現された遺体。あの石膏遺体がどうやって再現されたか?とか、他の映画でよく描かれる古代ローマ都市とポンペイがどう違うのか?とか、観ていて歴史の勉強になる要素は殆ど見つけられなかったのは残念。 2人の最後は、ちょっとロマンチック過ぎないかい?カッシアを守ろうとマイロがキツく抱きしめたカタチで…くらいの表現で良かったかと。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-06-29 22:53:41)
8.  僕のワンダフル・ライフ 《ネタバレ》 
-A Dog's Purpose- “犬の目的” 確かにこのタイトルだと固っ苦しい。駄洒落にして柔らかい表現に変えた邦題のため、一つの魂を持つ5匹の犬が、生まれ落ちた環境で、都度都度の生涯(犬生)を全うする、オムニバス映画のよう。 でも実際は一匹の犬の魂が5回も転生した結果、自分の目的を見つけ出す物語だから、このタイトル(…コレ書いてて、何が言いたいのか絶対伝わらないなって思ってる)。  最初の子犬は前世の話をしないから、ここからがこの犬(ベイリー)の物語の始まりで、ここより前に物語は無い。最後ワッフルズ(のちベイリー)となってイーサンのもとに行き、犬の目的=“今を一緒に生きること”を見つけて終わる。ここから先、ベイリーが死んでも、イーサンが死んでも、もうベイリーの転生の物語は無いんだと思う。(続編があるようだけど、この映画はここで終わってると思うんだ) 転生しても最初の飼い主イーサンのことを思うベイリーだけど、当然ながら警官のカルロスや学生のマヤに対しても同じように愛情を示す。今の飼い主を放ってイーサンを探しに行ったりはしない。なぜならこの時は気が付いてないけど“今を一緒に生きること”が、犬の目的だから。  この映画「自分より先に死んでしまうから…」と、犬を飼うことに二の足を踏む、本当の犬好きの人の背中を強く押してくれる映画だと思う。犬にとっても死は苦しいけど、そんなことより限られた犬生、飼い主と一緒に生きることが犬の目的なんだと。  実家で猫を飼っている。初代は割とすぐ死んでしまい、二代目は16年生きて天寿を全うし、いま三代目が健やかに暮らしてる。全部たまたま家に来て住み着いた野良猫。重複して飼ってた期間は無く、前の猫が死んでしばらくすると、どこからともなく次の猫がやってきた。もしかしたら初代の魂が、猫の目的なんかを探して転生しているのかもしれない。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-06-14 23:23:38)(良:1票)
9.  ポリスアカデミー 《ネタバレ》 
-Police Academy- “警察学校” わざわざ書くまでも無いんですが…でも実際書いてみると、この映画が警察モノというより学園モノのノリに近いことが実感できました。 '80年代を代表するコメディ映画の一つで、当時TVのロードショーでじゃんじゃん流れていて、放送の次の日はいつも学校で話題になってたと記憶している。今でも当時の友達と飲むと、マホーニー、ハイタワー、タックルベリーって名前出すだけで大笑いできる共通認識。みんなポリアカが大好きだったんだな。 ただ実際は短期間の流行りモノだったようで、特にマホーニーが出なくなってからは、学校での人気は下火になっていたと思う。ポリアカが当時の学生に流行ってたのって、実質2年位だったんじゃないかな。  さて1作目の話に絞ると、それぞれが入学した事情→警察学校の訓練と生活→実地訓練と暴動鎮圧。その時どきにマホーニーの退学狙いのイタズラが入るようなイメージ。そんなメインストーリーに、個性的なメンバーのネタが延々と並べられてる感じ。メンバーが多いから、ひとり・ひとネタが適度な間隔で流れれば、当時はそれだけで充分笑えたんだろう。吹き替えのチカラも大きかったかも。 シャワー室丸見えとか、パーティでトップレスとか、あくまで健康的なお色気シーンが結構あったのね。全然忘れてた。 バーバラがいじめっ子にやり返すところ、ファックラーが大声出すところは、顛末を知っていてもスカッと出来る。  さて、顔を観ただけでこの先何が起きるか解ってる、このマンネリ感たっぷりのコメディを、思い出補正なしに楽しめたか?と言われると、う~ん… カッコいいアメリカン・ポリスの制服とコメディの融合で、当時はとってもスタイリッシュに思えたんだけどな。 今の目で観ると少し退屈に思えるかもしれないけど、このくらいのコメディ作品を、夜9時から約2時間、じっくり鑑賞できるくらい、当時は時代も娯楽もノンビリしてたんだな。
[地上波(吹替)] 5点(2022-06-10 01:04:36)
10.  北斗の拳(1995) 《ネタバレ》 
-Fist of the North Star- “北極星の拳(こぶし)” こちらでワースト四天王(?)に挙がるくらいなので、余程酷いものを期待していたけど、案外観られる作品だったと思う。 東映Vシネマのアメリカ版とのことで、安かろう事は想像できたけど、制作費2億円は、Vシネマにしては凄い金額なのかな? 制作された'94年当時、1$=100円として2億円≒200万$。同年代の大作ダイ・ハード3が9000万$、デスペラードで700万$、あのストリートファイターで3500万$だそうだから、どのような規模の映画か想像できる。 その少ない予算で片手間にフザケて創ったのかといえば、案外真面目に制作されたんじゃないだろうか。  ベースはシンのサザンクロス編。ランデル監督らは限られた構想期間で、原作コミックではなく、TVアニメと'86年の劇場版アニメをベースに選んだんだと思われる。当時は英語版のコミックが手に入らなかったのかも。TVアニメではサザンクロス編は結構長く、カーネルもジャッカルもシンの部下で登場。そしてシン配下の怪しい南斗聖拳の使い手がいっぱい出てくる。南斗列車砲とか。 劇中処刑される南斗のマスターは、どことなくTV版のジョーカーっぽい(髪型なんかが)。 で、制作までの時間も無いから、ビデオの早送りを駆使して長いアニメを視聴して、作品に詳しい人に解説してもらって「あ、ここアニメオリジナルね、原作だとこの子(バットの弟分タキ)死んじゃうのね、そんでね…(早口)」所々勘違い(バット死んじゃうのかぁ。とか)しつつも、巨人デビルリバースは予算の関係で無理だなぁとか考えながら、更に短くまとめられた'86年劇場版も観て、コッチをベースにしたほうが良いのになぁ、このジャギってキャラ、カッコいいなぁ…なんて思いつつ、劇場版でもジャギはシンとの絡みがあるからコッソリ出して、中堅どころのクリス・ペン使っちゃって。って具合に。 シンがリュウケンを銃殺(!!)するのはショッキング。映画の序盤だったし、さすがにココは吹き出した。うん、さすがワースト映画って思ったわ。 だけどジャギだって銃は使うから、原作をよく知らない人が創ったと思えば、そんなに無理設定ではないかもしれない。  ゲイリー・ダニエルズは元キックボクサーだそうで、本当にケンシロウのように素晴らしい肉体。後半のザコ相手のケンシロウ無双は素直にカッコいい。 少ない予算でVFXも限られたシーンにしか使えなかったんだろう。やはりインパクトのある顔面破裂は使いたいし、ライバルのシンの強さを強調したいから、南斗聖拳の切れ具合も入れたいと。 あのペチペチ百裂拳は、制作陣も悩みに悩んだ末の決断だろう。実際に拳の連打を出せるゲイリーの技術を取るか、低予算の特撮でそれっぽく見せるか。結果は多くの失笑を買ってしまったけど、今のCG技術でもない限り、百裂拳を格好良く撮るのは難しいと思う。 不遇なB級肉体派俳優ゲイリー。エクスペンダブルズではジェット・リー相手に華麗なマーシャルアーツを観せる。 ゲイリーが自分の子供に“ケンシロウ”と名付けたって知り、不覚にもジーンと来てしまった。 あの素晴らしい原作と比べたら、こちらでの低評価も納得だけど、モトがTVアニメだと思うと、案外頑張った低予算映画かなって。 1点付けるつもりで観たけど、出来の悪さに怒りを覚える2点でもないし、3点でも良いんだけど、ゲイリーに愛着湧いてしまって… 平均点上げてしまってすみません。
[インターネット(吹替)] 4点(2022-05-15 17:51:14)
11.  ボーダーライン(2015) 《ネタバレ》 
-Sicario-スペイン語、メキシコで“暗殺者”を意味するそうな。 オープニングのFBIとSWATの突入シーンから緊張感が高まる。35人以上の死体が練り込まれた家ってどんなだろう?って思ったら、ニュースで上空映像入れてくれる親切さ。 フェニックス州の乾いた土地の普通の家に、あんな沢山の死体と爆弾のトラップがあるなんて。 エンドレスで掛けたら滅入ってしまいそうな音楽も、緊張感を高めてくれて素晴らしい。 あれよあれよと“修羅の国”フアレス市に突入していく展開が見事。メキシコと言えばソンブレーロ被った陽気なメキシカンがタコス食べてコロナビール飲んでる印象だったけど、ネットの怖いサイトに、マフィアの処刑動画とかがいっぱい出てて、近年ガラッと印象が変わってしまった国でもあり、そんな“怖いメキシコ”を題材にしたこの映画は、ネットで見た現実とリンクした恐怖と緊張感を感じさせる。  国境を超えたギレルモ引き渡し作戦は、まるでブラックホーク・ダウンのような緊張感。デコボコの道。高架に吊された死体。市民はスカッシュして遊んでる。「爆竹じゃないぞ」銃の音。「危険なのは国境だ」。並走してたパトカー消える怖さ。国境越えて渋滞で進まない車列。先手必勝は違法行為。凄い。 テッドの豹変も怖かった。国境を超えたこちら側にも犯罪は根を張っている現実。麻薬カルテルをコントロールするためにFBIを利用するCIA。夕闇に消えるデルタ部隊の映像の美しさ。ケイトたちに見せる予定の派手な銃撃戦。見せるつもりのなかったその先。汚いものの先に更に汚い現実。銃を突きつけての誓約書のサイン。 トランプ元大統領が国境に壁を作るって言ってたけど、この映画見たら反対する理由が思いつかない。 本当によく出来た怖い映画だ。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-01-09 17:37:27)
12.  僕の彼女はサイボーグ 《ネタバレ》 
ドラマ“JIN-仁-”のキャストが多く出ているから、なにかそんな流れ的なものがあったのかもしれないけど、どうなんだろ? 第一印象は良く言えば元気な邦画。言い換えると、あちこちに違和感を感じる展開が。監督が韓国の人だそうで、なるほど日本を舞台にした韓国映画って考えると、そうオカシなコトでもないかもしれない。  だけどペットのイグアナを食べる(言葉の説明だけで良いのに生々しい生首映す)。カレー食べてる時に大声でカピパラのフンを食べる話をクドクド。子供のフライドチキンを盗み食い。2008年にロボットダンス。こういうの、どう解釈すれば良いんだ?文化が違うと笑えるのかな? ジロー(ひとりっ子なのにジロー)の子供時代にしてはレトロ過ぎたり、実の母が高齢だからと祖母を装うとかって設定、ちょっと聞いたことないし、そもそもあの長い帰省シーンの意味がわからない。主人公の部屋(あんな物件学生は住めないだろう)のキッチンの窓から見える、怖い男の看板も、何か意味があるのかと思ってたけど、特に意味はなかったのかな。 イグアナのラウルが後半猫になって帰ってきたの、ここの意味もわからなかった…(猫が昔飼ってた初代ラウル、イグアナが2代目ラウルってのは、wiki観てわかりました。)ターミネーターのオマージュが多いから、サラ・コナーのペットのパグちゃん(イグアナ)にしたのかな?  突然の大地震。CGは当時の日本映画にしては迫力あるなと思ったけど、ストーリー上何の伏線もなかったと思うし、唐突に思えた。 違和感はたくさん感じるけど、誕生日に突然現れる名も知らない彼女との交流は面白く(ここの無銭飲食は目を瞑ろう)、1年後のちょっと違う彼女との生活もロマンチック。アラレちゃんみたいな強すぎる彼女(結局名前、付けないんだな)も、当時の“何でもやってみせる”綾瀬はるかが見事に演じてたと思う。演技も頑張ってたけど、マバタキしないのが一番頑張ってた。 だけど、停止したサイボーグ(しばらく一緒に過ごした)と入れ替わりに、未来人の彼女が現れても、容姿は一緒かもしれないけど、違う存在だよなぁ…って思ってしまうなぁ、どうなんだろ? でも、私が批判っぽく書いたことを、日本人の口に合うように直したって、せいぜい素人のラノベ作品程度。この映画より面白くなるとも思えない…
[インターネット(邦画)] 4点(2021-12-06 01:29:25)
13.  ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習 《ネタバレ》 
~Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan~原題は邦題のままのようです。 モニタリングという番組があって、アスリートが老人メイクをして、一般のアマチュアに教えてもらう体で競技に参加して、突然本領発揮して驚かすってドッキリ企画なんだけど、アレどう見てもメイクってバレバレだし、一般の人もバレバレメイクに気付かないフリするのも、正体バラす時に驚くのも、大変だろうなぁって、見ていて辛いからチャンネル変えてしまう。あの番組まだやってるのかな? こういう企画はドッキリだってバレたら元も子もないけど、仕込み・ヤラセが見透かされると途端に面白くなくなると思う。けどこのボラットは最後まで騙し通すところがスゴい。ニュース番組出演、ロデオでの国歌斉唱、変な宗教団体に参加など、収録後のネタバレをせず、ウソを突き通したようだ。 ヤラセとコメディとドキュメントの境界線が絶妙で、どこからどこまでがヤラセか判断が付きにくいけど、アンティークショップはヤラセで、パメラ・アンダーソン誘拐は本人了承済みとのこと。だけどパメラのボディガードは知らないんだろうな。  ボラットとアザマットが全裸で格闘するシーンは吹き出してしまった。こういう下品な下ネタのシーンで笑ってしまうと、人に言えない自分の性癖を知られるのと同じくらい恥ずかしけど、まぁ、観てる時1人だったので…劇場だったらどんな反応しただろう。 で、この格闘のあと、パーティ会場で全裸で暴れるドキュメントに繋がる(…ルース・ベイダー(当時、最高裁判事)がゲストらしいけど姿は見えず。同姓同名か、ここもヤラセか?)。住宅ローン販売員のパーティらしいけど、公開2年後にサブプライム・ローン問題。数カ月後にリーマン・ショック。  出演する一般人にモザイクが掛かってないのが不思議だけど、これが映画として成立するのは、ボラットの非常識な行動や言動に対する一般人の対応が、カメラの前で行われてることだと思う。彼らは隠し撮りをされたわけではない。ロデオのオーナーがボラットに『ヒゲを剃らないとテロリストみたいだよ』とか『イラクのテロリストは全員縛り首だ』とか過激なことを言う。NYテロの割とすぐ後だから仕方のない感情とも言えるけど、彼はこのカメラの先に、カザフスタンの国民が居ることを了承したうえで、そう答えたハズ。  お下劣コメディとして笑うのも良し。 社会問題にメスを入れたとかナントカ、小難しい顔をして観るのも良し。 不愉快だ、詰まらないと記憶から消しても良し。 そして、観ないのも良しだ。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-10-04 12:49:53)
14.  ポセイドン・アドベンチャー(1972) 《ネタバレ》 
~The Poseidon Adventure~ポセイドン号の思いがけない出来事。でどうだろう? 船の転覆という異常事態から、命の掛かった選択と結果が連続する展開は、とてもハラハラするし、私がその場に居たらどうするか?を考えさせられる。 大晦日のパーティから、不気味なサイレン。さっきまでパーティを楽しんでいた人たちが死んでいく地獄絵図。 逆さまになった世界。ここに残るか、自力脱出を目指すか。判断材料の一つが“責任者や信頼できる人の判断に従う”だと思う。 そもそもの転覆自体、無理に速度を上げるよう指示したオーナーの命令からだった。もちろんあの中では一番権力ある人物。 会場内の最高責任者パーサーが『ここで救助を待つのが最善だ』と。一番船に詳しい人がそう言うのだから。多くの人は従うと思う。 船医と共に船首に向かう乗客。船の詳しさとか責任とか関係なく、単に誰かに頼りたい心理、自分の命さえ他人に委ねてしまったんだろう。 “責任者や信頼できる人の判断に従う”は、今回残念ながら全部が裏目に出てしまった。 ジョン牧師『残ったら助からないかもしれないが、全員を置いていけない』スコット牧師の考えを認めつつ、弱い人のため、怪我をして動けない人のために残る。考えの違う2人の牧師が、お互いを尊重して別れる演出が見事。 何かとスコット牧師と衝突するロゴ。エイカーズが落ちた時、真っ先に海水に飛び込んで探すし、船尾ルートを探すスコットを17分も待つ。愛情からリンダを6回も逮捕したように、周りに誤解されるけど彼なりの人への思いが感じられた。 見た目から足手まといになると思われていたローゼン婦人の活躍。映画観ながら一緒に息を止めてみたけど、私は助からなかったわ… 「最後に愛してるって言ったのは、いつ?」『さぁ20年前かな?昨日かも?』名セリフ、こんな老夫婦になりたい。 目的地は船底、薄いとは言え1インチの鉄板。そこから先どうするんだろう?と思ったが、彼らが助かったのは、波の影響で転覆すると読んで、早い段階でメーデーを出した船長の判断だった。そのため救助隊も早く到着していたんだろう。 パニック映画は数々あるけど、これほど、みんな助かってもらいたい映画も少ない。短い時間だけど人物描写が的確で、魅力を引き出せているからだと思う。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-28 20:37:55)(良:2票)
15.  ぼくらの七日間戦争(1988)
学校への不満、教師への反抗、立入禁止の廃工場、自分たちだけの生活。誰もが共感できて、誰もがワクワクする。私も同級生と、当時こんな事がしたかった。かつて少年少女だった全ての人のロマン。 でも初めて観た時は、私はもう15~6歳だったから、面倒くさいお年頃だったと思う。 外国のデモ隊と警官隊の衝突のニュース映像なんかを見た経験から『機動隊のやられ方、嘘くさ!戦車が出てきた時点で、警察も本気でツブしにくるだろ』学校祭の出し物、展示物を何日も掛けて制作した経験から『最後の罠とか花火とか、嘘ばっかり!』なんて。特に映画の後半部分の嘘くささが鼻について、気持ちが冷めていったっけ…あぁ、もう少し子供だった頃に観たかった。 いい大人になった今は、TMネットワークの歌とともに懐かしさも感じながら、当時よりずっと楽しめたかな。  何より宮沢りえの“時の人オーラ”が凄い。彼女の白い肌と透明感。他の女の子と並んだとき、腰の位置が違う。このあと芸能界で色んな仕事をさせられるけど、このときは宮沢りえの存在全てが絶対領域だった。 体育教師にジーンズの裾を引っ張られて破れる。中山役の宮沢りえをホットパンツ姿にする見事な演出。 中山「エレーナをそんなにぶたないで(棒)」カッキーが戦車を見上げると、あらら大胆な改造ホットパンツに。 ここのシーン、しゃがんだ中山が立ち上がるまでを、もっとネチッこく撮りたかったハズだし、その意図で入れたシーンだと思うけど、意外なほどアッサリしたカメラワーク。“宮沢りえをそんな目で見てはいけない”という意識が働いたのかもしれない。なんて思ってしまうほどの彼女の存在感だった。 菊池と中山の仲を見て急に機嫌が悪くなる安永。かといってこの三角関係が発展するとか無く、淡いままで終わらせるとか、いかにも当時の中学生らしい。 エース菊池と補欠の相原が仲が良かったり、絵の得意な久美子が、鉄の扉の外側でなく内側に大きな絵を書くとか、彼女の才能と内向的な性格が出ていてすごく良い。このくらいの歳まで、みんな才能も明るい希望や夢もあるけど、画一的な教育社会では、みんなの才能が世間に認められるわけじゃない。  61式戦車も重要。なんであんなところに居たのかは謎だけど、それが却って不思議で面白い。 何年も放置されたであろう古い鉄の塊。子どもたちの修理なんかで動くシロモノじゃない。それが動くなんてファンタジーだ。 まるでアイアン・ジャイアントやラピュタのロボット兵並みに、子どもたちのピンチに「・・・どれ、助けてやるか」と動き出すエレーナ。 61式は戦後初の国産戦車で、一度も戦闘で血を流すこと無く、今では全車退役しているそうな。そんな平和な時代の、動くはずのない戦車が、子どもたちを助け、みんなを載せて敷地内を楽しそうに駆け回り、元の位置の戻り、エンジンが焼けて寿命を迎える。 人に向けて撃つことのなかった大砲は、子どもたちの七日間戦争の終わりを告げる花火を打ち上げる。  今見ても最後の大暴れ、完成度の高すぎるトラップの数々が、11人の子供が頑張った感=リアリティが無くやりすぎで残念。 小規模にするか、せめて他の生徒も応援に来てみんなで…とかなら、多少説得力も増しただろうか? 最後どうなったのか。子どもたちはあれだけのことをして『楽しい思い出が出来たなぁ』くらいな感じで学校に通う。 バラバラに転校もさせられず、ワンポイント・ソックスも勝ち取れず、校長先生に殺されもせず。何もなかったかのような登校風景。 子供も大人もお互いに理解し合えず。って結末。最後が惜しい。
[地上波(邦画)] 6点(2021-08-25 14:23:49)(良:1票)
16.  北北西に進路を取れ 《ネタバレ》 
~North by Northwest~…北北西じゃないんだよ。北の大都市ニューヨークからイリノイ州、サウスダコタ州と、どんどん北西へ移動しているので、『北部から北西部に向かって移動しますよ。』的な?ノースウエスト航空がスポンサーだから説は面白い。 オープニングの緑バックと白線がビルに変わる画。国連ビルから逃げるロジャーをビルの上から撮る画。だだっ広い農道で帽子の男と向かい合うロジャー。印象的なカットが結構ある。 ちょっとしか出てこないロジャーのお母さん。50ドルのお小遣いでホテルの鍵を取りに行くとことか、殺し屋相手にエレベーター中を笑いに包むなんて素敵だ。再び殺し屋が来た時、お母さんが使った“笑いを起こして目立てば逃げられる”を、オークション会場で実践するのも親子らしくて良い。このお母さんの活躍をもっと見たかった。 旅のさなかに出会う美女ケンドールの大人の落ち着き。特にマッチの火に手を添えるところがセクシー。 最後の舞台がラシュモア山、観光地ものの2時間サスペンスっぽい。今回久しぶりに見て、こんなにラシュモア山のシーン長かったっけ?って思った。 この映画で観光地としての魅力は出し切った感があるせいか、ラシュモア山が舞台の映画はしばらく無かったと思う。 落ちそうなケンドールの手を掴むロジャーの唸り声が、急に優しい声と笑顔に変わるエンディングが印象深くて好き。
[地上波(吹替)] 7点(2021-06-24 23:13:20)(良:1票)
17.  ボヘミアン・ラプソディ 《ネタバレ》 
~Bohemian Rhapsody~伝統や習慣に囚われない狂詩曲。クイーンという独創的なバンドと、フレディ・マーキュリーの生涯を表すに相応しい曲名にして、映画タイトルだと思う。  ロックが世界の音楽の最先端だった60年代。クイーンが活躍した70年代は、アルバムと世界ツアーが成功の証だった。パンクやテクノが馴染んできた80年代、売れるロック(産業ロック)とポップスが音楽の中心となり、映像と歌が両方楽しめるMTVが登場。 日本ではヘビメタ、ハードロックが大ヒットし、90年代グランジとブリットポップが登場し、音楽の好みが細分化。 世界中誰でも知っているロックバンド・シンガーは消えた2000年代以降。レディー・ガガがポップアイコンとして登場。現在、EDMがそこそこ流行。EDMとか最近の音楽はパソコンで作るものもあるそうで、楽器が弾ける人が流行りのPCの音楽を聞くと、腕がもう一本無いと弾けない音が出てたりと、なんかちょっと、気持ち悪いらしい。 でも、クイーンが今もバリバリ現役で活躍していたら、ラップやPCの音楽も積極的に取り入れたんだろうなって思う。 前置きが長くなったけど、この映画はクイーンのデビューから最盛期(末期)まで、ロックが社会現象になった最後(?)のイベント、世界同時中継のライブ・エイドまでを描いている。 ロックシンガーが社会的影響力を持ち、カリスマ化され、演奏と歌の良し悪しで評価されていた時代。音楽がアナログな手法で作られ、全てに人の手が入り、人が演奏し、人が操作するライブの生々しさと手作り感、当時の熱気、観客のロックへの情熱がよく伝わる。  クイーンとフレディの実話を、ノンフィクションではなく、整理・ディフォルメして描かれた作品で、実際の出来事の順番が前後してたりするそうで、違いを探すのも面白いかもしれない。特にポールがかなりの悪人として描かれていて、実際はどうだったのか?とか。 当時はエイズに関する知識も広まっていなくて、まだ“変態行為の代償”くらいの間違った認識も強い時代。フレディが仲間にエイズを公表したあと、映画みたいに頬にキスやハグが出来たのかなと、気になったりした。  だけどこの映画は、クイーンのロック映画として、スカッと楽しむのが一番正解だと思う。 『Bohemian Rhapsody』『We Will Rock You』『Another One Bites the Dust』名曲誕生の秘話。手作り感。 何よりぽかんと口を開けたブライアン・メイのブライアン・メイらしさ。良い意味でジョン・ディーコンの普通の人っぽさ。 当時ハイランダー観て感動して、アルバムまで買ってしまった『Who Wants to Live Forever』が結構長く掛かって嬉しかった。 大好きな『Killer Queen』は制作秘話とか一曲垂れ流しで30分くらい流してほしかった。 足が長く長髪で、少女漫画の王子様みたいなクイーンは、当時の日本で人気が爆発。特に女の子に人気だったそう。映画ではヒットするまでが短く、フレディもすぐ短髪ヒゲ顔になるけど、ビッグ・イン・ジャパンの先駆けとして、やはり日本は入れてほしかったな。 …そんな事言ってたら映画一本に収まらないか。良いなぁ。やっぱりロックは良い。
[映画館(字幕)] 8点(2021-06-05 17:31:10)
18.  ホタル(2001) 《ネタバレ》 
健さんの鶴。爪楊枝マンゴーを次々渡す田中裕子は良かった。しっとりとした良い映画にも出来たと思う。   富屋食堂、特攻の母こと鳥濱トメさん、朝鮮人の特攻隊員の光山少尉のことは、この映画で知った。 富子の「殺した」スピーチ、金山少尉の遺言は創作のようだ。こういう肝心なところがフィクションだから、敢えて実名は使わなかったんだろう。 今の時代ネットで色々調べられる。勉強になった。ぜひ鹿児島に行った際は、知覧に寄ってみようと思った。  「検閲を受ける遺書に、本当の気持ちが書けるか」「貴様らにもすぐ出撃命令が出る。特攻が特攻に言い残すのか?」 どちらにしても最後の言葉を残せないが、遺書ではなく遺言を残す金山少尉。 「大日本帝国のために死ぬのではない。」「朝鮮民族万歳。」 …まさかとは思うが、山岡は許嫁の智さんに、あの日まで少尉の遺言を伝えていなかったんだろうか? あと、ふと思ったけど、金山少尉の遺族はなぜ戦後、誰ひとり知覧に来なかったんだ? 残された人は、サハリンでも硫黄島でも御巣鷹山でも、行ける限り会いに行くイメージが強いけど…文化の違いかな。  そして韓国へ… 親族と対面し、まずお辞儀と挨拶をする山岡夫婦。 対してお辞儀もしない韓国の親族。 遠くから来た異国のお客さんに、玄関先で本題に入らせる。 …通訳を連れての訪問、親戚一同で出迎えてる訳だから、事前にアポイントを取っての訪問にも関わらず、玄関先で立ち話。 山岡夫婦に怒りをぶつける韓国の親族…一人は彼が遺言を託した部下で、一人は彼が愛した許嫁にもかかわらずだ。 ここで健さんが、金山少尉の遺言本文を丸々ぶっ通し読み上げ。 それを韓国語で通訳。親切にもこちらも丸々ぶっ通し。 アリランを歌い、頭を下げて遺品を渡す健さん。 遺品を受け取らず、頭も下げない韓国人親族。 車椅子のお婆さんが受け取る。そしてやっと、家の中へ。  昭和天皇崩御ののち、昭和のスター高倉健に、韓国人の玄関先で頭を下げさせて「朝鮮民族万歳」と言わせる。 そのために黙読できる遺書ではなく遺言にしたのね。 さすがに土下座ではないが、健さんを誰よりも低頭させるための車椅子? 当時話題になっていた、慰安婦問題を連想させるために老婆?謝罪と賠償?   健さんにさぁ、こんなコトさせるんじゃあないよ!
[CS・衛星(邦画)] 2点(2021-04-20 00:15:43)
19.  鉄道員(ぽっぽや)(1999) 《ネタバレ》 
あぁ、これは高倉健さんの遺言。とても私的なメッセージの映画だったんだな。 国鉄からJRになり、赤字合理化と人員削減、廃線に追い込まれる炭鉱時代の花形路線は、当時の日本映画業界の弱体化のようだ。 この作品で映画界から引退を考えていたかは解らないけど、まだ自分も業界も元気なうちに撮っておきたかった映画なんだろう。 健さんのセリフの「ぽっぽや」は全部「映画俳優」や「役者」に置き換えても通じそう。 雪子の作った鍋を食べながら、膝を正しての告白は、健さんから自分の周りの人たちへの、感謝の言葉に思えてならない。 健さんは江利チエミさんと結婚し、子供を授かるが中絶、離婚ののちチエミさんも亡くしている。 実の妻と子供への思いを、映画人らしく佐藤乙松を演じながら、泣きながらの懺悔をしたんじゃないだろうか。 当時まだ若い頃に見ていたら、また違った感想だったかもしれないが、自分も歳を重ねたのと、健さんが亡くなった今だからそう思える。 後出しジャンケン。後半は涙が止まらなかった。  当時売れっ子の広末涼子との共演は、健さんの希望より監督らの希望=若い観客にも高倉健の映画を見てもらいたい、ヒロスエ目当てでも良いから…じゃないかな。 最後の小林稔侍の「聴いて泣かせるうちは、ぽっぽやも、まだまだ」は、「まだまだ映画でやれるよ」という健さんへのエールだろう。 この映画が1999年という区切りの年に公開されたのも、本作以降主演作は数本あっても大きな映画賞は辞退されているのも、健さんの色々な決意の現れに思える。 しかし、ぽっぽやが健さん主演のファンタジー映画だったとは思わなかったなぁ。 そして当時の広末涼子の美しさと透明感はハンパない。昭和の映像にいきなり現代人が出てきたみたい。 あとエンディングの歌と電車の画は、まるでジブリ映画の実写版ようだった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-02-16 00:41:10)(良:1票)
20.  ボウリング・フォー・コロンバイン 《ネタバレ》 
マイケル・ムーア監督の知名度が格段に上がったきっかけの映画。 高校の銃乱射事件から、アメリカの銃社会の問題と疑問を追いかけていくドキュメンタリー映画。 「アメリカは銃が多いから、銃の犯罪も多いんだ!」→確かに。でも隣りのカナダも銃は多いけど銃犯罪は少ないよね?なぜ? 「マリリン・マンソンなんか聞くからこんな犯罪するんだ!」→彼らが直前にやってたボウリングは?影響ないの? 「アメリカの歴史が…!」「黒人が…!」「マスコミが…!」「Kマートで…!」「NRAが…!」 ムーア監督の中では映画の起承転結が出来上がっているんだろう。銃乱射事件を本線として追い、そこに至る説明として必要な知識を脇道にそれる様に深く追って行くが、その進路変更が見ている我々も興味を持つように強調(「マリリン・マンソンが」「マリリン・マンソンを」「マリリン・マンソン」「マリリン・マンソン」みたく)されてから脇道に入るので、興味が続き飽きさせない。 アメリカの銃社会に対し、関心をもって各自が考えるのが目的の映画だと思うので、解決策や答えを出してくれる映画ではない。そんな作品だけど、Kマートが弾丸の販売を止める決断をするのは、凄いな。監督の手法や情熱も凄いが、Kマートの決断の速さも凄い。 本作で悪者として書かれるチャールトン・ヘストン。だけど周到に質問の準備したムーア監督と、事前情報なしで苦しい防戦になるのは予測できる中、直接取材に応じた姿は男らしさを感じる。 対談から逃げ出すヘストン氏に対し、6歳の少女の写真を見せるムーア監督。背中と正面を同時に見せるなど、1カメなのに後から編集してるところとか、細かいところだけどちょっとズルいかも。 マスコミやTVがアメリカ国民の恐怖心を煽っている。としていたが、この映画に対しても自分の考えをもって見るべきかもしれない。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-11-29 13:08:27)(良:2票)
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